「どっこいしょ日本」の配信で印象に残ったもの
この回は、川上牧場の休憩時間にゆるく雑談する形で進みます。まず話題にあがるのは、酪農関連の配信企画「どっこいしょ日本」でした。
川上さんは、いくつかの回が印象に残っていたと振り返ります。なかでも「女子トークのやつ」や、獣医の先生とのトークが記憶に残っていたようです。
女子トークのやつはすごかったね、あれね。あれはすごかったなと思った。
獣医の先生とのトークについては、その熱量のすごさに触れています。ただ、いろんなタイプの参加者がいて、自分とはちょっと違うタイプだとも感じたようです。
やっぱああいうの熱量がすごいなと思ったけど。確かにね、あそこにちょっと違うもんね、タイプ。
永久就職できない業界に、高校生を誘っていいのか
話は、酪農をめざす高校生に向けて業界の人たちが「どんどん来なさい」と声をかけている、という状況に移ります。
川上さんは、丸山さんがスペースで話していた悩みを紹介します。中規模の牧場に就職しても、普通の会社のような永久就職は難しいところが多いのではないか、という話でした。
中規模の牧場に就職したら、60までは確実に、っていう永久就職みたいな感じは多分牧場では難しいところが多いんじゃないかって言ってて。
高校生が「頑張りたい」と言って集まる場で、大人たちは「酪農業界に来なさいよ」と勧めます。でも永久就職できない現状で、それでいいのかという悩みが出たそうです。
川上さん自身も、その悩みに共感します。高校生の意欲を応援したい気持ちはあるけれど、その先まで責任を持てるかというと、そう簡単ではないと話します。
とくに女性にとっては大変な業界だと感じていて、変えなきゃいけないとは思いつつ、女性目線でわかっていないところも多い、と正直に認めています。
わらじ職人や服飾業界と、酪農の未来を重ねる
川上さんは、島根県の酪農家の数が減っていることに触れます。40軒、下手をすれば十数軒にまで減るかもしれない、そんな業界に「入ってきなよ」と言っている、という現実です。
ここで川上さんは、廃れていった業界を例に出します。まず持ち出したのが、わらじを作る職人です。
わらじを作る人ってわかる?昔の人はわらじ履いとったけど、わらじ職人ってのがおって、その人たちは消えていったわけだ。
次に、服飾の業界の話に移ります。西洋の服が入り、中国での大量生産が進んだことで、自分で一から服を作る人はほとんどいなくなった、と説明します。川上さんの妹も服飾関係に進み、そうした現実を経験したそうです。
いまはイオンに行けば何でも見つかり、Amazonで頼めば翌日に届きます。一年かけて服が出来上がるのを待つ、という世界ではなくなってしまった、と川上さんは話します。
この流れを、川上さんは酪農にも重ねます。搾乳が好きな人がいても、その仕事はロボットに取られてしまうかもしれない、と考えているからです。
昔はバケットミルカーが普通で、そこにパイプラインやパーラーができてきた、と技術の進化を振り返ります。技術が進むほど、なくなっていく仕事があるという視点です。
「牛が好きだから安月給でいい」を断固拒否する理由
話は、酪農で働く人の給料へと移ります。川上さんは、休憩中の相手が漏らした「お金なんていらない」「牛と一緒にいたら給料が安くてもいい」という気持ちに、はっきり反対します。
これダメね。川上さんは断固拒否するけんね、そこは。
川上さんは、それを「牛の愛情の搾取」だと表現します。牛が好きだから大変な苦労もできるでしょう、という理屈で安い給料が正当化されてしまうことへの違和感です。
川上さんは、専業主婦の家事や育児を例に出します。好きだから一生懸命できるけれど、好きじゃなくなったらどうでもよくなる、というのと同じだと言います。
牛が好きという気持ちだけで、安い給料で働いていると、牛が嫌いになる出来事が1個あっただけですぐ壊れてしまう、と川上さんは心配します。
牛が嫌いな出来事が1個あった場合にすぐ壊れちゃうんだよ。
逆に給料をしっかりもらっていれば、いろんな趣味もできて気持ちに余裕が生まれ、牛の仕事も続けられる。だから給料はしっかりもらうべきだ、というのが川上さんの主張です。
初任給が30万なら、牛への接し方も変わる
川上さんは、酪農場で働いた場合の初任給の目安を挙げます。17万くらいで、そこから引かれると手取りは14万から15万くらいになるのではないか、という話です。
その金額だと、一年後にできることが少なくなってしまう。でも初任給で30万もらえたら、もっと夢が広がると川上さんは言います。
だけど初任給でもし30万もらったりしたら、もっと夢広がると思うわ。
牧場を持てなくても、少し大きい家でゆとりのある生活ができれば、牛との接し方も変わってくる。川上さんは、給料がもらえてこそ牛への向き合い方も変わると考えています。
そのうえで、牛が好きという人の力を、どうやってこの産業をより良くするほうへ生かすかを、みんなで考えないといけない、と話します。
人を雇うなら「一人あたり何頭」で考える
川上さんは、酪農の経営規模を具体的な頭数で説明します。今は一人で50頭くらい、家族経営で100頭までが目安だと言います。
ここで川上さんは、人を雇うときの考え方を語ります。家族経営に一人従業員を足して150頭では、ただの家族経営の延長になってしまう、というのです。
企業として考えるなら、3人で200頭を見られるようにしないと人を雇ってはいけない、というのが川上さんの持論です。
さらに川上さんは、1000頭を5人で飼うイメージを示します。ロボットや機械化を進めれば、一人あたり200頭になり、酪農の未来が明るく見えてくる、という考えです。
一人足して150頭を見る。規模が増えただけになりがち
3人で200頭。一人あたりの生産性を上げて雇う
小さな家族経営でも、地域の雇用を回している
川上さんは、大きな牧場が「300頭、400頭飼って従業員二十数名を抱えている」と言うことに触れつつ、小さな家族経営にも価値があると話します。
家族経営の小さな牧場でも、餌屋さんの雇用を維持している。地域にあることで、そうした雇用や労力が回っている、というのが川上さんの見方です。
酪農は入ってくるお金も出ていくお金も大きく、それだけ産業が動く。この規模の大きさが酪農のすごさだ、と川上さんは言います。
たとえば野菜を作る場合、300万くらいがくるくる回る規模ですが、酪農はこの牧場の規模でも5000万から6000万になる、と具体的な金額で比べています。
本当はのんびり牛を飼いたかった、という本音
ここで川上さんは、ふと本音をこぼします。本当は、こんな難しいことを考えずに牛を飼いたい、という気持ちです。
そんなこと考えながら牛したくないよね。普通にのんびり牛飼えたら一番いいよね、それがね。
高校生の頃は、誰にも接されず、牛や動物たちとのんびり暮らしたいと考えていた、と振り返ります。北海道の地でのびのびやりたかった、という夢もあったそうです。
その、のんびり牛を飼うという理想を実現するために、今は一生懸命頑張っている。川上さんは、そう自分の今の状況を位置づけます。
怪我や車椅子でも、牛に関われる仕事はある
川上さんは、酪農が体力勝負で、体が続かなくなったらそこでアウトになりやすい仕事だという難しさに触れます。とくに女性が怪我をして半身不随のようになった場合、雇ってもらえる場所は少ないだろう、と心配します。
それでも、牛を扱える場所はどこかにあるはずだ、と川上さんは考えます。例に挙げるのが、飼料設計の仕事です。
その飼料設計とか、あんなのパソコンに座って牛見なきゃわからないからな。だけど牛に常に接する仕事ではないじゃん。
トラクターも今は足で操作せず、右と左のレバーで動かせる。だから体が不自由でも乗れるかもしれない、と川上さんは可能性を探ります。
川上さんは、車椅子の人でも働ける牧場を作ったという事例をインターネットで見たと紹介し、面白いことを考える人がいるものだと感心しています。
自分の場所で牛を飼うことだけにこだわらず、世界中どこにでも牛がいる、と視野を広げます。それはいい可能性だと川上さんは話します。
この20年の変化から見える、酪農の可能性
川上さんは、この20年だけでロボット搾乳が当たり前になったことに驚きを口にします。学生の頃には、そんなことは想像もしていなかったそうです。
だって、この20年だけでロボット搾乳が当たり前になったんだよ。
トラクターが無人で走ることも、首輪をつけて牛の発情を見つけることも、当時は誰も思っていなかった、と技術の進化を並べます。受精卵移植も、今はカテーテル式で簡単に行えるようになった、と続けます。
さらに川上さんは、牛の乳量の伸びにも触れます。かつては1万から1万2000キロが「スーパーカウ」と呼ばれていたのに、この前は3万キロの牛が出てきた、と驚きを語ります。
川上さんは、何が起こるかわからない、可能性に満ちた業界だと感じています。羊くらいの大きさの牛が生まれて、大きな施設が要らなくなるような未来も、面白いと想像を広げます。
ぶっ飛んだ高校生の登場を、心から楽しみにしている
川上さんが期待しているのは、既存の業界に合わせるのではなく、一から作っていこうと初めから思っているような人材です。
多くの人は就職先を簡単に見つけたいと考え、業界の側に合わせて頑張ろうとする。保守的でないと経営が回らないとも言われる、と川上さんは現状を分析します。
だからこそ、いまだかつてないような「ぶっ飛んだやつ」に出てきてほしい、と川上さんは繰り返します。
もうぶっ飛んだやつ出てこないかなって本当に思ってるけどな。いまだかつてないような。
全然違う考えの高校生が生まれてきたら面白い、と川上さんは楽しみにしています。自分のアンテナの中ではまだそういう人はいないけれど、と正直に付け加えます。
自分はあと30年できるかどうかのギリギリだけど、高校生はあと40年、50年やれる。その未来が楽しみだ、と川上さんは話します。
そして休憩の終わり、川上さんは「明日のどっこいしょ日本」への出演を予告しつつ、搾乳へと戻っていきます。丸山さんがこの配信を聞いたらやりにくくなるだろうな、と笑いながら締めくくりました。
まとめ
この回は、休憩中の川上さんが酪農業界の未来を本音で語る雑談でした。高校生を応援したい気持ちと、責任を持てるのかという迷い、その両方が正直に語られています。
- 高校生に「業界へおいで」と勧めつつ、永久就職が難しい現状に川上さんは悩んでいる
- 「牛が好きだから安月給でいい」は愛情の搾取だと考え、給料をしっかりもらうことを勧めている
- 人を雇うなら「一人あたり何頭」で生産性を上げる発想が必要だと話す
- 怪我や車椅子でも飼料設計など牛に関われる仕事はあり、牛への熱意を生かしてほしいと考えている
- この20年でロボット搾乳が当たり前になった変化を挙げ、一から作る「ぶっ飛んだ」人材の登場を楽しみにしている




