大阪万博のパビリオンで培養肉が展示される
今回の配信は、始まったばかりの大阪関西万博の話題からスタートします。
川上さんが取り上げたのは、島津製作所のプレスリリースで紹介された展示。培養肉未来創造コンソーシアムが、大阪ヘルスケアパビリオンで培養肉の実物とミートメーカーを「家庭で作る霜降り肉」として展示するというものです。
このパビリオンは「REBORN」をテーマにしていて、来場者が自分のアバターをリボーンさせられる体験ルートが用意されています。
展示のコンセプトは、お肉は店で買うものから家庭で作るものへ。個人の健康や好みに合わせた霜降りステーキを作れるミートメーカーが、家庭のキッチンにある未来を表現しているそうです。
さらに期間中の7月8日には、焼いた培養肉の香りを体験できるイベントも予定されているとのこと。
そもそも培養肉ってどんなお肉?
ここで川上さんは、培養肉そのものについておさらいします。
培養肉とは、動物の細胞をちょっと採取して、それを体外で、シャーレなどを使って培養して作られるお肉のこと。牛に餌をあげて1年間育ててお肉にする従来のやり方とは、まったく違うアプローチです。
従来のお肉に比べて環境負荷を下げられることや、食糧問題の解決策として注目されている技術だと川上さんは説明します。
世界に目を向けると、シンガポールや中国、アメリカの一部の州ではすでに販売されていて、ハンバーグやナゲットなどに使われているそうです。
日本で開発を進める6社と、まだ食べられない現実
では日本ではどうかというと、この培養肉未来創造コンソーシアムが開発を進めています。
構成しているのは、大阪大学大学院工学研究科、島津製作所、伊藤ハムホールディングス、トッパンホールディングス、シグマクシス、ザクロスの6社。3Dバイオプリント技術による培養肉製造技術の社会実装を目指しています。
ただ、日本では培養肉があまり普及していません。初めて聞いたという人も多いのでは、と川上さんは話します。
大きな理由のひとつが法整備です。万博でも香りを嗅ぐことしかできないのは、法律上、日本では培養肉を食べてはいけないから。
法律的にはですね、まだこの培養肉、作られたものを日本の中ではまだ食べてはダメなんですよね。あの、研究過程でも食べちゃダメっていうようになってます。
食べたときにどういう影響があるのかがまだ調べられていないなど、実証するには課題がいっぱいある状態なんですね。
コストと技術、そして日本の「100%を目指す」性格
課題は法整備だけではありません。川上さんは、生産コストと技術の面からも整理していきます。
日本はエネルギーを輸入している国なので、どうしてもエネルギーに依存する部分があります。そのぶん培養肉の生産コストが高く、一般の消費者に手が届く価格帯にはなっていません。
技術的にも、筋肉の繊維や脂肪細胞の再現は難しく、従来のお肉と同じ食感や味を実現するにはさらなる開発が必要だといいます。
ここで川上さんは、日本ならではの傾向を指摘します。日本は100%のお肉、ステーキのようなものを目指しがちで、匠の技を追求しようという国民性があるのでは、という見方です。
ハンバーグの合い挽き肉やナゲットの中身の「何%が培養肉」という形で、混ぜて販売する例がある
ステーキのような100%の培養肉を目指しがちで、技術を追求する傾向がある
この違いが、普及のスピードにも関わってきそうです。
コスト削減・消費者理解・法整備、これからの展望
続いて、今後の展望が3つの方向で語られます。
まずコスト削減。培養液の低コスト化や大量生産技術の開発が各社で進められています。次に消費者理解の促進で、安全性やメリットを広めるための情報発信や試食イベントが計画されているそうです。
そして法整備の検討。政府や関連機関が、安全性評価や表示基準の制定に向けた議論を始めているとのことです。
培養肉は食糧問題や環境負荷の軽減に貢献できる可能性を秘めている一方で、技術的・経済的・社会的な課題も多く残されている。万博の展示は、その解決に向けた一歩になりそうだ、というまとめです。
川上さんは、以前の配信で未来の食について話したことにも触れます。各個人の体調に合わせてカスタマイズされた食品や、3Dプリンターで家庭で食品を作れるようになる未来。それがもう万博の時点で始まっていると話します。
そのうえで、大事なのは知ることだと語ります。
やっぱ恐怖感みたいなのがあるじゃないですか。まだ未知のものってやっぱ怖いっていう印象もあったりするので、この大阪万博に行ってもらって知ってもらえると嬉しいかなというところですね。
培養肉が増えたら、普通のお肉は希少になる?
最後はコメントで届いた質問に答えるコーナーです。「培養肉が増えてきたら、普通のお肉は希少性が上がる可能性はあるんですか?」といういい質問が寄せられました。
川上さんの答えは、アメリカの事例から。すでに培養肉を作っている農家がいて、生産性を上げる形で使われているそうです。
たとえば1000頭を飼っていた農家が規模を500頭に縮小しても、農場内に培養する施設を作ることで、1000頭分の生産量を保てるといいます。つまり培養肉は、既存の農家を守りながら経営の幅を広げる技術にもなり得るわけです。
だからあの、農家の生産性を上げるみたいな観点で使われてますね、アメリカでは。
川上さん自身も、そういう形を目指していると話します。ドイツでは、コンテナハウスのような設備を農家に持ち込んで培養肉を作ってもらい、それをすべて買い取るサービスを始めた企業もあるそうです。
一方で日本は、やはり電気代や燃料代といったエネルギー面のコストが課題になる。海外ではそのあたりの条件もあって、どんどん進んでいるところがあると川上さんはまとめました。
まとめ
大阪関西万博の展示を入り口に、培養肉の仕組みから日本の課題までを酪農家の視点で語った回でした。技術そのものだけでなく、法整備や消費者理解、そして農家の経営という現場目線が印象的です。
- 万博の大阪ヘルスケアパビリオンで、培養肉の実物とミートメーカーが「家庭で作る霜降り肉」として展示される
- 培養肉は動物の細胞を体外で培養して作るお肉で、海外ではハンバーグやナゲットにすでに使われている
- 日本では法整備が未完で、研究過程でも食べることが認められておらず、生産コストや技術の課題も残る
- 海外では培養肉を混ぜて販売するのに対し、日本は100%の培養肉を目指しがちという傾向がある
- アメリカでは培養肉が農家の生産性を上げる形で使われ、既存の農家を守りながら経営の幅を広げる可能性がある


