島根の牧場から始まる、牛乳とともに聞く朝の配信
配信は、島根県出雲市にある小さな牧場からお届けされています。スーパーやコンビニで買える身近な牛乳の魅力や、酪農の魅力を酪農家が語る番組です。
この日は7月2日の水曜日。天気は晴れで、最高気温は32度という暑い1日でした。
もうちょっと飛ばしすぎじゃないですか。7月入って。
この日のお仕事は、籾殻を取りに行くこと、獣医さんによる赤羽ワクチンの対応、そして圃場でのロータリー作業などが予定されていました。
そして今回のテーマが、リスナーから届いた去勢していない雄牛はいるのかという質問です。
なかなかこう、すんなり去勢なんてことを、この朝の爽やかな時間帯に言うのちょっと難しいところもあったりしますけど。
Spoonから届いた「去勢しない雄牛」と「野生の牛」への質問
お便りは、Spoonという配信アプリから届きました。Spoonネーム「かつ丼親子丼牛丼天丼」さんからの質問です。
雄牛で去勢しない牛っているんですか?あと野生の牛っているんですか?
まず川上さんは、去勢という言葉そのものを説明します。去勢とは、雄牛のタマを摘出して繁殖能力をなくす処置のことです。犬や猫などのペットでも行われますね。
なぜ去勢するの?食肉用の雄牛が去勢される理由
では、なぜ去勢をするのでしょうか。理由は大きく2つあります。
発情期の気性
去勢しないと発情期に気性が荒くなり、扱いづらくなる
肉質への影響
男性ホルモンで筋肉が発達し、肉質が硬くなってしまう
結果
食肉用の雄牛はほとんど去勢される
つまり、扱いやすさと肉質の両方の理由から、食肉用の雄牛はほとんど去勢されるというわけです。
去勢されない「種雄牛」という牛のエリートたち
一方で、去勢されない牛も存在します。それが種雄牛と呼ばれる、子牛を作る役割の牛たちです。
日本の和牛は、優秀な血統を毎年掛け合わせて品種改良を積み重ねてきました。川上さんは、これを競走馬のイメージにたとえます。
素晴らしい肉質の牛どうしを掛け合わせて、もっと美味しいお肉をめざしていく。その中で選ばれた「エリート中のエリート」が種雄牛です。
種雄牛は、飼いやすい肉質や体重、性格、繁殖性などを見られて選ばれていきます。
日本の中でも選ばれたエリート中のエリートですね。こちらが種雄牛になっております。
何万頭もの息子を持つ牛?種の広がり方
種雄牛は去勢されず、種を取り続けます。その種は冷凍保存され、家畜人工授精のためにストローに詰められて販売されます。
そのため、有名な種雄牛になると息子が何万頭もいることがあります。ミリオンサイヤーやビリオンサイヤーと呼ばれるような牛もいるそうです。
ホルスタインの場合は、種雄牛の種が世界中に配られ、何百万頭もの牛につながっていることもあるといいます。
野生の牛はどこにいる?絶滅した祖先オーロックス
続いて2つ目の質問、野生の牛はいるのかというテーマです。過去にさかのぼると、牛の祖先はオーロックスという牛でした。
川上さんは、当時の様子をこんなふうに表現します。キツネやタヌキ、イノシシ、クマと並ぶくらいの勢いで、野生の牛が歩いていたイメージです。
もう野生でパカパカもう歩いてる。何でしょうかね、キツネやタヌキ、イノシシ、クマ、牛ぐらいの勢いですよ。
しかしオーロックスは乱獲されてしまいました。貴族やカウボーイのような人たちがハンティングし、レジャーとして取りまくったことで絶滅したと言われています。
今、本当に野生の牛はいる?「誰かの牛」という境界線
では、現在は野生の牛がいるのでしょうか。日本にはほぼいません。世界を見ても、ほとんどいないそうです。
インドやアフリカなどで街を歩く牛を見かけることはあっても、それも誰かの牛だと川上さんは話します。
人間生活に馴染んで、人間から餌与えられた時点でもう野生ではないので。
つまり、人の餌をもらった時点で野生ではないというのが、自然と家畜を分ける境界線です。ほとんどの牛は酪農家や牧場の管理下にあります。
三島牛と隠岐島、日本に残る「野生に近い牛」
とはいえ、野生に近い牛や半野生化した牛はいるかもしれません。日本には、そうした例がいくつかあります。
日本の黒毛和牛の原種と言われ、研究のためほぼ野放しに近い形で飼われている
生まれてから出荷までほぼ放牧し、母牛に育児を任せる飼い方が残っている
三島牛は、絶滅危惧種ではないものの種を残していく観点から飼われている面もあるそうです。川上さん自身はまだ実物を見ていないとのことでした。
島根県の隠岐島では、子牛を母牛につけて育て、出荷までほぼ放牧する飼い方が今も残っています。家畜ではありますが、半野生のような牛と言えそうです。
ぜひ夏休みは、隠岐島の方に皆さん旅行に行ってみていただけたら、もう普通に牛が放牧場で歩いてますから。
ここまでで質問への答えが整理されました。去勢しない雄牛は種雄牛として存在し、野生の牛は基本的にいないけれど、昔は存在し、今は誰かの牛として飼われているということです。
リスナーと盛り上がる種雄牛トークと夏の牧場体験
配信の後半では、コメントを拾いながら種雄牛の話が続きます。リスナーからは「ヤスフク」という有名な種雄牛の名前が挙がりました。
川上さんによると、ヤスフクは20年から30年ほど前の有名な種雄牛だそうです。種雄牛は各県や精液販売会社が作っていて、県ごとにランキングもあります。
脂のサシの入り具合や枝肉重量など、求める特徴によって種雄牛を選んでいきます。この多様性があることで、いろいろなお肉が作られるというわけです。
リスナーからは「ホルスタインのイーロンマスクみたいな感じ」といった声もあり、和やかなやり取りが続きました。
川上はもう万博行こうと思ってますけど、万博で見たいと思ってるのは培養肉です。
さらに、この夏は中学生の親子が1週間ほど川上牧場に体験に来たいという申し込みが2件あったそうです。牛乳で歌おう企画の反響もあるのかもしれないと話されていました。
まとめ
去勢しない雄牛は「種雄牛」として存在し、野生の牛は基本的にいないけれど昔はいて、今は誰かの牛として飼われている。素朴な質問から、酪農と品種改良のしくみ、そして自然と家畜の境界線が見えてくる回でした。
- 食肉用の雄牛は、気性と肉質の理由からほとんどが去勢される
- 去勢されない種雄牛は選ばれたエリートで、その種は人工授精で全国・世界に広がる
- 牛の祖先オーロックスは乱獲で絶滅し、今は野生の牛はほぼ存在しない
- 人から餌をもらった時点で野生ではなく、ほとんどの牛は人の管理下にある
- 山口県の三島牛や島根県・隠岐島の牛など、野生に近い飼い方が残る例もある




