「いい声」の原点は通話アプリ?
本題に入る前、いなけんさんは渋い声でのオープニングを「オールナイトニッポンを目指していく」と冗談めかして始めます。しもちゃんは「リスナーにモテようとしてる」と返し、いつもの調子で回が始まりました。
いなけんさんは、ときどき「いい声ですね」と言われることがあると話します。そのきっかけとして、中学生のころに流行っていた通話アプリ「斉藤さん ── 見知らぬ相手とランダムに音声通話できるスマートフォンアプリ。2010年代前半に若者の間で流行しました」の思い出を持ち出しました。
ありがたいことにさ、しもちゃんも前言ってくれたけどさ。「なんかいい声ですね」って言われることたまにあるよね。
いなけんさんによると、斉藤さんでは誰につながるかわからず、男性同士がつながるとすぐに切られてしまいます。女性とつながっても、女性の側には相手を判断して通話を切る権利がありました。
(斉藤さんは)声一本勝負で、なんかちょっと渋い声で、いかに女の子と持続させて喋るかみたいな。
っていうのに、なんか命懸けてた時期あったな。
しもちゃんは、YouTubeで見た斉藤さんのイメージをもとに茶化します。いなけんさんは「そういう使い方はしていない」と否定し、通話はいつもその場限りだったと振り返りました。
収録ツールの赤字は誰が背負っているのか
本題は「この番組を改めてどうしていこうか会議」です。しもちゃんは最初に、収録に使っているアプリ「リバーサイド ── オンラインで高音質の音声や映像を収録できるサービス。遠隔地にいる複数人の収録によく使われ、月額のサブスクリプション制です」の契約をいったん終了したいと切り出しました。
(リバーサイドを)本業の方の支援に使ってたり、別のチャンネルのやつに使ったのも、ここの費用対効果をなんとか合わせたいっていう気持ちからやったなって、昨日考えて気づいて。
自分の中での費用対効果が合わなすぎて、赤字を半年ぐらい続けちゃってるから、もうさ、ちょっと苦しくなってきた。
いなけんさんは、しもちゃんがフリーランスになったことが関係しているのではないか、という仮説を出します。仕事で得るお金とプライベートで使うお金がほぼ同じ財布になれば、支出に敏感になるのは自然だという見立てです。
いなけんさんは、収入が増えれば費用対効果は合うはずだと整理します。しもちゃんは「当たり前じゃないですか」と返し、そうなっていないから悩んでいるのだと応じました。
いなけんさんはここで、番組の成り立ちを振り返ります。最初はしもちゃんの一人番組に、いなけんさんがゲストとして呼ばれる形でした。1年近く前、渋谷か代官山あたりのカフェで収録したのが始まりだったといいます。
ところが、いなけんさん以外のゲストは呼ばれないまま、いつの間にかいなけんさんが編集まで担うようになりました。しもちゃんは出演料や編集代を払うと申し出ましたが、いなけんさんは受け取りませんでした。その代わりに、しもちゃんがリバーサイドの費用を払うという取り決めで続いてきたそうです。
しもちゃんとさ、物理的に今離れちゃってるからさ、こういう関係的にさ、定期で喋れてるっていうこと自体がもう割と完結してるというかさ。
中長期目標であり、一番ボトムの目標でもあるのが、俺個人でいうと、継続することが、そもそも目的であり手段であるみたいな。
一方のしもちゃんにとっては、番組を続けることがそのまま毎月の支出を意味します。いなけんさんは、二人の間で番組を続けることへの重みにずれがあると整理しました。
離れて暮らすしもちゃんと定期的に話せること自体に価値がある。継続は目的であり手段
継続すると、リバーサイドの費用が出続ける。財布が厳しくなり、継続に黄色信号が灯っている
最初の熱量はどこへ消えた?
いなけんさんは、しもちゃんに声をかけた初期と1年弱が経った今とで、番組への思いがどう変わったかを尋ねます。途中には、ビデオポッドキャストを提案した時期と、顔出しは嫌だと言うようになった時期もありました。
最初はね、(個人的なテーマについて)話すことが楽しい時期やったんですよ、僕の人生においてね。
今は哲学とか宗教とか、聞かれたら別に言うけど、自分の起点で別に話す熱量はないなって感じなんですよね。
番組の初期には、しもちゃんが仏教の「空」や「縁起」といった概念を語っていました。しもちゃんはその時期について、それまでの20数年間の経験を材料にさまざまな解釈ができていたと振り返ります。しかし今は、その材料を吸い尽くした感覚があるといいます。
いなけんさんが「じゃあもう出涸らしなんだ」と言うと、しもちゃんはそれを認めました。今は自分の答えにそれほど価値があるとは思っていない時期に戻っている、というのがしもちゃんの説明です。
20数年分の経験を材料に、哲学や宗教など個人的なテーマを自分から話すのが楽しかった
材料を吸い尽くした出涸らしの状態。聞かれれば答えるが、自分から話す熱量はない
いなけんさんは、時期の問題もあったのではないかと考えます。声をかけられたのは、しもちゃんが二人の前職を辞めてフリーランスになるころでした。そのとき溜まっていたエネルギーを放出したい気持ちがあったのではないか、という見立てです。
しもちゃんも、今は実際の仕事に人生の比重が移っていると認めました。加えて、住んでいる場所の影響も大きいといいます。移動に時間がかかり、映画館へ行くにも1時間半ほどかかるため、何をするにもコストが高いと感じているそうです。
コストがあらゆる面で高いんで、欲求にやっぱ蓋をしがちなんすよね。
しもちゃんの「波」は聞き手に伝わっている?
いなけんさんは、少し年上の立場から見て、しもちゃんは良くも悪くも気分の波が激しいと指摘します。しもちゃんは「人間関係も?」と聞き返しました。いなけんさんは、仲のいい相手でも今は会いたくない日があれば、逆に高いテンションで誘う日もある、という程度の意味だと説明します。
軌道修正が早いんすよ。
そう、だからやっぱ一人遊びが好きやねん。
いなけんさんは、引っ越しもこうした波の一つなのかと尋ねます。しもちゃんは、停滞感を打破するためではなく、もともと考えていた計画だと答えました。今の実家暮らしは「一時避難」だといいます。
さらにいなけんさんは、しもちゃんのダウナーな日とアッパーな日は分かりやすく、今日の収録は確実にダウナーだと言います。最近のアッパーな日としては、お盆明けのタイ旅行の前後を挙げました。
しもちゃんは、午前中にすでに2本の収録をしてきたので、疲れているだけではないかと返します。いなけんさんは体調の影響も認めつつ、声のテンションや表情に波が出ていると話しました。そのうえで、リスナーにもお便りで感想を寄せてほしいと呼びかけています。
長らく聞いていただいてる方は、もしくは新規の方であれば、過去から遡って、どこがアッパーでどこがダウナー時期だったのかを当てていただければ。
継続を止めるものは何か
いなけんさんは、作戦会議らしい話がまだできていないと言います。しもちゃんは、二人の関係について話すことこそ「どんな施策よりも勝る」と返しました。
そこでいなけんさんは、継続を目的と置いた場合に、何が継続を止める要因になるかを二人で洗い出そうと提案します。たとえば大げんかや金銭トラブルが起きれば、番組は続きません。止める要因を共有できれば、それ以外が継続の鍵になる、という考え方です。
しもちゃんが最初に挙げたのは、時間やお金といった負担が極端に増えることでした。いなけんさんは、しもちゃんが編集を嫌がっていたことに触れます。ツールの費用を議論するなら、いなけんさんが担っている編集も「見えていないコスト」だと指摘しました。しもちゃんは、それは理解していて、その代わりに自分がお金を払っている認識だったと答えています。
しもちゃんが次に挙げたのは、話が面白くなくなることです。話す中身がない状態で無理に話すのはしんどいといいます。ただし、お便りがあれば話は別だそうです。
他人の視点で気になってるところを知れるから。「ああ、そこ気になってるんだったら、それってこうじゃない?」ってのは言いやすい。
しもちゃんは恋愛をテーマにした別の番組も手がけています。一つのテーマを続けると話のパターンが見えてくるため、いろいろなジャンルのお便りが来るとうれしいと話しました。いなけんさんは、外からのネタと複数のジャンルを扱うことが継続の力になると整理しています。
二人だけで完結しない「溜まり場」へ
しもちゃんはさらに、お便りだけでなく、何かに詳しい人をゲストに呼ぶのもいいと提案します。しかも、いなけんさんとゲストの二人でも、しもちゃんとゲストの二人でもかまわないといいます。
あんまりこの二人だけで完結させるっていうのを固定にしなくていいなと思う。
いなけんさんが話したい人を僕の代わりに呼んで話すとか、みんなのたまり場にできたらめっちゃいいなと思うんすよ。
しもちゃんによると、関わる人が増えれば、誰かが仕事で一時的に参加できなくなっても番組は回ります。費用も、みんなが少しずつ出せば負担は軽くなります。月500円なら払い続けられる人もいるだろう、という見立てです。
二人で固定しない
しもちゃんといなけんさんのどちらかとゲストという組み合わせも認める
関わる人が増える
誰かが一時的に参加できなくても、別の人が話せる
負担を分け合える
ツール代のような費用も、みんなで少しずつ出せば続けられる
しもちゃんが思い描くのは、話したいときに来られる場所です。たとえば1年間の海外旅行から話を山ほど持ち帰った人が、帰国してすぐに収録に加わる、という形を例に挙げました。いなけんさんも、この方向性にはワクワクすると応じます。
実現の道筋について、しもちゃんはリスナーから参加者を引っ張ってくることを挙げました。番組を1年間運営してきた実績があるので、声をかければ話してくれる知り合いもいるはずだといいます。
一年続けられてるから、なんとかね、いなけんさんのおかげで。だからそれできるんじゃないですか。
数字を追うのは空虚か、やりがいか
いなけんさんは、数字との付き合い方について相反する思いを打ち明けます。フォロワーや登録者が一人増えるだけでも「聞いている人がいるんだ」と進捗を感じられます。そこから逆算すれば、頑張る余地も生まれます。
一方で日常生活をビジネスでこれやってんだから、それを趣味のここに持ち込むのってあまりにも空虚だなっていう、両方同じぐらいの熱量で思うなっていうところがあって。
しもちゃんの答えは、追う数字を変えるというものでした。フォロワー数や再生数ではなく、番組に巻き込む人の数を目標にすればいいといいます。いなけんさんはこれを聞いて「天才や」と応じました。
会社はあれ正直他人が立てた目標じゃないですか。だからこっちも僕らが立てた目標をってしたら、別に数字持ち込んでも全然良くないですか?ただの手段やから、数字なんか。
フォロワー数や再生数。アルゴリズムを攻略するのが最適解になりやすいが、追うのはしんどい
巻き込む人の数。たとえば「1年後に10人」と決めれば、手段として数字を追ってもワクワクできる
ここで、数字はただの手段だと位置づけ直すことで、いなけんさんが抱えていた葛藤がほどけていきます。
いなけんさんは、番組の初期にあったX運用の回を振り返ります。そこでいなけんさんは予告どおり1万回以上の反応を集める投稿、いわゆる万バズ ── SNSの投稿が1万件以上のいいねや拡散を集めることを起こしました。しもちゃんは当時、人と働く楽しさを実感したそうです。
あん時に、あ、これが人と働く楽しさなんだって。自分一人じゃ見れへん景色見えるってこういうことなんやと思ったから。
ただし、いなけんさんはその瞬間が面白かっただけで終わったとも振り返ります。結局、そのXアカウントは今も放置されたままです。数字だけを追うと空虚になるという話を象徴するエピソードだと、いなけんさんは話しています。
年末にどんな景色が見えていたらワクワクする?
しもちゃんは目標を立てようと提案します。いなけんさんは、隔週配信のペースでは1ヶ月は短すぎるとして、まずは年内を区切りにしようと応じました。
じゃあ年内12月31日時点、どんな景色が見えてたらワクワクしますか?
しもちゃんは、お互いの知り合いではない人が番組に加わったら面白いと話します。しかし、いなけんさんは正直に「芯からはワクワクしなかった」と返しました。しもちゃんが次に出したオフ会の案にも、二人とも強い手応えは感じられなかったようです。
いなけんさんが確実にワクワクすると挙げたのは、リスナーの反応が見えることでした。初めてお便りが届いたとき、数字の向こうに人がいると実感できたことが原点にあるといいます。
実感値としてこの数字の1にさ、裏側に人間がいるんだってわかった瞬間、俺めっちゃ心が発火した感じがしてさ。
いなけんさんは、LINEのオープンチャットやDiscord ── ゲームやコミュニティでよく使われるチャットサービス。テキストや音声で、グループ単位のやり取りができますのような場所を作るアイデアを出します。しかし、しもちゃんは似たことをやってきた経験から、それでは関係がオンラインだけで終わってしまう気がすると答えました。
どうせやったら、そこの出会いによって人生変わるぐらいのレベルまで行きたいんですよ。
僕、人がすごい好きなところって、自分が持ってなかったものを運んできてくれるから。
しもちゃんは、その先の具体策は上から逆算して決めるものではないと言います。道を歩いているときに「これや」とひらめくような、ボトムアップで見つかる領域だという考えです。二人は、それぞれいったん考えてから改めて話し合うことにしました。
まだ具体策は決まっていませんが、目指す方向ははっきりしてきました。関わる人が増え、出会いで人生が動くような場所にする、という方向です。そのためのアイデアは、リスナーからもお便りで募っています。
ツール代はゼロにできるか
最後にしもちゃんが判断を求めたのは、リバーサイドの扱いでした。お金を払うこと自体が嫌なわけではありません。ただ、ワクワクできない今の状態のまま払い続けると、確定でかかり続ける費用の構造になってしまうといいます。
いなけんさんは、年内は今のまま走ってみてから決めようと提案します。しかし、しもちゃんは、それは引き延ばしだと受け止めました。
年内仮にね、多分その(番組は)売上とかにならないじゃないですか、十中八九。
遅かれ早かれもう一回この議論出るんですよ。「じゃあこの数か月間なんやったん?」って話になるじゃないですか。
しもちゃんは、少なくとも支払う金額は調整したいと話します。それが妥協できるラインで、本当に求めているのはツール代をゼロにすることだといいます。いなけんさんは「一旦それで進んでみよう」と返しましたが、しもちゃんに「どっち?指示語使わんといて」と突っ込まれました。結局、費用の結論は収録の外で話し合うことになり、この回は終わります。
まとめ
本質ラジオの作戦会議は、収録ツールの赤字としもちゃんの「出涸らし」という率直な悩みから始まりました。二人は継続を止める要因を洗い出すうちに、番組を二人だけで完結させず、関わる人を増やす「溜まり場」にする方向へたどり着きます。追う数字も、再生数ではなく巻き込む人の数に変えるという考えが出ました。ツール代の結論は持ち越しになっています。
- いなけんさんにとっては継続が目的だが、しもちゃんにとっては継続がそのまま毎月の支出になっている
- 話す材料が尽きた時期には、お便りや多様なジャンルのテーマ、ゲストが番組を続ける力になる
- 二人に固定せず「みんなの溜まり場」にすれば、話し手も費用の負担も分け合える
- プラットフォームの数字ではなく、自分たちで決めた「関わる人の数」なら、手段として数字を追える
- リバーサイドの費用をどうするかは結論が出ず、収録の外で話し合うことになった




