音ゲーから始まった制作のルーツとは
200回目のゲストとして登場したのは、DJ・音楽プロデューサーのKOTONOHOUSEさんです。リスナーからの出演リクエストも多く、眞白マッシュさんにとっても念願の回となりました。
何回かお話いただいてたんですけど、タイミングが合わなくて。
やっと出られてめちゃくちゃ光栄です。
最初のお便りは、エモーショナルなメロディーや上物の鳴り方が耳に残るという声からでした。そのルーツについて、KOTONOHOUSEさんは音楽ゲームを挙げます。
DTMに関しての本当に初期衝動が、当時ビートマニアとかサウンドボルテックスがめちゃくちゃ流行ってて。
SOUND VOLTEX ── コナミの音楽ゲーム。楽曲提供の公募制度があり、若手クリエイターの登竜門になっていた時期がある。の公募制度で、同い年や年下のプロデューサーが合格しているのを見て衝撃を受けたと話します。特に強く影響を受けたのはビートマニアの楽曲でした。
プロデューサーさんでいうと、Sota Fujimoriさん、kors kさん、DJ Yoshitakaさんとかがめちゃくちゃバイブルになってますね。
マッシュさんも学生時代から20代前半にかけてゲームセンターに通ったと振り返り、2人はjubeatやEvansの難しさで盛り上がります。
Evansのあの渦巻き(タッチパネルをスライドさせる技)、全然できないんですよね!!!
マッシュさんは、ゲームセンターでの音楽体験がナイトクラブでの体験に通じるのではと問いかけます。KOTONOHOUSEさんも、ヘッドホンやタブレットのスピーカーとは違う音量と実機を叩く感覚に強い現場感があったと同意しました。
ネットレーベル全盛期に出会ったクラブカルチャー
楽曲制作を始めたKOTONOHOUSEさんが影響を受けたのは、Sota Fujimoriさんらに加え、同世代のボカロプロデューサーやクリエイターでした。
こんな曲を作る人たちが同世代でいるんだと思って、すげえ震えた記憶がありますね。
当時はSoundCloudなどで楽曲を探すのが楽しかったと2人は振り返ります。クラブに足を運ぶようになったきっかけは、DTMを始めた友人の誘いでした。
最初に行ったのはインターネット系のイベントで、ブレイクコアやナードコアのパーティーに通ったといいます。TREKKIE TRAX ── 日本のダンスミュージックレーベル/クルー。2010年代前半のネットレーベル文化を象徴する存在のひとつ。やマルチネがさかんにリリースしていた時代でした。
「ダンスミュージック、マジでおもろいから一緒に遊びに行こう」みたいな感じで、遊びに行ったイベントがきっかけでしたね。
マッシュさんは、KOTONOHOUSEさんと出会ったのが渋谷club asiaのパーティーだったと記憶を辿ります。当時のKOTONOHOUSEさんは、まだ顔出しをしていなかったと言います。
最新アルバムに込めた「自分との対話」
続くお便りは、6月にリリースされたアルバム『I THOUGHT I WAS TALKING TO YOU, BUT IT WAS ME.』に関するものでした。YOUとMEの関係や創作への向き合い方についての質問です。
KOTONOHOUSEさんは、このアルバムの設計理由から語り始めます。トラックメーカーはフィーチャリング名義で連名になりがちで、単体名義の曲が少ないと感じていたといいます。
「俺のみのクリエイティブっていうのは何ぞや?」みたいなものが、ちょっと見えにくいのかな~?と思って。
そこで、客演も入れつつ自己完結するアルバムを作ろうと考えました。作詞にあたっては、日々思ったことを散文的にメモ帳へ書き留め、それをトラックごとにテーマ分けしていったといいます。
書いていくうちに、「人に言っているようで実は自分自身の問題ではないか?」という気づきがあったと話します。
相手に言ってるつもりだけど、実は自分自身の問題なんじゃない?
コミュニケーションの不和や自分の中で咀嚼しきれないフラストレーションが、実は自分のコンプレックスや人生に蓄積された何かから発生しているのではないか。そうしたコンセプトで進めたところ、一気に制作が進んだといいます。
マッシュさんは このアルバムを、"よりパーソナルで内省的な部分がじっくり詰め込まれた作品"だと評します。楽曲とアパレルを重ねるいつもの切り口で、作り手であるKOTONOHOUSEさん自身がモデルとなってランウェイを歩くような作品になったと表現しました。
「なんだっけ」が生まれたジャムセッション
次のお便りは、最新アルバムの『なんだっけ』が好きだという声でした。制作で意識したことや思い出を尋ねる質問です。
KOTONOHOUSEさんは、韓国のプロデューサーやラッパーとセッションした期間に受けた影響を挙げます。彼らがバイブスで作る姿に感銘を受けたといいます。
あ、こんな感じで作っていいんだみたいな。これが世界のスタイルなのかなみたいな感じで。
トラックは歌入れの半年ほど前に完成し、インストとして残っていました。歌詞は難航しましたが、REC部屋で歌いながら考える中で生まれたといいます。
なんだっけ?なんだっけ?みたいな。本当にジャムセッションみたいな感じでしたね。
「なんだっけ」という言葉を深掘りする中で、当たり障りのないことを言ってコミュニケーションをこなす瞬間があると気づき、それをテーマに書き上げたと話します。
制作の順序について、KOTONOHOUSEさんは歌詞から始めることはないと語ります。まずテーマが降りてきて、サウンドが生まれ、最後にリリックを考えるスタイルです。
テーマは先に降りてきたりするんですよ。歌入れというか、詞を考えるっていうのは大体最後ですね。
マッシュさんは、このアルバムを攻撃的なビートが特徴だった過去作と対比し、しなやかで実生活に馴染むような洗練されたダンスミュージックだと評します。
KOTONOHOUSEさんは、フレーズや曲名の反復を多用し、ハウスやテクノの四つ打ちが持つ「繰り返す美学」にフォーカスしたと説明します。ドロップの強い曲はボツにして、今の形になったといいます。
タンクトップとアクセサリーに宿る合理性
服についての質問には、KOTONOHOUSEさんの服選びの流儀が表れました。8月に開催のパーティー「暴カワvsCCS」で着ていたのは、高円寺の古着屋で8年ほど前に買った柄シャツだったといいます。
意味わかんない漢字がめっちゃ書いてあって、火みたいなのが出てるみたいな。店員に聞いたら「俺もわかんない」って言われて、じゃあ買いますって 笑
意味のわからないものに惹かれると語るKOTONOHOUSEさん。今はメルカリで謎の服を探すのが面白いといい、マッシュさんも2ndストリートでの発掘を楽しんでいると応じます。
KOTONOHOUSEさんは、2ndストリート巡りの基準として、キャリーケースを持ったセドリ(転売目的の仕入れ)の人が多い店舗にはいい服が集まると考えているそうです。
目的意識なく出会えた瞬間の、脳汁出る感じというか…知らない服や知らないブランドと出会った時の「ヤバいな!!」みたいな。
トレードマークのタンクトップについては、意外にも合理的な理由がありました。
汗かいてもリカバリー効くし、酒とか人とぶつかってこぼされても、腕が汚れても服は汚れないからタンクトップって結構合理的だなっていう。
衣装として意識したわけではなく、気づいたらタンクトップの人になっていたといいます。一方でサングラスや指輪などのアクセサリーは、お酒が入るとなくしてしまうのが悩みだそうです。
ageHaでメインステージでDJしてた時に、手を上げたら指輪がピョンって飛んでって、その瞬間にスローモーションになって、指輪が消えたと思って。
以来、なくしても納得できるものだけを身につけるようになったといいます。
元気が出ない時に聴く曲と、情報を遮断する時間
仕事でしょんぼりすることが多いというリスナーから、元気が出ない時に聴く曲を尋ねる質問が届きました。
KOTONOHOUSEさんは、最近は音楽を聴くよりボーっとすることが多いとしつつ、20代を通じてしんどい時に聴いていた曲を挙げます。
昔だったらめっちゃくちゃL'Arc-en-Cielの『FLOWER』聴いてましたね。せめて枯れたいとか、すげえみたいな。
マッシュさんは逆に、元気が出ない時こそバキバキのエレクトロを聴いて自分を鼓舞したと語ります。憂鬱な通勤時にあえて中田ヤスタカさんの『LIAR GAME』を聴くと、"選ばれた者感"が出るといいます。
あえて自分をデスゲームみたいなところに追い込むためのエレクトロ、バッキバキの。
話題は、情報過多な時代にあえてオフにする時間の大切さへと広がります。何もしないことを選ぶことで、次のアクションが楽しみになるという実感でした。
マッシュさんは、KOTONOHOUSEさんが出演しないパーティーで客として居合わせる時こそ盛り上がると打ち明けます。名古屋の「女子大邦楽生ハムナイト」でLIL JUNさんとB2Bした場面などを例に、各地で出演する醍醐味を語り合いました。
"楽しいところにはやっぱいたら楽しい"というKOTONOHOUSEさんの言葉どおり、仕事に関係なくパーティーそのものを愛する姿勢が印象的でした。
10年を振り返る「変わらないリスナー目線」
海外のリスナーからは、6年前と今でスタイルが全然違うという声が届きました。さらに別のお便りでは、2016年の「フューチャーベースを作っているのに人生にフューチャーがない」というツイートを引き、10年後の今フューチャーはあったかと尋ねます。
KOTONOHOUSEさんは、コロナ禍以降の6年は一瞬で、以前の3、4年は無限に長かったと振り返ります。制作のインプットが変わっていないことが、変化の背景にあると語ります。
新しいアーティストを追うのも好きだし、当時好きだったアーティストの新しいリリースを追うのも好きだし。
好きなものが少しずつ変わり、作るものも必然的に変わっていく。その芯にあるのは、絶対的な音楽体験というより、変わらないリスナー目線だといいます。
マッシュさんは、軸がないというよりニュートラルさが魅力だと返します。その時々で好きなジャンルに瑞々しく向き合えるからこそ、作品にその時の人生が表れるという見方です。
KOTONOHOUSEさんは、トレンドを追っているわけではなく、聴きたいものを聴いてしまうと語ります。サカナクションに数年前にハマり、今は別のアーティストに全力でハマっているという例を挙げ、音楽の深さを日々実感していると話しました。
マッシュさんは未来茶レコーズに収録された、やのあんなさんとのコラボ曲『プリズム』を挙げ、アニメの主題歌のようなヒロイン像を描いて作られた点に惹かれたと語ります。KOTONOHOUSEさんも、当時ネオ渋谷系にハマっていた流れで作った記憶があると振り返りました。
9月の出演ラッシュと「暴力的にカワイイ」への意気込み
シャンパンを歯で開ける独特の所作について尋ねる質問には、意外な合理性がありました。DJ中はタイミングを外せないため、歯で固定するのが安定するというのです。
ドロップ手前の四拍目で開けたいとか、そういう時に歯だと絶対に安定するんです 笑
ただし前歯はもろいので絶対にやめた方がよく、本来は手で回して開けるのが安定だと注意を添えました。
ここから話題は9月の出演ラッシュへ移ります。KOTONOHOUSEさんは、20時半から翌朝5時までの長丁場となる東京のパーティーや、Eyeさんのリリースパーティー、GOLD DISCなどを挙げていきます。
中でも大きな話題が、今年初出演となるULTRA JAPAN ── お台場で開催される大型ダンスミュージックフェス。ULTRA MUSIC FESTIVALの日本版。でした。
最初お誘いをメールでいただいた時に、「え、本当?どこ経由で?なんで来たの?」みたいな。俺でいいのかな?みたいな 笑
そして翌週の9月26日・27日は、お台場で2日間開催される「暴力的にカワイイ2026 in お台場」に両日出演します。初日はSNAIL'S HOUSEこと、Ujico*さんとのB2Bです。
打ち合わせしようって言っても絶対しないし、これやろうって言っても絶対それかからないから。
Ujico*さんが出したいエモーションにいいパスを投げ、補強していく。全てを放出したような疲労感が残る一方で、B2Bで気にすべきことや表現の仕方を鍛えられたと感謝を語りました。
2日目はライブセットアクトで、新曲の初お披露目に向けて制作を進めているといいます。マッシュさんは、新木場ageHaでトラックメイカーのPSYQUIさんが出演できなくなった際、KOTONOHOUSEさんが全曲をPSYQUIさんの楽曲のみでDJ出演した「伝説」の回を振り返ります。
「今俺はPSYQUIだ!!!」って気持ちで、いなかったやつの生霊みたいなのを体に宿してやらせていただいた記憶がありますね。
これからやりたいこととパーティーの鮮度
最後のお便りは、Open to LastでじっくりKOTONOHOUSEさんのDJを聴きたいという声でした。
KOTONOHOUSEさんは、それがまさに今の夢だと応じます。アルバム後に作るデモがダンスミュージック寄りで、DJのモードに入っているのを感じているそうです。
6時間いい空間を演出するとかを考えた時に、もっと曲をディグって、全力で臨みたいなっていう気持ちはありつつ、タイミングがあればやりたいですね。
注目している若手として、KOTONOHOUSEさんは前澤さんの名前を挙げます。リリースパーティーにも出演してもらい、共作もしたといいます。
あと僕と似てめっちゃフィジカルなんですよね。汗かく量見て、うわ一緒だと思って嬉しくなっちゃいますね。
話題は、今のオーディエンスが新木場ageHaに行ってみたかったという世代であることへと広がります。VISIONやCONTACTに通った過去を懐かしみつつ、ZERO TOKYOやPUBLIC PUBLICといった新しい場で、フレッシュな客層と思い出を刻む楽しさを語り合いました。
そして、このポッドキャストのやり取りも、いずれ思い出話として花咲く記録になるのではないかと2人は語ります。KOTONOHOUSEさんは、出演情報はInstagramのライブインフォにまとめてあると告知し、収録を締めくくりました。
まとめ
200回目のゲストKOTONOHOUSEさんは、音ゲーから始まった制作のルーツ、内省を込めた最新アルバム、そして9月の出演ラッシュまでを、リスナーの質問に丁寧に答えながら語りました。トレンドを追わずリスナー目線を貫く姿勢と、パーティーを生ものとして楽しむ感覚が、10年の活動を貫く芯として浮かび上がりました。
- 制作のルーツはビートマニアやSOUND VOLTEXなどの音楽ゲームにあり、Sota Fujimoriさんらがバイブルになっている
- 最新アルバム『I THOUGHT I WAS TALKING TO YOU, BUT IT WAS ME.』は、単体名義で自己完結する内省的な作品として作られた
- 楽曲はテーマが先に降り、サウンドが生まれ、詞は最後に考えるスタイルで制作される
- トレンドではなくその時々の「好き」に瑞々しく向き合う姿勢が、作品にその時の人生を刻んでいる
- 9月はULTRA JAPAN初出演や「暴力的にカワイイ2026 in お台場」両日出演など、出演ラッシュが続く


