今日の川上牧場と、答える2つの質問
配信は5月9日の金曜日。晴れのち午後から雨、最高気温18度という過ごしやすい一日です。
この日は毎週恒例の整体で「バキバキの体」を直してもらう予定。その前に、家の前の畑でトウモロコシを作るためロータリーで畑を打つ作業も入っています。
川上さんが増やそうとしているのは自給飼料。牛のエサを自分の牧場でまかなう取り組みです。
今回答えるのは、stand.fmのレター機能に届いた2つの質問。「バターの色を決めるものは何か」と「牛乳にも牛の個体識別番号はあるのか」です。
バターしかなかった冷蔵庫から届いた、色の疑問
お便りは、stand.fmネームせいさんから。お酒に合うおかずを探して冷蔵庫を開けたら、バターしかなかったところから始まります。
そのおかずになるバターを見て思ったんですが、このバター白くない?バターってもっと黄色いのでは?
もう1つの質問はお肉との比較です。焼肉屋さんでは「この牛さんのお肉だよ」と番号が書いてあるのに、ミルクには「この乳牛さんのだよ」という番号を見たことがない、というものでした。
川上さんはまず、バターの色の話から答えていきます。
バターの色を決めるのは、牛が食べた草だった
バターの色は、結論から言うと乳脂肪に含まれるカロテンの量で決まります。にんじんが赤く見えるもとになるベータカロテンが、牛乳にも含まれているんですね。
カロテンは、牛が食べる青草や牧草に含まれる天然色素で、脂肪に溶け込みやすい性質があります。草をたくさん食べた牛の乳は黄色っぽく、TMR中心だと白っぽい脂肪になるというわけです。
日本のバターはほとんどが北海道産。雪がない春から秋にかけて放牧している地域では、牛が青草を食べるので乳脂肪が黄色くなりやすいそうです。
一方で冬は牛舎の中で飼い、雪のない時期に作った牧草のロールやサイレージを与えるため、白っぽいバターになります。
青草にカロテンが多く、乳脂肪が黄色っぽくなる
乾燥した牧草中心で、白っぽい脂肪になる
つまり同じ牧場でも、季節によってバターの色が変わることがあるんですね。
ただし市販のバターは、見た目を揃えるために微量のベータカロテンやアナトー色素を加えている場合もあります。「バターと言えばこの色」という均一な黄色に整えるための工夫です。
これは製品の品質を揃えるための生産努力。気になる場合は、裏の表示表を見てみてくださいね。
牛乳に個体識別番号はある? 農場単位で管理される仕組み
続いて2つ目の質問。焼肉屋さんのように、牛一頭ごとの個体識別番号は牛乳ではわかるのでしょうか。
答えは、牛一頭ごとの番号はわからないけれど、農場ごとには管理されているというものです。
日本では、牛乳を集める集乳の段階から、処理、パック詰め、流通までをすべて記録する仕組みがあります。これがトレーサビリティです。
牛一頭からこれが出た、まではわからないものの、どの農場からどの日に集めたかというロット単位の管理はできるようになっているそうです。
いつ飲んでも同じ味になる、牛乳の裏側
なぜ一頭ごとではなく農場単位なのか。その理由は、牛乳の味を安定させる仕組みにあります。
バターと同じで、牛乳も季節や時間帯によって味が変わりやすいもの。朝や夜、春夏秋冬と、365日いろんな条件で飲まれます。
そこで、いろんな牧場のいろんな牛の牛乳を混ぜて集め、1つの牛乳パックに入れることで品質を安定させているんです。
牛乳パックの上のほうに「3.5牛乳」「3.8牛乳」と書かれているのは、牛乳に含まれる乳脂肪の量。その基準を下回らないように、酪農家や乳業メーカーが混ぜているんですね。
一方で、独自に自分の牛乳を販売している酪農家さんもいます。ECサイトなどで見かける牧場指定の牛乳です。
そうした牛乳には、生産者の顔写真がラベルについていたり、ホームページのURLがついていたりします。「この牧場のこの牛から搾った」とわかるものですね。
ジェラートやヨーグルトを独自に販売しているところでは、「何々ちゃんから搾った牛です」といった独自ブランドで売っていることもあるそうです。
消費者が牛乳パックだけで牧場を特定するのは難しいけれど、管理番号としてのトレーサビリティはきちんと管理されている、というのが答えでした。
マーガリンや代替食品への、酪農家としての本音
質問への回答のあと、リスナーのコメントから話はマーガリンへと広がります。
マーガリンは完全に植物油。それでもバターに寄せて「バター何パーセント使用」と書かれることに、川上さんは思うところがあるようです。
海外ではマーガリンが「体に悪い」と言われることもある一方、日本ではよく食べられている、といった話も出ました。
乳製品に見た目や名前を寄せてくる代替食品について、川上さんは酪農家としての本音をこぼします。
もう別商品として売ってください。自分たちで頑張って。なんでこう乳製品に寄せてくるの?
消費者にとっては見分けがつきにくいからこそ、はっきり区別してほしい。そんな願いのこもった一言でした。
配信の最後には、トウモロコシ栽培にも触れています。トランプ氏の発言でトウモロコシの輸入が止まったり、すべてバイオエタノールに回されたりすれば「日本の酪農は壊滅」。だからこそ、少しずつでも自給飼料を増やす努力を続けているそうです。
まとめ
バターの色は牛が食べた草のカロテン量で決まり、季節や飼い方で白っぽくも黄色っぽくもなります。牛乳には一頭ごとの番号こそないものの、農場単位のトレーサビリティで管理され、いろんな牧場の牛乳を混ぜることで一年中同じ味に保たれています。
- バターの色は乳脂肪のカロテン量で決まり、青草中心だと黄色、TMRや牧草中心だと白っぽくなる
- 市販バターは色を揃えるためベータカロテンやアナトー色素を加える場合があり、表示表で確認できる
- 牛乳は一頭ごとの個体識別番号はないが、集乳から流通まで農場・ロット単位で記録されている
- いろんな牧場の牛乳を混ぜるのは、季節や時間帯で味がぶれないよう品質を安定させるため
- 独自販売の牛乳なら、ラベルの生産者情報から搾った牧場までわかることもある




