離乳食は「いきなり10段飛ばし」の試練?
番組「試行錯誤」の初回テーマは離乳食です。福岡で0歳の息子の離乳食がこれから始まるヒヤマさんが、東京で2人の娘を育ててきたばたこさんに話を聞いていきます。
ヒヤマさんはまず、離乳食を始める前の「動けなさ」を打ち明けます。ミルクは誰が作ってもミルクになるのに、離乳食はテーマが急に自由すぎる、と感じているそうです。
ミルクを一歩目とすると、離乳食はいきなり階段10段ぐらい飛ばされる感覚があって、試練が始まる感覚がある。
ばたこさんも、この「正解のなさ」に1人目のときつまずいたと振り返ります。本が2〜3冊あってもどれも言っていることが違い、厚生労働省のガイドまで見に行ったそうです。
こっちの本ではご飯これぐらいでいいですよって書いてあるのに、こっちの本ではサツマイモはまだですとか、これは後ですとか。正解がない。
ばたこさんは、真面目に頑張ろうとする人ほど「積む」と話します。だからこそ、1人目の記録を全部ログに残し、2人目に生かしたそうです。
これを2人目に生かすために全部ログ残そうと思って、めっちゃログ残したよね。
「補完食」ってなに?離乳食とどう違う?
離乳食をどう考えればいいのか。ばたこさんが2人目のときに言語化のベースにしたのが「補完食」という考え方です。
母乳やミルクだけでは6ヶ月ぐらいから栄養が足りなくなってくるので、減っていく分を食事で補っていきましょうという感じです。
では、離乳食と補完食は別物なのか。ばたこさんの答えは「結論、そんなに違わない」でした。考え方のベースが違うだけで、やっていることに大差はないそうです。
ヒヤマさんは、その距離感を「エクセルとスプレッドシート」に例えます。ばたこさんも「当たってる」と応じ、目的の重心が少し違うだけだと整理しました。
1歳で母乳・ミルクを卒業する「離乳」を目指し、どう食事を軌道に乗せるかを考える
無理に離乳させるより、足りなくなる栄養を食事で補っていくことを重視する
同じ0歳の赤ちゃんが相手なので、柔らかいものしか食べられないこと、アレルギーに配慮して少しずつあげることは、どちらも共通だとばたこさんは言います。
補完食が目指す3つのゴール
ばたこさんは、補完食で目指したいものは大きく3つあると整理します。
難しいのは、この3つを同時にやることだとばたこさんは話します。栄養も、食べる練習も、親の側で「朝は何を、昼は何を、何時に」という組み立ても、まとめて考えなければいけないからです。
象徴的なのが、離乳食の代名詞とも言える10倍粥です。ヒヤマさんも真っ先にイメージするものでしたが、ばたこさんは補完食では10倍粥から入らないと言います。
10倍粥は栄養ほぼないじゃん。そんなのでお腹いっぱいにしたら、ミルクという栄養価の高いものを飲んでた子からすると、薄いの入ってきたなって感じになるじゃん。
10倍粥は「食べる練習」でしかない、というのがばたこさんの整理です。栄養を補う観点なら、補完食の一歩目はオートミールなどになると言います。
ミルクと10倍粥、どっちが栄養ありますか?って言われたら、絶対ミルクになりそうやもんね。
胃はさくらんぼ1個分。「予算ゼロのプロジェクト」で設計する
何を食べさせるかを考える前に、ばたこさんは「設計(プランニング)」の大切さを挙げます。やることを本などで全部決めて、あとは実行だけにすると楽になるそうです。
ヒヤマさんは、これを新入社員へのレクチャーのようだと笑いつつ、「仕事みたいな考え方なら考えられそう」と前向きになります。
設計で最初にぶつかるのが制約条件です。赤ちゃんの胃は容量が小さく、200ミリリットルほどしかありません。ばたこさんいわく「生まれたてはさくらんぼ1個」と言われるほどです。
全然予算ないプロジェクトじゃないですか、それ。その中で必要な栄養を獲得しなきゃいけないっていう、そういうゲームってことね。
しかも咀嚼ができないので、食材を潰すしかなく、水分が入って薄くなります。量では調整しづらいからこそ、量で稼げない分、何をあげるかで栄養を設計する必要が出てきます。
栄養が足りないと何が起きるのか。ばたこさんは、夜にお腹が減って起きてしまう、つまり睡眠にも影響すると話します。
栄養が足りないと何が起きるかでいうと、夜寝れなくなるとか。お腹減ったよって夜起きちゃうんですよ。
ヒヤマさんは、離乳食を「Why・What・How」で整理し直します。Whyは3つのゴール、次に何を食べさせるか、それをどう仕組み化するか、という流れです。
ポイント①鉄分。「10倍取ってやっとトントン」
何をあげるか。ばたこさんは「足りなくなりやすいものから優先する」ことが重要だと言い、その筆頭に鉄を挙げます。
お母さんから生まれてきた時に、母体にある鉄を引き継いで生まれてくる。それが貯蔵鉄、貯金みたいなものが6ヶ月ぐらいで減ってくるらしいんですよ。
母乳だけで育てていると、この貯蔵鉄が6ヶ月ごろに枯渇していくそうです。ミルクには鉄が入っているぶん、完全母乳の人ほど不足が顕著になりやすいとばたこさんは話します。
鉄が重要視される流れは、社会にも表れているといいます。ここ数年でドラッグストアに「プラス鉄」と書かれたベビーフードがすごく増えた、とばたこさんは驚いたそうです。
さらに厄介なのが、鉄分は吸収率がとても低いことです。ばたこさんによれば、鉄の吸収率は10%ほど。必要量が6ミリグラムなら、単純計算で60ミリグラム分を取らないと足りない計算になります。
必要量そのものも、国によって違うそうです。日本では1日4.5〜5ミリグラムほどとされる一方、海外では11ミリグラムという基準もあり、ばたこさんも理由は調べきれなかったといいます。
では5ミリグラムを食事で取るのはどのくらい大変なのか。ばたこさんが挙げた例は、赤ちゃんには現実的でない量でした。
ミニハンバーグぐらいのやつを、レバーとして食べないといけないってこと、赤ちゃんが。しかもそれって鉄分だけの話してない?
だからこそ、単純に取ればいいわけではないとばたこさんは言います。ビタミンCと一緒に取ると吸収率が上がる一方、お茶や牛乳は吸収を妨げる要因になるそうです。
ポイント②たんぱく質。栄養があっても「食べにくい」壁
2つ目のポイントはたんぱく質です。筋肉や体を作る栄養素で、大人でも意識させられる、とヒヤマさんも直感的に納得します。
ただ、たんぱく質もばたこさんいわく「むずい」そうです。プロテインのような手軽なものがなく、たんぱく質量が多いのは肉や魚など、鉄分と近いラインナップになります。
問題は、それらが赤ちゃんにとって食べにくいことです。歯もなく、繊維はもぐもぐしてもなかなかなくなりません。栄養があることと、食べられることは必ずしもイコールではない、とヒヤマさんも整理します。
もう一番めんどくさいのが、たんぱく質の調理が結構むずくて。(赤ちゃんは)味付けできないから、豚肉あげても臭そうじゃん。
そこでばたこさんが試行錯誤の末にたどり着いたのが、出汁で煮て柔らかくし、ブレンダーでペースト状にして濾す方法でした。味付けができないぶん、出汁でおいしさを出す工夫です。
すごい、それなんていう食べ物なんですか?
離乳食です。名前のない食べ物、いっぱいあるよ。
このたんぱく質の食べさせ方は、ばたこさんのnoteでも今なおよく見られている記事だそうです。それだけ多くの人がつまずくポイントだと言えます。
ポイント③カロリー。狭い穴に「質」を通す
鉄・たんぱく質のほかに、ビタミンは「いろいろなものを食べられるようになれば補える」もの、として整理されます。そのうえで3つ目のポイントに挙がったのがカロリーです。
赤ちゃんも体を動かすのにエネルギーが必要ですが、量を食べられないぶん意識しないといけない、とばたこさんは言います。食べやすいスープほどカロリーが低くなりがちなのが悩みどころです。
食べやすさと、エネルギーとたんぱく質量とか鉄分とか考えて、私はなるべく早く料理化することを意識してやってて。
ヒヤマさんは、仕事なら「量質転化」で量をこなして質を上げられるが、赤ちゃんはそもそも量を食べられないと指摘します。
赤ちゃんって、とりあえず量食わせろとかできないから、いきなり質を求められてるなって印象。
栄養が足りているかは、成長曲線の枠に入っているかで見ればいい、とばたこさんは言います。ただ個体差があり、栄養が体につくまでのタイムラグもあるので、短期間では判断しづらいそうです。
スプレッドシートで管理する、逆算の実践編
実践では、ばたこさんは必要な栄養素から逆算してレシピを考えていきました。1人目のときに取り組んだ「ジーナ式」のレシピ本なども参考にしたそうです。
ばたこさんが作った離乳食は、想像の斜め上でした。人参・玉ねぎ・セロリ・ローリエで野菜出汁を取り、そこで野菜と肉を煮込んでブレンダーにかける、いわばブイヨンから作る一皿です。
野菜と肉を煮込んで、最後ちょっとブレンダーでウィーンってやって食べやすくして。本当に美味しかったよ、普通に大人が食べても。
さらに、管理方法もばたこさんらしいものでした。1人目のカロリーなどを、あの表計算ソフトに全部入力していたそうです。
引かれると思いながら言うんですけど、スプレッドシートで全部のカロリーを入れて。
1人目はその場で考えて作っていましたが、2人目は上の子の世話もあり時間がなく、1週間ずつプランニングしたそうです。
この設計は、逆算そのものです。「この日にこの料理を食べさせたい」から、まだ試していない食材を前の週にアレルギーチェックしておく、という段取りになります。
この日にこの料理を食べさせようと思うから、じゃがいもまだやってなかったと思ったら、じゃがいもをその前の週にやっとくみたいな。
食材を1つずつ試して増やしていくと、やがて食材が「レシピ」に育ち、いろいろな栄養をまとめて食べられるようになります。ヒヤマさんはこれを「食材からレシピにレベルアップ」と表現しました。
落とし穴と個体差。「頑張ればできる」ものではない
一方で、レシピ本にも落とし穴があるとばたこさんは注意を促します。おいしそうなレシピでも、料理に慣れていない人が全部やると準備に3時間かかる、という声もあるそうです。
だからこそ大事なのは、いかに楽をするかです。市販品も組み合わせながらやるところで格闘するのだと、ばたこさんは実感を込めて話します。
もう1つの現実が個体差です。ばたこさんの2人の娘は、性格がまったく違いました。
食べる時と食べない時の差が激しく、食が細め。食べさせるのが大変だった
よく食べてお腹が減るタイプ。食べさせることには苦労しなかった
ところが、成長の記録をずっと付け続けた結果は意外なものでした。2人ともほぼ同じだったのです。
(成長を)ずっとつけ続けてるんですけど、2人ともほぼ一緒です。身長も1センチ前後しか変わんないし、体重も0.5キロも変わんないんじゃないかな。
つまり、どれだけ親が頑張っても、成長そのものは完全にはコントロールできない、というのがこの回のもう1つの学びです。
まず3ヶ月。親にはメンターがいないからこそ
まとめとして、ヒヤマさんは新入社員の最初の3ヶ月にたとえます。最初にある程度軌道に乗るかどうかで大きく変わるのは、赤ちゃんも同じだという整理です。
ただし、決定的に違う点があるとばたこさんは言います。仕事と違って、親には手取り足取り教えてくれる人がいないことです。
新卒と違うところは、親の手取り足取り教えてくれる人がほぼいないっていう。メンターみたいな。
ヒヤマさんは、これから離乳食が始まるので、1ヶ月ごとに中間報告と振り返りをする回をやりたいと提案し、ばたこさんも楽しみにしていると応じました。
まとめ
離乳食(補完食)は「頑張ればできる」ものではなく、構造的に難しいからこそ考えすぎてしまうものです。だからこそ設計して楽にすることが大事だと、ばたこさんは話しました。難しく考えすぎず、めげないことも同じくらい大切です。
- 離乳食は「補完食」=足りなくなる栄養を食事で補う、という考え方をベースにすると整理しやすい
- 目指すゴールは「栄養を補う」「食べる練習」「食事のリズムを作る」の3つ
- 優先すべき栄養は、鉄分・たんぱく質・カロリーの3つ。特に鉄は吸収率が低く不足しやすい
- 胃はさくらんぼ1個分と小さく、量で稼げない。だから何を食べさせるかを逆算して設計する
- 個体差で成長は完全にコントロールできない。難しく考えすぎず、めげないことも大切





