初回テーマはなぜ「対話」なのか
番組は自己紹介の第1回を経て、初回のテーマとして「対話」を選びました。ホストは、対話の源流としてソクラテスの無知の知を挙げます。
ホストは対話を、聞くことによって新しい価値や視点を発見する試みだと位置づけます。そのうえで、谷口さんが日頃、対話についてどう考えているかを尋ねました。
対話はキャッチボール、AIは対話じゃない
谷口さんは、対話をあまりちゃんと考えたことがないと前置きしつつ、ふと浮かんだ表現として「言葉のキャッチボール」を挙げます。
よく言葉のキャッチボールみたいな表現の仕方ってするじゃないですか。なんで、対話っていうのはキャッチボールなんだろうなというふうに思ってます。
そのうえで谷口さんは、AIとのやり取りは会話ではあっても対話ではない、と切り出します。理由は「遊び心のなさ」だといいます。
谷口さんはキャッチボールに例えて説明します。人間同士なら、相手の胸に投げる正しい球だけでなく、あえて膝元に変化球を投げたり、高めに投げて相手をジャンプさせたりすることが起きると話します。
意図してなのかそうではなくてなのか、要は理解ができてないが故にそういうボールを投げてしまうこととかもあったりする。
谷口さんは、その予想を外れる球のやり取りにこそ対話の面白さがあると考えています。一方でAIは、学習した経験則から最適だと思われる答えをほぼ必ず返してくる、と対比します。
AIは指示すればボール球も投げるが、あえて投げろと言わなければ投げてこない。谷口さんは、その予想範囲に収まる感じが人間の対話とは違うと整理します。
谷口さんはAIをどう使っているか
話は谷口さん自身のAIとの距離感に移ります。ホストは、谷口さんが新しい技術にすぐ飛びつかない印象があると指摘しました。
飛びつかないっていうかね、飛びつくのがあんまり得意ではないんだと思います。
谷口さんはChatGPTを3.5の頃から、みんなが使っているからという感覚で使い始めたといいます。用途はほぼ仕事で、今は翻訳に使うことが多いと話します。
具体例として谷口さんは、自分の会社のキャッチフレーズを英語表現にする際、Google翻訳ではしっくりこず、ChatGPTの表現と比較検討したことを挙げました。
AIへの悩み相談は「対話」に入るのか
ホストは、知り合いの女性がAIに旦那の愚痴を聞いてもらっているという話を持ち出します。谷口さんも、最近は10代の子が悩み相談をAIにすると聞くと応じます。
AIへの悩み相談は対話の中に入るのか?
谷口さんの考えでは、それは対話には入りません。課題解決の役には立つが、それは求めた球を返しているだけだ、というのがその理由です。
谷口さんは、AIは膨大なデータを取り込み、効率的で確からしい解決策を導き出せると認めます。ただ、そこにあえてボール球を投げる要素はないと考えています。
谷口さんはさらに、AIの会話はフォームまで同じだと例えます。大谷翔平や山本由伸が投げれば、同じ160キロでも回転数や手の出どころで全く違う球になる、と。
谷口さんは、AIの会話は160キロに設定したバッティングマシンがひたすら球を出してくるように見えると話します。その無機質さゆえに、自分が対話に求めるものとは違うと結論づけました。
対話の機会はなぜ減ったのか
ホストは、ビジネスの現場では無駄を排除して最適化することが求められ、まさにど真ん中のストレートを投げることが期待されると受けます。
ホストは、そのために対話の機会が減っているのではないかと問いかけます。じっくり時間を取り、相手と自分は違う人間だという前提から始める対話が起こりづらくなっている、と。
そもそもあなたと私は違う人間ですよねと。100%であの、理解することなんていうのはできないけれども、自分はこう思っていて、これについてあなたはどう思っているんですか?っていうことの交換。
谷口さんは、タイパやコスパが物理的な社会で求められすぎたのではないかと応じます。その最たる例がAIのようなものだと話します。
谷口さんは、ホストが対話を求める動きを、行きすぎたコスパ重視への「揺り戻し現象」ではないかと捉えます。人間は群れで生きる以上、深めのコミュニケーションである対話を求め始める人が出てきているのではないか、と。
論破したかった人が、話を聞けるようになるまで
ここでホストは、自分は人の話を聞くことがとても苦手だったと打ち明けます。人の話に興味がなさすぎて、学校の授業でも大人しく座っていられず寝てしまうほどだったといいます。
普通に友達とかでも人の話をじっくり、その人が話し終わるまで聞いてるっていうのがマジでできなかったんですよ。
ホストは、口を挟みたくなり、相手を論破したい人生を生きてきたと振り返ります。それが変わってきたのは、ここ4、5年のことだといいます。
なぜ人の話を聞けるようになったのか?
ホストは2つの理由を挙げます。1つは、稼がなければ、何者かにならなければという競争心が薄れたこと。もう1つは、子供ができたことです。
ホストは、子供との関わりが一番大きかったと話します。こちらの言うことが理解できない存在との対話から始まることで、忍耐力がついたといいます。
共感が女性は上手い、報告会議は苦手
話は共感力に及びます。ホストは、女性は女性の社会の中を生きてきたからか、話を聞くのがうまいと感じると述べます。
ホストは井戸端会議を例に、自分はそう思っていなくても共感してあげられる力はすごいと話します。谷口さんも、見せかけでも女性の共感力は男性より高いと同意しました。
一方で2人がそろって苦手だと語るのが、それぞれの進捗を一人ずつ報告していく会議です。ホストは、そこに共感がゼロだと指摘します。
別に共感する必要ないですからね。あそこに述べられているのは事実だけだからな。
谷口さんは、あの会議は必要に迫られてやっているだけの予定調和で、議事メモを書いて出しておけばいいと話します。2人はそれを「儀式」だと言い合いました。
対話とは問いを立て、深めること
ここで話はソクラテスに戻ります。ホストは、ソクラテスが弟子のプラトンとの対話の先に無知を見出し、答えではなく問いを深めることに価値を置いたと紹介します。
ホストにとって、これが対話の理想です。対話の目的を問われたら、問いを立てることが大事だと答えると話します。
ホストは、一対一で相手を少しでも理解したいと思い、相手に問いを立て続ける行動そのものが大事だといいます。谷口さんも、問いを立てるのはとても楽しいことだと応じました。
ホストは、問いを立てる好奇心がないと人間のコミュニケーションはうまくいかず、会議の報告のような繰り返しになってしまうと話します。
さらにホストは、SNSやYouTubeで受け身に情報を浴び続けることを、麻薬的に享受していると指摘します。発信者に問いを立てることにも慣れや訓練が必要で、その環境が減っていると考えます。
谷口さんは、そうすると対話は今後、教育の過程にちゃんと入れていくべきではないかと提案します。問いを立てることは必要な技術だ、と。
トランプ関税で考える「対話としての外交」
谷口さんは、問いを立てる例として外交を挙げます。急に話は飛びますが、と断りつつ、トランプ関税を題材にしました。
谷口さんは、なぜ関税を上げようとするのかを問い、相手の意図を教えてもらったうえで、関税以外の方法を探る。そうしたやり取りこそが対話だといいます。
あなたがちょっとどういう意図で言ってるのかわからないんで教えてくださいと。教えてくれた結果、我が国にとっても、お宅の国にとっても、もっといい方法ってありませんか?
谷口さんは、相手を理解したい気持ちや、相手の課題感を引き出して一緒に考えるコミュニケーションの力は、AIではなく人間同士でやらないと出てこないものだと話します。そうした能力を開発できる教育が必要ではないかと締めくくりました。
谷口さんが作りたかった「人生の交差点」
ホストは、谷口さんがなぜシェアハウスをやっているのかを尋ねます。谷口さんは、コミュニティを作りたかったわけではないと前置きします。
昔から思ってることで、人生の交差点を作りたかったんですよ、僕は。
谷口さんは、いろんな人の人生が交差する場所を作りたかったといいます。ただの集合住宅では、占有部が区切られ、共用部で挨拶する程度で人生の交差点にはならないと考えます。
一方でシェアハウスは、キッチンなどの共用部をみんなで使うため、必然的に会話が生まれます。外国人も利用し、いろんな文化や言語が混じり合う交差点になる、と谷口さんは説明します。
そこでなんか勝手に生まれてくれたら面白いなみたいな。それちょっとなんか俯瞰で外から見てたいなみたいな感じです。
9人のシェアハウスに喧嘩は起きないのか
ホストは率直な疑問として、一箇所に何人いるのか、喧嘩は起きないのかを尋ねます。谷口さんの物件は一番大きいところで9人で、喧嘩はほぼ起きないといいます。
その理由を谷口さんは、入居時の審査にあると話します。支払い能力よりも、ちゃんと共同生活できるかどうかを見ている、と。
新しい人が馴染むのに時間がかかりそうなときは、ウェルカムパーティーのようなイベントを企画することもあると谷口さんはいいます。自分からコミュニケーションを取りにくそうな人には、こちらできっかけを作ってあげるそうです。
これはね、単純にビジネス目的もあって、要は居心地悪いと出て行っちゃうじゃないですか。
毎週イベントに通っていた20代後半の話
ホストは、自分は音楽仲間などオンラインの場はあっても、オフラインで集まるコミュニティにはあまり属してこなかったと話します。対して谷口さんは、20代後半に死ぬほどイベントに行っていたと振り返ります。
谷口さんが通っていたのは、趣味でイベンターをしている知人が主催する社会人サークルのような集まりでした。冬はバスを貸し切って30人以上でスノボに行き、その場で友達になったといいます。
そのイベントは週に一回ほどあり、行けば誰かしら知り合いに会えたそうです。谷口さんは、そこから500人でキャンプをするイベントのスタッフなども務め、仲を深めるためにワールドカフェのようなアイスブレイクをしていたと話します。
目立ちたがりの人が、人の集まる場に通った理由
ホストは、谷口さんがイベントに通っていたのは友達が欲しかったからかと尋ねます。谷口さんの答えは少し違い、単純に毎週つまらなかったから、というものでした。
谷口さんは、人混みが嫌いで用事がなければ外に出ないタイプだといいます。土日を家で過ごしても面白くない中、たまたま誘われたイベントが面白そうで行ってみたら、ガッツリハマったそうです。
そのイベントのどこにハマったのか?
谷口さんによれば、自分が目立ちたがりだからです。昔から三枚目で、しょうもないことを言って盛り上げるのが得意だったため、人が集まる場に行けばそれなりに人気者になれた、といいます。
谷口さんは、同世代の人がたくさん集まる場が用意されているなら、それは行きますよね、と話します。ホストが「やっぱり人が好きなんですね」と返すと、人は嫌いじゃないと答えました。
まとめ
初回のテーマ「対話」をめぐって、2人はAIとの会話との違い、話を聞くことの難しさ、問いを立てることの意味、そして人が交差する場づくりまでを行き来しました。予想を外れる球や問いにこそ対話の面白さがある、という視点が全体を貫いています。
- 谷口さんは対話を「キャッチボール」と捉え、あえて外れた球が飛んでくることに面白さがあるとした
- AIは求めた球を返すが予想範囲に収まるため、谷口さんは「会話」ではあっても「対話」ではないと考えている
- ホストは論破したい人生を送ってきたが、競争心の低下と子供の誕生で人の話を聞けるようになったと語った
- 2人はソクラテスを引き、対話の価値は答えを得ることより問いを深めることにあると確認した
- 谷口さんはシェアハウスを「人生の交差点」と表現し、共用部で会話や文化が混ざり合う場づくりを語った






