ポッドキャストの独占契約はなぜ揺らぎ始めたのか
この回は、前回のSpotify編の続きです。前回の宮武さんは、音楽サービスから始まったSpotifyにとってポッドキャスト展開が必須だった理由を、エコノミクスの面から説明していました。
本題の前に、草野さんから告知があります。4月25日の月曜日20時から、noteとSpotifyによるイベント「わたしとポッドキャスト」にOff Topicが出演し、YouTube、Twitter Space、TikTokで無料配信されるとのことです。
今回の宮武さんは、YouTubeがSpotifyの音声領域で大きな競合になると見ています。前回は、YouTubeが過去3年間でクリエイターに300億ドルを支払い、YouTube PremiumとMusicが合計5000万人以上のメンバーを抱えている点に触れていました。
宮武さんがまず挙げるのは、ポッドキャストでコンテンツの取り合いが始まっていることです。NetflixやAmazon、HBO Maxといった動画配信サービスと似た状況だといいます。
たとえばSpotifyは、ジョー・ローガンのポッドキャストの独占配信に200億円ほどを出したとされます。ただ、ポッドキャストが作りやすくなるなか、大きなポッドキャスターほど「なぜ1社だけに絞るのか」が課題になり始めていると宮武さんは話します。
結局めちゃくちゃお金もらうんだったらまだいいかもしれないですけど、
たくさんの人に知ってもらいたいですね。
多くの人に届けることが最優先なら、配信先を1社に絞るのは難しくなります。宮武さんによると、MAUが4億人いるSpotifyならまだ成り立つものの、AmazonMusicのようにMAUで大きく及ばないサービスでは事情が変わります。
Amazonが選んだ「1週間だけ独占」という手
MAUでSpotifyに届かないAmazon Musicは、違うアプローチを取っています。2022年2月、Amazon MusicはNPRの有名番組How I Built This ── NPRが制作する起業家インタビューのポッドキャスト。有名企業の創業者が、事業を立ち上げた経緯を語る人気番組ですと提携しました。
この独占契約は、新しいエピソードが1週間だけAmazonでしか聴けないという形です。草野さんが言うように「先行配信」に近く、その後はSpotifyなど他のアプリや、NPRのラジオでも流されます。
大きなお金で番組を完全に独占し、他のプラットフォームでは聴けなくする
新エピソードを1週間だけ先行独占し、その後はSpotifyやラジオにも出す
宮武さんは、ポッドキャスターにとってはAmazon型のほうがいい提携の仕方だと見ています。独占契約のお金を多少なりもらいつつ、幅広い聴き手にも届けられるからです。一方で、独占を狙うSpotifyにとっては嫌なアプローチだといいます。
この形を取っているのは、今のところHow I Built Thisだけです。提携に合わせて、週1回だった配信は週2回に増えたとされ、宮武さんは一定の予算がついているのだろうと推測しています。
Amazon Musicは、Google検索にポッドキャストの広告も出しています。草野さんが「オフトピック」と検索すると「Amazon Musicのポッドキャスト番組オフトピック」と表示され、Amazon Musicの番組であるかのように見えたそうです。
宮武さんはこれを、スタートが遅れた分を広告費で補う動きだと捉えています。各社が本気でポッドキャストのコンテンツを取り合うなかで、YouTubeはどんな役割を果たしているのかが次の論点になります。
YouTubeが最初から持っていたインフラとは?
宮武さんによると、Off Topicを含む多くのポッドキャスターは、Anchorなどで配信したあと、音声にサムネイルを付けてYouTubeにも上げています。YouTubeは追加のチャネルとして使われ、そこにも一定のリスナーが来ています。
YouTubeは2021年10月に、初めてのポッドキャスト責任者としてカイ・チャックカイ・チャックさんを採用しました。その前には、YouTube Musicがカナダでバックグラウンド再生を無料で試す取り組みも始めていました。
宮武さんは、YouTubeが音声に強みを持っていなかったとしても、長年の動画事業でインフラがすごく整っている点を強調します。1つは強い広告ネットワークで、2020年11月からはYouTube MusicとPremium向けに音声広告も始めています。
もう1つはアナリティクスです。ポッドキャストの課題の1つは分析が弱いことですが、YouTubeならCTRやエピソードごとの視聴者の属性など、細かいデータまで見られると宮武さんは話します。
ポッドキャストって一番、まあ一つの課題はやっぱアナリティクスが、あまり良くないっていうのは正直なところあるので。
SpotifyがChartableとPodsightsを買った理由
SpotifyもYouTubeのアナリティクスの強みに気づいています。宮武さんは、Spotifyが2022年に買収したChartableとPodsightsを、分析と広告事業を強化するための買収だと説明します。
Podsightsはポッドキャストのホスティングサービスと連携し、リスナーのデバイスやIPアドレスのデータを取れます。広告主が自社サイトにPodsightsのピクセル ── Webサイトに埋め込む小さな計測用コード。広告を見た人がサイトを訪れたかどうかを記録するために使われますを埋め込めば、広告を聴いたリスナーがサイトを訪れたかを追えます。
データ取得
ホスティングサービスと連携し、広告入りエピソードを聴いた人のIPアドレスを取る
ピクセル設置
広告主が自社サイトやLPにPodsightsのピクセルを埋め込む
訪問の追跡
広告を聴いたリスナーがサイトに来たかを把握できる
結果
ディスカウントコードに頼らずに効果を測れる
これまでポッドキャスト広告では、効果を測るためにディスカウントコードがよく使われてきました。草野さんは、コードを忘れて聴き直したり概要欄を探したりするのは面倒だと共感します。
ただし、Podsightsの仕組みには弱点もあります。草野さんが挙げたのは、iCloud+の有料機能でIPアドレスを隠せるAppleのプライベートリレー ── Appleが有料のiCloud+で提供する機能。Safariでの通信経路を中継して、ユーザーのIPアドレスを外部から見えにくくしますです。
しかもAppleってそれをやるインセンティブって持ってるじゃないですか。自社でポッドキャストやってるんで。
もう一方のChartableは、Spotifyが以前に買収したMegaphoneに組み込まれ、ポッドキャスター向けの分析として提供される見込みです。宮武さんは、この2社の買収をYouTubeへの対抗策と見ています。
ビデオポッドキャストとYouTuberの燃え尽き
YouTubeは音声ではまだSpotifyとの差がありますが、動画では圧倒的に有利です。そのなかでビデオポッドキャストがトレンドになっていると宮武さんは話します。
草野さんは、YouTubeのCEOが人気YouTuberのビデオポッドキャストに出演した例を挙げます。宮武さんによると、その出演はTwitchからYouTubeに移籍したラドウィックさんの番組で、移籍を後押しする動きの一環だろうといいます。
宮武さんはさらに、世代の変化にも触れます。デイビッド・ドブリックさんやエマ・チェインバレンさんのように、YouTubeでバーンアウト ── 燃え尽き症候群。長く無理を重ねた結果、意欲や気力が尽きてしまう状態を指しますし始めた層が、ポッドキャストに移っているというのです。
で、その人たちがどこに行ってるかというと、ポッドキャストに行ってるんですよね。
草野さんは、すでにファンがいるクリエイターなら、ポッドキャストは動画より続けやすいと見ています。宮武さんも、週1回の長尺で収録できる点を挙げます。
エマ・チェインバレンさんのポッドキャストは、一時期ランキングの上位3位に入っていたそうです。草野さんは、ジョー・ローガンのような層とは違う若い女性のポッドキャスターが少なく、そのポジションが空いていたのではないかと話しています。
アメリカではYouTubeが最大のポッドキャスト基盤?
宮武さんがリサーチ中に見つけたのが、Reuters Institute ── 英オックスフォード大学のロイター・ジャーナリズム研究所。各国のニュース消費を調べた「Digital News Report」を毎年発表していますの調査です。アメリカのポッドキャスト消費では、YouTubeがAppleやSpotifyを上回っているといいます。
宮武さんはこの数字を、おそらく聴取時間の割合だと説明しています。アメリカだけを見れば、YouTubeはすでに一番のポッドキャストプラットフォームになっている可能性があります。草野さんも、ジョー・ローガンをはじめトップのポッドキャスターはビデオ版をYouTubeで公開していると応じます。
さらに2022年3月、YouTubeはポッドキャスターに動画版を作ってもらうための資金提供を打ち出しました。宮武さんによると、個人の番組には500万円ほど、ポッドキャストネットワークには3000万円ほどまでで、対象はYouTube側が選んでオファーします。
全員対象になってたら、オフトピックはすでに申し込んでます。
How I Built Thisの件にも続きがあります。Amazonの1週間独占のあとラジオで流れる話に加えて、この番組には動画版もあり、その権利はYouTubeが持っているそうです。
リークされた戦略資料とRSS連携
宮武さんによると、YouTubeのポッドキャスト戦略をまとめた84ページほどのプレゼン資料がリークされました。資料には、音楽やゲーミングと同じように、youtube.com/podcastという専用ページを作る計画があったといいます。
もう1つはRSS連携です。今は草野さんが毎回YouTubeに手作業でアップしていますが、RSSを連携すればポッドキャストが自動でYouTubeに上がり、あとはサムネイルを触るかどうかだけになります。
草野さんはここで、YouTubeが音声・動画の編集や文字起こしができるScriptを買収したら「やばい」と話します。宮武さんも、YouTubeには字幕機能もあるので、制作がすべてYouTubeで完結しかねないと応じました。
例えばYouTubeで(Scriptを)買収したらちょっとやばくないですか?
ポッドキャストだけが並ぶページは重たい
専用ページについて、草野さんは別の見方を出します。ポッドキャストだけが並ぶページは重たく、Shortsの軽い動画の合間にビデオポッドキャストのショート版が流れてくるくらいがちょうどいいというのです。
全然プラットフォームとして、いろんな動画がある中に、その中にポッドキャストがあるっていいよねっていう話です。
宮武さんは、専用ページはとりあえずバックグラウンドで何か聴きたいときに使われるのだろうと見ています。そのうえで、多様な動画を混ぜられることこそがYouTubeの一番の強みだと認めます。
チャンネルの仕組みにも話は及びます。Off TopicのYouTubeチャンネルにはポッドキャスト以外の動画もあるため、宮武さんはポッドキャストだけをフォローできる機能がありうると話し、草野さんも親チャンネルの下に子チャンネルがあるような整理を望みます。
Spotifyでビデオポッドキャストは見られるのか
Spotifyも2021年10月ごろからビデオポッドキャストを始めています。宮武さんは戦略として正しいとしつつ、スマホのSpotifyアプリで動画を見るのかには疑問を示します。
YouTubeは動画ファーストじゃないですか。いわゆる動画を見るためにYouTube行くわけなので。
宮武さんによると、Spotifyを開く人の多くは、ランニング中に音楽やポッドキャストを聴きたいといった目的で、動画を見るつもりではありません。ビデオポッドキャストを根づかせるには、ユーザーの行動を変える必要があるといいます。
草野さんは、ブラウザでなら、普段その番組をSpotifyで聴いている人が動画を見ることもありそうだと返します。宮武さんは、YouTube Musicに音声と動画を切り替えるボタンがついたように、似た仕組みがポッドキャストにも来るだろうと見ています。
YouTubeはなぜ最強のディスカバリーなのか
宮武さんが、YouTubeがSpotifyの最大の競合になりうる理由として挙げるのは、YouTubeがただただめちゃくちゃいいディスカバリープラットフォームだという点です。数十億人のユーザーという大きな母数があります。
Spotifyも4億人のMAUを抱えていますが、ポッドキャストの最大の課題であるディスカバリーはまだ解決できていないと宮武さんは見ています。年末のSpotify Wrapped ── Spotifyが毎年年末に公開する、1年間によく聴いた曲やアーティストのまとめ。SNSで共有されやすいのが特徴ですは口コミを生みますが、年に何度もできるものではありません。
一方のYouTubeは、人のキュレーションよりもレコメンドのアルゴリズムが中心です。2018年にYouTubeの最高プロダクト責任者は、合計視聴時間の7割がレコメンドから来ていると話しています。
ポッドキャストのヘビーリスナーも、YouTubeで新しい番組を見つけています。宮武さんは、Edison Researchによる、週5時間以上ポッドキャストを聴く「スーパーリスナー」の調査を紹介します。
| 項目 | YouTube | Spotify |
|---|---|---|
| 一番よく聴くチャネル | 20%(2位) | 23%(1位) |
| 一度でも聴いたことがある | 55% | 49% |
| 新番組を探す一番の手段 | 19%(全チャネルで最多) | 記載なし |
コアなファンの数ではSpotifyがまだ上でも、試しに聴く場所や番組を探す場所としてはYouTubeがリードしています。宮武さんは、ShortsやYouTubeの他の動画の視聴履歴から好みがわかるため、ポッドキャストの情報だけで推薦するより精度が上がると説明します。
ポッドキャストだけの情報だと限られちゃうじゃないですか。
草野さんは情報量の差も挙げます。ポッドキャストのカバー画像は毎回変わりませんが、YouTubeはサムネイルを毎回変えられ、自動再生でも流れてくるので、クリックのハードルが下がるといいます。
切り抜き動画がメインチャンネルを超える
YouTubeはシェアのしやすさにも力を入れ、SnapchatやInstagramとの提携でYouTube Musicのコンテンツを共有しやすくしています。ただ宮武さんは、ポッドキャストが見つかりやすい一番の理由はクリッピング ── 長い番組から面白い部分だけを切り出し、短い動画として別に公開する手法。日本では「切り抜き動画」と呼ばれますだと話します。
五分だったら見ようってなるじゃないですか。一時間だったらちょっと時間が必要ってなるじゃないですか。
例に挙がるのが、ビデオポッドキャストで人気を取り戻したローガン・ポールさんです。彼はメインチャンネルとは別に、運営スタッフが3〜10分程度の面白い場面を切り出して上げるクリップスのチャンネルを持っています。
登録者数は約370〜380万人、累計再生回数は約4.8億回、過去30日で約1100万回
登録者数は約200万人だが、累計再生回数も過去30日の再生回数もメインを上回る
TinyMeatGangTinyMeatGangのハイライトチャンネルも、登録者数はメインの半分ほどなのに、再生回数はほぼ同じだそうです。草野さんは、日本ならひろゆきさんの切り抜きが増えた例を思い浮かべています。
宮武さんは、ポッドキャストがアンカーコンテンツ ── さまざまな派生コンテンツを生み出す元になる、中心的なコンテンツのことになると説明します。切り抜きを見た人が「これは50分の番組なんだ」と知り、本編へ向かうという中間のステップが重要だといいます。
草野さんは、動画は音声にも画像にもTikTok向けにも変えられる汎用性の高いコンテンツだと話します。宮武さんも、5分の動画は「1時間これ聴いて」より共有されやすく、拡散と発見の両面で効くと応じています。
TikTokから検索、そしてYouTubeへ
草野さんは、オールナイトニッポンがTikTokで人気なのも同じ理由だと見ています。1〜2時間の番組は聴き始めるフックが弱く、面白い瞬間が短くわかることに価値があるといいます。
宮武さんは、Shortsもディスカバリーの強い原動力になると話し、TikTokの影響力を例に挙げます。Spotifyの「バイラル50」のランキングを見ると、TikTok発の曲が多いそうです。
出会う
TikTokで知らない曲を聴く
検索する
歌詞を手がかりに曲を調べる。Spotifyではこの検索がしにくい
たどり着く
Google検索でも一番上にYouTubeの動画が出てきて、YouTubeで聴く
草野さんは、検索結果にSpotifyやApple Music、ポッドキャストも出てほしいと話します。人名を検索するとTwitterやLinkedInが並ぶように、全部のプラットフォームを見せてほしいという「Googleさんへのお願い」です。
TikTokでもアメリカではポッドキャスト系の番組が増えています。宮武さんによると、TikTokは動画の上限を3分、さらに10分まで延ばしており、ポッドキャストとの相性も良くなっています。
Spotifyの反撃、Podzの縦スクロールフィード
Spotifyも手をこまねいているわけではありません。対抗の軸の1つが、2021年夏に50億円ほどで買収したPodz ── ポッドキャストから自動で短いハイライトを作るスタートアップ。2021年にSpotifyが買収しましたです。宮武さんは以前、Twitterの戦略の回で「Twitterが買収すべき」と話していたそうです。
Podzは60秒のハイライトを自動で作るツールです。チームはフリーランスのジャーナリストに依頼して10万時間分のポッドキャストから60秒の編集を行い、そのデータを機械学習のトレーニングに使いました。
Spotifyは現在、ポッドキャスト向けにTikTok風の縦スクロールのフィードを試しています。スクロールするたびに、別のエピソードの60秒のハイライトが流れる仕組みです。
宮武さんは課題を2つ挙げます。そもそも人がそれを使うのかという点と、草野さんが先に指摘したように、ポッドキャストだけをスクロールし続けるのは重いという点です。
草野さんは、知らない曲のサビやミュージックビデオが流れるならSpotifyらしさが出ると提案します。宮武さんも、ミュージックビデオを中心に、ポッドキャストがたまに混ざるくらいならいいかもしれないと応じます。
Googleはポッドキャストで3回失敗している
ここまでYouTubeの強さを語ってきた宮武さんですが、実はGoogleはポッドキャスト事業で3回失敗しており、今回が4回目の挑戦だといいます。
宮武さんは、MusicとPremiumを抱えるYouTubeのほうがポッドキャストにはフィットすると見ています。クリエイターが動画に寄っていることや、YouTubeがShortsを持つことも強みです。
ここで宮武さんは全体を整理します。Spotifyはビジネスモデル上ポッドキャストを優先せざるを得ず、YouTubeに勝たなければなりません。一方で、YouTubeには動画という大きな市場があり、Alphabetもついています。
いろんな意味でYouTubeって、勝たなくてもいいんですけど、でも勝ちに行けるっていう。
独占契約の値段は上がり、YouTubeはディスカバリーで大きな優位を持っています。さらに、TikTokがオーストラリアでポッドキャスト運営の人材を募集するなど、新たな動きも出ています。
Googleが描くインターネットの経済ループ
宮武さんは最後に、YouTubeの戦略はGoogle全体で見るべきだと話します。そう考えると、YouTube MusicやPremiumの大きな機能を無料にする可能性も十分ありうるといいます。
1つのプロダクトで成功した企業は、次の展開を考えなければなりません。検索エンジンで大成功したGoogleが見たのは、ユーザーがインターネットでどう動くかという「経済ループ」でした。
デバイスとOS
ハードウェアと、iOS・Android・WindowsなどのOS
アクセス
ブラウザやアプリストアからインターネットに入る
購入意欲
FacebookやYouTubeなどのメディアで欲しいものに出会う
検索
GoogleやAmazonで探す
購入と配送
購入し、ラストマイルの配送を経てユーザーに届く
宮武さんによると、ある程度成功した企業が警戒すべきなのは、iPhone対AndroidやGoogle対Bingのような直接の競合よりも、前後の工程にいるcomplementary ── 「補完的な」という意味の英語。ここでは、自社の前後の工程にあり、自社サービスと組み合わせて使われるサービスを指しますなプレイヤーです。彼らは中間にいる自社を取り除けるからです。
ポータルだったYahooが自前の検索を出せばGoogleは要らなくなり、購入の層にいたAmazonも検索を強化して、Googleの強い競合になりました。
逆にその横にいるプレイヤーたちがとてつもない怖い競合になるんですよ。
そこでGoogleは、前の工程へと領域を取りに行きました。ポータル事業やGmail、YouTubeの買収、さらにChromeとAndroidの無償提供です。
宮武さんは、これらを無償にするのは最終的に全部が検索エンジンに流れるからだと説明します。AppleにiPhoneのデフォルト検索になるため150億ドルほどを払っているのも同じ理屈です。
そこのパスを作ってるだけなんですよ。で、そこの間の競合を全部取り除いてるっていう。
Spotifyはどう横に動けるのか
草野さんが「Spotifyはどう横に動けるのか」と尋ねると、宮武さんは、無償での展開は厳しく、提携が中心になると答えます。すでにFacebookとはポッドキャストで提携しています。
宮武さん個人としては、ポッドキャストのタブを開発中のTwitterと組めばディスカバリーにつながると考えています。購入の側では、Shopifyとの連携のように、クリエイターがグッズなどでマネタイズできる形もあります。
草野さんは、この話はSpotify云々以上に、Googleが生活に染みついていることを示していると話します。大きなプラットフォームが嫌だと思っても、結局YouTubeを見てGoogleで検索してしまうのです。
いいプロダクト、しかも無償で提供してるとなると、勝てるチャンスってどこにあるんですかっていうのが結構難しいところで。
宮武さんは、だからこそリナ・カーン ── アメリカの連邦取引委員会(FTC)委員長。巨大テック企業への独占禁止法の適用に積極的な姿勢で知られますさんらが独禁法の問題を指摘していると話します。そのGoogleにも、無償で出しすぎて次の稼げるプロダクトが乏しいという課題があります。
それでも宮武さんは、ビジネス展開の考え方はGoogleを見習うべきだと結びます。リスナーにも、自分が今どの経済ループのどこにいるのかを認識してほしいといいます。
まとめ
ポッドキャストでは独占契約の取り合いが進む一方で、YouTubeは広告とアナリティクスのインフラ、レコメンドと切り抜きによるディスカバリーで優位に立っています。その背景には、あらゆる入口を検索へつなぐGoogle全体の戦略があります。
- 大物ポッドキャスターほど1社独占を嫌い、Amazonは1週間だけの先行独占という形を取った
- SpotifyはChartableとPodsightsの買収で、YouTubeに劣る分析と広告を強化しようとしている
- アメリカではYouTubeがポッドキャスト消費で首位とされ、新番組を探す場所としても最多だった
- 切り抜き動画は、ローガン・ポールさんの例のように本編を上回る再生を生み、本編への入口になる
- 成功した企業は前後の工程にいる補完的なプレイヤーを警戒し、自社が経済ループのどこにいるかを知るべきだと宮武さんは話す




