Off Topicが会社化、何が変わった?
今回のOff Topicは、普段のテック解説とは違う番外編です。草野美木さんによると、宮武徹郎さんと同じVCで働くポッドキャストの人だと思われることが多く、第1回の自己紹介から環境も変わったため、改めて自己紹介と近況を共有する回にしたといいます。
近況報告の一番大きなニュースは、Off Topicの会社化です。草野さんが発表し、二人で「パチパチパチ」と拍手を送り合っています。
えっと、まあオフトピック会社化することになりました。パチパチパチ。
ただし草野さんは、会社化しても大きな変化はあまりないと話します。宮武さんも、いつも通りやっている感覚だとしつつ、今年に入ってコンテンツ制作の頻度が上がった背景には会社化があると説明しています。
(会社化して)よりこのオフトピックにフォーカスできるような体制を作ったからかなっていうところですね。
実際、ポッドキャストは週1回のペースで配信でき、Substack ── メールで記事を配信できるニュースレタープラットフォーム。個人が有料・無料の購読型メディアを運営できるサービスとして広く使われていますでも記事を出すなど、発信の量が増えています。
メディアは無料のまま、ではどう稼ぐ?
会社化しても、Off Topicのメディア自体はマネタイズしていません。宮武さんは、ポッドキャスト、YouTube、Instagram、Substackのどれでも収益化しておらず、課金型にする話も今のところないと話します。
コンテンツは引き続き無償で提供する方針です。そのうえで宮武さんは、会社化したことでいろいろなプロジェクトを始められたと語っています。
もちろんコンサルをいろいろ横でやってるので、そこでマネタイズとかやってるんですけど、
同時にその他のメディアを立ち上げるのを手伝ったりとかで、一部書いたりとか、何かそういうこともやってるので。
つまり収益源はメディアの外にあり、Off Topic本体はコンテンツの質に集中できる形になっています。この方針の理由は、エピソードの最後で改めて語られます。
ポッドキャスト・YouTube・Instagram・Substackは無償で提供し、マネタイズしない
コンサルティングや他メディアの立ち上げ支援などで収益を得る
DTCとリテールの新メディア「CEREAL TALK」とは?
会社化をきっかけに始めた他メディアの一つが、ニュースレターとポッドキャストの「CEREAL TALK」です。草野さんによると、objcts.ioの沼田さんと一緒に運営しており、最近Off Topicであまり扱わなくなったDTC ── Direct to Consumerの略。メーカーが小売店を介さず、自社ECなどで消費者に直接商品を販売するビジネスモデルのことですやリテールの話題をそちらで発信しています。
宮武さんは、CEREAL TALKを始めた経緯を説明します。もともとOff TopicでDTCの話は評判がよく、去年末のアンケートでもDTCの話を聞きたいという声が多かったため、それなら別で出してしまおうという話になったといいます。
DTC回が好評
Off TopicでDTC関連の話をすると評判がよかった
アンケートの声
去年末のアンケートでDTCの話を聞きたい人が多かった
別メディア化
沼田さんと組み、ニュースレターとポッドキャストで発信
CEREAL TALKのニュースレターは週1回で、宮武さん、沼田さん、草野さんが気になった記事を軽く翻訳しています。ポッドキャストは、DTC業界やリテール業界に特化したディスカッションの場です。
草野さんは、CEREAL TALKを玄人向けだと表現します。二人はリサーチやトレンドのキャッチアップが好きな一方、沼田さんは実際にブランドを作っている側の人なので、作り手の具体的な意見が聞けるのが面白いといいます。
実際に裏でどういうソフトウェアをそのスタートアップが使っているかとか、それってなかなかうちらだと実際触ってないので、なかなか意見が言えなかったりするので、
そこで沼田さんの意見がもらえるっていうのは非常に大事だなと思いますよね。
Off Topicでもイベントはできる?
CEREAL TALKでは最近、Shopify関連のイベントも開いています。宮武さんによると、シリコンバレーの起業家を呼んで、海外の話を日本に持ってくるというOff Topicらしい形のイベントだったそうです。
二人はOff Topicでもイベントをやりたいと話しますが、宮武さんはどんな形がいいのかわからないと悩みます。二人だけで話して成り立つのかという不安があり、草野さんも「これって面白いのかなってなっちゃいます」と応じています。
だったらなんか起業家呼んで一緒にセッションをするとか、そっちの方が面白いのかなと思いましたけどね。
草野さんは、海外の起業家を呼ぶ場合は言語の壁があり、形式をどうするかが課題だと指摘します。これに対して宮武さんは、イベントだからこそ通訳の時間も許されるのではないかと返しています。
ポッドキャストだとその翻訳とかリアルタイムでやると時間がただただ取られるんですけど、なんかイベントだと何かちゃんと(ゲストを)呼んだ感もあるんで、なんかできそうかなと思って。
宮武さんは、二人が前職でも同様のイベントを手がけていたことにも触れています。
二人がポッドキャストを始めたきっかけは?
ここから自己紹介のパートに入ります。宮武さんが聞き手となり、まず草野さんに質問を投げかけます。二人は前職のデジタルガレージ ── 東京に本社を置くインターネット関連企業。決済事業やマーケティング事業のほか、国内外のスタートアップへの投資・育成も手がけていますで同じ投資チームにいました。
Off Topicを始めた理由について、草野さんは音声領域への投資的な関心と、自分で触ってみたかったことを挙げます。そのうえで一番大きいのは、海外のスタートアップシーンをもっとリアルタイムに伝えたいという思いだったと話します。
日本で海外のスタートアップシーンがあまり伝わってないのかな(と思って)。なんか情報がたくさんあるので、伝わってはいるんですけど、なんかもう少しリアルタイムで、
もっとこういう面白いニュースがあるのにっていうのはあって、それをなんかもっとディスカッションしたり発信したかったっていうのが多分きっかけかなと思いますね。
宮武さんは、二人ともプロダクトが好きだったことも大きいと補足します。ビジネスモデルや戦略の話も面白いものの、単純に「このプロダクト面白いよね」と言い合える関係がきっかけの一つだったといいます。
草野さんのブログと「青色のスマホ」の記事
宮武さんは、草野さんがインターンとしてデジタルガレージに入った当時から自分のブログを書いていたことを振り返ります。初めてそのブログを読んだとき、印象に残った記事があったそうです。
それがちょっと名前が覚えてないんですけど、なんか青色のスマホ。
あー、ロビン。
その記事は、Robin ── 米Nextbit社がクラウドファンディングのKickstarterで発表したスマートフォン。クラウドストレージと連携し、端末の容量不足を解消する設計が特徴でしたを取り上げたものでした。宮武さんは、面白い視点を持っている人だと強く感じたといいます。
草野さんのブログのメインテーマは、日本のスタートアップのオフィスを訪問してインタビューするというものでした。ほかにもリサーチ記事や気になったプロダクトの記事を書いていたため、オフィス訪問以外の記事に触れられたことを喜んでいます。
ありがとうございます。誰も触れたことがないオフィス訪問以外の記事を取り上げていただいてありがとうございます。
音声をやろうと言い出したのは誰?
ポッドキャストを始めようと言い出したのは、二人の記憶では草野さんのほうです。草野さんは、ポッドキャスト制作サービスのAnchor ── ポッドキャストを無料で簡単に録音・配信できるサービス。2019年にSpotifyに買収されましたが面白いという話をしていたのがきっかけかもしれないと振り返ります。
宮武さんによると、当時アメリカのベンチャーキャピタルbetaworks ── ニューヨークを拠点とするスタートアップスタジオ兼投資会社。メディアや消費者向けプロダクトへの投資で知られていますを訪れた際にもAnchorの話が出ていたそうです。草野さんは、アメリカで面白いポッドキャストが次々に生まれていて、自分もやってみたいと感じていたと話します。
さらに宮武さんは、前職でAnchorへの投資を検討していた時期があったと明かします。結局「今じゃない」という判断になり、その後Anchorは買収されたといいます。
でも個人的にもすごい(Anchorに)入れたくて、面白いと思ってたんで、それを多分草野さんに話して。
二人の結論としては、Anchorを含む音声トレンドの盛り上がりについてよく話していたことが、ポッドキャストを始める土台になったようです。
ブログと音声の違い、編集担当の草野さんの気づき
宮武さんは、番組の初期は草野さんが積極的に発信を後押ししてくれたと感謝を述べます。当時の宮武さんは全く名前が知られておらず、草野さんのほうが圧倒的に有名だったといいます。
リスナー向けの補足として、宮武さんはOff Topicの編集をすべて草野さんが担っていると紹介します。草野さんは音質について謝りつつ、最近は音量を上げたのでフィードバックがほしいと呼びかけています。
ブログからポッドキャストに移って気づいたことを聞かれた草野さんは、まず人となりがテキストよりわかるメディアだという点を挙げます。
なんか面白いコンテンツを届けるっていうのが好きだなって自分で思いました。
草野さんのブログはインタビュー形式だったため、「この人がこんなことを話したら面白いのに」というインタビューの楽しさがあったそうです。その感覚が今のポッドキャストにもつながっていると話しています。
草野さんが「もっと勉強しなきゃ」と謙遜すると、宮武さんは、今でも草野さんに面白いサービスを尋ねると知らないものが出てくると返します。照れた草野さんは、話題を宮武さんの自己紹介へ移しました。
宮武さんはアメリカにいる?LAのスタートアップを辞めた理由
草野さんによると、リスナーが一番不思議に思っているのは宮武さんが何者なのかという点です。宮武さんは、よく聞かれるのは住んでいる場所だと答えます。
あの東京にいます。
宮武さんはコロナ禍で1年間飛行機に乗っていないといいます。もともとはLAのスタートアップに所属していたものの、ビザの関係でアメリカに行けず、出張を除いて日本にいる必要がありました。
日本にいる間にOff Topicのコンテンツ制作を続けたところ、思った以上に番組が伸びました。そこで会社化を決め、LAのスタートアップは辞めて、現在はOff Topicにフルタイムで取り組んでいます。
LAのスタートアップでは、創業メンバー兼COO的な役割で、技術以外のことを全般的に担う予定でした。創業者のジョンさんとティファニーさんとはとても仲がよく、3人とも一緒に仕事をしたいと思っていたそうです。
どういうふうに辞めるのがベストみたいな話ではなくて、なんかどうやったらよりオフトピックをよくできるの?って聞かれて、
やっぱいい人たちだなと思いました。
草野さんは、宮武さんが人に惹かれてその会社を選んだのだと感じたと話します。宮武さんも、辞めたのは残念だが今も一緒に仕事や話をしており、いい形で終えられたと振り返っています。
宮武さんの投資活動と、投資家になったいきさつ
草野さんはVCを辞めましたが、宮武さんは今もVC的な活動を続けています。個人のエンジェル投資に加え、日本のファンドがアメリカの案件を扱う際のディールソーシングやデューデリ ── デューデリジェンスの略。投資前に対象企業の事業・財務・法務などを詳しく調査し、リスクや価値を見極めるプロセスのことですを手伝っているといいます。
まあ一番アメリカのことを理解してるからなんですけど、基本的にアメリカの案件に投資してます。
草野さんが宮武さんを「投資業が天職」と評すると、話題は投資家になった経緯へ移ります。宮武さんは、アメリカの高校から起業家教育で知られるバブソン大学へ進みましたが、起業を学ぶために選んだわけではなかったといいます。
バブソン大学は、当時のルームメイトの兄が通っていた大学でした。ビジネス系の大学を受けようと考えていた宮武さんは、その名前を聞いてとりあえず応募したそうです。
就職活動では、日本人留学生向けのボスキャリ ── ボストンキャリアフォーラムの略。毎年ボストンで開催される日英バイリンガル向けの大規模な就職イベントですでデジタルガレージと出会います。コンサルかインターネット企業を志望していたところ、コンサルは全部落ち、インターネット企業は全部受かったといいます。
なんで僕はコンサルの人間じゃないんだと思って。
デジタルガレージにも投資をやりたくて入ったわけではありません。入社時に経歴を見た会社から投資をやってみるよう勧められ、そこから投資の仕事を始めたそうです。
草野さんが事業部に配属されていた可能性を尋ねると、宮武さんは「代理店の人になってたかもしれない」と答えます。ただし代理店のカルチャーには合わず辞めていた気がするとも話し、たまたま入った投資チームのメンバーがよく、うまくフィットできたと振り返っています。
逃したアクセラレーターのインターン
大学時代のスタートアップへの関心を聞かれた宮武さんは、興味を持ち始めたのは在学中の後半になってからだと答えます。きっかけの一つは、ハーバードで開かれたイベントでUberのトラビスさんの講演を聞いたことでした。
その時に話をなんか登壇者でスピーカーとしていて、その話を聞いたんですけど、なんだこのUBERっていうアプリっていう感じだったので、
当時の宮武さんは、アクセラレーター ── スタートアップに短期間の集中支援プログラムを提供し、少額出資やメンタリングを行う組織。代表例にY Combinatorがありますという概念も、Y Combinatorも知らなかったといいます。4年生になり、起業家が投資家に出資を求めるアメリカのテレビ番組『シャークタンク』を見たことで、スタートアップの情報が少しずつ入ってきました。
草野さんは、シャークタンクを日本の番組『マネーの虎』にたとえています。宮武さんはその後、いくつかのアメリカのアクセラレーターにインターンとして応募しました。
ただLAに飛んでくださいって言われて。
ちょっと(面接に行くことは)できないってなって。
当時の宮武さんはよりコンサバな性格で、それが大きなチャンスだとは理解していなかったと振り返ります。デトロイトのアクセラレーターも受かる見込みだったものの、最終的にはボストンで別のインターンをしたそうです。
一方で、Y Combinatorにもメールを送ったものの返事はなかったと笑います。2013〜2014年頃はスタートアップのエコシステムが急成長していた時期で、草野さんはシード期のスタートアップが一気に出てきた時期だったと応じています。
VCのネタアカウントが通じるアメリカ
宮武さんは、当時はユニコーンという言葉も知らなかったと振り返り、今の学生と話すとスタートアップがより一般化していると感じるそうです。
草野さんは、アメリカではVCあるあるのネタツイートが5000リツイートもされることに驚くと話します。番組の概要欄でも紹介されているVC Starterkitのような専用アカウントがあり、それだけ共通認識があるということです。
いや、そこはやっぱりちょっと日本とは違いますよね。アメリカの自虐ネタがみんな大好きなんで。
宮武さんが日本でもできないかと問いかけると、草野さんは、スタートアップ系はあまり見ないものの、アニメなどのネタアカウントは見かけると答えています。
リスナーの反応で一番うれしかった声は?
最後の話題は、リスナーや記事の反応でうれしかったことです。宮武さんは、皆さんが思っている以上にコメントをチェックしていると明かし、記事が「有料のレベル」だと言われるとテンションが上がると話します。
そのシリコンバレーと日本の時差が縮まったみたいなことを言われた時には、すごいあの、まさに多分我々がやろうとしてたことが一部達成されてるのかなって思ったので、
この声は、草野さんが番組を始めた理由として語った「海外のスタートアップシーンをもっとリアルタイムに伝えたい」という思いと重なります。
草野さんは、その領域で一線にいる当事者から面白かったと言われることがうれしいと話します。さらに、クリエイターやアーティストなどスタートアップ業界以外の人が番組を見つけてくれたことにも驚き、喜んでいます。
なんか全然そのスタートアップ業界の方じゃないけど、聞きながらメモしてますみたいなこと言われると、なんか申し訳ないけど嬉しいっていう、
宮武さんは最後に、メディアをマネタイズしない理由を語ります。広告収入に頼るとクリック数やPV数を気にしてしまうため、面白いコンテンツをどれだけ見つけて書けるかで勝負したいという考えです。
二人は「頑張っていきましょう」と声を掛け合い、今後も面白いトピックを届けたいと話して番外編を締めくくりました。
まとめ
今回の番外編では、Off Topicの会社化と新メディアCEREAL TALKの立ち上げが報告されました。あわせて、草野さんと宮武さんの経歴や番組を始めたきっかけ、メディアを無料で続ける理由も語られています。
- Off Topicは会社化してフォーカスできる体制を整えたが、メディア本体は引き続き無償で提供している
- DTCやリテールの話題は、沼田さんと始めたCEREAL TALKのニュースレターとポッドキャストで発信している
- 番組の原点は、海外スタートアップの面白いニュースをリアルタイムで議論・発信したいという思いだった
- 宮武さんはコロナ禍で渡米できない間にOff Topicが伸び、LAのスタートアップを辞めてフルタイムで取り組むことにした
- 広告に頼らないのは、PVを気にせず面白いコンテンツで勝負するためだと語られている




