リスナーからの質問「ゲノム派?堅実派?」
今日のテーマは、スプーンという配信アプリに届いた1つの質問です。
川上さんはゲノムヤングサイヤー派ですか?堅実な改良派ですか?
この質問は、6月30日に発売された川上牧場初のKindle本を読んで寄せられたものでした。
川上さんいわく、この日は土曜日なのでゴリゴリの酪農の話をしていくとのこと。遺伝改良には、大きく2つの考え方があります。
そもそもゲノムヤングサイヤーって何?
まず前提となる「ゲノムヤングサイヤー」について。これは生まれて1〜2年ほどの若い雄牛のことです。
子牛が生まれていないので実績はありませんが、遺伝子を調べて「優秀な子牛を生むだろう」と予測して使っていくのが特徴です。
最大のメリットは、改良スピードがとにかく速いこと。ただし実績がない分、信頼度は低めになります。
とはいえ、その信頼度も今では80%ほどまで上がってきているそうです。乳量など遺伝率が高い成分だと、ほぼゲノムの数値通りに牛が出てくるといいます。
アメリカではこの方法がすでに主流で、カナダも負けじと使っています。日本でも2年ほど前から販売が始まり、2歳くらいの牛が使われるようになってきているそうです。
ハズレが少ない「堅実な改良」とは
もう一方の「堅実な改良」は、遺伝評価がすでに出ている検定済みの種を使う方法です。
すでに何百頭もの娘のデータがあるため、信頼性が高いのが強みです。信頼度は海外だと98%、国内でも90%ほどあるといいます。
改良スピードはゲノムヤングサイヤーに比べると遅いものの、ハズレが少ないのがポイント。狙った牛を確実に産ませることができます。
若い雄牛。改良スピードが速いが、実績がなく信頼度は低め(約80%)
娘牛のデータが豊富。改良スピードは遅いが、ハズレが少なく信頼度が高い(国内約90%)
川上さんの答えは「投資のポートフォリオ」
では、川上さんはどっち派なのでしょうか。ここからが少し複雑です。
川上さんは酪農の仕事の中でも、この遺伝改良が一番好きなんだそう。めちゃめちゃ考えていると話します。
種付けから牛が生まれるまで約2歳、さらに検定結果が出るまでとなると、もっと時間がかかります。だから遺伝改良を長期投資と同じだと捉えているそうです。
そこで持ち出されたのが、新NISAでも聞くポートフォリオの考え方です。
1つの銘柄だけを買うのではなく、いろんな資産を組み合わせてリスクを分散する。これを遺伝改良にも応用しているといいます。
具体的には、海外のゲノムヤングサイヤーも検定済みも、国内のゲノムヤングサイヤーも検定済みも使う。それを今の酪農経営と組み合わせてポートフォリオを組んでいくのです。
さらにF1の交雑種や黒毛和牛のET・IVFなども組み合わせ、現在の経営と「こんな酪農をやっていきたい」という未来を掛け合わせていきます。
そのうえで、確実に改良が進む堅実な選択を入れつつ、リスクを取ってチャレンジする方法も取り入れているそうです。
猛暑を見越した繁殖管理とAIの活用
この考え方は、実際の繁殖管理にも生かされています。
昨年は来年の夏が猛暑になると予測されていました。そこで川上さんは、夏までになるべく牛を受胎させる作戦を取ります。
生産性が低い夏には、わざわざ大量に乳を絞らなくてもいい。そんな考えで牛群を管理し、今年の8月に着実に成果が実ったと振り返ります。
受胎率が低い牛には受精卵移植を、若い牛には受胎率が高い種を、と繁殖性を見ながら日々使い分けているそうです。
さらに川上牧場では、ABSの提供するメイティングシステム「GMS」を導入。ゲノムヤングサイヤーのデータも入れられるプランで、次世代の交配を確認しています。
そして今、ここにAIも加わっています。GMSの結果や海外のプルーフをPDFで読み込ませ、牛群検定成績や決算書と合わせて、最適な牛をAIに分析させることもやっているそうです。
結局、川上牧場の答えは「全部使う」
話をまとめると、川上さんのスタンスはとてもシンプルでした。
ゲノム派か堅実派か、という二択ではなく、両方を経営に合わせて組み合わせるというのが答えだったわけです。
次のKindle本は「飼料設計と遺伝改良編」を制作中とのこと。牛群検定を使った遺伝改良について、自分の考えも入れていきたいと話しています。
まとめ
リスナーからの「ゲノム派?堅実派?」という質問に、川上さんは「どちらも投資のポートフォリオのように組み合わせる」と答えました。改良スピードと確実性のバランスを取りながら、経営と未来像に合わせて種を選んでいるのが川上牧場のやり方です。
- ゲノムヤングサイヤーは改良が速いが信頼度は低め、検定済みは遅いがハズレが少ない
- 川上さんは遺伝改良を長期投資と捉え、両方を組み合わせるポートフォリオ型を採用
- 海外・国内、ゲノム・検定済み、黒毛和牛のET・IVFまで幅広く使い分けている
- 猛暑予測を見越した繁殖管理や、GMS・AIによる分析も取り入れている
- 次回のKindle本は「飼料設計と遺伝改良編」を制作中



