熱い餃子は「味」ではなく「快感」なのか
番組の冒頭で、小野寺さんはおなじみの光景を挙げます。火傷しそうなほど熱い焼き立ての餃子を口に入れ、ビールで流し込む食べ方です。
美味しい餃子のイメージとしては、火傷しそうなほど熱い焼き立ての餃子を口に入れてビールで流し込む、そんなイメージがありますよね。
けど、それって実は味というより快感なんじゃないかなと思うんですよね。
熱すぎると餃子の味は少しわかりにくいのではないか。そんな問いかけから、餃子を美味しく感じる温度の話が始まります。
口の中の粘膜が耐えられるのは70度まで
焼きたての餃子は、焼き目のところが90度、餡は75度ぐらいだと小野寺さんは説明します。この温度の餃子を口に入れると、まず火傷してしまうといいます。
口の中の粘膜が耐えられるのは70度までで、これを超えるものを口に入れると、粘膜が焼けて水膨れすることもあるそうです。火傷しないまでも、70度以上の食べ物は舌が味を感じにくくなると話します。
美味しい餃子を熱いうちに食べるのは、ちょっともったいないんじゃないのかなと言えるわけですね。
では何度がよいのか。科学的には、60度から50度ぐらいまで冷ますと美味しく感じやすくなるそうです。焼きたてを室温に5分から10分置くと、だいたい50、60度ぐらいになるといいます。
餃子を早く冷ますコツ
餃子同士がくっついていると温度が下がりにくいため、少しバラすとムラなく冷めていくと小野寺さんは言います。
急ぎのときは、うちわであおいだり、餃子の上に漬物を置いて熱を取ったりする方法も紹介します。この温度まで冷ますと、旨味や甘みを感じやすくなるそうです。
さらに、どんな食材を使っているかまで神経を尖らせて食べるなら、もう少し冷ますとよいといいます。人肌の温度、少しぬるいくらいまで冷ますと、味の解像度はもっとくっきりしてくると話します。
味を「複数回に分けて」観察するテイスティング
小野寺さんは仕事柄、餃子のテイスティングをする機会があるといいます。焼いてからテーブルに届くまでの5分ほどで少し冷めた状態を使い、まず一口目で風味を味わうそうです。
風味とは、口の中から鼻に抜けていく感覚のことです。ただ、この段階ではまだ熱く、味の解像度は上がりきらないといいます。
そこで半分かじって中を見たり、時間をおいて餡を冷ましたりしながら、もう一度口に入れると、また違った見え方になるそうです。
おしゃべりしながら人肌より少し冷めたぐらいまで下げると、塩味や苦味もよくわかるようになると話します。こうして複数回に分けて味を観察しているといいます。
何かもし餃子を食べている時に、なんかこいつ一度に食べないなと思った時には、味の分析をしているのかもしれないなと、温かく見守っていただければ幸いでございます。
餃子の味を決める「5つのバランス」
味には、甘味、旨味、塩味、苦味、酸味という五味のバランスがあると小野寺さんは説明します。ただ餃子には基本的に酸味がないため、代わりに脂肪味を加えて5つのバランスで判断するそうです。
美味しいと思う餃子は、このバランスがよく取れているといいます。甘味だけ、旨味だけが立ってもだめで、逆に何かがなさすぎてもだめだと話します。
このバランスに偏りがない、いわゆる僕の好きな餃子っていうのは、このバランスがよく取れている餃子です。
そしてこのバランスは、温度で少し変わってしまうといいます。塩味や脂肪味は温度が下がったほうが強く感じやすく、皮が冷めると硬くなって甘みを感じにくくなるそうです。
そのため、やや熱いうちに甘味や旨味を感じ、少し冷ましてから塩味や脂肪味の強さに注目する。こうして時間をかけてゆっくり味のバランスを観察していると話します。
イベントで焼きたてを出さない理由
こうした理由から、イベントで餃子を提供するときは、基本的に焼きたてを出さないようにしているそうです。焼いたものを少し冷まし、粗熱を取ってから蓋を閉じて提供するといいます。
理由は味だけではありません。焼いてすぐ蓋を閉じると、焼き目のパリパリが蒸されてふわふわになってしまうそうです。
また、油が熱いとパックのプラスチックが溶けてしまうこともあるため、熱いうちには閉じないといいます。あえて粗熱を取ってから蓋を閉じるのは、焼き餃子ならではの理由だと話します。
味覚をリフレッシュする「チェイサー」
小野寺さんは、味を分析するときのチェイサー代わりのものを紹介します。ひとつは冷めたご飯で、ご飯の上に餃子を置いて冷ましてから食べることもあるそうです。
もうひとつは牛乳です。冷たすぎず、ほどほどにぬるいくらいの牛乳がよいといいます。舌の上の油を絡めて胃に流してくれる効果があり、味覚がリフレッシュする気がすると話します。
これは科学的な理由というより感覚的な理由だと小野寺さんは断ります。おすすめの食べ物や飲み物があれば教えてほしいと呼びかけました。
この回が生まれたきっかけ
最後に、小野寺さんはこのエピソードの収録のきっかけを明かします。土井善晴さんとクリス智子さんの、料理を哲学するポッドキャストです。
その番組の回で、シンプルな塩おむすびも味がよくわかる温度で食べると美味しい、という話がされていたそうです。餃子にも味がわかる温度帯があると思い、インスパイアされてこの回を作ったといいます。
土井善晴さんの考え方、餃子を楽しむ考え方にも通じるものが多いので大好きでございます。
まとめ
餃子は熱ければ美味しいとは限らず、味がわかる温度まで冷ますことで旨味や食材の個性が見えてくる、という回でした。少し冷ましてゆっくり味わう食べ方は、餃子の楽しみ方を広げてくれそうです。
- 口の中の粘膜が耐えられるのは70度まで。熱すぎる餃子は舌が味を感じにくくなる
- 科学的には50〜60度、味の解像度を上げるなら人肌ほどまで冷ますとよい
- 味は甘味・旨味・塩味・苦味に脂肪味を加えた5つのバランスで判断する
- 温度で感じ方が変わるため、複数回に分けて味を観察する
- この回は土井善晴さんとクリス智子さんの番組の塩おむすびの話に着想を得ている
