SNS発信は売上につながっている?
今回のエピソードで最初に取り上げられたのは、農業高校の出前授業で高校生から届いた質問です。「WEBやSNSを使った活動で売上に影響がありますか?」という問いに、川上さんは「この質問をした子はセンスがいいなと思った」と話しています。
川上さんの答えは、直接ガッと売上に繋がったわけではないけれど、0から1になるっていうのはだいぶ違うというものでした。ゼロではない小さなつながりが、いくつも生まれているという受け止め方です。
直接(SNSで)こう売上に繋がったかっていうところはあんまりないかなと思いますね。売上が0から1になるっていうのはだいぶ違うので、そこら辺は0ではないので。
具体的には、noteのメンバーシップに入ってくれる人や企業、川上牧場の牛乳を使ってくれる飲食店とのコラボがSNS経由で生まれているそうです。前日にもチーズの原料の牛乳を取りに来た人がいたと話しています。
さらに、カヌレのお店に牛乳を使ってもらったり、近くの酒造会社から酒粕を、醤油の会社から醤油粕をもらったりといったつながりも、SNSから広がった部分があるといいます。
SNSで発信
牧場の日常や牛乳の魅力を発信する
消費者・企業とつながる
noteメンバーシップや飲食店、食品会社と接点ができる
小さな「1」が積み重なる
コラボや原料販売、副産物の提供につながる
発信だけで牛の餌代をまかなえる日を目指して
川上さんは、こうした小さな「1」がいっぱい繋がっていけば、いずれ太い収益の柱になるんじゃないかと期待していると話します。目指しているのは、発信活動だけで牛の餌代をまかなえる状態です。
牛の餌代について川上さんは、1頭あたり1日1,000円ほど、50頭で5万円ぐらいかかると説明しています。ただ、これでも安めに見積もった数字で、管理費まで入れると倍近くかかるとのことです。
現代では発信すること自体が大事で、直接消費者さんとお話できるっていう機会がこうして持てるのも大きいと川上さんは話します。
また、大きな売上の話として「ビザスク」というサービスにも触れています。酪農業界や農業業界に進出したい企業に、酪農家としてアドバイスする仕事が最近増えてきていて、そうしたビジネスの収益もあるそうです。
牛の体調はどこで見極める?現場の観察ポイント
続いての質問は「牛の体調管理や見極め方は?」というものでした。川上さんはこれも感覚になってしまう部分が大きいとしつつ、いくつもの観察ポイントを挙げていきます。
餌をしっかり食べているかは、肋骨の浮き出方(ろくはり)や、太っているか痩せているかを見るボディコンディションスコアで判断するそうです。
そのほか、乳房の張りや足の裏が赤っぽくなっているか(栄養の充足度)、鼻の輪郭がはっきりしているか、しっかり反芻しているか、目の輝きなども見ているといいます。白黒の毛がピカッと光っているかも見ますが、これは「わからんよね」と正直に話しています。
理想の牛より「事故がない飼い方」を選ぶ理由
川上さんは、こうしたポイントには理想形があるものの、その理想に近づけるにはしっかりした栄養価の餌が必要で、それでは採算が取れないと打ち明けます。今は餌が高くなっているためです。
そのため、今の乳価と餌代を考えると、安い餌でなるべく事故がないように牛を飼うことを目指していると話しています。死なない程度、体調が悪くない程度で見極めることが今は大事だという考えです。
いい牛作ろうと思ったら、本当にいい餌でいい環境でやればできるんですけど、それが採算合うかっていったらまた難しいというとこですね。
見極めの目を養うには、自分が育てた子牛が親牛になり、屠場に行くまでをしっかり観察することを何度も繰り返すのが大事だといいます。
大きな牧場では、子牛担当・搾乳担当・餌担当というように役割分担されるため、1頭を通して見るのが難しくなります。一方で小さな牧場なら1頭1頭を管理でき、こうした観察の目も養えると川上さんは話しています。
そのうえで、川上牧場では研修生を募集していることにも触れていました。
牛1頭の値段はいくら?市場価格のリアル
今回最後の質問は「1頭の牛の現在の市場価格は?」というものでした。川上さんは、北海道の初乳牛の価格が今は60万円ぐらいだと答えています。
さらに、北海道から川上牧場に運ぶには運送料が10万円ほどかかるため、着くまでには70万円ぐらいになるといいます。
川上さんは今後の見通しにも触れ、令和7年度は増産に舵を切る動きや北海道での乳価上昇の話が出ていることから、また1頭100万円とか、それぐらいになってくるんじゃないかと予想しています。
一方で、黒毛和牛や子牛の販売はあまり伸びていないと川上さんは話します。ホルスタインのオスが5,000円、F1のメスが5万〜8万円、F1のオスで10万〜13万円ほどで、「全然採算合わないですね」と率直に語っていました。
高校生からの質問は、次回でひととおり答え終わる見込みだと川上さんは話しています。まだ農業高校の出前授業の配信を聞いていない人には、そちらもあわせて聞いてほしいと呼びかけていました。
まとめ
農業高校生の質問に答える今回は、SNS発信の効果から牛の体調管理、牛の市場価格まで、酪農の現場のリアルな数字と考え方が語られました。理想と採算のあいだで工夫を続ける、小さな牧場ならではの姿が伝わってきます。
- SNS発信は直接の売上より「0から1」のつながりを生み、飲食店や食品会社との協業に広がっている
- 川上さんは、発信活動だけで牛の餌代をまかなえる状態を目指している
- 牛の体調は、ろくはりや反芻、乳房の張り、目の輝きなど複数のポイントで見極める
- 餌代が高い今は、理想の牛より「事故がなく飼う」ことを優先している
- 北海道の初乳牛は運送料込みで70万円ほど、今後は1頭100万円に近づく可能性もある




