晴れ時々曇りの土曜、三世代の酪農体験を迎える朝
配信はいつもの朝のあいさつから始まります。この日は6月28日の土曜日、晴れ時々曇りで気温は27度。気持ちのいい風が吹く梅雨空のもと、牛たちがのんびり餌を食べていたそうです。
土曜日ながら、川上さんの1日はなかなか忙しそうです。おじいちゃんとご夫婦、お孫さんという3世代での酪農体験の対応が控えていました。
体験の前には育成舎の掃除、久しぶりに入った堆肥の注文の配達、さらにお昼には堆肥舎の見積もりについて業者との打ち合わせも予定されていたそうです。
この日のテーマは、配信アプリのスプーンに届いた「牛に音楽を聴かせるとどうなるんですか?」という質問。動物は音に敏感なだけに、音楽が牛にどんな影響を与えるのか、気になるところですよね。
淡路島やイタリアにもある「牛に音楽」の取り組み
乾杯やお知らせをはさんで、お便りコーナーへ。今回の質問はスプーンネーム・みずみずしいさんから届いたものです。
音楽を流して味噌を熟成させるみたいな話をたまに耳にしますが、酪農にもそういった取り組みがあったりしますか?
川上さんはまず結論から答えます。牛に音楽を聴かせて生産性を上げるという研究は、実は昔からあるそうです。
牛に音楽を聞かせて生産性を上げるっていう研究がですね、昔からあったりします。
海外の事例として挙げられたのが、オーストラリアやイタリア。牛にクラシックを聴かせることで、牛のストレスが軽くなり、乳量や乳質が向上したという研究報告があるといいます。
味噌やチーズを音楽で熟成させる話と近いようで、酪農の場合は主に「牛そのもの」に音を聴かせるアプローチが中心になっているんですね。
牛が苦手な音、落ち着く音
そもそも牛には、どんな音がどう聞こえているのでしょうか。川上さんによると、牛は動物だけあって耳がよく、音はしっかり聞こえているそうです。
ただし、苦手な音もあります。大きな音や、スコップなど金属が擦れる金切り音、女性や子どもの高い声などは、牛にとってちょっと苦手なのだとか。
一方で、ゆったりしたテンポの音楽や、男性の低い声は落ち着くといわれています。すきま風の「キュー」という音も嫌がるそうです。
苦手な音が聞こえていると、牛はずっと立ったまま緊張し、耳をピンと立てて、なかなかリラックスした様子にならないといいます。
大きな音、金属が擦れる金切り音、女性や子どもの高い声、すきま風の「キュー」という音
ゆったりしたテンポの音楽、男性の低い声、クラシック
クラシックを聴かせると牛が寝ている時間が増えるそうで、川上さんはその理由として「f分の1のゆらぎ」の効果を挙げていました。
リラックスしたのは牛?それとも人間?
ただ、この話にはおもしろい続きがあります。「音楽で牛がリラックスした」という研究結果が本当なのか、さらに検証が進められているそうです。
最近の研究では、少し違う見方も出ているといいます。
人間が音楽を聴いてリラックスして、その作業をしている人間がリラックスしているから牛がリラックスしているんだっていう、そういう研究結果も出てます。
つまり、音楽で落ち着いたのは牛ではなく、そばで作業する人間のほうかもしれない、という視点ですね。どちらにしても、牛舎にクラシックを流すのは効果的といえそうです。
さらに川上さんは、個人的な見立ても付け加えます。牛はとにかく慣れるのが早い動物なんだそうです。
環境の変化には敏感なんですけど、その変化したやつが続くと、慣れる習性があったりしますんで。
だからクラシックをずっと流し続けても、慣れてしまえば意味がなくなるのでは、と川上さんは考えています。
その例として挙げたのが、東日本大震災のときの牛の話です。毎日のように余震が続くなか、人間はストレスを感じていましたが、牛も2週間ほどで慣れてしまい、少しの揺れでは動じなくなったと、福島の酪農家から聞いたそうです。
売れている「モーツァルト牛乳」と、川上さんのイヤホン
話は、実際に音楽を取り入れた牛乳へと移ります。日本にも、そうしたコンセプトの牛乳があるそうです。
紹介されたのは、淡路島牛乳株式会社の「モーツァルト牛乳」。牛舎の中でモーツァルトの音楽を聴かせた乳牛から搾った牛乳で、けっこう売れているといいます。
では川上牧場ではどうしているかというと、牛舎に音楽を流してはいないそうです。その代わり、川上さん自身がイヤホンをつけて過ごしています。
Voicy聞いたりとか、ポッドキャスト聞いたりとか、stand.fm聞いたりとか、そんなのをずっとやってますね。
音楽を流していたのは牛ではなく、飼い主のほう。自分がリラックスしていれば、それが牛にもつながるというのが、川上さんの実感のようです。
好きな音楽のコメント募集と、牧場からのお知らせ
最後は、リスナーへの呼びかけとお知らせで締めくくられます。川上さんは「こんな音楽を聴かせてみて」というコメントを募集しつつ、ちゃっかり自分のスタイルも守っていました。
ちょっと牛舎でイヤホンつけてるんで、他の音入りたくないんでやですって答えます。
この日のお知らせは盛りだくさんでした。特に力が入っていたのが、6月30日発売の川上牧場初のKindle本です。
タイトルは『酪農未経験者のために』。酪農を夢見ていた幼い頃の川上少年に向けて、「子どものときこんな本があったらいいな」という思いで作った1冊だそうです。
新規就農や酪農業界に興味がある人の力になれたら、という内容で、小学生のお小遣いでも買える350円。ただしこの価格は発売までの予約期間だけとのことでした。
もうひとつが、6月の牛乳月間にあわせた「牛乳で歌おう」企画です。オープニングでも流れる「牛乳で乾杯」の曲を覚えて、指定のハッシュタグをつけて投稿すると、川上牧場からプレゼントが当たるキャンペーンでした。
- #牛乳の日
- #ワールドミルクデー
- #牛乳で歌おう
前日にはプロの音楽バンドの方が「牛乳で乾杯」を演奏してくれた作品も上がっていたそうで、この企画も残り2日というタイミングでの呼びかけでした。
まとめ
今回は「牛に音楽を聴かせるとどうなる?」という質問をきっかけに、牛と音の関係をやさしく掘り下げた回でした。クラシックで牛が落ち着くという研究がある一方で、実はリラックスしていたのは人間かも、という視点がとても印象的でしたね。
- 牛に音楽を聴かせて乳量や乳質の向上を狙う研究は、海外を中心に昔から行われている
- 牛は金切り音や高い声が苦手で、ゆったりした音楽や男性の低い声で落ち着くとされる
- 最近は「牛ではなく作業する人間がリラックスしているだけ」という研究結果もある
- 淡路島牛乳の「モーツァルト牛乳」は、牛に音楽を聴かせた牛乳として実際に販売され人気
- 川上さん自身は牛舎でイヤホンをして過ごし、自分のリラックスが牛にもつながると考えている




