冷凍餃子が家庭に広がるまでの時代背景
話は1960年代までさかのぼります。高度経済成長期に三種の神器の一つとして冷蔵庫が普及し、1970年代には冷凍庫付き冷蔵庫が家庭に広がっていきました。
同じ頃、大型スーパーも全国に広がり、冷凍食品を販売するネットワークが整っていきました。
1967年に誕生した餃子の王将などのチェーン店も増え、店の餃子を持ち帰って家庭で食べるという形で、餃子の認知が広がっていったといいます。
製造の面でも、1964年の東京オリンピックと1970年の大阪万博という国際的イベントをきっかけに、冷凍食品の製造技術が急速に進化していました。
五大調理冷凍食品と、味の素ギョーザの誕生
日本で最初に冷凍食品を販売したのは、日本冷蔵株式会社、現在のニチレイフーズです。
当時はコロッケ、ハンバーグ、シュウマイ、エビフライ、そして餃子の5商品が「五大調理冷凍食品」として、1970年に発売されました。
そして本日の主役が登場します。1972年3月、味の素冷凍食品から12品の冷凍食品が発売され、その中に餃子がありました。
ただし発売当初は油も水も入れて調理する必要があり、今ほど手軽ではありませんでした。爆発的な人気とはならず、しばらく苦戦していたそうです。
油なしで焼ける 最初の革命
転機は発売から15年後の1997年に訪れます。革命的な技術として登場したのが「油なしで焼ける」というものでした。
油があらかじめ餃子にくっついているため、油を引かずにフライパンに並べ、水をかけて焼くだけで仕上がる。この手軽さが評判となりました。
その後、発売から少しして冷凍食品で最も売れる商品になったと紹介されています。それまで一番人気だった冷凍食品はエビシュウマイだったそうです。
2000年には現在の味の素冷凍食品株式会社に冷凍食品事業が統合され、そこから技術開発がさらに加速していきます。
油も水もいらない 羽根の革命
2012年には、油も水もいらず、さらに羽根までできるという大きな革命が起こりました。
それ以前は、トレーで水の量を測って入れる方式でした。しかし水の量がバラバラだと皮がふやけたり破けたりして、きれいに焼けないことがあったといいます。
水なしで焼けるようになったことで、誰もが一定の条件で、きれいに餃子を焼けるようになりました。
小野寺さんが個人的な注目ポイントとして挙げるのが、羽根ができることでフライパンへの負担が減る点です。
この羽根ができることで、フライパンの表面が何もない状態、空焚きする部分が少なくなって、フライパンの傷みが減って長持ちするっていうことが、私個人的には注目ポイントかなと思っています。
フライパンを空焚きするとフッ素の被膜が傷み、餃子が張り付きやすくなります。羽根で底面が覆われることで、そうした失敗が起きにくくなるという見方です。
もう一つの利点として、羽根の色の変化を挙げています。底面の焼き色は横から見えにくいものですが、羽根の色を見れば焼き加減がわかるといいます。
この2012年の技術革新は、日本の餃子の歴史においても非常に革命的だったのではないかと語られています。
ライバルの登場と広がるラインナップ
冷凍羽根付き餃子で2番目のシェアとなっている大阪王将も、2年遅れて2014年に羽根付き餃子を販売しました。
羽根を形成する技術をめぐっては、大阪王将と味の素冷凍食品が特許を競い合っています。
こうしたライバルの台頭を受けて、味の素冷凍食品は生姜餃子、黒豚大餃子、海老大餃子、黒胡椒ニンニク餃子など、ラインナップを拡大していきました。
スーパーの冷凍庫の棚を広く確保していく展開となり、ライバルの存在が商品の幅とレベルの向上を加速させているのではないかと分析されています。
SNS発の改良と、見えない裏側の進化
味の素冷凍食品では「永久改良」と呼ばれる形で、毎年のように改良が続けられています。直近の例が羽根の改良です。
SNSで「フライパンに張り付いてしまう」という投稿があったことをきっかけに、フライパンチャレンジプロジェクトが発足しました。
餃子が張り付いてしまうフライパンを全国から3520枚集めて研究し、羽根の元を改良して、餃子が剥がれやすくなる技術を生み出したといいます。
改良は商品だけにとどまりません。製造の裏側でも、安心・安全の面で大きな進化があると紹介されています。
工場では出荷する一つ一つの商品すべてのX線写真を撮り、異物混入がないかを記録しているそうです。
商品に書かれた番号をたどれば、いつ、どこで、何月何日何時何分に出荷されたものかがわかり、その時にどのキャベツを使ったかまで追えるといいます。
トップシェアでも変わり続ける姿勢
国内トップシェアでありながら、常に変えていく、変わっていくという姿勢を、1972年の発売以降貫き通してきました。
誰もが知る人気商品が、これほど劇的な進化を遂げてきたことに、小野寺さん自身も驚いたと話しています。
最後の一言本音として、味の素冷凍食品の餃子を書くときはカタカナで「ギョーザ」と書くのが自分のルールだと明かしました。
まとめ
味の素冷凍食品のギョーザは、1972年の発売以来、油なし、水なし、そして羽根の形成へと段階的に進化し、いまではSNSの声も取り入れながら改良を続けています。トップシェアでありながら変わり続ける姿勢が、この定番商品を支えていると言えそうです。
- 味の素冷凍食品のギョーザは1972年発売。当初は油も水も必要だった
- 1997年に油なし、2012年に油も水もいらず羽根ができる技術を実現した
- 水なしで焼けることで、誰でもきれいに焼けるようになった
- 大阪王将など競合の登場が、ラインナップと品質の向上を後押しした
- SNS発の改良やX線検査など、商品と製造の両面で「永久改良」を続けている
