弁護士とDJ、なぜ両立できるのか
187回目のゲストは、現役弁護士でDJの活動も行うHALBAさんです。銀座のミュージックバーやTikTokのライブ配信でDJをしながら、アーティストやタレントなど夢を追う人を法律面から支える活動を目指しています。
パーソナリティの眞白マッシュさんは、このプロフィールに強く反応します。過去のゲストにはナースをしながら週末アイドルという人や、大工とバンドマンの二足のわらじを履く人もいましたが、エンタメと弁護士のハイブリッドは初めてだと話します。
一方でHALBAさんは、DJを続けているのには理由があると語ります。現場に立つアーティストの気持ちをわかった上で、法律面からサポートしたいという思いがあるといいます。
DJやってるのも、現場のアーティストの気持ちを分かった上で法律面でサポートしたいというところがあって、続けている理由も実はあったりします
マッシュさんは、DJも弁護士もパブリックイメージが実態とずれていると指摘します。DJはターンテーブルをスクラッチする動きで、弁護士は法廷で「異議あり」と指を差すような、ゲームのイメージで語られがちだといいます。
コロナ禍のTomorrowlandが原点
DJを始めたきっかけを、HALBAさんは「めちゃくちゃミーハー」と前置きして語ります。コロナ禍にYouTubeで海外のTomorrowland ── ベルギーで開催される世界最大級のダンスミュージックフェス。世界中からEDMファンが集まることで知られる。のライブ映像を見ていたことが始まりでした。
マーティン・ギャリックスやデヴィッド・ゲッタ、アヴィーチーといった世界的DJのプレイに加え、特に印象に残ったのは観客が合唱し、同じ動きをして会場全体が一つになる光景だったといいます。
音楽によって人はこんなにも笑顔になって、一つになっていく世界を作れるんだと、すごい魅力を感じて
もともとMr.Childrenのファンで毎年ライブに通うほど音楽が好きだったこと、楽器は演奏できなかったことから、DJは始めやすいと感じたそうです。しかもその頃、HALBAさんは検察官として働いていました。
真面目な仕事とキラキラした世界。マッシュさんはその両者が逆に思えると尋ねますが、HALBAさんは共通点があると答えます。
弁護士も検察官も人を相手にするところがあって、DJもお客さんがこの曲を聴いたらどう反応するかを現場で見る。人を見るという共通点がすごく似ているなと感じています
DJはスタイリスト、という捉え方
DJスクールでは、BPMを合わせ、キックを合わせ、ミックスや選曲を教わるという基礎から始めたといいます。そのうえで、実際にDJブースに立って経験を積むことが多かったと振り返ります。
マッシュさんは、人前で披露することがある種の度胸試しでありながら、DJにはその人の人柄やパーソナルが出ると感じています。そして、DJはスタイリストと一緒だという持論を展開します。
涼しげな服装や、トレンドの着こなしを提案するように、季節やお客様に見合った選曲を組み立てていく。一方で、SkrillexやAviciiのようなアーティストのDJは、デザイナーズブランドの最新コレクションのようだといいます。
お客様や季節に見合った選曲を組み立てる。トレンドや着こなしを提案するようなDJ
SkrillexやAviciiなど、独自の世界観を提示するアーティストのDJ
マッシュさんは、DJの本質を突き詰めるとコミュニケーションだと語ります。HALBAさんも、最近はクラブよりお客さんとの距離が近いミュージックバーでDJをしていることを明かします。
お客さん同士が、初めて会う方々が自然と会話を始める瞬間を見るのもすごく好きで。場を作る楽しさや、人と人とのつながりを作るきっかけになるところがあるのかなと思ってやっています
初ステージで見た、忘れられない景色
これまでで最も印象に残っているのは、一番最初にクラブのDJブースに立った時だとHALBAさんは語ります。当時はまだ検察官で、真面目な仕事をしながらブースに立つ不思議な感覚があったといいます。
最後にかけたのはニッキー・ミナージュの『Starships』。その瞬間、お客さんが一気に反応しました。
一気にお客さんが反応してくれて、みんな手を上げて笑顔になって、空気がパーッと明るくなる瞬間が見れて。その光景が本当に綺麗で忘れられなくて、また見たいなと思って続けています
マッシュさんは、普段の仕事とは違うタイプや年齢、職業の人たちが音楽で気持ちを一つにできる空間を、得難いものだと受け止めます。
ナイトクラブのイメージは変わったのか
話題はナイトクラブの世間的なイメージに移ります。マッシュさんは、ドラマや映画の影響で、違法賭博やドラッグといったダーティーでスキャンダラスな印象が続いてきたと指摘します。
一方で、コロナ禍以降は明るい変化も見られるといいます。電子決済のみの会計や、IDチェックによる身元確認など、オープンな場所として機能させる動きが会場側にあると話します。
反社会的な方が入ってきては困るところがあるので、IDチェックはすごく大事ですよね
HALBAさん自身も、昔のクラブにはあまり行ったことがなく、コロナの1、2年前から通うようになったと明かします。薬の取引というイメージを持っていたものの、実際は違ったといいます。
行き始めてからは、そういう話はあまり聞かなくて、純粋にみんな音楽を楽しみに来ているんだなと、すごく新鮮だった記憶があります
マッシュさんは2010年前後からクラブで遊び始めたといい、それより前は芸能人がお忍びで訪れるような、浮世離れした特別な場所だったと聞いたことがあると話します。ナイトクラブは、普段の生活とかけ離れた非日常を味わえる憧れの場所だと語ります。
演者を守るために、演者側に立つ
検察官だった頃、HALBAさんは横道にそれてトラブルに巻き込まれてしまう若いDJを目の前で見たことがあるといいます。巻き込まれる前に守ってあげたかったと感じたこともあったそうです。
現在はエンタメ弁護士として、アイドルやアーティスト、タレントから、事務所トラブル、ギャラトラブル、SNSの誹謗中傷、ファンとのトラブルなど、さまざまな相談を受けています。ただ、法律だけでは本当の解決にはならないと考えています。
自分自身が演者側の立場、ステージに立つ側を経験しておかないと、なかなか寄り添ったアドバイスができないと思っていて。だからDJも続けているところが実はあります
マッシュさんは、この言葉を大事なこととして受け止めます。クラブは非日常だと語ってきた一方で、アーティストにとってはそれも生活の一つなのだと視点を裏返します。
演者側を経験する
自分自身がステージに立つ側を経験する
気持ちを理解する
現場に立つアーティストの気持ちを分かる
寄り添った助言
法律だけでなく、演者に寄り添ったアドバイスができる
クラブは本当に「不要不急」だったのか
マッシュさんは、かつて弁護士や法律という話題に身構え、面倒なことに巻き込まれるのではと斜に構えていたと打ち明けます。その考え方が変わるきっかけになったのがコロナ禍でした。
大好きだったナイトクラブや夜遊びが、いつの間にか「不要不急」と扱われるムードが漂っていたといいます。
自分の生活の一部だったクラブって、不要不急だったんだ、みたいな
マッシュさんは、世の中が不安定なときに真っ先にやり玉に挙げられるのがエンタメだと指摘します。しかしエンタメこそが生活の糧であり、頑張れる要素なのだと語ります。
HALBAさんは、コロナ禍にマーティン・ギャリックスやデヴィッド・ゲッタが、募金を集めるチャリティー演奏をしていたことに触れます。
音楽で元気を与えられるし、そうやって人の生活を救うこともできる。DJにはそういう側面もあるんだと、当時すごく感動しました
そしてマッシュさんは、日本で生活するうえでのルールや、自分たちを守るための法律の存在に気づくことが大事だと話します。
弁護士は、必ずしも入らなくていい
話題は、変わりつつある業界の構造に移ります。HALBAさんは、これまで芸能事務所が強かった弁護業界も大きく変わってきていると語ります。
HALBAさんは事務所側より、アーティストやアイドルなど演者側をサポートすることが多いといいます。これまで権利をないがしろにされてきた人たちを、より守っていく方向に向かっているそうです。
マッシュさんは、数年前にDJ SODAさんが野外フェスで受けたハラスメントを、一つのターニングポイントだと振り返ります。注目を集める存在にも人権があり、そこをないがしろにされるのは違うと語ります。
あれもイベントスタッフがもっと守るというところが足りなかったのかなという印象は、当時思っていました
一方でHALBAさんは、弁護士が必ずしも入らなくても解決することは多いと明かします。少し助言をするだけで済むことも意外とあるといいます。
弁護士に相談するとお金がかかるのかなと抵抗感を感じる方もいますが、逆に弁護士が入ると揉めることもあるわけです。黒子のように、後ろから助言をする入り方もあるんです
話を聞いてもらうだけでも気持ちの整理になる、言える人がいることが大事だと二人は語り合います。マッシュさんは、実生活でもクラブでの出来事でも、一人で抱え込まないでほしいと呼びかけます。
相方DJ NAMIからのサプライズメッセージ
ここで、HALBAさんが銀座300 bar 5丁目店でも一緒にDJをするDJ NAMIさんから、サプライズメッセージが届きます。今年に入って2人で一緒にDJをするようになり、半年が経ったといいます。
クラブと違い、バーでのDJはお客さんとの距離が近く、選曲だけでなく空気作りやコミュニケーションが大事だとNAMIさんは綴ります。一人でやっていた頃はその距離感に難しさを感じることもあったといいます。
HALBAさんが毎週参加してくれるようになってから、お店の雰囲気が本当に変わったと思っています。また来たいなと思える空気ができているのは、HALBAさんの存在がすごく大きいなと感じています
NAMIさんはDJとしても最高だと称え、特にエミネムのつなぎが好きだと明かします。人としてもDJとしても魅力のある存在だと結んでいます。
HALBAさんはNAMIさんを、300 barのアイドル的存在だと語ります。マッシュさんも、NAMIさんのインスタで見る店内の盛り上がりが楽しそうだと感想を述べます。
店ではHip HopやR&B、ポップスといった歌物系が多く、年齢層に合わせて懐かしいJ-POPもかけるといいます。お客さんからのリクエストをきっかけに、思い出話が始まり、会話が広がる場作りも楽しいとHALBAさんは話します。
TikTokライブで目指す「どこからでも参加できるクラブ」
HALBAさんは実際のDJだけでなく、TikTokのグループライブ配信でもDJ活動をしています。金曜と土曜に配信があり、時々参加しているといいます。
配信でのDJは、目の前で顔が見えないぶん難しいとHALBAさんは語ります。それでも、チャットのコメントやギフトが届くと、また違う形の嬉しさがあるといいます。
マッシュさんは出身が岐阜県で、クラブとは縁の遠いのどかな田舎町でも、中学生の姪がライブ配信でアーティストやDJを楽しんでいると紹介します。さまざまなエリアからDJを楽しめることが魅力だと語ります。
どこからでも参加できるクラブ体験というのを目指している配信なので、ぜひ全国から見てほしいです
音楽とスパイスカレーがつながる理由
今後チャレンジしたいことを尋ねられ、HALBAさんは意外な話題を持ち出します。音楽だけでなく、スパイスカレーがすごく好きなのだといいます。マッシュさんも、HALBAさんのインスタにスパイスカレーが並んでいることに驚きます。
全国を食べ歩き、自分でもスパイスから作るというHALBAさん。音楽とスパイスカレーは似ていると感じています。
刺激と、ミックスというか、混ぜ合わせる足し算引き算みたいなところが似ているなと思っていて
将来的には、スパイスカレーを食べられるDJイベントやミュージックバーができたら嬉しいとHALBAさんは語ります。マッシュさんも、そんなパーティーなら絶対に足を運ぶと応じます。
HALBAさんはスパイスとココナッツミルクの組み合わせが好きだといいます。福岡にいた頃、ココナッツミルク入りのカレーに初めて出会って以来、たまらなくなったそうです。
さらにスリランカカレーが好きだと語ります。福岡はスリランカ人が多く、その文化に触れられたといいます。
さまざまなカレーや具材を一皿にまとめ、一つずつ食べてから最終的に混ぜ合わせて食べるタイプ
スパイスとココナッツミルクを使ったオレンジ色のカレー。HALBAさんが特に好きなタイプ
おすすめの店を尋ねられ、HALBAさんは福岡から東京に進出した「&スリランカ TOKYO」を挙げます。場所は神保町だといい、マッシュさんも早速チェックすると応じます。
リアルでもオンラインでも、身近なDJ弁護士に
初対面ながら話が尽きず、あっという間に別れの時間を迎えます。マッシュさんは今度、銀座の300 barで対面で乾杯したいと約束します。
最後にHALBAさんが告知をします。銀座300 bar 5丁目店で毎週月曜20時ごろからDJをしていること、TikTokのグループライブ配信「NEX BEAT」でもDJをしていることを紹介します。
リアルでもオンラインでも気軽に出会える存在になれたらな、身近なDJ弁護士としてなれたらなと思っているので、ぜひ覚えていただけたら嬉しいです
音楽で人を元気にしながら、演者を法律面から支える。HALBAさんの2つの肩書きは、人を見て、人を守るという一点で確かにつながっていました。
まとめ
弁護士とDJという両極端な肩書きを持つHALBAさんの原点は、コロナ禍に見たTomorrowlandの映像でした。演者の気持ちをわかった上でサポートするためにDJを続け、音楽もカレーも法律も、人とのつながりの中で語られた回でした。
- HALBAさんは検察官時代にTomorrowlandの映像に魅了され、DJスクールに通い始めた
- 弁護士・検察官とDJには「人を見る」という共通点があると語る
- 演者に寄り添った助言のため、自身も演者側の立場としてDJを続けている
- コロナ禍でクラブが「不要不急」とされたことに、音楽の力で反論する
- 弁護士は必ずしも入らなくてよく、話を聞いてもらうだけでも整理になると語る






