そもそも「牛乳豆腐」って何者?
きっかけは、YouTubeネームせいさんからのお便りでした。テレビで嵐の相葉さんが十勝で牛乳豆腐を作っている一幕を見て、「川上さんは作ったこと・食べたことありますか?」という質問が届きます。
相葉くんが十勝で牛乳豆腐を作ってましたが、川上さんは作ったこと食べたことありますか?
答えはシンプルで、川上さんは食べたことがあるそうです。むしろ川上さん世代にとっては「あるある」なのだとか。
今若い子はあんまないのかなと思ったりしますけど、僕世代の方はね、牛乳豆腐はもうあるあるじゃないですかね
ここで大事なのが、テレビで作られていたものと、酪農業界で言う牛乳豆腐は少し背景が違うという点です。
テレビでは放送上の都合で出荷できる普通の牛乳を使い、温めてレモン汁で固めていたと川上さんは推測します。一方、酪農業界の牛乳豆腐は、もっと現場に根ざしたものなんです。
牛が分娩してから10日間は、法律で牛乳を出荷できません。その捨てるにはもったいない牛乳を、自分たちで食べてしまおうという発想が牛乳豆腐なんです。
おうちで作れる基本の牛乳豆腐レシピ
ここからは、家でも簡単に作れる牛乳豆腐のレシピを川上さんが紹介していきます。約2人分の材料は、成分無調整牛乳500ミリリットル、酢またはレモン汁大さじ2、塩ひとつまみです。
作り方はとてもシンプル。流れを追ってみましょう。
なぜ固まるのか、その仕組みも川上さんが説明してくれました。牛乳の主役タンパクであるカゼインは、普段は丸く集まって浮いています。
そこに酸を入れるとpHが下がり、カゼイン同士が手をつないで網目状になります。そこへ水分が押し出されてホエイと分かれる。これが凝固です。
牛乳+豆乳+にがりの豆腐と理屈は似ていますが、固めるのは豆ではなく乳のタンパク。だから食感も味もチーズ寄りになるんですね。
甘くもしょっぱくも楽しめるアレンジ
牛乳豆腐は、味付け次第でいろんな顔を見せてくれます。しょっぱい系ともっちり系、デザート系まで幅広く楽しめるんです。
もっちり牛乳豆腐(パニール風)は、濾した後に布で包んで軽く重石をして30〜60分。サイコロ状に切って塩・オリーブオイル・黒胡椒で前菜にしたり、味噌漬けにして和風チーズにもできます。加熱しても崩れにくいので、野菜炒めやカレーにも使えます。
デザート系は、牛乳400ミリリットルと砂糖大さじ2を温め、ゼラチン5グラムをふやかして溶かし、器に流して冷蔵で2〜3時間。仕上げに黒蜜やきな粉、蜂蜜をかけていただきます。
この牛乳餅は、川上さん自身も酪農家さんの奥さんが作ってくれたものを食べたことがあるそうです。
これぷるんとして。牛乳餅ですね。美味しいです
なかでも川上さんイチオシは、みりんと醤油で漬けたもの。ねっとりした食感になって、日本酒との相性が抜群なのだとか。
みりんと醤油でつけたやつはめっちゃ美味しいですね。ねっとりするやつになって、あれと日本酒がめっちゃ美味しいんです
作るときに知っておきたい、失敗しないコツもまとめてくれました。
- 牛乳は成分無調整を使う。超高温殺菌や低脂肪は分離しにくいことがある
- 温度は85〜90度、沸騰させない。熱すぎるとざらつき、低すぎると固まりが弱い
- 酸は回し入れてそっと混ぜ、待つ。混ぜすぎると粒が細かくなる
- まとまらない時は酸を5ミリリットルずつ追加する
- 塩は最後に入れる。最初に入れると凝固を邪魔することがある
さらに、分離して残ったホエイも捨てずに使えます。パンケーキやピザ生地に混ぜるとしっとり旨味がアップし、鶏胸肉を塩と一緒に30分マリネするとしっとり仕上がります。
チーズの起源は「馬に乗ってたら固まった」?
リスナーからは「牛乳にお酢を入れようと考えた人はすごい」というコメントも。これに対して川上さんは、そもそもチーズは実験で生まれたわけではないと話します。
起源はモンゴルやヨーロッパで、子牛の胃袋を水筒代わりにしていたことにあるそうです。
そこに牛乳を入れて馬で長距離を運び、喉が渇いて飲もうとしたら、子牛の胃袋のレンネットによって牛乳が固まってチーズになっていたというのが最初なんだとか。
ちなみに、牛乳を固めるにはまず温めるのが大切だと川上さんは補足します。冷たいままだと脂肪球がくっつかず、うまく固まらないそうです。
なぜ「牛乳豆腐」として売れないの?
「川上さんの情熱牛乳豆腐、販売いつですか?」というコメントも寄せられましたが、これには意外な答えが。牛乳豆腐は販売できないのだそうです。
牛乳豆腐は販売しちゃダメなんですよね
理由は「豆腐」という名前にあります。豆腐は豆から作られたもの。牛乳を固めたものはあくまでチーズだからです。
食品表示法などのルールがあるため、牛乳豆腐という名前では売れないものの、カッテージチーズとしてなら販売できるかもしれない、と川上さんは話しています。
最後に川上さんは、牛乳1リットルからチーズは100グラムほどしかできず、たくさんの牛乳を消費できると紹介。ぜひ作って、写真をYouTubeコミュニティに上げてほしいと呼びかけました。
まとめ
今回は、テレビで話題の牛乳豆腐について、酪農家ならではの視点でその正体からレシピ、豆腐と呼べない理由まで語られた回でした。おうちでも気軽に試せるので、ぜひ牛乳を片手に作ってみてくださいね。
- 酪農業界の牛乳豆腐は、分娩後10日間の出荷できない牛乳を活用する発想から生まれた
- 作り方は牛乳を85〜90度に温めて酸を加えるだけ。仕組みはカゼインが酸で固まる凝固反応
- 味付け次第で前菜からデザートまで楽しめ、みりん醤油漬けは日本酒との相性が抜群
- チーズの起源は、子牛の胃袋を水筒にして牛乳を運ぶうちに偶然固まったこと
- 「豆腐」は豆から作るもの。牛乳を固めたものはチーズなので、牛乳豆腐としては販売できない



