2月後半のニュース回とリスナーアンケートの告知
Off Topicは、アメリカを中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報をゆるく深掘りする番組です。この回は2月上旬に続く「ゆるニュース回」の2月後半編で、宮武さんは「ニュースがめちゃくちゃ多いので、毎回選ぶ時に困る」と話しています。
本題の前に、草野さんはOff Topicのユーザーアンケートを告知しました。締め切りは2月28日金曜日の23時59分で、一度でも番組を聞いたことがある人が対象です。
しかも時には結構長文で書いてくれてる方々もいるので、ちょこちょこチェックしてるんですけど、めちゃくちゃ回答面白いですよね。
アンケートの「好きなエピソード」の回答は分かれていて、圧倒的に人気の回があるわけではないそうです。草野さんは、フォームは10分ほどで終わるとして、概要欄のリンクから協力を呼びかけました。
Metaが10ビリオンをかける海底ケーブル「Project Waterworth」とは?
最初のニュースは、Metaが発表した海底ケーブルネットワーク「Project Waterworth」です。宮武さんによると、約10ビリオンドルのコストをかけ、インターネットトラフィックを世界中に届けるための海底ケーブルを数多く敷設するプロジェクトです。
MetaやGoogleはこれまでも、海底ケーブルのプロジェクトに参加したり、一部資金を出したりしてきました。今回はMetaが主導し、ケーブルもMetaのものになる点が違いだといいます。
もちろん別に彼ら(Meta)だけがトラフィックを独占するわけではないんですけど、ある程度優先は多分できるのかなっていうところではありますね。
草野さんが「海底ケーブルを作ることで、Metaは何ができるようになるのか」と尋ねると、宮武さんはまず既存サービスを運営し続けられることを挙げました。海底ケーブルがシャットダウンされれば、Metaはサービスを届けられなくなる可能性があるからです。
宮武さんは、いくつかの調査でMetaが全世界のモバイルトラフィックの22%ほどを占めているとされる点にも触れました。ケーブルが壊れれば、Metaの広告売上にも確実に影響が出るため、インフラから固める必要があるという見立てです。
大量のトラフィック
全世界のモバイルトラフィックの約22%をMetaが占めるとされる
ケーブル障害のリスク
海底ケーブルが壊れると、サービスを届けられなくなる可能性がある
広告売上への影響
サービスが止まれば、広告売上に確実に影響が出る
自社主導のインフラ
サービスを供給し続けるため、自ら海底ケーブルを敷設する
年200回壊れる海底ケーブルと、修理船22艘の現実
宮武さんによると、海底ケーブルは世界中にあり、年200回ほど壊れているそうです。それなのに修理できる船は非常に限られています。
宮武さんが1〜2年前の記事として紹介した数字では、ケーブル関連の船は77艘ほどしかなく、そのうち修理ができる船は22艘ほどです。日本にも何艘かあり、壊れたという通知が来ると現場に駆けつける作業をひたすら続けている人たちがいるといいます。
草野さんが「実感が湧かない」と話すと、宮武さんは2011年の東日本大震災の例を挙げました。地震で主要な海底ケーブルが何本か壊れ、噂ベースでは、アメリカ行きのケーブルがあと1本壊れていたらアメリカからのインターネットが全部止まっていた、という話を聞いたことがあるそうです。ただし宮武さん自身も、真偽は覚えていないと断っています。
Facebookとしては全世界にサービスを提供しているわけなので、そこに供給し続けられるためのインフラとして、こういう大型プロジェクトをやってるっていうところですね。
プロジェクトは5つの大陸をつなぐ計画で、何年もかけて進める膨大なものです。宮武さんはさらに、Metaには人型ロボットを作るという噂もあると紹介し、最終的にはメタバースとAIの取り組み全体につながるものではないかと話しました。草野さんは、Ray-Banとのスマートグラスが好調だったことにも触れています。
30人でARR50ミリオン、AI採用のMercorはなぜ話題なのか?
2つ目のニュースは、AI採用プラットフォームのMercorが、時価総額2ビリオンドルで資金調達したという話題です。宮武さんがまず挙げたのは、創業チームが全員ティールフェローだという点でした。
ティールフェローは、ピーター・ティール ── PayPalの共同創業者で、投資家としても知られる人物。若い起業家を支援するフェローシップを主宰していますによるプログラムで、宮武さんは「大学を退学すると補助金がもらえるもの」と説明しています。Mercorは、この制度を使って立ち上げられた会社です。
FigureAIやAnthropicの大型調達など大きなニュースが続くなかで、Mercorがシリコンバレーで話題になっている理由の1つは成長の速さです。約2年でARR ── 年間経常収益。サブスクリプション型の事業などで、1年間に継続的に見込める売上を示す指標ですをゼロから50ミリオンドルまで伸ばし、しかもそれを30人で達成しました。
約2年前はARRゼロ
30人の時点でARR50ミリオンドル、現在は約75ミリオンドル
宮武さんは、30人の時点の50ミリオンドルでも年間約75億円の売上を30人ほどで上げていた計算だと話します。草野さんが「少人数でも上場できそう」と言うと、宮武さんは、めちゃくちゃいろいろなものを自動化しているからこそ少人数で回せているのではないかと答えました。
AIが面接し、「活躍しそうな人」を探す仕組み
Mercorのサービスでは、企業が「こういう人を探している」と出すと、Mercorが候補者を探し、面接の一部も自動化して行います。AIがインタビューをする形です。
特徴的なのは、トレーニングデータの一部に、各社の中でどういう人が成果を出しているかというデータを使っている点です。宮武さんによると、その会社にとっての視点と全体的な視点の両方から、一般的な人よりも高いパフォーマンスを出せそうな人を挙げてくれるといいます。
面接の流れは、まず応募者が事前に履歴書を入力し、AIがそれをもとに質問します。答えによってAIが質問内容を動的に変え、何を掘り下げるべきかを判断します。パフォーマンスデータがあれば、それも質問に取り込むそうです。
草野さんが「ある意味フェアかもしれない」と言うと、宮武さんは数字ベースという点に含みを残しつつ同意しました。現在のMercorはすべてテキストベースで判断しているため、あらゆる職種に向いているわけではないといいます。
それでも、エンジニアや弁護士の採用で使われていて、OpenAIを含むAI研究の現場ではかなり使われているという話を宮武さんは聞いているそうです。いまのAI研究では特定分野向けのモデルを多く作るために、さまざまな業界のエキスパートを採用する必要があります。
その採用する人がその分野のエキスパートで、その人がAIをトレーニングさせるので、本当にエキスパートかどうかを把握するために、結構メルコア(Mercor)って割と役に立つらしいっていうのは聞きますね。
平均年齢22歳、「週6日」で働くMercorのカルチャー
宮武さんによると、Mercorのカルチャーは少し独特で、昔のシリコンバレーを思わせるものです。30人体制だった頃は平均年齢22歳で、朝9時から夜9時まで、週6日働いていたといいます。
これは中国でよく言われる996 ── 朝9時から夜9時まで、週6日働く勤務形態を指す言葉。中国のIT業界の長時間労働を象徴する表現として知られていますと同じ働き方です。ただしMercorはそれを必須にしていたわけではないそうです。宮武さんは、経営者の言い分なので本当かどうかは置いておくと断ったうえで、その説明を紹介しました。
一応彼ら曰く、月曜日まで待つのが嫌な人たちが多いから、そのまま仕事をやってるって。ただ日曜日だけ休ませるっていう、最低でも。
休ませるっていう言い方がちょっと、経営陣の含みを感じますけど。
草野さんは、自動化で少人数を実現しながら、人の手で担う部分もかなり頑張っている会社なのだと受け止めていました。
ディベート仲間が採用の重要さに気づいて生まれたMercor
Mercorの事業は、最初から思いついたものではありませんでした。創業者は昔から仲の良い3人で、そのうち2人は10歳の頃からの知り合いです。2人はディベートチームに入り、10歳で高校生とディベートしていたといいます。
高校時代に、現在Mercorの社長を務める人物と出会い、3人は同じディベートチームにいました。その後、高校生のうちにいろいろなスタートアップのエンジニアリングを手伝う開発の仕事を始め、優秀なエンジニアを集めるために自ら採用を行いました。
インドのエンジニアを採用した経験から、3人は人を採用するプロセス自体がソフトウェアより重要だと気づきます。そこで、自分たちが手作業でやった採用を自動化できないかと考え、Mercorを始めたそうです。創業メンバーの一部はハーバード大学を中退しています。
Mercorは現在もシリコンバレーで人気のサービスで、創業者以外に営業チームがおらず、顧客はインバウンドだけで集まっているといいます。オンボーディングなども自動化し、最小限の人数で回すために何を自動化できるかを徹底して考えている人たちだそうです。
宮武さんによると、大学を卒業する優秀な若手エンジニアは以前ならStripeやScale AIを目指していましたが、最近はMercorに行きたい人が増えているそうです。草野さんの「次のStripeぐらいになりそう」という言葉に、宮武さんも「その勢いはある」と応じました。
RedditのAIチャットボットは、ショート動画路線から舵を切るのか?
3つ目のニュースは、掲示板型サービスのRedditがAIチャットボットを導入している話題です。Redditは前年に上場し、最近の決算ではアクティブユニークビジター数が1億170万人で、アナリスト予想を下回りました。
草野さんが期待しているのは、そのチャットボットです。これまでのRedditは、TikTokの流れを受けてショート動画や生配信に力を入れている印象がありました。今後は、過去の掲示板のデータを生かして適切な回答を届ける検索の方向に進むのではないか、と草野さんは見ています。
ショート動画や生配信など、TikTokの流れに寄せた取り組み
掲示板の蓄積データを活用し、AIで適切な回答を届ける検索
宮武さんはRedditを、テーマごとのコミュニティに分かれた掲示板型のコミュニティSNSだと説明します。たとえば「オフトピック」のコミュニティがあれば、興味のある人が集まって話し合う、UGC ── ユーザー生成コンテンツ。企業ではなく一般の利用者が投稿・作成するコンテンツのことです的な場です。
草野さんは、日本ではRedditにあたるサービスがなく、2ちゃんねると比べられることもあるが少し違うと話します。宮武さんは、荒れることがある点は2ちゃんねるに似ているかもしれないと応じました。テックやガジェット、ハリー・ポッター、日本や東京といった都市ごとの小さな掲示板があり、そこで会話できるのがRedditの特徴です。
日本で話題になった例として、宮武さんは3〜4年前のGameStop株の急騰を挙げました。きっかけは、RedditのWallStreetBets ── Redditの株式投資コミュニティ。個人投資家が集まり、GameStop株の急騰を後押ししたことで世界的に注目されましたというコミュニティだったといいます。
Googleとの提携は、Redditの追い風か足かせか?
草野さんは、Redditには会話ベースのデータが大量にあり、Googleも持っていない情報がたくさんあるはずだと期待を語ります。宮武さんによると、前年のアメリカのGoogle検索で6番目に多く検索された単語が「Reddit」でした。
Redditへの流入の多くはGoogleから来ています。たとえば商品レビューを検索すると記事が出てきますが、記事より人の会話を見たい人は「商品名 レビュー Reddit」と入れて検索するそうです。日本ではTwitterやYahoo!知恵袋が近い役割を果たしているかもしれない、と2人は話しています。
(Redditは)Googleで検索するよりもリアルだし、「え、じゃあこれはどうなの?」ってなった時の回答を誰かがしてくれてるみたいなのって、やっぱりTwitterっぽいですよね。
一方で宮武さんが気にしているのは、AIチャットボット「Reddit Answers」と、自社コンテンツのライセンス事業との関係です。RedditはGoogleやOpenAIと提携しており、Googleが自社の検索結果でRedditの内容を出せば、Google上で用が済んでしまう可能性があります。
コンテンツをライセンス
RedditがGoogleなどと提携し、自社コンテンツを提供する
Google上で表示
Googleが自社の検索結果でRedditの内容を出す
Google内で解決
ユーザーがRedditのサイトまで行かずに済んでしまう
広告機会の減少
Redditは自社サイトで広告を表示しにくくなる
草野さんは、Googleの回答はReddit以外の情報も含むため、ざっくり知りたいときはGoogle、もう少し踏み込みたいときはRedditという使い分けになるかもしれないと話しました。
宮武さんは、直近の四半期決算でも、Googleの検索アルゴリズムの変更がRedditに影響し、株価にも多少影響したと指摘します。Googleに頼り続けるのか、別の方法でユーザーを獲得するのか、という問いがRedditには残っています。
(Googleから来るライト)ユーザーをどうやってRedditユーザーに変えていくのかっていうのが、結構重要になってくるポイントですよね。
人気コミュニティ、CEOのAMA、海外展開に見るRedditのコミュニティ戦略
草野さんは、ハマればRedditの中で検索したくなり、サイトに直接行くようになるはずなので、そのフックになるトピックがもっと必要だと話します。宮武さんは、参加メンバー数別のランキングを紹介しました。
草野さんが今回の決算発表で好きだったのは、CEOがRedditのスレッドでAMA ── Ask Me Anythingの略。著名人などが「何でも質問して」と呼びかけ、利用者の質問に直接答えるRedditの名物企画ですを行っていたことです。そこにRedditらしいコミュニティ感があり、面白いと感じたといいます。
宮武さんは、上場時に一部のトップユーザーに株を買える権利を渡していたというニュースにも触れ、Redditはコミュニティとの関係性をすごく考えている会社だと評価しました。
Redditは海外展開も進めるとされ、AIを活用した翻訳で言語対応を広げていく方向です。草野さんは、TikTokやThreadsのように翻訳が最初から付いているのが当たり前になりつつあり、言語のボーダーがなくなっていくのではないかと話しました。
サブリナ・カーペンターのMVとSNL50周年
最後はおまけとして、エンタメの話題です。草野さんは、サブリナ・カーペンターが約2週間前に出した「Please Please Please」の新しいミュージックビデオを取り上げました。
以前のミュージックビデオには、当時の恋人バリー・コーガンが出演していて、やんちゃなバリー・コーガンをサブリナが追いかけるストーリーでした。2人が別れた後に出たドリー・パートンとのフィーチャリング版では、バリー・コーガンが連れ去られ、殺されるようなストーリーになっています。
テイラー・スウィフトみたいなストーリーテリングがうまい、自分のユニバース作る人だなと思って。すごい回収してましたね、自分の恋愛を。
宮武さんは、SNL ── サタデー・ナイト・ライブ。1975年に始まったアメリカの生放送コメディ番組で、多くの人気コメディアンを輩出してきましたの50周年ライブ配信を挙げました。草野さんは、生でコントをしていること、観客も関係者だったことに驚いたそうです。
宮武さんの印象に残ったのは、アンディ・サムバーグです。宮武さんはSNLに出ていた頃の曲の動画がYouTubeでバズったことで彼を知りました。ジャスティン・ティンバーレイクとの曲が何曲かありましたが、今回は代わりにレディー・ガガと披露したことがすごかったと話しています。
番組の最後に草野さんは、アンケートの締め切りが翌日に迫っていることを改めて伝え、メンバーシップのOff Topic Clubや、YouTube、Spotifyでの配信も案内しました。
まとめ
この回では、Metaが自社サービスを支える海底ケーブルを自ら敷設する計画、少人数と自動化で急成長するAI採用のMercor、膨大な会話データをAIで生かそうとするRedditが取り上げられました。どの話題からも、テック企業が自社の基盤やデータをどう固め、どう生かすかという視点が見えてきます。
- Metaは全世界のモバイルトラフィックの約22%を占めるとされ、サービスを止めないために約10ビリオンドルの海底ケーブル計画を主導している
- 海底ケーブルは年200回ほど壊れる一方、修理できる船は22艘ほどしかないという
- Mercorは約2年、30人でARR50ミリオンドルに到達し、各社で成果を出す人のデータをもとにAIが採用を支援している
- Redditは会話データを生かすAIチャットボットに期待が集まる一方、Googleへの流入依存とライセンス事業のバランスが課題になっている
- おまけでは、サブリナ・カーペンターのMVの物語性と、SNL50周年のライブが話題になった





