日本での暮らしと文化への驚き
インタビューは、ブラウン選手の日本語の進み具合から始まりました。高校で2年間学んだ経験があり、日常会話は文脈から追えるものの、まだ学習中だと話しています。
(日本語には)いろんな難しさがあって、まだ学んでいる最中です。丁寧な言い方とカジュアルな言い方の違いは、ちょっと難しい。
ブラウン選手は昨シーズンの1月から日本でプレーしており、まず千葉ジェッツの一員として来日しました。日本という国そのものを、とてもユニークで魅力的だと感じているようです。
バスケットボールがなかったら経験できなかった形で、旅をして世界を見られる。それは本当にクールで楽しいことです。
一方で、日本の生活習慣にはまだ慣れきれていない部分もあると、正直に打ち明けています。特に苦戦しているのがゴミの分別だそうです。
いつもペットボトルのキャップを忘れるんです。プラスチックを剥がして洗うところまではやるのに、キャップを付けたまま捨てそうになる。
ブラウン選手が最も驚いたのは、電車などの公共空間で、人々が互いを気遣う意識の高さだったといいます。ニューヨークやフィリピンとの違いを引き合いに出しながら語りました。
(日本では)電車で隣の人を邪魔しないようにと、みんながすごく意識している。ニューヨークではそんなこと誰も考えません。
昨シーズン終盤の負傷とリハビリの現在地
話題は、昨シーズン終盤に負ったケガへと移ります。ブラウン選手にとって、役割を掴みかけていた時期だっただけに、痛手だったようです。
自分の良い役割やポジションを本当に掴み始めたところだったので、後退だと感じました。でも、こういうことは起きるものです。
リハビリの経過は良好だといいます。ブラウン選手は、その進め方を表す言葉として日本語の表現を挙げました。
(リハビリは)ちょっとずつ。毎日、少しずつ押し進めていく。ただ積み重ねていくだけです。
現在の計画では、9月上旬から中旬にかけて本格的に動き出し、B.LEAGUEのプレミアリーグ開幕に間に合わせる見込みだと説明しています。
練習を見ていた大西さんが、動きの良さを指摘すると、ブラウン選手も日々の進歩に手応えを感じていると答えました。
毎日、少しずつ速く、少しずつ強く、少しずつ自信がついてきている感覚です。それを毎日続けていくだけです。
「楽しみながら激しく」新チームの空気
新しいチームメイトやコーチとの練習について、ブラウン選手はとても楽しいと語ります。激しくプレーしながらも、喜びを持ってプレーすることを大切にしているといいます。
すごく激しくプレーする。でも、喜びを持ってプレーする。コーチは、みんなが毎日ここに来るのを楽しみに思える環境を望んでいます。
大西さんは、その楽しい雰囲気にはアーロンとゼイの2人が大きく貢献しているのではと尋ねます。ブラウン選手も、練習中はいつでも話すべきだと同意しました。
練習中はずっと話しているべきです。取り組みたいことを伝えるためでも、ただの雑談でも。
チームは共通の目標を持つ一方で、それぞれにコート外の生活がある。ブラウン選手は、選手を単なるアスリートとしてではなく、互いの人となりを知ることの大切さを強調しました。
その一環として、ブラウン選手はチームメイトのジェイクと、最新のスパイダーマンの映画を観に行ったそうです。字幕が気にならないか心配していたものの、良い映画体験だったと振り返っています。
(僕とジェイクは)2人とも驚きました。「本当に良い映画体験だったね。もっとこっちで映画を観るべきかも」と話したんです。
妥協しない守備とハッスル、Qという呼び名
チームメイトからは「Q」と呼ばれているブラウン選手。ファンにもそう呼んでほしいといいます。コート上での由来には、実用的な理由がありました。
コート上では、素早く伝え合おうとするとき、Quentinと言っている時間はない。Qなら速くて簡単で、みんなすぐ理解できる。
大西さんが、ドルフィンズの選手としてのクエンティン・ミロラ・ブラウンとはどんな選手かと問うと、ブラウン選手は迷わず守備とハードプレーを挙げました。この2つは決して妥協しないと言い切ります。
ブラウン選手は、守備は運やまぐれではなく、純粋な努力だと考えています。名古屋が守備で知られるチームであることにも触れ、自分はそのカルチャーに溶け込めると自信をのぞかせました。
ボールが入るかは自分ではコントロールできない。でも、守備でベストを尽くしたか、どれだけハードにプレーしたかは、いつでもコントロールできる。
大西さんは、オフシーズンにリバウンド力が少し落ちた点にも触れ、ブラウン選手の加入に期待を寄せます。ブラウン選手も、その役割を引き受けると力強く応じました。
対話を重視するロン・ロネン新HC
新指揮官であるロイ・ロン・ロネンヘッドコーチとの会話について、ブラウン選手は多くの学びがあると語ります。昨シーズンの良い部分を引き継ぎつつ、自身のアイデアを加えようとしているといいます。
ブラウン選手が特に印象的だと感じているのは、コーチが一方的に指示するのではなく、対話を重視する姿勢です。
(コーチは)一方的な命令ではなく、会話にしたいんです。「これについてどう思う?」「この戦術についてどう思う?」と。
コーチ自身も学ぼうとする姿勢を見せているといいます。ブラウン選手は、経験のない戦術については選手に意見を求めるコーチのオープンさを高く評価しました。
「これはやったことがない。君たちはある。何がうまくいくと思う?」と。そういう開かれた対話は本当に素晴らしいことです。
大西さんは、コーチがとても優れたコミュニケーターであり教育者だと感じている点に共感します。ブラウン選手は、コーチが「何をするか」だけでなく「なぜそうするか」を重視すると説明しました。
憧れのティム・ダンカンと、変わった試合の見方
ワシントンDC近郊のバージニア州で育ったブラウン選手ですが、地元のウィザーズではなく、ティム・ダンカンを見て育ったといいます。
ティム・ダンカンは子どもの頃、一番好きな選手でした。彼のゲームへの向き合い方、考え方が好きだったんです。
ブラウン選手がダンカンに惹かれた理由は、そのプレースタイルにありました。派手さはなくても、確実に仕事をこなす姿に敬意を抱いたといいます。
現在のNBAでは、ヨキッチやウェンビー(ビクター・ウェンバンヤマ)を興味深く観ているそうです。大学を出て多くを学んだ今、試合の見方が子どもの頃とは変わったといいます。
子どもの頃は「うわ、あのプレー見て」という見方だった。でも今は「ここのスキーム(戦術)はどうなっているのか」と分析してしまう。
ブラウン選手は、良い選手は互いから技術を盗み合うものだと考えています。特にビッグマン同士は、フットワークやリバウンドのポジション取りを盗み合うといいます。
自分が手本にしてきたのはやはりティム・ダンカンで、そのフットワークと基礎、そしてゲームへの理解を目指してきたと語りました。
フィリピン系コミュニティで始まったバスケ人生
大西さんは、リサーチで知ったというブラウン選手のルーツについて尋ねます。バージニアでのバスケットボールは、フィリピン系のコミュニティから始まったそうです。
フィリピン人の人口があるところには、どこでもフィリピン人のバスケットボールリーグがある。フィリピンの血が入っていれば、みんなバスケが好きなんです。
ブラウン選手がバスケを始めたきっかけは、フィリピンで育ち渡米した祖父の影響が大きかったといいます。週末リーグから始まり、少しずつステップを上げていきました。
興味深いのは、ブラウン選手の両親が、必ずしもプロを目指すよう促していなかった点です。両親の言葉は一貫していました。
両親はいつも「体ではなく頭に賭けなさい」と言っていました。
転機は大学進学の頃でした。それまではプロを現実的な可能性とは考えていなかったといいます。
12歳より前の自分に聞いたら「バスケットボール選手になる」とは言わなかったはず。その可能性は高校の後半まで頭になかった。
現在B.LEAGUEに多くのフィリピン系選手がいることも、来日の後押しになったと明かしています。
フェンシングからバスケへ、SFとポケモン愛
ブラウン選手は、もともとフェンシングから競技を始めたといいます。父親がフェンサーであり武術家だった影響でした。
(フェンシングは)すべてが自分にかかっているという美しさがある。でも同時に、チームがないという寂しさもあります。
フェンシングとバスケの両立は、練習場所が逆方向になることも多く、時間的に難しかったそうです。両親から選択を迫られ、より愛していたバスケを選んだと振り返ります。
ブラウン選手によれば、フェンシングでは背の高さが大きな武器になるといいます。リーチの長さが有利に働くためで、オリンピック選手には長身が多いそうです。
ここから話題は、ブラウン選手の意外な一面へと移ります。大西さんが、好きなキャラクターがジャー・ジャー・ビンクスだと知って驚いたと切り出しました。
(ジャー・ジャー・ビンクスは)とにかくコミカルなキャラクターで、すごく面白い。自分のことをやって、なぜか成功してしまうんです。
ブラウン選手は大のSF好きで、父の教えでスター・ウォーズを正しい順番で観たといいます。好きなキャラクターは、その時々の気分によって変わるとも語りました。
SF作品では、作家のブランドン・サンダーソンを特に好んでいるといいます。彼の作り上げた世界観の緻密さに惹かれているようです。
(サンダーソンの物語は)読み終えてから読み返すと、「あの情報があの場所にあったから、この展開になったんだ」と腑に落ちる。それがクールなんです。
映画シリーズとしては、やはりスター・ウォーズが最高だと語ります。読書も好きで、チームメイトのアンディからSF作品を勧められたと嬉しそうに話しました。
SFなら、たぶん最後まで読めます。読み切れるかは約束できないけど、どんな本でも挑戦してみます。
もう一つの趣味がポケモンです。ブラウン選手は子どもの頃に多くのポケモンゲームで遊んでおり、来日を機にカードの収集も始めたといいます。
ブラウン選手が特に面白いと感じているのは、ポケモンが世界各地の地域をモチーフにしている点です。新作『ウインドとウェーブ』が東南アジアを元にしていると読み、フィリピン系の自分として楽しみにしていると語りました。
千葉にいたとき、最初のゲームのカントー地方が東京周辺を元にしていると気づいた。時代で街は変わっているけど、その面影が見えるんです。
この話を千葉の通訳モニカさんにしたところ、彼女もリーフグリーンをプレーしながら「サファリゾーンが千葉なんだ」と気づいて驚いたそうです。
好きなポケモンのタイプを問われると、ブラウン選手はしばらく考えて「はがねタイプ」を挙げました。その理由が、自身のありたい姿と重なっていました。
(はがねタイプは)頼りがいがあって、頑丈だから。いつもそうだとは言えないけど、そうあろうとしています。
ファンに見てほしいプレーとは
インタビューの最後に、大西さんは今シーズン、ファンがコート上で何に注目すべきかを尋ねました。ブラウン選手の答えは、やはり一貫していました。
やっぱり守備とハッスルに戻ります。ストップを奪えること、誰よりもハードにプレーすることに、僕は誇りを持っています。
ブラウン選手にとって、プレーできること自体が当たり前ではありません。他の人が得られない機会への感謝が、その姿勢の根っこにありました。
まとめ
今シーズン新加入のクエンティン・ミロラ・ブラウン選手は、守備とハッスルへのこだわりを軸に、努力を惜しまないプレースタイルを語りました。同時に、日本の文化への戸惑いやSF・ポケモンへの深い愛など、Qという選手の素顔も垣間見えるインタビューとなりました。
- 守備とハードプレーは「決して妥協しない」2つの柱で、守備は運ではなく純粋な努力だと考えている
- 昨シーズン終盤の負傷から「ちょっとずつ」リハビリを進め、プレミアリーグ開幕への復帰を見込んでいる
- フィリピン系コミュニティと祖父の影響でバスケを始め、大学進学の頃にプロを現実的な目標として意識した
- 憧れは派手さより堅実さで仕事をやり遂げるティム・ダンカンで、そのフットワークと基礎を手本にしてきた
- 大のSF好きでポケモンにも詳しく、世界各地をモチーフにした地域設定を楽しむなど多彩な一面を持つ






