エイプリルフールと今日の一日
配信は2025年4月1日、火曜日。新年度が始まるエイプリルフールということで、川上さんはさっそく「小粋な嘘」に挑戦します。
廃業しちゃったよ。
嘘嘘嘘嘘嘘。重い重い重い重い重い。
重すぎる冗談で自らツッコミを入れつつ、そのまま一日のスケジュールへ。この日の出雲市は晴れで最高気温15度、桜が一気に満開へ近づきそうな暖かさだったと話します。
仕事はもみ殻を2台取りに行き、昼からは堆肥を1台運ぶ予定。さらに、数日後に北海道から視察に来る人がいるため、牛舎の壊れているところを少しずつ直していくつもりだと語りました。
今日のテーマは「世界各国の酪農スタイル」
この日の配信テーマは、YouTubeに届いた質問への回答です。川上さんは、世界各国で牛が飼われている中で「酪農のスタイル」がどう違うのかを話したいと切り出します。
乾杯の前にはお知らせも。先週3月25日のTBSラジオで、川上牧場のオープニングでも流れる「牛乳で乾杯」がCMとして流れたそうで、radiko ── ラジオ番組をインターネットで聴けるサービス。放送後の番組は1週間だけアーカイブで聴ける。で当日16時まで聴けると案内します。
春休みは学校給食が止まるため牛乳の消費が落ちる時期。ラジオを聴きながらもう1杯飲んでもらえたら、という思いも添えられました。
Instagramでは「#未来の牛乳」として、こんな牛乳があったらいいなという声をAIアートでNFT化して販売中。売上は子供食堂への牛乳支援や、食育活動の活動費に充てているそうです。
出雲市で意識するのは「この地域に合わせた酪農」
今日のお便りは、YouTubeに届いたこんな質問でした。
出雲市で酪農をやるにあたって意識していることはありますか?修行時代は同等と聞いていましたが、意識する箇所に違いはありますか?
川上さんはまず、地域ごとにいろんなスタイルの酪農があると前置きします。世界各国で牛が飼われている中で、その土地に合ったやり方をすることが大事だという考えです。
川上さんは川上牧場を継ぐ前、酪農ヘルパー ── 酪農家が休みを取れるよう、代わりに搾乳や餌やりなどの作業を行う仕事。いろいろな牧場を回るため、多様な飼い方を経験できる。として鳥取県のダイセン乳業で働き、さまざまな牧場を見てきました。
規模は牧場によってバラバラ。2〜3頭しか飼っていない小さなところから、200〜300頭ほどの大きなところまで回ったそうです。
家族経営か従業員を使うか、機械を積極的に使うか手作業中心か。同じ酪農でもスタイルは全然違っていて、その経験が今の考え方につながっています。
港から遠い出雲、街なかで牛を飼う難しさ
出雲市ならではの事情として、川上さんはまず立地を挙げます。出雲市は港から遠く、牧草や餌は港を経由してから陸路で運ぶため、運送料がかかってしまうのだそうです。
その分、餌代が他の地域より高くなります。出雲の牛乳の値段が若干高めに設定されているのはそのためでもあり、条件的には不利な面があると率直に話します。
さらに川上牧場は「都市近郊酪農」。少し歩けばアパートやコンビニ、スーパー、ドラッグストアがあり、車で10〜15分行けばショッピングモールもあるような地域です。
だからこそ気をつけているのが、においと騒音。においは大事です、マジでねと繰り返すほど、周囲への配慮を心がけているそうです。
川上牧場は酪農教育ファーム ── 牧場での体験を通じて食やいのちの大切さを伝える取り組み。認証を受けた牧場に、子どもたちなどが学びに訪れる。の認証も受けていて、小学校や中学校、保育園の子どもたちなど外部の人が来ることもあります。だからなるべく綺麗にしている牧場だと語ります。
北海道・豊頃町で見た、全然ちがう酪農
川上さんは学生時代、北海道の豊頃町へ研修に行った経験があります。日本でも有数の規模の牧場がある、酪農のメッカのような地域だったそうです。
行った牧場は搾乳牛が200頭ほど、家族経営に従業員が1人ほど。見渡す限り牧草地や畑が広がる環境でした。
そこではTMR ── 牧草やトウモロコシなどの飼料を、栄養バランスを考えて混ぜ合わせた牛の「混ぜご飯」のような餌。を作り、畑でトウモロコシを大量に育てて重機で運ぶスタイル。出雲市とはまったく違う酪農だったと振り返ります。
もう酪農のスタイルは出雲市と比べたら全然違いますよね。まああういうところで牛を飼うべきなんだろうなと思います。
気候も大きく違い、8〜9月に行ったときも朝は寒いくらい。ただ、そのやり方をそのまま出雲市に持ってきても、うまくいくとは限らないと話します。
広大な牧草地と畑。TMRを自前で作り、トウモロコシを大量に栽培。涼しい気候で大規模に搾る。
港から遠く餌代が高い都市近郊。購入飼料が中心で、においや騒音に配慮しながら牛を飼う。
餌代も合わず、牛そのものも違うと川上さん。北海道の牛は子牛・育成牛の頃からしっかり牧草を食べて、丈夫な体とお腹ができているからあの飼い方ができる、と説明します。
一方、購入飼料で安い餌を使って育てた牛では同じスタイルは難しい。だから川上牧場は、うちに合わせたやり方でやっているのだと語りました。
牛舎の向きや屋根の形にも「地域性」がある
いろいろな地域の牛舎を見て川上さんが感じたのは、牛舎そのものにも地域に合わせた形があるということです。
たとえば風向き。日中は東から、夕方は西から風が入る土地や、ある季節に北風が強い土地では、牛舎の向きが南北だったり東西だったりと変わってくるそうです。近所の牛舎を回ると、その地域性がよくわかると言います。
屋根の形も同じで、北海道なら雪が積もっても潰れない形に、出雲市なら風が強いので風よけの松を植えたりします。棒でグイッと持ち上げて開ける「押し上げ戸」のような、地域特有の作りもあるそうです。
だからこそ、北海道で見た牧場の形をそのまま出雲に持ってきても、うまく牛が飼えないことがあるのではないか、と川上さんは指摘します。その土地の日照時間や風向き、気候に合わせた牛舎が大事だという考えです。
昔の人の知恵はすごい、天気予報がなくても
川上さんが感心するのは、昔の人の牛舎です。年配の方の牛舎を見ると、ちゃんとその地域に合った形になっているのだそうです。
茅葺き屋根や合掌造りの屋根のように、地域によって家の形が違うのと同じ。世界遺産になっている地域もある、と話しながら、その知恵に驚きを隠しません。
天気予報で1週間先まで簡単にわかる現代とは違い、昔はそうした情報がありませんでした。それでも土地に合わせた形を作れていたことが、牛舎の耐久性や使用管理にもつながっていると考えます。
出雲は湿度が高く、夏場の日照時間が短くて曇りが多い山陰の地域。だから川上牧場では、湿度が上がらないよう換気扇の数を増やすなど、暑熱対策をしっかりしているそうです。
新規就農者へ、メーカーの鵜呑みは危ない
最後に川上さんは、これから新しく牛舎を建てようと考えている人へのアドバイスをまとめます。
よく考えて、その地域で長くうまくやっている人のアドバイスを一度聞いてみるのがいい、というのが川上さんの提案です。
コメント欄では、昔の人の知恵に驚くリスナーの声が続きます。川上さんは、体感なのか代々の口伝なのか、と考えを巡らせます。
川上さん自身は他の地域で生きてきたぶん、なおさら感じるのだそう。この地域にずっと住んでいたわけではないので、ある時期にこういう風が入る、この時期が来たら夏や冬が終わった、といったことが少しずつ分かるようになってきたと話します。
農業の「何代目」という人には、自然と身についているものがある。天気予報がなかった時代は、虫が出てきたら、カエルが産卵し始めたら、といった自然の観察で判断していたのではないか、と川上さんは想像します。
牛舎を建てるなら地元の建築会社にも相談を
地域の気候に合わせた建設のすごさに話を戻し、川上さんは実際の牛舎づくりの現場についても触れます。
今は牛舎を建てると、メーカーが手配した建築会社が県外から来て建ててくれることが多いそうです。だからこそ、一部でもいいので地元の建築会社に設計やアドバイスで入ってもらうことが大事だと話します。
視察で大きな牛舎を見に行くと、「なんでこの形にしているんだろう」と思うこともあるそうです。理にかなっている場合もありますが、そうでない例もあると言います。
風向きに逆らうようにして扇風機がついてたりとか。風が入り、換気も自然の風入れた方が簡単に換気できるのにみたいな。
扉や導線の向きも同じで、自然の力をうまく使えていない牛舎もある、と川上さんは指摘しました。
監視カメラをつけた話と、夜の牛舎
最後は近況のお知らせ。川上牧場が監視カメラをつけたというXの投稿が、たくさんの「いいね」をもらったそうです。
Instagram、TikTok、YouTubeでも再生数が伸び、TikTokでは消費者からのコメントも届いたとのこと。反応の良さに、川上さんは次の企画を思いつきます。
夜の牛舎とかどうですか?見てみたいですか?ちょっと撮ってみましょうか。
夜、牛がどんなことをしているのかを撮ってみようかと提案し、リスナーの反応に応えていく姿勢を見せました。監視カメラをつける農家も最近は増えてきているそうです。
配信の締めくくりに川上さんは、まだ見ていない人はぜひ見て、いいねやコメント、リポストをしてほしいと呼びかけ、いってらっしゃいの挨拶で放送を終えました。
まとめ
今回は、出雲市で酪農をやるうえで意識していることを、リスナーの質問をきっかけに掘り下げました。餌代や気候、牛舎の形まで、どれもその土地に合わせて考えることが大事だという話でした。
- 出雲市は港から遠く餌代が高いため、都市近郊の条件に合わせた酪農をしている
- 都市近郊酪農では、においや騒音への配慮が欠かせない
- 北海道と出雲では気候も牛も違い、同じスタイルをそのまま持ち込んでもうまくいかない
- 牛舎の向きや屋根の形にも地域性があり、昔の人はそれを知恵として備えていた
- 新しく牛舎を建てるなら、メーカーを鵜呑みにせず地元の人や建築会社にも相談するとよい




