異能人材とは何か。「異能は才能」という価値観
今回のテーマは「異能人材が活躍できる組織の作り方」です。異能人材とは、異なる能力を持ち、飛び抜けた成果を出す人を指すとして話が始まります。
宇尾野さんは、前職のユーザーベースにバリューがあり、その一番最初に「異能は才能」という言葉が掲げられていたと振り返ります。
それを見たときに、すごく私も共感したところもあったし、それを見て入ってこられた方も多かったんで、この言葉には馴染みが結構あって。
宇尾野さんは、研究開発など創造性を担保したい組織では、こうした人材はとても貴重だと語ります。時代的にも必要性を帯びているという見方です。
池原さんは、会社の中というより、ある分野でずば抜けた成果を出す人や、顧客企業の研究開発・AI開発でずば抜けた才能を持つ人を見てきたと話します。
ブリリアントジャークとは何か。優秀なのに組織に悪影響を与える人
この回では、異能人材と「ブリリアントジャーク」の違いが、多くの組織で悩みや話題になっているとして、前半でこの論点に触れていきます。
すごい仕事はできて成果は出すのに、嫌なやつ、組織に悪影響を与える人っていうところで、思い当たるような人もいるんじゃないかと。
宇尾野さんは、かつてそうしたタイプの人の部下になった経験があると明かします。ただし、その人は宇尾野さんにとっては師匠のような存在だったといいます。
僕にとってはすごく学びも多かったし、自分のパフォーマンスを上げられた要因でもあったなと思う一方で、その人自身が他のチームに対する悪影響が結構強かった。
当たりが強く、周囲から「大丈夫?宇尾野」とよく聞かれたと宇尾野さんは振り返ります。短い期間ながら、ブリリアントジャークを間近で見た経験だったといいます。
池原さんは、風土を悪くすることを裏で仕掛けたり、コンプライアンスに違反しかねない言動をしたり、当たりが強すぎて協調性が生まれない人材がいると整理します。こうした人は入社時にはなかなか分からないと問いかけます。
なぜ採用時に見抜けないのか。異能ゆえの浮きやすさ
宇尾野さんは、異能であること自体が、もともと組織から浮きやすい性質だと指摘します。そういう人を欲しいと考える組織である以上、入り口では伝わりづらいといいます。
前職でチームを持っていなかったり、専門領域だけだったりすると、リファレンスも取りづらいと宇尾野さんは説明します。入ってみて悪影響の大きさに気づき、相談に至るケースが多いといいます。
入ってみたら「え、こんなに周りに対する悪影響大きいの?」みたいなのがあって、採用ではわかんなかったっていうのはよくよく聞きますね。
池原さんは、事業面では素晴らしい成果を残す人の「組織への悪影響」とは、どの程度からそう言えるのかと尋ねます。
宇尾野さんは、人を傷つける、嫌なところをつく、その人が精神的に追いやられて抜けていく、といった個別の関係性の問題を挙げます。加えて、会社の文化や規範に反旗を翻すような言動もブリリアントジャークと言われやすいとします。
池原さんは、上司部下の相性や、良かれと思った言葉が相手の傷になることは誰にでも起こりうるとした上で、自分にとっての悪影響の線引きを語ります。
頼っていた人がジャークになるとき。経営者が直面する分かれ道
宇尾野さんは、ブリリアントジャークな人が組織にいると、どう向き合い、どう関係を作るかで負荷が高いと語ります。この人がなぜ発生したのか、発生したときにどうするかを、多くの人が悩んでいるといいます。
池原さんは、組織が小さいときほど、異能人材やハイパフォーマーに頼って事業が伸びていくと指摘します。その人がどこかのタイミングでブリリアントジャーク化したり、発覚したときに、経営者は大きく迷うといいます。
このままこの人に成果を出し続けてもらってもいいんだろうかとか、組織の面は目をつぶってでもやるべきなんだろうかっていうところの分かれ道になった時に。
池原さんによれば、多くの経営者は最終的に組織面を優先する決断をするといいます。その人に行為をやめてもらうか、違う道に行ってもらうかを選ぶケースが多いという見立てです。
宇尾野さんは、その人がいることのプラスとマイナスを天秤にかけると答えます。長い目で見て組織の停滞を作る感覚が強ければ、違う道を示すことになるといいます。
プラスとマイナスを天秤にかける
その人がいることの成果と、組織への悪影響を比較する
組織の停滞感が強い場合
退職勧奨など、違う道を示す選択肢が出てくる
突出した強みがある場合
仕事の範囲を狭める、社長預かりで個別に任せる
ブリリアントジャークを採用しないポイントは自己愛
池原さんは、ブリリアントジャークが生まれつきなのか、組織の風土や相性、タイミングでそうなるのかは大きな分かれ道だと問いかけます。その上で、そういう人を採用しないためのポイントを尋ねます。
宇尾野さんは、条件が揃うとジャークになる人と、どこへ行ってもジャークな人の線引きは難しいとしつつ、一つの観点として「究極の自己愛」を挙げます。
自分の言ってることが正しいとか、自分が言ってるもの自体にすべて賞賛を受けることで、いいフィードバックのみを自分に増長させてるみたいなケースの人かどうか。
宇尾野さんは、ブリリアントジャークが発生する発動条件の一つは、自尊心を傷つけられて攻撃に動き出すことだと説明します。自己愛が強すぎると、ちょっとした刺激で急に針が飛び出るような状態になるといいます。
面接での見極めとして、宇尾野さんは過去のネガティブなフィードバックを聞くことを勧めます。どんな指摘を受け、それをどう学習に変えてきたかで、謙虚さが一定見えるといいます。
ブリリアントがジャークになる環境をどう防ぐか
池原さんは、もともとジャークではなく、素晴らしいブリリアントな人がジャークになってしまう風土を作らないために何ができるかと問いかけます。
宇尾野さんは、才能ある人の成果を周囲が理解しようとしない、理解できないという差が激しいときに、ジャーク側が「なんだこいつら」となりやすいと説明します。
その対策として宇尾野さんは、成果を評価する仕組みや文化を持つこと、すごい人が分かりやすく説明する努力をサポートすることを挙げます。すごい人と周囲の間の溝を埋めることが大事だといいます。
さらに宇尾野さんは、言葉の攻撃がし合われないための心理的安全性を大前提として持っておくことが重要だと語ります。安全性が低い状態だとお互いに攻撃し合ってしまうためです。
異能人材はピープルマネジメントから距離を置くとうまくいく
池原さんは、一人ひとり違うタイプがいる中で、尖った人が能力を生かし、組織の推進力になるためには、本人任せにせず、活躍できる仕組みを作ってあげることが重要だと語ります。
池原さんの観察では、異能人材はピープルマネジメントから少し距離を置いたポジションにいるほうが、生き生きしているケースが多いといいます。
自分に才能が向いていてグッといく方って、人を引き上げるっていうことが両立しにくいケースもあるんじゃないかなと。
宇尾野さんは、異能の人とうまくチームビルディングできている場合、エンジニアでいえばEMやVPoEのような人が、才能を発揮できる環境を作っていると答えます。その人が一番ストレスに感じることを足さないことが大事だといいます。
具体策として宇尾野さんは、ピープルマネジメントを他の人が吸収すること、レポートラインを狭めて本人の関係する範囲を小さくすることを挙げます。
評価軸と別枠づくり。異能が生きやすい環境の設計
池原さんは、業種や業態、チームによって異能人材が必要なケースがあるとし、仕事ができる人が皆マネージャーにならなければいけないわけではないと整理します。
宇尾野さんは、歴史のある会社ではマネジメントラインとエキスパートラインを分け、評価軸を変える方法があると説明します。枠組みから調整するアプローチです。
もう一つの方法として宇尾野さんは、既存のルールとは別の新規事業本部のような組織を作り、そうした人材が実験しやすく生きやすい環境をあらかじめ設計することを挙げます。
宇尾野さんは、既存の組織や構造が牢屋のようになると、異能の人は「出たい」というエネルギーが強くなると指摘します。会社を出るなら早いものの、中で活躍しようとする思いが別の方向のエネルギーに変わることが、ジャーク化の大事な線引きだといいます。
構造が牢屋のようになり、「出たい」エネルギーが別方向に向かってジャーク化しやすい
評価軸を分ける、新規事業本部のような別組織で実験しやすくし、才能を発揮しやすくする
結局は「どういう環境を作るか」に戻ってくる
宇尾野さんは、前回テーマの流動性とも通じるとし、人間観の話を持ち出します。どんな環境でも育つ方向に育つという見方と、環境によって育ち方や適応が変わるという見方があるといいます。
私はどちらかというと、人間っていうのはその状況にすごく依存するものだと思ってるんで。
宇尾野さんは、人が育ちやすい環境を作り出せるかが、経営者にとって面白いテーマだと語ります。ブリリアントジャークの話も、結局はどういう環境を作るかに戻ってくるといいます。
最後に宇尾野さんは、ブリリアントジャークが発生しない環境を作り、異能が入ってきやすい環境を作ることに向き合ってほしいと呼びかけます。
池原さんは、ブリリアントジャークという言葉自体が新鮮で、ジャークになる人と元からジャークな人、ジャークになってしまう環境をぐるぐると考えたと感想を述べ、この回を締めくくります。
まとめ
異能人材とブリリアントジャークの違いは、才能そのものよりも、それが組織にどう作用するかにあります。この回では、採用時の見極めから評価軸、別枠づくりまで、環境設計の観点で才能を生かす方法が語られました。
- ブリリアントジャークは、大きな成果を出すが組織に悪影響を与える人。異能ゆえに採用時は見抜きにくい
- 見極めの一つは「究極の自己愛」。過去のネガティブなフィードバックとその学び方を面接で聞くとよい
- ブリリアントな人がジャークになる背景には、成果が理解されない溝と、心理的安全性の低さがある
- 異能人材はピープルマネジメントから距離を置き、評価軸を分けたり別枠を作ったりすると生きやすい
- 結局は「どういう環境を作るか」に戻る。人は状況に依存するという人間観から環境設計に向き合いたい



