なぜ今「防虫」が大事な話題になっているの?
今回はスプーンという配信アプリに届いた質問がテーマです。夏になって虫が増える時期、牧場ではどんな防虫対策をしているのか、というものです。
背景には、去年から日本で出はじめた病気があります。吸血昆虫の刺し傷などを通じて広がる「ランピースキン病」です。
もともとインドにあった病気が大陸を渡って韓国に来て、そこから日本に入ってきた、という流れだと川上さんは説明します。
ワクチンで対策はできるものの感染力が高く、牛の生産性が著しく落ちる病気だといいます。農水省の決まりでは、遺伝子検査で陽性になった場合は殺処分の対策もできるようになったそうです。
夏になりますが、牧場の防虫対策はどうしてますか。虫が牛さんの病気の原因になるイメージがありますという質問が来ております。
夏になりますが、牧場の防虫対策はどうしてますか?虫が牛さんの病気の原因になるイメージがあります。
刺しバエは牛にとってどれくらい厄介なの?
そもそも虫が多いと何が困るのでしょうか。川上さんがまず挙げたのが「刺しバエ」です。
普通のハエと違って口の先が尖っていて、牛を刺して吸血し、栄養を取ります。蚊とはレベルが違う痛さだといいます。
普通のハエとは違ってですね、口の先が尖っておりまして、牛を刺して吸血して栄養を取ったりするので、蚊とは全然レベルが違いますね。痛って本当に思うぐらいの痛さです。
チクッと刺されることで、牛にはストレスがかかります。目や鼻のまわりをハエが飛びまわることも、牛にとってはイライラのもとです。
さらに困るのが、汚れた足で傷口に入り込むケースです。ちょっとした切り傷にハエが産卵し、そこからウジがわいてしまうこともあるそうです。
こうしたストレスで牛が疲れて免疫が落ちると、牛乳の品質まで下がってしまうという悪循環につながります。
刺される
刺しバエが牛を刺して吸血し、痛みやストレスを与える
体力が落ちる
ストレスがたまり、牛が疲れて免疫が落ちる
品質が下がる
牛乳の品質も下がってしまう
牛舎をきれいに保つことが、なぜ防虫になるの?
では、川上牧場ではどんな対策をしているのでしょうか。まず基本になるのが「掃除」です。
牛がうんちを出したらすぐきれいにする。川上牧場はつなぎ牛舎という形式で、バーンクリーナーという機械が牛のうんちを運んでくれます。
これを普段より回数を増やして3回、4回と行い、牛舎が常にきれいで、濡れたところがないようにしておくそうです。
イメージしやすいのは、キッチンの三角コーナーだといいます。
三角コーナーあるところ、あれずっと置いてたらコバエが出たりとかするかなと思うんですけど、あれをこまめに捨てるみたいなイメージで思ってくれたらいいんじゃないかなと思います。
牛舎のまわりの水たまりや雑草も見逃せません。虫が休んだり産卵したりする場所になるからです。水たまりができるところには土砂を入れるなどして対策します。
餌の管理も夏ならではのポイントです。水分の多い餌は夏場に変質しやすく、夕方あたりになると虫がわくこともあるため、餌の掃除もこまめにするそうです。
ネットや風や霧で、虫はどこまで防げるの?
掃除に加えて、牛舎そのものに導入する設備もあります。まずは虫除けネットです。
川上さんは、となりのトトロに出てくる蚊帳のようなイメージだと説明します。牛舎全体を防虫ネットで囲って、虫が入ってこないようにします。
この専用ネットには殺虫剤が練り込んであり、触れると虫が死ぬつくりになっているそうです。
換気扇も対策のひとつです。ハエは小さいので、牛舎の中で強く風を回すと、牛の体に止まりにくくなります。
さらに川上牧場では、催雨装置という霧を出す装置も使っています。虫は羽が濡れるのを嫌うため、低く飛ぶようになり、牛の体を刺しにくくなるといいます。
最新のものでは、青色のLEDライトで虫を光のほうへ寄せ、牛に近づけないようにする方法もあるそうです。
虫を食べる生きものや、自然の力も味方になるの?
昔ながらの方法として、ツバメやコウモリなど虫を食べてくれる生きものが多いと、虫が減ることもあると川上さんは話します。
ただし、ツバメや渡り鳥は病気を運ぶ原因になることもあり、鳥インフルエンザのような心配もあるといいます。それでも「自然と共存」という視点は大事にしているようです。
最新の方法としては、寄生バチも挙げられました。ハエの幼虫に卵を産みつけて、ハエを少なくしてくれる虫です。
受粉に使うミツバチのように、寄生バチを牛舎の中で増やすキットもあり、それで吸血昆虫が減ったという報告もあるそうです。
植物の力を借りる方法もあります。牛舎のまわりに虫が嫌うミントを植えたり、ハッカスプレーを牛の足にまいたりすると、ハエが刺しにくくなるといいます。
そのほか、耳につけるタグで駆虫するものもありますが、化学的なものなのであまりおすすめはしないと川上さんは話します。放牧の多いオーストラリアやニュージーランドでは、このタグを交換しながら使う牧場もあるそうです。
牛乳への残留は大丈夫?対策はいつから始めるの?
駆虫薬を使う方法もあります。殺虫剤と聞くと牛乳への影響が気になるかもしれません。
この点について川上さんは、牛乳に残留しない専用のものがあり、適切に使われているので心配しないでほしいと話しています。
これはあの牛乳に残留しないちゃんとした専用のものがあるんでね。皆さん、殺菌剤が牛乳にって思ったりしないでくださいね。ちゃんと適切に使われてますんで。
コメントへの返信では、過去の失敗談も語られました。牛舎のまわりにゴーヤやアサガオを植えて日陰を作る方法が昔流行ったそうです。
ところが、葉っぱの裏に虫が休んでしまい、暑さ対策にはなっても逆に虫が増えてしまうことがわかったといいます。
一番効果的だと感じているのは、やはり風だそうです。牛の体に直接風が当たるよう換気扇を増やすことをすすめています。
そして大切なのが、対策を始めるタイミングです。夏に虫が出てから動くのではなく、前の年の秋や春から定期的に掃除や殺虫を続けておくとよい、と川上さんは話します。
まとめ
夏に増える吸血昆虫は、牛にストレスを与え、牛乳の品質まで落としてしまいます。だからこそ牧場では、掃除や設備、自然の力まで組み合わせて、こまやかに虫と付き合っているんですね。
- 刺しバエなどの吸血昆虫は牛を刺して吸血し、ストレスや免疫低下、牛乳の品質低下につながる
- 基本は掃除。糞をこまめに片づけ、水たまりや雑草、傷んだ餌をなくすことが防虫の土台になる
- 防虫ネット・換気扇・催雨装置・青色LEDなど、設備での工夫も牧場で使われている
- 寄生バチやミント、ハッカなど、生きものや植物の力を借りる方法もある
- 駆虫薬は牛乳に残留しない専用のものが使われ、対策は虫が出る前から始めるのが効果的




