なぜネタニヤフ陣営と野党陣営は拮抗したのか
イスラエルで現地時間10月27日火曜日に総選挙が行われました。出口調査によると、与党陣営と野党陣営のどちらも過半数を獲得できない見通しで、焦点は今後の連立交渉に移っています。
中央選挙管理委員会によると、今回のイスラエル総選挙の投票率は77.7パーセントでした。前回2022年の選挙を大きく上回り、過去25年で最高の水準だといいます。
イスラエルの国会は全部で120議席あり、過半数には61議席が必要です。収録時点の出口調査では、ネタニヤフ ── ベンヤミン・ネタニヤフ。イスラエルの右派政党リクードを率いる政治家で、イスラエル史上最も長く首相を務めてきた人物です首相が率いる与党陣営と野党陣営が、ともに50議席前後で拮抗しています。
総投票数のおよそ10パーセントにあたる不在票などは、29日にかけても集計が続く見通しです。最終的な議席数はまだ動く可能性があります。
新井さんによると、今回の選挙で最大の争点になったのは、3年前の10月7日に起きたハマス ── パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム組織。2023年10月7日にイスラエルへ大規模な奇襲攻撃を行い、その後のガザでの戦闘につながりましたによる奇襲攻撃の責任です。
通算約19年にわたって政権を握ってきた右派のネタニヤフ首相に対し、最大のライバルとなったのが、中道新党ヤシャルを率いるアイゼンコット氏です。アイゼンコット氏は、もともとイスラエル軍の参謀総長を務めていた人物です。
アイゼンコット氏は10月7日の攻撃のあと、一度はネタニヤフ氏の戦時内閣に加わりましたが、方針の違いから離脱しました。その後に新党を立ち上げ、ネタニヤフ政権が攻撃を防げなかった責任を取っていないと批判して支持を集めてきました。
アイゼンコット氏自身も、この3年間のガザでの戦闘で実の息子をはじめとする家族を亡くしています。同じように家族や友人を失った有権者にとって、その境遇が深く響き、野党陣営が大きく票を伸ばす背景になったと新井さんは解説しています。
一方のネタニヤフ首相は、10月7日の原因究明のための独立委員会の設置などを拒否し、責任を取らない姿勢を貫いています。代わりに、ハマスやフーシ派 ── イエメンを拠点とする武装勢力。イランの支援を受けているとされ、紅海での船舶攻撃やイスラエルへの攻撃を行ってきました、レバノンやイランへの攻撃を通じて国家を守ってきたという戦果をアピールしてきました。
両者の主張を並べると、今回のイスラエル総選挙が10月7日の責任をどう問うかをめぐる選挙だったことが見えてきます。
独立委員会の設置などを拒否し、責任を取らない姿勢。ハマスやイランなどへの攻撃による戦果と強いリーダーシップをアピール
元参謀総長。戦時内閣を離脱し、政権が攻撃を防げなかった責任を取っていないと批判。自身も戦闘で家族を亡くしている
アラブ系政党の躍進が連立交渉を難しくする理由
新井さんは次に、今後の焦点となる連立政権の行方に話を移します。イスラエルでは1948年の建国以来、単独の政党が過半数を獲得したことは一度もなく、複数の政党で連立政権を作るのが常になっています。
今回のイスラエル総選挙もこの慣例どおりになる見込みですが、ポイントになるのがアラブ系勢力の躍進です。
イスラエルの主なアラブ系政党は2つあり、これまでは120議席のうち10議席を占めていました。今回は過去最大となる17〜18議席、全体の15パーセントを占める可能性が出ています。
120議席のうち10議席
過去最大の17〜18議席、全体の約15パーセントの可能性
ユダヤ人が7割以上を占めるイスラエルで、アラブ人は全体の2割ほどの少数派です。アラブ系政党は、国内のアラブ系市民の権利向上などを求めています。
そのため、右派のネタニヤフ陣営がアラブ系政党と連立を組むことは考えづらいとされます。中道のアイゼンコット氏の陣営にとっても、アラブ系政党を連立政権に組み込むことには強い抵抗感があり、どちらも手を組む可能性は低いと見られています。
アラブ系政党の議席が増えるほど、与党陣営と野党陣営が過半数の61議席を集める難易度は高くなります。新井さんは、その結果として再選挙に向かうシナリオも見えてくると指摘しています。
アラブ系政党の躍進
17〜18議席を占める可能性
連立相手の不在
与野党ともアラブ系政党と組む可能性は低い
過半数確保が困難に
両陣営とも61議席に届きにくくなる
再選挙の可能性
過去にも同様の展開がある
イスラエルでは実際に、どの陣営も過半数を確保できなかったときに再選挙を行ってきました。2019年から2022年にかけては連立交渉がまとまらず、5回も選挙が繰り返された歴史があります。
今回のイスラエル総選挙でも、最終的な首相が決まるまでには数週間から数か月かかると見られています。
連立交渉のキーマンとネタニヤフ氏の暫定期間の動きは?
新井さんは最後に、連立交渉でキーマンとなる人物として、イスラエルのヘルツォグ大統領を挙げています。
イスラエルの大統領はいわゆる象徴的なポジションです。ただし選挙の直後には、連立政権づくりと組閣をめぐって委任状を与える権限を持っています。
新井さんは、連立交渉の行方と同時に、この期間中のネタニヤフ氏の動きも気になると話します。次の首相が決まるまでは、通常は現政権が暫定政権として引き続き実権を握るためです。
現在、この暫定期間中にネタニヤフ氏がイランに対して新たに攻勢をかける可能性も囁かれており、選挙後のイスラエルに注目が集まっています。
連立交渉が長引けば、そのぶんネタニヤフ氏が暫定政権のトップとして政策を動かす期間も長くなります。選挙結果だけでなく、その間の安全保障上の動きも見ておく必要がありそうです。
まとめ
2026年10月のイスラエル総選挙は、10月7日の奇襲攻撃の責任を争点に、ネタニヤフ首相の与党陣営とアイゼンコット氏らの野党陣営が拮抗しました。アラブ系政党の躍進で連立交渉はさらに難しくなり、再選挙の可能性や暫定期間中のネタニヤフ氏の動きにも注目が集まっています。
- 出口調査では与野党陣営とも50議席前後で、過半数の61議席に届かない見通し
- 最大の争点は、2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃の責任をどう問うか
- アラブ系政党が過去最大の17〜18議席を得る可能性があり、どちらの陣営とも組みにくい
- 過去には5回の再選挙が繰り返されたこともあり、首相決定まで数週間から数か月かかる見込み
- ヘルツォグ大統領の組閣委任と、暫定期間中のネタニヤフ氏のイランへの動きが焦点






