今日の質問は「牧草の農薬は牛に残る?」
今回の配信では、リスナーから届いた質問に答えていきます。テーマは、牛が食べる牧草に使われている農薬のこと。
牛の飼料には海外から輸入される牧草も多いのですが、そこに使われている農薬が牛に残らないのか、という気になるポイントです。
牧草の農薬は牛に蓄積しますか?また、フグのように人間が食べることにより生物濃縮は起きますか?
農業関係の学校に通っていたというケチャライズさんならではの、ちょっと科学的な質問です。川上さんは「土曜の朝にはちょっと重たいかもしれないけど、豆知識として聞いてね」と前置きしながら答えていきます。
そもそも農薬には厳しいルールがある
まず大前提として、川上さんが強調するのは農薬の使い方のルールです。牧草に限らず、農薬の使用には非常に厳しい決まりがあると話します。
登録された農薬しか使えないこと、使用量や使用期限、収穫前の安全期間などが細かく決まっているんですね。
さらに抜き打ちの検査が入ることもあり、違反があればその製品自体が出荷停止になります。
川上さんは、安全の前提条件はかなりしっかり設計されていますと話します。特に日本は、海外に比べてもこの点が厳しいそうです。
胃袋が4つある牛の体のしくみ
結論から言うと、一般的な使用範囲であれば、牧草に残った微量な農薬が牛に蓄積することはほぼないとされています。その理由が、牛の体のしくみにあります。
牛は胃袋が4つある反芻動物です。人間のように食べたものがそのまま吸収されるわけではありません。
牛は胃袋にいる微生物の力を借りて、多くの物質を分解しています。人間が牧草を食べてもなかなか消化できないのに対して、牛のお腹の中の微生物は草をしっかり分解できるんですね。
さらに肝臓でも解毒機能が働くため、多くの物質は体の外へ排出されます。
川上さんによると、牛の肝機能はあまり性能が高くないため、有害物質が体内に入るとすぐに体調を崩してしまうそうです。だからこそ、元気に健康に育てるには残留農薬や余計な投薬はほぼないのが普通だと話します。
厳しいルール
登録農薬のみ・使用量や安全期間を守り、抜き打ち検査もある
胃の微生物が分解
4つの胃にいる微生物が多くの物質を分解する
肝臓で解毒
解毒機能が働き、多くの物質が体外へ排出される
もちろん、大量に農薬を混ぜた飼料をずっと与え続ければ影響が出る可能性もゼロではありません。ただ、普通の牧場、特に日本の牧場では安全期間を守ることで、リスクを限りなくゼロに近づけているというわけです。
フグのような「生物濃縮」は起きるのか
ここからは、質問のもう一つのポイント、牛肉や牛乳に生物濃縮が起きるのか、という部分です。
結論としては、通常の酪農や畜産で生物濃縮が起きることはほとんどないと川上さんは話します。
生物濃縮は、水銀やPCBのように分解されずに脂肪にたまり続ける物質が、食物連鎖の中でどんどん濃縮していく現象です。
しかし、牛に与える餌にはそういった難分解性で残留性のある有害物質は含まれていません。だから起こることはない、というのが川上さんの説明です。
仮に過去に汚染された土壌などが見つかれば、国や自治体がすぐに出荷停止や検査を行います。つまり、フグのような例とは根本的に条件が異なるんですね。
日本の牛乳・牛肉の安全性はどれくらい?
実際、日本の牛乳や牛肉から残留農薬が検出される率は非常に低いそうです。
国のモニタリング調査では検出すらされないケースが多く、仮に検出されても基準値の10分の1以下という例が多いといいます。
これは、現場での徹底した記録とルールのもとで運営されているからこそ。川上さんは、食肉処理場では肉の検査をする獣医師が張り付いていると話し、日本は本当に安全基準が高いと語ります。
「自分の家族に食べさせたいか」を基準に
最後に川上さんは、牧草の農薬は正しく使えば牛に蓄積はされないこと、フグのような生物濃縮は通常の牛乳や牛肉には起こらないことをあらためてまとめます。
そして日本の酪農は、世界でもトップクラスの安全性と記録管理があると話します。
牛を育てる側としての基準は、自分の家族にも食べさせたいかどうか。配信の冒頭で乾杯した牛乳も、川上さんがついさっき搾ったものだそうです。
自分で飲むんで、これが危険だったり危なかったりしたら、ちょっと飲みたくないんでね。自分がおいしいものを飲みたいと思ってるんで
獣医さんが来る予定があるということで、この日は少し巻き気味の配信。土曜日の朝、リスナーへの「牛乳飲んでね」というメッセージとともに締めくくられました。
まとめ
今回は、牧草の農薬と生物濃縮について、酪農家の川上さんが科学的な視点で答えてくれた回でした。ルール・牛の体のしくみ・国の検査という3つの安心材料が、牛乳や牛肉の安全を支えていることがよくわかります。
- 農薬は登録品のみ・使用量や安全期間など厳しいルールで管理されている
- 牛は4つの胃の微生物と肝臓の働きで、多くの物質を分解・排出する
- 水銀やPCBのような生物濃縮は、通常の牛乳や牛肉では起こらない
- 日本の牛乳・牛肉は残留農薬の検出率が非常に低く、安全基準が高い
- 川上さんの基準は「自分の家族に食べさせたいか」という一点



