Webディレクターの定義は一つではない
Webディレクターのスクールや養成講座、教材に通っている方もいると聞きます。意味がないものではないんですが、案件を重ねてディレクターになっていった僕としては、正直違和感があるんです。
そもそも、Webディレクターとは何かを定義するのはとても難しいと思っています。
個人事業主なのか会社員なのか。会社員でも、事業会社なのか制作会社なのか、会社の規模はどれくらいか。それによって求められる役割はずいぶん変わってくるんです。
制作会社なら、仕事を持ってくるプロデューサーがいて、ある程度ヒアリングが済んだ状態で「この要件でもって作ってください。あとよろしく」と任されるディレクターもいます。
事業会社なら、ホームページを外注するのか内製化するのか、そのハンドリングをするのもディレクターです。
僕自身、会社員時代はディレクターもやっていましたが、決裁権はありませんでした。クライアントとはもう話がついているのに、上司、取締役、社長とハンコを3つ4つ集めないと前に進まない。
社内稟議のために資料を作りながら、「この時間一体なんだよ」と思っていました。それもディレクターだとは思いますが、僕はそれが嫌で辞めました。
今は、自分の判断で物事を決められる、決裁権を持った個人事業主のWebディレクターと名乗っています。
飲み会の幹事だってディレクションだ
僕は、Webディレクターという特別なものがあるというより、結局はそれぞれの立場でコミュニケーションが問われているんだと思っています。
僕はチームリーダーとしてお客さんとやりとりをするし、制作チームの仲間ともコミュニケーションをとります。ディレクターだからやる、というより、立場的にそうしているだけなんです。
わかりやすい例が、飲み会の幹事です。
会場や日付を決めて、参加者を募る。当日はみんなより少し早く行って席を整え、会計を先に済ませたり、最後に割り勘を計算したりする。あれもディレクターですからね、僕から言わせると。
でも幹事をやるためにスクールや講座を受ける人はいませんよね。自分なりにどうやるのがいいか考えて動くし、1回目より2回目の方がうまくできるかもしれません。
相手のためにどうしたらいいか、どのタイミングでどの言葉をどう伝えたらいいか。相手の言っていることを理解しようとし、それを仲間にどう共有するか考えて行動する。
それがディレクションなんです。普通に仕事をしていれば、意識していなくてもディレクションはしているんです。
経験を積むほど、「次はもっとこうしたら効率がいいな、みんなが動きやすいな」と自分なりに掴んでくる。それが後になって「これが世間でいうディレクターか」という答え合わせになるんだと思います。
だから、やる前に教材を見て予習しても、そううまくはならないんじゃないかなと思っています。
僕のディレクターの育て方
過去に、ディレクターの育成をしていたこともあります。
基本は僕のカバン持ちです。打ち合わせに同行してもらって、隣でどう進めているかを見てもらう。
少しずつワイヤーフレームを引いてもらったり、見積もりを作ってもらったりと、やれることを増やしていきます。案件を3つぐらいやると、ある程度掴めてくるんですよね。
だから、僕がお金をもらって講座を開くというのは想像がつきません。やるとしても、実案件に基づいて仕事をしながらでないと、僕には無理ですね。
これはデザイナーさんやコーダーさんでも同じです。自分のデザインの意図をどう伝えるか、デザイナーさんやディレクターさんとどうコミュニケーションをとるか。
そこを意識していけば、気づいたらディレクション能力は身についてくると思います。
大事なのはツールよりも、相手と信頼関係
ホームページ屋さんも、お客さんの方を向いてわかりやすく伝えるディレクターです。お客さんには「ウェブサイト」ではなく「ホームページ」、「コーディング」ではなく「プログラミング」と言う。相手がどうわかるかを考えて変換すること自体がディレクションなんです。
ワイヤーフレームを何で作ればいいか、FigmaがいいかXDがいいか、とよく聞かれます。でも、僕から言わせるとそこじゃないんです。
ワイヤーフレームを見るのはお客さんです。お客さんが見て「こういうホームページができそうだな」とイメージできるものを作れることが大事で、それはやっぱり場数なんです。
『山塾』でも、ワイヤーフレームのレビューや、商談前に何を聞いたらいいかの相談に伴走しています。見ているのは、お客さんが見てわかりやすいか、「わかってんな、この人」と思ってもらえる質問か、という観点です。
山塾はディレクターを育てるつもりの場ではないですが、結果としてメンバーにはディレクション能力が身についていると思います。チームを作って、クリエイターさんにもわかる言葉で丁寧に伝えているのを見ています。
ただ、それはディレクションというより、信頼関係なんだと思います。信頼関係を築けなかったら意味がないじゃないですか。
クリエイティブはお客様を感動させられる素晴らしい働き方なので、チームを作るならみんなで感動したいし、喜びを分かち合いたい。事務的・機械的なやりとりは、そこまで重視しなくていいかなと思っています。
僕が面倒を見て育てたディレクターたちも、いま活躍しています。何より、仲間を大切にしてくれているのが嬉しいんです。
僕なりの結論は、「あんま難しく考えるな」です。とにかく相手のことを思って行動する。皆さん石橋を叩きすぎだと思うので、スクールに行くぐらいなら現場に行けと言いたいです。
直受けでクライアントワークをしてみるもよし、やっている人にくっついて見せてもらうもよし。失敗してください。たくさん怒られてください、僕みたいに。本当にやりたければ、それは耐えられると思います。
念のため、スクールを否定しているわけでも、行くなと強制しているわけでもありません。あくまで僕の価値観です。ディレクターを目指してスクールを考えている方の参考になれば嬉しいです。
山塾はいつでも相談を受け付けています。勧誘はしませんし、危機感を煽ることもしないので、まずはあなたにとって役に立てる場所かどうか、お話をしましょう。
いつも読んでくれてありがとうございました。ではではでは。
まとめ
僕はディレクションを、事前に習うものではなく、相手のことを考えて行動するうちに現場で身についていくものだと考えています。
- Webディレクターの役割は、会社の形態や規模によって大きく変わり、定義は一つではない
- 飲み会の幹事のように、相手のために考えて動くこと自体がディレクション
- 僕はカバン持ちや実案件を通じてディレクターを育ててきた。案件3つほどで掴めてくる
- ツール選びより、お客さんにわかるか、仲間と信頼関係を築けるかが大事





