ダイナミックマイクと能登の在来米「巾着」の日本酒
この回から「五十嵐家の晩酌」は収録機材が変わりました。これまでは周囲の音も拾いやすいコンデンサーマイク1本でしたが、今回からは2人それぞれの口元にダイナミックマイクを置き、ミキサーでつなぐスタイルです。
ユウさんは「趣味なのに機材を買ってどうするんだ」と笑いつつ、別番組「産業保健もやもやはれはれ」のリアル収録用にマイク3本と接続機材を用意し、それを晩酌でも流用していると説明しています。
なんかいわゆるラジオ収録みたいな、で想像するような風景だね。それぞれにマイクがあって。
この日のお酒は、石川県の吉田酒造店が手がけるブランド「吉田蔵u」の「巾着」です。2人は吉田蔵uが大好きで、金沢での結婚式の下見の打ち上げで入ったお寿司屋さんで出会って以来、注文して飲み続けているそうです。
ナギさんによると、「巾着」は熊本応援酒として販売されていて、1本買うごとに300円が復興に寄付されるとのこと。味は辛味と甘味のバランスがちょうどよく、ユウさんは料理に合わせやすい食中酒だと話しています。
ナギさんが紹介したラベルの説明では、巾着とは石川県の在来米 ── その土地で古くから栽培されてきた品種の米。近代的な品種改良が広がる中で栽培が途絶えたものも多く、地域ごとに復活の取り組みが行われていますの名前です。能登七尾の農家さんが、わずか50粒の米から復活させて育てているといいます。
ちなみに巾着は、石川県で記録が残る中では、コシヒカリの最古の先祖とも言われているそうです。ナギさんはエチケット(ラベル)のデザインも素敵だとして、「吉田蔵u 巾着」をぜひ調べてみてほしいと勧めています。
『株式会社 夫婦』はどんな本?
この回のテーマは、エッセイストの下田美咲さんが書いた『株式会社 夫婦』です。ユウさんはXで見かけ、タイトルのうまさと、読んだという声の多さに惹かれて「自分たちの参考にもなるかも」と購入しました。
本当は2人とも読んで感想を語り合う予定でしたが、ナギさんが「読んだの聞かせてよ」とサボったため、ユウさんが自分なりに読み取った本のエッセンスを話す形になりました。
ユウさんの説明では、『株式会社 夫婦』は結婚生活をどううまく営むかを、堅苦しくない言葉でざっと書いたエッセイです。ユウさんはこれを「3プラス1」のエッセンスにまとめて持ってきたといいます。
本は妻である下田さんの視点で書かれています。夫は会社員のような働き方ではなく、PTAなどに関わる専業主婦に近い立場のようだとユウさんは紹介しています。
note累計売上で3億円を超えるという、そういう方なので。
下田さんは、プロフィールによるとnote ── 文章や画像などを投稿し、有料で販売もできる日本のメディアプラットフォーム。個人のクリエイターが記事単位や定期購読で収益を得られますの累計売上が3億円を超えるエッセイストで、ユウさんは、その赤裸々に言語化するスタイルが支持されているのだろうと話しています。
正直に伝えるべきことと、言わなくていいことの境目
ユウさんが挙げた1つ目のエッセンスは、ごく当たり前の「正直に思っていることを伝えましょう」です。本には、食事中の食べ方のような些細なことでも、言うか言わないかモヤモヤしたら正直に話すべきだと書かれているそうです。
これに対してナギさんは、正直に伝えることには基本的に賛成しつつも、言うべきことには線引きがあると答えています。
今我慢したとしても、結局どっかで自分が限界来るなとか、二人の関係に歪みが出てくるみたいなことだったら、二人のために正直に言った方がいいなとは思うよね。
(言ったところで)解決策がないようなことは言ってもしょうがないなみたいな。例えば人格的なこととか。
ナギさんの基準は、「どうしたいの?」「どうしてほしいの?」まで言えるかどうかです。腹いせや不満をぶつけるためだけの言葉や、直せない人格への指摘は言わず、「こうしたらいいよね」と提案できることなら正直に伝えるといいます。
我慢を続けるといずれ限界が来たり、関係に歪みが出そうなこと。「こうしたらいい」まで示せること
腹いせや不満をぶつけたいだけのこと。人格のように直せず、直すことを強要するものでもないこと
一方のユウさんは、意識的に、なるべく早めに言うようにしているタイプです。ただ真面目な話ほど時間やタイミングが難しいので、きちんと話せる場面を見計らうことはあると話しています。
会話のボールを持っている時間を意識する
正直に話すためのタイミングについて、ナギさんは2人の会話の量に注目しています。ナギさんはその日あったことを話し出すとエピソードトークが長くなり、ユウさんは「10倍ぐらい違う」とツッコんでいます。
自分のそのボールを持っている時間、会話の主導権を持っている時間がすごいアンバランスだと、多分どっちかが言えないことも出てくる率高くなってくると思うんだよね。
そこでナギさんは、今日は自分が喋りすぎたと感じたら、「何か話したいことないの?」とユウさんにボールを投げるようにしているそうです。ユウさんも、特に産業保健など仕事の話になると止まらないことがあるとか。
(正直に話す)タイミングってやっぱ作り出さないとないと思うから。
ナギさんの考えでは、正直に話せるタイミングは自然に来るのを待つのではなく、作り出すものです。会話の量のバランスを気にかけること自体が、相手が本音を言える余白をつくっているわけですね。
夫婦の会話に「シリアスさ」を持ち込む
ユウさんは、夫婦の会話にはちゃんとシリアスな話をする時間が必要だと話します。2人は夕飯後、寝る前、朝食中、車の中など日常的な会話の時間は多いものの、それとは別の真剣な時間が大事だという意見です。
結構あの言葉はちょっと嫌なんだよねとか、グサッとくるんだよねとか、言い方とかさ。
「私にとってはこの部分は大事だから」みたいな。なんかその、シリアスさをちゃんと持ち込むのが大事かなっていう気はするかな。
ユウさんによれば、ナギさんから「もっとこの部分は真面目に捉えてよ」と伝えられたことも何回かあったそうです。言葉や言い方が刺さったことを、軽い雑談の延長ではなく真剣に共有することが、正直さを支えていると考えているようです。
家庭の外で吐き出す「不機嫌マネジメント」
ユウさんが紹介した2つ目のエッセンスは「不機嫌マネジメント」です。下田さんは、夫と一緒にいるのが楽しい時間と、夫といないほうがいい時間を分け、家庭の外で吐き出す場を意図的につくっていると本に書いているそうです。
一人で行った方がいいお店とかもやっぱあるし。なんか別にゆーちゃん(ユウさん)を連れてきたくないとかじゃないけど。
ナギさんは、自分が本当に好きな世界観はユウさんと共有すべきものでもなく、一人で行ったほうが自分の時間として楽しめると話しています。ユウさんも、ナギさんに会わせたい友達とそうでない友達がいる、と同じ感覚を挙げています。
なんかその自分のさ、機嫌を保つ方法だと思うよ、大事なのは。
こういう時不機嫌なことをその不機嫌なままに相手にぶつけないみたいなことは多分必要だなと思ってて。
ユウさんは、自分の不機嫌のスイッチを知っておくことに加え、相手がどんなときに不機嫌になるかを知り、そのときは極力触れないといった知恵をお互いに持っておくとよい、と話しています。
SOSとわかれば、押し付けにも嫌悪感は湧かない
不機嫌マネジメントの話から、ナギさんはこの日の朝の出来事を例に出します。ユウさんが「起きられないから、あと15分」「あと20分」と言って寝ていたときのことです。
(あと)15分20分って言うってことは、よほど疲れてるか、体調悪いか、二日酔いか何かじゃん。
ナギさんによれば、ユウさんは普段は「一緒にやらなきゃ」という意識が強く、育児も積極的に自分からやる人です。だからこそ、ナギさん一人に任せてでも休もうとするのはよほどの状態だと読み取れたといいます。
「こっちだって疲れてるんだよ」「朝ごはんぐらいやってよ」と押し付けられたように感じかねない
普段そうしない人だから、これはSOSだとわかる。何も言わずに自分がやっておき、休ませてあげようと思える
それはSOSなんだなってわかるから。
ユウさんはここで、本にある「家事や育児のシェアは嫌悪感製造機」という言葉を紹介しています。押し付け合わざるを得ない場面や寝不足で、イライラは必ず製造されるというわけです。
そのためユウさんは、寝不足のまま家事育児をすると良くないと感じたら、早めに寝るようにしているそうです。ナギさんが「ジムや打ちっぱなしも機嫌マネジメントでは?」と聞くと、体を動かさないとうずうずしてしまうので、気晴らしとして必要だと認めています。
パートナーはアシスタントじゃない
ユウさんが挙げた3つ目のエッセンスは、家事育児でのすれ違いや押し付け合いを避けるために、お互いの特性を知って任せ合うことです。本には「パートナーはアシスタントじゃない」という趣旨のことが書かれているそうです。
ユウさんの紹介によると、下田さんは夫について、自分にはやれないことで「この家の夫として父として活躍していただきたい」と書いています。得手不得手を理解したうえで家事育児を分担する考え方で、ユウさんは「まさに今の(自分たちの)感じ」と受け止めています。
ユウさんは、この本は下田さんの合理性のもとで、夫婦生活をまさに会社経営のように営む方法をエッセイ風に書いたものだとまとめています。ここまでの3つについて、ナギさんの感想は「概ね合意」でした。
「結婚は継続するのが正解なのか」という最終章
ナギさんが「そのご夫婦はうまくいってるってこと?」と尋ねると、ユウさんは「もう一つありまして」と、プラス1のエッセンスを話し始めます。それは、下田さんが結婚をとても冷静に見ているという点です。
ユウさんによれば、本の最終章で下田さんは「この結婚は継続するのが正解なんだろうか」と考えていると書いています。夫が最近つまらない、一緒にいる意味があるのか、さらには「この人のそばにいる自分のことが嫌い」とまで記しているそうです。
それ本に書くのすごいね。
夫読んでるのに?
下田さんは結婚10年目で、本の中では「魔の10年目」として夫への感情が混沌としていると書き、そう思い始めたのは本書の執筆の真っただ中だったと記しているそうです。また、自分一人でも生きていける人生力やお金があり、次の相手もすぐ見つかる自信がある、とも書かれているとユウさんは紹介しています。
ユウさん自身は、結婚の捉え方がかなり違うと感じたそうです。
さんはユウ以前から結婚を「一蓮托生 ── 結果がどうなろうと、最後まで行動や運命をともにすること。もとは仏教の言葉で、死後に同じ蓮の花の上に生まれ変わることを指します」だと考えていると話しています。ナギさんは、結婚して2年の自分たちは、10年の積み重ねから来る下田さんの感覚をどうこう言う立場ではないとしています。
結婚式で「誓わない」ことを選んだ理由
ナギさんは一方で、見方を変えれば自分は下田さんと似ているのかもしれない、と話します。その感覚が表れているのが、2人の結婚式での「誓いの言葉」でした。
(永遠に添い遂げると)誓うのはなんか違うなって、私の中の感覚があって。
永遠っていう言葉自体がなんか何かを縛りつけるような気がして。
ナギさんは、永遠を前提にすると自分や相手の柔軟性が損なわれ、自由度の低い中で考えることで、どちらかが我慢する方向に向かってしまうのではないかと感じているそうです。
ずっと一緒にいると先に誓い、それを守るために考える。自由度が低く、どちらかが我慢する方向になりやすい
縛らない中で「明日もこの人といたい」と思う日々を重ね、死ぬまで一緒だったならそれは結果論
そのため2人の結婚式では、「誓いの言葉に代えて」というタイトルで言葉を述べたそうです。ナギさんは、本のニュアンスは読者の受け取り方とずれるかもしれないとしつつ、義務感で縛らないという点で、下田さんの言っていることとは近いのではないかと考えています。
ユウさんも、いなきゃいけないという義務感ではなく、永遠を前提にしないという点では共通するのかもしれない、と応じています。
組織運営の経験から考える「続けることありき」の危うさ
ナギさんは『株式会社 夫婦』というタイトルから、学生時代の組織運営の経験を思い出したといいます。プロジェクトやチームは、引き継ぎが微妙で破綻しかけても、なんだかんだ続いてしまうものだという話です。
続けることが当たり前で、もう実際破綻してるとか、実際これなんか意味ないんじゃね?とか、惰性でやってるみたいなことでも、結局なんかもう続けなきゃいけないっていう、なんか脳になってるから。
前提
これまで紡いできた人がいるから、続けることが当たり前になる
思考停止
本当に必要か、今の時代に合っているかを考えるきっかけがなくなる
結果
今あるものを続けることに必死になり、見直しが入らず新しいものも生まれない
そこでナギさんは、自分がトップにいたとき、来年度も必要だと思うプロジェクトだけ「継続申請」を出してもらう仕組みにしたそうです。全員に出せとは言わず、出さない選択もありだと周知しました。
その都度その都度向き合った方がいいんじゃないかなって私は思ってるタイプ。その方が面白いと思うんだよね。
組織の継続申請の話は、ナギさんの結婚観ともそのまま重なります。続けることを前提にせず、その都度向き合うという姿勢が、組織でも夫婦でも見直しと楽しさを生む、という考え方です。
結局『株式会社 夫婦』はおすすめ?
締めくくりに、ナギさんが「結局おすすめなの?」と聞くと、ユウさんは少し考えたうえで、一度読んでみるといいと答えています。夫婦や家族で読んで、この回のような会話をしてみるのもありだと勧めています。
ユウさんによると、この回では触れなかった性生活の話なども、かなり赤裸々に書かれているそうです。それを聞いたナギさんは「そこだけ読んでみたい」と興味を示し、晩酌はお開きになりました。
まとめ
『株式会社 夫婦』を入り口に、ナギさんとユウさんは、正直に伝えること、機嫌を自分で扱うこと、得手不得手で任せ合うことを、自分たちの日常に照らして語りました。そして結婚を「続けることありき」で考えないという点では、本の著者と2人の感覚が意外と近いことも見えてきます。
- 正直に伝えるのは「どうしてほしいか」まで言えることに絞り、そのタイミングは会話のボールを渡して作り出す
- 不機嫌は相手にぶつけず、家庭の外や睡眠、運動で自分の機嫌を保つ
- 普段しない行動を「押し付け」ではなくSOSと読み取れると、家事育児の嫌悪感は和らぐ
- 永遠を誓うより、明日も一緒にいたいと思える日々を積み重ねる
- 組織でも夫婦でも、続けることを前提にせずその都度向き合うことが、見直しと楽しさを生む







