CoCo壱番屋はなぜ深夜料金に踏み切ったのか
カレーハウスCoCo壱番屋を展開する壱番屋が、国内店舗で深夜料金を導入しました。夜10時から朝5時までの注文に7%を加算する仕組みです。
CEOセオさんによると、昼に650円のポークカレーは、夜10時を過ぎると690円ほどになります。すき家や松屋、はま寿司はすでに深夜料金を入れており、CoCo壱番屋はそれに続く形です。
なぜその時間で、高い値段にできるのかということの整合性みたいなものを考えていかなきゃいけないわけです。
CoCo壱番屋の深夜料金は店内飲食とテイクアウトの両方に適用され、宅配は対象外です。同時に、44種類あるトッピングのうち12種類を平均17%、金額にして11円から60円ほど値上げしています。
会社側の説明では、為替や国際情勢による原材料の高騰、包装資材や物流費、人件費の上昇が、企業努力ではカバーしきれなくなったとされています。
深夜営業の選択肢は3つ、残された道は何か
CEOセオさんは、大手チェーンがここまで揃うと、深夜料金はほとんどの店に広がっていくだろうと見ています。カフェで深夜に頼めないメニューがあったり、ドリンク1杯の注文を求められたりするのも、夜に客単価を上げる工夫の一つだといいます。
深夜料金の土台には、働く側の法定コストがあります。労働基準法 ── 労働時間や賃金など労働条件の最低基準を定めた法律。第37条では時間外・休日・深夜労働の割増賃金について定めています第37条第4項により、夜10時から朝5時の労働には25%以上の深夜割増賃金を払う義務があります。
単純に、法律で人件費というのは1.25倍になるということですから、それを価格に転換するのか、どうしていくのかということですよね。
さらに2026年度の最低賃金の目安は全国平均1176円で、前年比55円増と過去2番目の引き上げ幅です。ベースの賃金も深夜の割増分も上がり、コストが企業努力の限界を超えたというのがCEOセオさんの整理です。
深夜のコスト増への対応として、CEOセオさんは3つの選択肢を挙げて比べています。
| 選択肢 | 内容 | リスク・評価 |
|---|---|---|
| 深夜営業をやめる | 夜間の営業自体を止める | 深夜の客と、深夜に働きたい人の採用機会を失う |
| 価格据え置き | 値段を変えずに続ける | 利益率が下がり続けジリ貧になる |
| 深夜料金を上げる | 時間帯で価格を変える | 残された選択肢としてのダイナミックプライシング |
タクシー20%と飲食7%、深夜料金の「絶妙な」水準とは
CEOセオさんが、いま最もリアリティのある深夜料金として挙げるのはタクシーです。タクシーの深夜料金は20%かかります。
システムトラブル対応や夜間の法律相談、建築、医療など専門分野の深夜依頼では、50〜100%増しになることもあるといいます。それ以外ではタクシーの20%が最も高い水準だと話しています。
ただ、これ(深夜料金)は飲食の場合は7パーセントということで、絶妙なポイントを取ってますよね。
CoCo壱番屋の深夜料金がテイクアウトにもかかる理由は、夜中に人が動いて物を提供している時点でチャージしているからだと説明されています。宅配はすでに宅配手数料を取っているため、二重課金にならないよう対象外にしていると考えられます。
でもそこ(宅配を対象外にした点)は結構しっかりしてますよね。
トッピング値上げはなぜ効くのか?空腹をレバレッジする仕組み
CoCo壱番屋の強みは、ベースのカレーに44種類のトッピングを組み合わせる仕組みで、客ごとに支払額が変わる点にあります。過去の値上げはベースカレーが平均10.5%、トッピングが平均13.5%で、トッピングを上げたほうが全体の売上が伸びるといいます。
CEOセオさんは、同じ仕組みで今大きく伸びている業態としてマーラータンを挙げます。ベースの麺に野菜などを自分で足していくため、支払額がぶれるのが特徴です。
お腹が空いてる時にトッピング選んでくださいって言われると、やっぱね、人ってね、
過剰に選んじゃうもんなんですよ。
吉野家や松屋の牛丼のようにメニューが固定されていると、肉の増量などはあっても値上げの余地は限られます。自分でトッピングさせることで、客は自然と注文を増やすというのがCEOセオさんの見方です。
いまの飲食店は値上げで売上こそ伸びていますが、利益率は下がっています。その中で、カスタマイズは空腹を活かして利益率を上げる手段になるといいます。
CEOセオさんは、エアラインの座席ごとの価格や、時間帯と場所で料金が変わるコインパーキングも例に挙げ、機会によって値段を変えることが重要だと話しています。
増収でも利益率は下がる、壱番屋の数字が示すもの
CEOセオさんは、Appleやラグジュアリーブランドの値上げにも触れ、今後は時間や場所で値段が変わることが当たり前になると予想します。テクノロジーの導入で、そうした価格運用がしやすくなるためです。
壱番屋の業績は5期連続の増収で、売上は5年間で450億円から655億円へ、約45%伸びています。一方で営業利益率は2024年2月期の8.4%(8.6%との言い直しあり)がピークで、2025年に8.1%、2026年に7.2%と2期連続で下がっています。
売上はね、やっぱなんとなく上げられるんだけど、コスト上昇に価格転嫁が追いついていないというのが現状です。
壱番屋の中期経営計画では、2027年2月期に売上高740億円、営業利益70億円を目指しています。前期から営業利益を23億円積み上げる必要があり、値上げか客数増なしには達成が難しいとされています。
店舗数は2026年2月時点で直営252店舗、FC1251店舗の計1503店舗です。CoCo壱番屋はここ4年で4回値上げしており、2024年8月にはベース10%、トッピング13%を引き上げ、今回の2026年9月の深夜料金7%とトッピング12種の17%値上げにつながっています。
すき家7%、ファミレス10%、吉野家だけが取らない理由は?
CEOセオさんによると、ファストフード系はすき家、松屋、CoCo壱番屋と深夜料金7%が広がり、ガスト、サイゼリヤ、デニーズなどファミレスは滞在時間が長いぶん10%を取っています。
すき家では、深夜料金導入の1か月後も全店の客数と売上高が前年同期比110%で、客離れは起きていないといいます。CEOセオさんは、深夜料金を払うのは仕方ないという受け止めが広がっていくと見ています。
深夜に食べるだけで消費税並みのね、課金がされると、いう、もう時代ですからね。
外食市場は2023年に24兆円規模まで伸びており、売上はどこも増えていますが、利益が取りにくいのがトレンドだと語られます。
牛丼チェーンの中で深夜料金を取っていない吉野家は、クーポンで客数を引っ張ろうとしていますが、営業利益率は3.6%にとどまるといいます。値上げをしないと営業利益率がわかりやすく下がる、というのが今の飲食店の状況だとまとめています。
すき家・松屋・CoCo壱番屋は7%、ファミレスは10%。すき家は導入後も客数・売上とも前年比110%
吉野家はクーポンで客数確保を図るが、営業利益率は3.6%
一度上がった価格は戻らない、回転寿司のネタで1万円を取る発想
CEOセオさんは、値上げは当たり前になり、一度上がった価格はインフレが落ち着いても下がらないと話します。米の値下がりで値下げする店も一部出ていますが、深夜料金も一度受け入れられたら続くだろうという見立てです。
一度受け入れてしまったら、もうこれ(深夜料金)はずっと続くでしょう。
最近盛り上がっている飲食店を見ると、トッピングやカスタマイズはもはや必須で、加えて見せ方が非常に重要になっているといいます。その例が、回転寿司のネタを使った回らない寿司屋です。
回転寿司なら客単価は5000〜6000円が限界ですが、同じネタを回らない寿司として回転寿司出身の大将が出すと、1万円を取れます。それでも回らない寿司としては安い、というアービトラージを狙う店が増えているそうです。
回転寿司として提供:客単価5000〜6000円が限界
回らない寿司として大将が提供:1万円取れても割安に感じられる
同じものを提供してるんだけど、見せる場所とか見せる環境によって値段って倍にもできるよということです。
CEOセオさんは、この感覚は深夜料金にも近いと話します。体験をどう作るかで値段は倍にもできるため、ビジネスの基本である「安く仕入れて高く売る」をどう工夫するかに活路があると締めくくっています。
まとめ
CoCo壱番屋の深夜料金7%は、人件費や原材料の高騰で利益率が下がる中、時間帯で価格を変えるダイナミックプライシングの一例です。トッピングや見せ方で客単価を上げる工夫が、インフレ時代の飲食店の生存戦略になりつつあります。
- CoCo壱番屋は夜10時〜朝5時に7%を加算し、トッピング12種を平均17%値上げした
- 深夜割増賃金や最低賃金の上昇で、深夜営業の継続には価格転嫁が避けられない状況にある
- 壱番屋は5期連続増収でも営業利益率は2期連続で低下しており、利益率の確保が課題になっている
- トッピングやカスタマイズは、空腹を活かして客単価を上げる仕組みとして有効だと語られる
- 同じ商品でも見せ方や体験の作り方次第で、価格を倍にできる可能性がある


