赤字なのに年初来高値、ホンダに何が起きている?
この回でCEOセオさんが取り上げたのは、ホンダが上場来初の大赤字を出しながら株価が絶好調だというニュースです。ホンダの株価はなぜ崩れないのか、という問いが出発点になっています。
CEOセオさんは、ホンダを「アメリカで見直されているハイブリッド」「稼いでいる二輪」「ロボットへの布石」の3点で分解して捉えます。そのうえで、本当にそうなのかという逆張りの視点も含めて話すとしています。
ニュースの要約として、日経平均が調整する中でホンダ株は底堅く推移し、10月中旬の急落局面をはさんで、10月21日には1831円の年初来高値をつけたと紹介されています。
今回大赤字、上場来初の大赤字を叩いているんですけども、実際にはそこだけではない、非常にホンダの魅力が詰まっているということもあり、株価は絶好調であると。
EV一辺倒の流れはなぜ揺らいだのか
ホンダ評価の1つ目の柱は、米国でハイブリッドが受けていることです。CEOセオさんは、欧米で「みんながEVになる」と話題になり、日本車メーカーもその中で戦ってきた経緯を振り返ります。
欧米はEVを推し進めてきた側なので、ハイブリッドをなかなか認めてこなかったと、CEOセオさんは話します。それでもハイブリッドの良さは再評価されつつありました。
EVの側にも、蓋を開けてみると電池の問題や環境面の疑問が出てきました。CEOセオさんは、中国で余ったリチウムイオン電池をどう捨てるのかといった問題も挙げています。
EVをそんなに率先するのどうなの?と。もう100パーセントEVにするみたいな流れありましたけど、一時。
各社がEVについて弱気な発言をするようになり、ほぼEVに変わるかと思われた海外メーカーでもガソリン車の投入が増えていると、CEOセオさんは指摘します。こうした流れの中で、米国ではハイブリッド車が再び評価されているという見立てです。
EV戦略の見直しで何を失ったのか
CEOセオさんは、二輪とロボットも成長ドライバーとして評価されていると触れたうえで、ホンダのEV戦略の見直しに話を移します。ロボットについては、伸びると言われるフィジカルAIの分野にホンダも参入していると紹介しています。
ホンダは2026年3月に北米向けEV3車種の開発と発売を中止しました。このEV戦略見直しによる損失は、2年間で最大2.5兆円にもなると言われています。
その結果、2026年3月期の最終赤字は4200億円に達し、上場来初の赤字となりました。2040年に新車をすべてEVにするという目標も撤回されています。
EV戦略の見直し
2026年3月に北米向けEV3車種の開発・発売を中止
損失の発生
2年間で最大2.5兆円と言われる
上場来初の赤字
2026年3月期に最終赤字4200億円
目標の撤回
2040年の新車全EV化を撤回
CEOセオさんは、EVからの方針転換はホンダだけではないと話します。ポルシェ ── ドイツの高級スポーツカーメーカー。電動化に積極的な姿勢を示してきたメーカーの1つとして知られていますもEVに力を入れると言っていたのが変わってきており、メルセデスもEVラインの名前を変え始めているといいます。
一方でホンダは、次世代ハイブリッドとして「ホンダハイブリッド」を2027年から投入し、2029年までに15車種へ増やす計画です。この点も評価されていると紹介されています。
二輪と金融が四輪の赤字を埋める構図
バイクに乗るCEOセオさんは、ホンダのバイクの優秀さをよく知っていると話します。インド、ブラジル、東南アジアでは、ホンダの二輪が通勤と生活の足として欠かせないポジションを完全に取っているといいます。
四輪は北米が中心で、中国では大きく減少しています。CEOセオさんは、中国が自国で車に力を入れ、見た目もかっこよくなっているため、もともと参入しにくい国だと説明します。
もう1つの稼ぎ頭が金融です。北米で車を買う人向けの自動車ローンやリースで、ホンダは事業を伸ばしています。
数字で見ると差ははっきりしています。二輪の営業利益は7300億円を超え、利益率は18パーセントです。四輪はEV損失込みで1.4兆円の赤字で、EV損失を除いた調整後の営業利益も425億円にとどまります。
営業利益7300億円超、利益率18パーセント
EV損失込みで1.4兆円の赤字、EV損失を除く調整後営業利益は425億円
この二輪と、金利で四輪の損失を埋めてるというのが今のホンダの状況であると。
CEOセオさんは、ホンダの現状を二輪と金融が四輪の損失を埋める構図として整理しています。四輪は北米のハイブリッドで巻き返しを狙う段階だといいます。
ハイブリッドが今さらに受ける理由
ハイブリッドがなぜ今さらに注目されているのかについて、CEOセオさんは原油高を挙げます。戦争も起きている中でガソリン代が上がれば、燃費効率のいい車が受けるという理屈です。
EVは燃費効率の点ではさらに上ですが、充電ステーションなどのインフラがまだ整っていません。インフラの心配がなく燃費効率もいいハイブリッドが、その隙間で受けているといいます。
原油高
戦争などでガソリン代が上がる
燃費志向
燃費効率のいい車が求められる
EVの弱点
充電インフラがまだ整っていない
ハイブリッド
インフラの心配がなく燃費効率がいい選択肢として受ける
CEOセオさんは、長年のエンジン技術をそのまま活かせることもハイブリッドの強みだと話します。トヨタを含め、海外メーカーから見ても日本はこの分野で一歩抜けているという見方です。
作る人と売る人、ホンダを生んだタッグとは
CEOセオさんは、ホンダの原点として創業者の本田宗一郎さんに触れます。パナソニックの松下幸之助さんと並び、誰もが知る日本を代表する経営者だと紹介しています。
本田宗一郎さんは「作る人」で、「売る人」の藤沢武夫 ── 本田宗一郎とともにホンダを経営した人物。副社長として販売や財務など経営面を担い、技術の本田と経営の藤沢と並び称されますさんと1949年に出会い、ホンダが出来上がりました。
CEOセオさんは、シリコンバレーの会社にも同じ構図があると話します。Microsoft、Facebook、Google、Appleも、作る人と売る人、今でいえばエンジニアとマーケティングに強い人がセットになって事業を推進してきたといいます。
ホンダは技術の天才と経営の天才が事業にした会社だと言われます。CEOセオさんは、今も高い技術力を、どうマーケティングして世の中に広げていくかが問われている会社だと位置づけています。
危機の中で世界に賭けたマン島TTとスーパーカブ
CEOセオさんによると、ホンダは創業以来大きなチャレンジを重ねてきた会社です。創業以来最大の経営危機の最中に、マン島TTレース(書き起こしでは「満島」)への出場を宣言しました。
ホンダは1959年にこのレースへ初出場し、2年後の1961年には125ccと250ccで1位から5位を独占しました。守りに入らず外に大きく賭けて成功し、世界基準の品質を示したという話です。
1958年にはスーパーカブが発売されました。コンセプトは「蕎麦屋の出前持ちが片手で運転できる」で、今でも出前に使われているほか、カスタムしてストリート風に乗る人もいると紹介されています。
当時、藤沢さんは月3万台という目標を掲げました。若手が「それは年にですか?」と聞くと、「いや、年じゃない月なんだ」と答えたそうです。
実際、スーパーカブは翌年に16万台を突破し、国内二輪販売の6割を占めました。2017年に累計1億台、ホンダの二輪全体では2025年に累計5億台を突破しています。
庶民の乗るバイクからもうみんなが乗るバイクになったっていうのが、ホンダのスーパーカブ。
規制と闘った歴史が米国でのブランドを作った
ホンダには規制と闘ってきた歴史もあります。1961年、通産省が新規参入を抑えて自動車会社を集約する特新法 ── 特定産業振興臨時措置法案の通称。国際競争力強化のため業界再編を促す狙いでしたが、最終的に成立しませんでしたを構想した際、ホンダは反発してすぐに四輪へ参入しました。
その後、米国ではマスキー法 ── 1970年に米国で成立した大気浄化法改正法の通称。自動車の排出ガスを大幅に削減する厳しい基準を定めましたが生まれ、当時のビッグスリーは無理だと言っていました。ホンダは1972年、この基準を最初にクリアしたエンジンを発表しています。
CEOセオさんは、こうした経緯から、ホンダが1970年代から米国で「品質のホンダ」とブランディングされてきたと話します。それが今の米国でのハイブリッドへの好印象につながっているという見方です。
以前取り上げたオニツカタイガーも、昔から米国でブランディングし、オリンピックで使われてきた例として挙げられています。
50年とか60年前に米国でブランディングに成功している企業が、今でもやっぱりその印象があるということなんですよね。
ASIMOから続くロボットへの布石
ロボットの話では、ホンダは1986年に人型ロボットの研究を始め、2000年にASIMOを発表しました。CEOセオさんは、26年前にすでに人型ロボットを作っていたと振り返ります。
今は中国のロボットメーカーがすごいことになっており、レベルは当時と全く違うとCEOセオさんは話します。それでもホンダには、ロボットのイメージが根付いているといいます。
ASIMO自体の開発は中止されましたが、技術はアバターロボットに継承されています。この技術をどうお金に変え、どうマーケティングで広げるかが、ホンダにとって重要だという指摘です。
技術に関してはもうピカイチなんだというのがグローバルの認知であるということですね。
赤字の正体はEVの損切り、V字回復は見えるか
CEOセオさんは、上場来初の赤字といっても、ホンダの売上収益は21兆8000億円とトップラインが非常に大きいと指摘します。赤字の正体は、実際にはEVの損切りと見てよいという見立てです。
ホンダは二輪で支えながら四輪で勝負をかけ、新たにロボットに投資していく形です。足元では、2027年3月期の売上収益が13パーセント伸び、営業利益も117パーセントとなり、四半期で過去最高を記録しているといいます。
EVを切り捨ててV字回復すると見られていることが、株価の好調さにつながっていると、CEOセオさんは説明します。米国のハイブリッドは供給が追いつかない状態だとも言われています。
時価総額で見ると、ホンダは6.9兆円です。日産は1兆円を切り、CEOセオさんはホンダが日産の7倍ぐらいになっているのではと話します。スズキは4兆円で伸びており、トヨタは売上50兆円、時価総額36兆円で最大です。
| メーカー | 時価総額 | 補足 |
|---|---|---|
| トヨタ | 36兆円 | 売上50兆円で最大 |
| ホンダ | 6.9兆円 | トヨタに次ぐ位置 |
| スズキ | 4兆円 | マーケットで伸びている |
| 日産 | 1兆円未満 | ホンダの7倍ほどの差 |
同じバイクでもハーレーと何が違うのか
CEOセオさんは、ホンダの二輪のパターンを「新興国の生活の足になれるか」だと整理し、以前取り上げたハーレーと比べます。
庶民の生活の足でありインフラ。量産体制で規模が大きく、高い利益も取れる
40代50代のお金を持った人が余暇や趣味として買う高額品で、誰もが買うものではない
CEOセオさんは、同じバイクでもホンダとハーレーではビジネスモデルもマーケティングも、求められる品質の世界も全く違うと話します。庶民の生活の足であり、インフラであることがホンダの二輪の強さだという見方です。
ホンダも大型バイクで良いものを作っていますが、数が取れないため、収益としてはどうしても小さくなるとCEOセオさんは補足しています。
逆張りで見る、ホンダの残る課題
最後にCEOセオさんは逆張りの視点を示します。ニュースではEVからハイブリッドへの転換が正解だったと言われますが、EV失速の理由は実は米国のEV補助政策の打ち切りだといいます。
EVは以前は補助で得をするため追い風で買われていましたが、それが終わって一段落しました。インフラが追いついていないことも重なり、それが逆にハイブリッドの追い風になったという構図です。
ホンダ、これだけのホンダといえど、PBRはまだ1倍を大きく下回っているというような状況で、あんまりこのレバーが効いてないんですよね。
CEOセオさんは、PBR ── 株価純資産倍率。株価が1株あたり純資産の何倍かを示す指標で、1倍を下回ると市場が資産価値ほどに評価していないとされますを上げるには、おそらくロボットなどが成功しないと難しいのではないかと見ています。
もう1つの懸念は地域集中です。二輪販売の85パーセントがアジアで、強みが集中しているとも言える一方、そこが落ちたらどうなるかというリスクがあります。インドではスズキが伸びており、日本メーカーの競合も控えています。
CEOセオさんは、ホンダの強い部分とこれからの部分が見える中で、日本の自動車メーカーに頑張ってほしいと話し、日本車を応援していると締めくくりました。
まとめ
ホンダの上場来初の赤字は、EV戦略見直しによる損切りが主因で、二輪と金融の稼ぎ、米国でのハイブリッド需要、ロボットへの布石が株価を支えていると整理されました。一方で、低いPBRやアジア依存といった課題も残っています。
- 最終赤字4200億円の正体はEVの損切りで、売上収益21兆8000億円と事業の土台は大きい
- 二輪は営業利益7300億円超・利益率18パーセントで、四輪の損失を金融とともに埋めている
- 米国でのハイブリッド再評価は、原油高とEVインフラの遅れ、EV補助打ち切りが追い風になっている
- 作る人と売る人のタッグ、マン島TTやマスキー法への挑戦が、今の技術力とブランドにつながっている
- PBR1倍割れと二輪販売の85パーセントがアジアという集中が、今後の課題として挙げられた




