今日はどんな一日?堆肥車の修繕から牧場体験の準備まで
配信が始まってまず語られたのは、この日の予定です。曇りのち雨、最高気温23度という過ごしやすい天気の中、川上さんはやることがいろいろあるようです。
この日は壊れてしまった堆肥車の修繕がテーマ。修理のお金が足りないので、JAに相談へ行く予定だそうです。
堆肥車が壊れてしまってね。それの修繕をするための予算がちょっと足りないので、それを借りるためにJAに行って相談してこようかなと思います。
さらに近くの酒造会社から酒粕を取りに来てほしいと連絡があり、その回収にも回るとのこと。ここからすでに、酪農がいろんな仕事の組み合わせでできていることが伝わってきます。
そしてこの日の配信の目的が明かされます。来週、去年・一昨年に続いて養護学校 ── 障がいのある子どもたちが学ぶ学校。特別支援学校のこと。の生徒さんが牧場体験に来るため、事前にもらった質問に答えていくという内容です。
事前にこれを聞いてくれたら嬉しいなって。事前に勉強して体験するのが一番体験の質が上がりますから。
酪農家って毎日どんな仕事をしているの?
ここからが本題の質問コーナー。全部で8つの質問があり、この日はそのうちの前半をお答えしていきます。
最初の質問は「牛を育てたり、乳を絞ったり、餌をあげたりしていますか?」というもの。答えは、もちろんやっています、でした。
毎日ね、365日休まず、たまにヘルパー取って休んだりもしてますけども。それが酪農という仕事ですね。
川上さんは酪農という仕事の本質を、こんなふうに説明します。人間が食べられない草を牛に食べさせて、人間が食べられるものに変えていく仕事だといいます。
1日のスケジュールもかなり具体的です。朝は早く、夜遅くまで牛と向き合う毎日が続きます。
こうして牛が健康を保ちながら、おいしい牛乳を出せるように管理していくのが酪農家の仕事なんですね。
牛は何を食べている?地域の「捨てられるもの」が餌になる
2つ目の質問は「牛は何を食べていますか?」。基本は牧草という牛専用の草ですが、それだけではありません。
トウモロコシを使った配合飼料や、ビタミン・ミネラルを補う栄養剤なども混ぜているそうです。牛は1日に30リットルや40リットルもお乳を出すため、たくさんのカロリーを消費してしまうといいます。
だからこそ、牛が痩せず、健康を保ち、次の赤ちゃんを産める体になるように、タンパク質や炭水化物などの栄養設計をしっかりしているとのことです。
そして川上牧場ならではの特別な餌が紹介されます。地域で出た、人間が食べられなくなったものを餌に変えているのがポイントです。
- もやし工場から出るもやし
- 酒造会社から出る酒粕
- 醤油会社から出る醤油粕
- 栄養補助食品の会社から出るクロレラの粉末
地域で捨てられていたものを牛の餌にして、みんなが食べられる牛乳やお肉に変えていく。捨てられるはずだったものが、牛を通して食べものに生まれ変わるというわけです。
牛はどれくらい食べる?「実はアスリート」という意外な素顔
3つ目の質問は「牛はどれくらいご飯を食べますか?」。川上さんはまず、牛の体重をクイズのように問いかけます。
牛の体重は大体600キロから700キロ。成人男性が60〜70キロくらいなので、人間の10倍だと思うとわかりやすいそうです。
では、その牛はどれくらい食べるのか。人間が1日に食べる量と比べると、その多さに驚きます。
3食で大体1キロくらい食べたらすごいほう
水分を抜いた乾物で20〜25キロ、水分を含むサイレージなら40〜50キロ
水を飲む量もすごい量です。1日に牛乳を30〜40リットル出すため、水は100リットル、多い牛だと200リットルも飲むそうです。しかもこれが牛1頭分。
ここで川上さんは、牛のイメージをくつがえします。ノソノソしてどんくさそうに見える牛ですが、実はギリギリまで食べ続けるアスリートなのだといいます。
だからどれだけ牛に食べさせられるかが、酪農の技術でもあるんですね。
牛の赤ちゃんもお乳が出る?大人でも間違えやすい話
この日の最後の質問は「牛の赤ちゃんもお乳が出ますか?」。川上さんいわく、これは大人でも勘違いしがちな、いい質問なのだそうです。
子牛でもお乳が出たりとか、オスでもお乳が出るんでしょ?って思ってる方いませんか?
答えはこうです。お乳が出るのは、赤ちゃんを産んで出産を迎えた牛だけ。だから子牛も雄牛もお乳は出ません。
酪農家のところにいる牛はほとんどが雌牛ですが、雌だから出るというわけでもない、というのがポイントです。
川上牧場では、生まれた子牛を大きく育てて赤ちゃんを産めるようにする「自家育成 ── よそから牛を買わず、自分の牧場で生まれた子牛を育てて次の乳牛にしていく飼い方。」を続けています。
生まれる
子牛が生まれる
1歳ごろ
赤ちゃんを産む準備をする
2歳ごろ
初めての出産を迎える
繰り返す
その娘がお母さんになり、また孫が生まれる
川上牧場は昭和40年ごろから、今で60年ほど。おじいさんの代からずっと、この命のリレーを脈々と続けてきた牧場なのだそうです。
トウモロコシ論争にも一言。牛乳があるから食は豊かになる
最後はコメントを拾いながらのフリートーク。食糧問題でよく語られる「牛のトウモロコシを人間が食べれば、その分の人を養える」という話題に触れます。
川上さんは、牛の餌になるトウモロコシや牧草は、人間の作物が作れない地域で作られていることが多いと説明します。利用しにくい土地を、牛を通じて活かしているという見方です。
さらに、仮にそのトウモロコシを人間用に作ったとしても、日持ちもしないし、トウモロコシだけ食べ続けるのは現実的ではない、とも。
食が多様化するんですよ。牛乳があることによってね。
もちろん、本当に食糧が足りずに家畜に餌を与えられない地域があることも、川上さんは付け加えています。そのうえで、こんな正直な気持ちも語られました。
おいしいじゃないですか。おいしかったら何でもいいなって思ってます、私はね。
配信の締めくくりには、6月1日の牛乳の日に向けた「#牛乳で歌おう」企画も紹介されました。今年で3年目になる、みんなで歌って楽しむ投稿企画だそうです。
まとめ
来週牧場体験に来る中学生の質問を入り口に、牛のごはんや体、赤ちゃんのしくみ、そして酪農の考え方までがやさしく語られた回でした。素朴な質問のうしろに、こんなに深い話があるんですね。
- 酪農は、人間が食べられない草を牛乳やお肉に変えていく仕事
- もやしや酒粕、醤油粕など、地域で捨てられるものも牛の餌に活かしている
- 牛は600〜700キロの体で、1日に大量の餌と水を必要とするアスリートのような存在
- お乳が出るのは出産を迎えた牛だけで、子牛も雄牛も出ない
- 川上牧場は昭和40年ごろから自家育成で命のリレーを続けている




