なぜ『バクマン。』が人生に影響を与えた漫画の1位なのか
番組はイナケンさんに、人生に影響を与えた漫画を聞くところから始まります。イナケンさんは漫画を幅広く読むタイプで、そもそも「好きな漫画」という質問には答えづらいと話します。
「好きな漫画挙げてください」って言われたら、好きの角度をまず教えて。まず狭めてくれないと。
そこでホストが「人生を変えた」という観点に絞ると、イナケンさんの答えははっきりしていました。
「人生に影響を与えた漫画何ですか?」って言われたら、もうぶっちぎり1位が『バクマン。』ですと。
『バクマン。』 ── 週刊少年ジャンプで連載された漫画。漫画家を目指す2人の少年を描いた、原作・大場つぐみ、作画・小畑健による作品。は、漫画家を目指す少年たちを描いた「漫画家の漫画」です。イナケンさんは、まずその構造そのものに惹かれたと言います。
絵がめっちゃ上手い主人公と、めっちゃ勉強できる超頭いいやつが組んで漫画作るっていう、漫画家を目指す漫画家の漫画みたいな。
漫画で漫画を描くというメタ的な構造が、最初に読んだきっかけになったと振り返ります。
漫画で漫画描くんだみたいな、メタ感がおもろかったのがまず最初読んだきっかけ。
初めて自腹で買った漫画とサッカー少年の夢
イナケンさんにとって、『バクマン。』は時期の巡り合わせも大きかったと言います。ジャンプを読み始めた時期と、『バクマン。』の連載開始がほぼ重なっていたためです。
俺がジャンプ読み始めた時と、『バクマン。』が連載始まった時はほぼ重なってるんよ。
小学校高学年ごろに読み始め、毎週ジャンプを買う時期とも重なっていました。イナケンさんは、初めて自分のお小遣いで能動的に第1巻から買った漫画が『バクマン。』だったと話します。
俺が初めて、自分のお小遣いで能動的に第1巻から漫画買ったのは『バクマン。』だったはず。
当時サッカーをやっていたイナケンさんは、サッカー選手になりたいという夢と同時に、漫画家になりたいという気持ちも抱いていました。
サッカー選手になりたいみたいな、ガキんちょが思う夢と同時に、バクマン読んで漫画家なりてえなって思ったよね。
絵が描けなくても原作者になれる、という希望
漫画家に憧れたものの、イナケンさんには大きな壁がありました。絵が描けなかったのです。そこで自分を、絵ではなく物語を担う原作者のポジションに重ねたと言います。
絶望的に絵描けなくて。俺はだから高木の方で、俺原作者になるんだって一瞬ちょっと思ったよね。
この「絵は描けないけれど原作者になりたい」という思いは、いまもどこかにくすぶっていると打ち明けます。
漫画というアウトプットで、絵は描けないけど原作者になりたいなは、まだちょっとどっかにくすぶってる感は正直あるなっていう。
この打ち明け話に、ホストはその場で漫画制作を提案します。企画は自分が、ストーリー設計はイナケンさんが得意なはずだと役割を分ける案です。
僕、漫画の企画ぐらいやったらいける気する。でもストーリー設計は絶対イナケンさんがうまいから。
『ワンパンマン』が教えてくれた「絵は関係ない」
原作者としての希望を後押ししたもう一つの作品として、イナケンさんは『ワンパンマン』を挙げます。『ワンパンマン』 ── ONE氏がWeb上で連載を始めた漫画。後に村田雄介氏の作画でリメイク版が展開され、広く知られるようになった。の、リメイク前のONE氏によるWeb版を中学生のころに読んでいたと言います。
村田先生、絵めっちゃうまい人がやる前に、Webで連載してたやつの原作のONE先生が連載してたやつ、俺中学生ぐらいの時見てたんよ。
絵が上手ではないのに、圧倒的に面白い。その事実がイナケンさんに、物語さえ面白ければ絵は本質ではないという確信を与えました。
この絵でおもろいって思わせられるなら、究極これ絵関係ねえんだなってその時思って。
ホストは、いまはAIなどの技術で「絵が描けない」という障害そのものを越えられると応じます。イナケンさんも、技術の進歩を眼鏡の発明にたとえて説明しました。
目が悪かった人って、昔は障害扱いだったと思うわけよ。でも眼鏡っていう発明品ができたことによって、障害じゃなくなったというかさ。
人生を決めた第1話の「一コマ」
話は、イナケンさんの人生の考え方そのものを決めたという場面に及びます。それは『バクマン。』の第1話にある、たった一コマでした。
俺の中の一コマ。完全に俺の人生の考え方が決まった瞬間の一コマがあって。
その場面は、頭のいい高木秋人が、主人公のマシロを漫画家に誘うくだりです。マシロが「読書感想文と漫画は違う」と反論したのに対し、高木はこう返します。
このコマを読んだイナケンさんは、それまで適当に、むしろ面倒に書いていた作文への向き合い方を変えました。頭の中に審査員という「大人像」を作り、その人が受けそうな言葉で作文を書いたのです。
一旦頭の中に大人像を作って、こういう人たちが審査してるんだろうなっていう像を描いて、その人が受けそうな言葉を紡いだ作文を作った。
結果は、市の作文コンクール優勝でした。しかもその手法を再現するたびに、受賞を重ねていったと言います。
そっから作文コンクールがあるたびにそのフレームで作文書いてったら、毎回あの賞を受賞して。
「マーケットイン思考」が人生にインストールされた瞬間
この成功体験からイナケンさんが引き出した教訓は、明快でした。何かを得たいなら、評価する側の気持ちになってアウトプットを出す、という考え方です。
イナケンさんはこれをマーケットイン的な考え方と呼び、小学生の時点でこの一コマからひらめいたと話します。マーケットイン ── 市場や顧客のニーズを起点に商品やサービスを設計する考え方。作り手の都合を起点にするプロダクトアウトの対義語として使われる。
ひらめきに成功体験が重なったことで、この発想は思考のフレームワークとして完全に定着しました。だからこそ『バクマン。』はバイブルなのだと締めくくります。
この一コマ完全に俺の人生を一個歯車を動かしたから、もうバイブルに刻まれてる。
一方でホストは、自分の場合は漫画ではなく人との対話で同じことをしていると応じます。相手が求めている言葉を紡ぐという点で、通じるものがあると気づいたようです。
相手が求めてる情報、言葉を紡いであげて、その定義を曖昧にして、こうなんじゃないかなっていうのが僕のフレームワークなんですよ、気づきの。
最後は、この回の結論として、イナケンさんが一言でまとめました。
バクマン読みましょう。
まとめ
この回は、『バクマン。』第1話の一コマが、イナケンさんに「評価する側の心理を逆算する」思考をもたらした原体験の話でした。絵が描けないという壁を原作者や技術で越えるという視点とともに、マーケットイン思考の出発点が語られています。
- イナケンさんが人生に最も影響を与えた漫画は『バクマン。』で、初めて自腹で第1巻から買った作品でもある
- 絵が描けないため、自分を作画ではなく原作者のポジションに重ねてきた
- 『ワンパンマン』のWeb版から、物語が面白ければ絵は本質ではないという確信を得た
- 第1話の「審査員受けを狙って計算して書く」という一コマが、評価者の心理を逆算する思考の原点になった
- この手法を作文に応用して市のコンクールで優勝を重ね、マーケットイン思考として人生に定着した





