最近「おいしい」と感じたのはいつ?
番組の冒頭で、kayoさんはリスナーに「最近おいしいって感じたことありますか」と問いかけます。朝のコンビニコーヒーでも、疲れた夜のカップラーメンでも、何でもいいと投げかけます。
kayoさんは、そうやって自分が美味しいと感じた瞬間は本物だと話します。誰かの許可も点数もいらない、という立場が番組の出発点になっています。
一人夢中でかき込んだ牛丼でも。あなたがおいしいと感じたその瞬間は本物です。
番組の狙いは、この回を聞き終わった後に、目の前のおいしさが少し違って見えることだと語られます。
研究者ではなく「技術屋」を名乗る理由
kayoさんはまず自己紹介として、長年メーカーの研究所で食品素材の開発に携わってきた技術屋だと語ります。研究者という言い方も間違いではないと前置きします。
ただし、kayoさんがやってきたのは、五感をフルに使いながら、どうすればもっとおいしくなるかを現場で探す仕事だったといいます。香りの立ち上がりや熱の入り方など、数字だけでは決めきれないものを扱ってきたと話します。
数字だけでは決めきれないものを何度も試作して食べて、また作っていく。
kayoさんは、そうやって15年間、科学だけではさらりと解決できない現場でものづくりに向き合ってきたと振り返ります。
「tech」に込めた、もっと人間的な意味
kayoさんは、この番組をあえて「tech(テック)」ラジオにした理由を説明します。テックというとAIや最新テクノロジーを想像する人が多いかもしれない、と前置きします。
一方でkayoさんにとってのテックは、もっと人間的なものだといいます。長年の経験や職人の勘、現場で積み重ねられてきた知恵まで含めた言葉として使っています。
科学も文化も哲学も五感も、人が悩んで試して失敗しながら積み重ねてきたもの全部。
kayoさんは、そうやっておいしさを形にしていく実践の技術をテックと呼びたいと話します。科学はおいしさを探求する大事な手がかりだけれど、科学だけではないはずだ、という考えです。
科学は「地図」、テックは「歩き方」
kayoさんは、科学を地図にたとえます。地図は、おいしさという目的地へ行くための構造やルートを、誰にでもわかる言葉で教えてくれると説明します。
ただし、地図を持っていることと、その土地を実際に歩くことは全く別だとkayoさんは指摘します。おいしさの現場は、地図に書ききれないほど複雑だと話します。
具体例として、同じレシピ、同じ火加減で焼いても仕上がりが違うことがある、という料理の話を挙げます。プロの料理人は、その日の湿度や肉の厚み、火の入り方を捉えて判断していると語ります。
科学という地図には書ききれないわずかな変化を、音や色の揺らぎ、立ち上る香りの層で捉えて、今だと火を止めます。
kayoさんは、そのコンマ数秒の判断こそが、地図には載っていない歩き方なのだと表現します。
おいしさへの構造やルートを、誰にでもわかる言葉で示してくれるもの
地図に載っていないわずかな変化を、感覚で捉えて判断する現場の技術
科学より先に、人の感覚が走っていた
kayoさんが面白いと感じているのは、科学という地図が完成するずっと前から、人が技術という歩き方を体得していたことだといいます。
例として、メイラード反応という名前がつくずっと前から、人は焼けた肉の香ばしさやこんがりしたパンの焼き色に本能的にワクワクしてきた、と話します。
kayoさんは、科学がなぜを解明するより先に、人の感覚が常に一歩前を走っていると語ります。未知のおいしさへ踏み出すのは、いつも人の感覚と積み重ねてきたテックだという考えです。
「エビデンス」と言われて置いてきぼりになる感覚
kayoさんはさらに踏み込んで、「エビデンス」という言葉を取り上げます。便利な言葉だけれど、言われた側はちょっとウッとなりませんか、と問いかけます。
もちろんエビデンスは大事だと断りつつ、kayoさんはある懸念を口にします。エビデンスがあるから正しいと思った瞬間に、自分で感じたり考えたりすることを少し手放してしまうことがあるのではないか、という指摘です。
でも、いつの間にか自分の感覚が置いてきぼりになっているような感覚ないですか?
kayoさんは具体例として、腹ペコで知らない街を歩き、ネットも見ずにふらっと入った町中華がびっくりするくらい美味しかった経験を挙げます。孤独のグルメみたいな、と表現します。
外から見ただけでは美味しいとわからないはずなのに惹かれてしまう。kayoさんは、それを単なる勘で片づけず、まだ説明しきれていない構造や理由がきっとあるはずだと考えています。
そのまだ説明しきれていない美味しさがあるなら、私はそこも探求したい。
美味しさは、あなたの「ここ」にある
kayoさんは、まず目の前の美味しさを見つめることが大事だと話します。美味しさは誰かに決めてもらうものではない、という番組の核心を改めて語ります。
この番組でやりたいのは知識を届けることではない、とkayoさんは言います。美味しいという感動も、ん?という違和感も素直に感じられるようになること、そしてその先の美味しさを自分で見つけたり作っていくことだと語ります。
kayoさんは、今日の一言として「美味しいはワクワクだ」という言葉を置き、番組全体のトーンを示します。
まとめと、次回「焦げはなぜ美味しいのか」
kayoさんは今回の話を、一言で言うと「美味しいってもっと自由で、もっと楽しい」とまとめます。科学も評価点数も有名なガイドも、美味しさを探るための地図の一つだと整理します。
そのうえでkayoさんは、地図は土地そのものじゃないと述べ、地図に載っていない道をあなたの感覚はきっと歩ける、と語りかけます。
番組を、美味しさについて素直に一緒に論じられる場所にしたいという想いが語られます。何よりもワクワクしながら、という姿勢が繰り返されます。
最後に次回予告として、第2回は「焦げはなぜ美味しいのか」前編だと告知されます。この回でちらっと触れた焼き目の正体、メイラード反応の話をするとのことです。
まとめ
第1回は、技術屋kayoさんが「美味しいtechラジオ」に込めた想いを語る回でした。科学を地図にたとえながら、その一歩先を歩く人の感覚と実践の技術=テックを大切にしたいという番組の姿勢が示されました。
- kayoは食品素材の開発に15年携わってきた技術屋で、五感を使って現場でおいしさを探ってきた
- 番組名の「tech」は最新技術だけでなく、経験・勘・知恵まで含めた実践の技術を指す
- 科学は目的地を示す「地図」、その一歩先を歩くのは人の感覚と積み重ねてきたテックという考え
- 美味しさは誰かに決めてもらうものではなく、自分が美味しいと感じた瞬間にもうそこにある
- 次回は「焦げはなぜ美味しいのか」前編で、メイラード反応を扱う予定




