雨の出雲から、研修生と一緒に配信スタート
7月1日、2024年の後半に突入した朝の配信です。島根県出雲市はあいにくの雨で、大雨警報が出ているなか、川上牧場からお送りしています。
この日から中四国酪農大学校の学生さんが研修に参加していて、一緒に勉強しながら配信を進めていくスタイルです。
研修生頑張ってね、これ。
頑張ってます。
さっそく「今日は何を勉強していきましょうか」という流れで、研修生から出てきたテーマが「乳房炎ワクチン」でした。
さっきもちょっと話したんですけど、乳房炎ワクチンについてちょっと。
そもそも「乳房炎」って牛にとってどんな病気?
まずは乳房炎そのものの説明から。乳房炎は、人間でいう乳腺炎にあたる、牛のおっぱいの病気です。乳房炎 ── 牛の乳房が細菌などによって炎症を起こす病気。乳量の低下や乳質の悪化を招き、酪農経営に大きく影響する代表的な疾病。
これになると、お乳が上手に出なくなったり、体細胞数が上がったりします。体細胞数 ── 牛乳に含まれる白血球などの細胞の数。乳房炎になると増える傾向があり、乳の品質を示す指標として使われる。
牛さん自身の体調も悪くなり、餌を食べなくなったり熱が出たりすることもあるそうです。さらに牛乳の風味や味まで悪くなってしまいます。
味の話から、川上さんは研修生に「乳房炎の乳を舐めたことある?」とたずねます。
ないです。
あ、ないのか。まあやめた方がいいけど。いろんな菌が入ってるからやめた方がいいけど。
昔は舐めて味を確かめ、乳房炎かどうか判断していたという話もあります。炎症を起こしていると、血液から牛乳を上手に変換できず、塩味が出てしまうのだそうです。
ただし川上さんは、本当にやめたほうがいいと繰り返します。黄色ブドウ球菌や大腸菌が入っていることがあり、舐めるとお腹を壊す危険があるからです。
どこにでもいる黄色ブドウ球菌、人にもうつる?
ここで話は、乳房炎の原因になる菌そのものへ広がっていきます。研修生が「乳腺炎って人間がなるとどうなるんですか?」とたずねると、川上さんは人間にも起こりうると答えます。
黄色ブドウ球菌は厄介で、抗生剤が効きにくいのが特徴です。黄色ブドウ球菌 ── 人や動物の皮膚などにいる身近な細菌。毒素を出すタイプがあり、抗生剤で菌を殺そうとするとかえって毒素が出て悪化することがある。
抗生剤打ったら黄色ブドウ球菌死んじゃって毒素体だから出してなっちゃうから。抗菌剤みたいなやつで抑えるしかないから。
この菌は特別なものではなく、身の回りのどこにでもいると川上さんは言います。実際に、酪農家の知り合いが感染した経験も紹介されました。
その方は毎日十何時間も働いてヘロヘロになっていたところ、ちょっとした擦り傷が急に腫れてきて、病院で調べたら黄色ブドウ球菌だったそうです。
体が弱ってるから。黄色ブドウ球菌ってそもそも体をやっつける力もあんまないんだけど、体が弱って抵抗力がないとそこから増えてきちゃうやつで。
普段はおとなしくしている菌が、抗生物質などで他の菌がいなくなったときに増えてくる、という説明も出てきます。いわゆる日和見菌のようなイメージです。
いつもそんな悪さしない。
いつも悪さしないというか、あんまりおかしなことになってないんだけど。そういう菌です。
大腸菌についても同じような話があります。牛が乳房炎になったときに急いで薬を入れると、中毒症状でショック死したり、餌を食べなくなったり、熱が急に上がったりすることがあるそうです。
どこにでもいる身近な菌。抗生剤で殺そうとすると毒素を出して悪化するため、抗菌剤で抑えるしかない
乳房炎のときに急いで薬を入れると、中毒症状でショック死や発熱、食欲低下を起こすことがある
海外で何十年も使われていたワクチンが日本へ
こうした厄介な菌に対抗するために登場したのが、乳房炎ワクチンです。川上さんによれば、日本での発売はおよそ7〜8年前で、それ以来ずっと使い続けているそうです。
出た時からですか?
出た時から。
このワクチンは「スタートバック」という商品名で、海外ではすでに何十年も使われていた薬でした。日本では長く認可されておらず使えなかったものが、ようやく発売されたという経緯があります。スタートバック ── 牛の乳房炎対策として使われるワクチンの商品名として紹介されているもの。ここでは川上さんが発売当初から使っている製品として語られている。
川上さんは、岡山県で共立製薬が開いた発売前の勉強会に参加し、海外から来た講師の先生から直接説明を聞いたと振り返ります。
そのワクチンを使うことで、黄色ブドウ球菌や大腸菌系の乳房炎はある程度防げるというのが、実際に使い続けてきた川上さんの実感です。
注射はどうやって打つ?気になる効果の話
最後は、研修生が気になる「どう打つのか」「どれくらい効くのか」という具体的な質問へ移っていきます。
乳頭に注射なのか、点滴なのか、どうやって使うんですか?
研修生 さんからの質問
乳頭に打つようなものではなく、人間のコロナワクチンやインフルエンザワクチンと同じように、筋肉注射でバンッと打つタイプだそうです。
全然そんな感じじゃないです。普通にあの、筋肉注射っていって、人間にもここにこうワクチン打ったりするじゃないですか。
続けて研修生が「効果ってどれくらいなんですか?」とたずね、話は抗体の話へと入りかけたところまで進みました。
まとめ
研修生の素朴な疑問から始まったこの回は、乳房炎という病気の中身から、原因になる菌の怖さ、そして海外から入ってきたワクチンの話まで、酪農の現場ならではのリアルな知識が詰まった内容でした。
- 乳房炎は牛のおっぱいの病気で、乳量や乳質の低下、体調不良、牛乳の味の悪化を招く
- 黄色ブドウ球菌や大腸菌は抗生剤が効きにくく、扱いを間違えると悪化やショックを招くことがある
- 黄色ブドウ球菌はどこにでもいる身近な菌で、体が弱ると人間の傷口でも増えることがある
- 乳房炎ワクチン「スタートバック」は海外で何十年も使われ、日本ではおよそ7〜8年前に発売された
- ワクチンは乳頭ではなく、人間のワクチンと同じように筋肉注射で打つ



