経営合宿と経営会議は、どこが違うのか
今回のテーマは「経営合宿にどれくらい熱量をかけているか」です。夏ど真ん中の収録ということもあり、オフサイトで経営チームが集まる機会が増えている時期に合わせて、経営合宿の中身が語られていきます。
池原さんの会社では、泊まりがけの合宿こそしないものの、半日から1日の時間をとって経営陣で今後を話す時間を「経営合宿」と呼んでいます。
湖の側の何かを借りてとか、そういうことではないんですが、やっぱり時間を共に過ごすっていうことはかなり大事だなというふうに思ってます。
宇尾野さんは自社の事業人でも合宿を行い、クライアントの合宿に帯同してファシリテーションすることもあると話します。一方で、週1の経営会議で賄っていて合宿をやらない会社もあると言います。
経営合宿と経営会議の違いについて、池原さんは、時間の長さだけでなく、そこに何を求めるかが違うと整理します。議題だけでなく、チームの絆を強めたりお互いを知ったりすることが、裏テーマとして重要かもしれないと語ります。
普段の会議でできることは、合宿ではやらない
宇尾野さんが合宿の設計で最初に決めるのは、普段の会議とこの合宿の違いは何なのかを明確にすることだと言います。その上で、扱うテーマの決め方には明確な原則があります。
一個は通常の会議でできることは合宿に入れないっていう風に決めてるんですね。
たとえば数字の確認は、入り口として今期を振り返る程度ならよくても、それは普段の定例会議でもできるため、合宿の中心軸には置かないと宇尾野さんは説明します。
代わりに合宿で扱うのは、普段扱いたいのに時間や空気の都合で手をつけられないテーマです。日常のあり方を一度停止し、非日常として使いたいものを扱える数少ない機会として活用するのが狙いです。
2つ目のポイントは環境を変えることです。新しい合意形成を目指すなら、場所・時間・集まる人を変えると宇尾野さんは言います。東京で働くメンバーなら新幹線で1時間ほどの場所に移り、車での移動時間まで含めてプロセスを楽しむこともあると話します。
池原さんは、非日常であえて語ることで、会議室では出ない思考やお互いの素の部分が出るよう設計しているのかと確認します。宇尾野さんは、何かを変えたい、新しい関係を作りたいというリクエストから合宿が生まれることが多いと応じます。
リラックスや団らんは、合宿の本質ではない
宇尾野さんは、場所も時間も人も変えることで前提が変わり、そこから生み出すものも変わるという認識を、参加者どうしで一緒に作っていくと語ります。境界を越えていることを共有するのが大事だと言います。
一方で、間違えやすい点があると宇尾野さんは指摘します。自然の中でリラックスする、みんなで食事をして団らんする、それ自体は悪くないものの、本質ではないという整理です。
池原さんは、オフの部分がメインではなく、経営として話し合うべき点の中で思考の枠を外すことがそもそもの目的だと言い換えます。宇尾野さんもそれに同意します。
合宿を言い出すのは、体験した人が多い
池原さんは、外部の人が提案しない限り、誰が言い出して誰が準備するのかと素朴な疑問を投げかけます。社長が一人で張り切って「軽井沢行こうよ」と言っても、「東京でいいじゃないですか」と返されそうだと笑います。
宇尾野さんは、合宿を提案するのは自分で一度体験し、身体感覚を持っている人が多いと答えます。会議室では出ないものが非日常の場所や時間で生まれた感覚を持つ人が、提案を持ち込んでくるという説明です。
内部でそういった、なんかミツバチみたいな感じで、誰かが他のところで得た経験を自分の巣といいますか、住処のところに持って帰ってくるみたいな感じかもしれないですね。
池原さん自身も、経営者団体EOの理事合宿を例に挙げます。EO ── 起業家の相互支援を目的とする国際的な経営者組織。Entrepreneurs' Organizationの略で、会員同士の学びや交流の場を提供している。最初は都内でいいのではと思っていたものの、実際に一泊二日で参加してみて考えが変わったと言います。
1日目にレクリエーションや森の散策、博物館などで過ごし、2日目に難しいテーマをがっつり議論したところ、話しにくいと思っていた人とも打ち解け、意見が言いやすくなったと池原さんは振り返ります。
島でオフサイトを誘致する会社と、臨場感の伝え方
宇尾野さんは、一度体験して会得した人が、次は体験したことのない人にどう共感してもらうかは、持ってくる人のプレゼンテーションにもよると話します。
宇尾野さん自身が最近参加した例として、広島県の大崎上島町のツアーが挙げられます。ある企業が、オフサイトミーティングを島に誘致し、スタディツアーを兼ねて経営陣にディスカッションしてもらう事業を行っているといいます。
初めて訪れた宇尾野さんは、ここでやればこういうものが生まれる、ここだからこそできた会話があると感じたと語ります。その体験を事業人のメンバーに伝え、クライアントに勧められるようにしたと言います。
その際に工夫したのが、臨場感の伝え方です。動画を撮ってもらい、どんなものが得られるかをパンフレットにまとめてもらうことで、リアリティを持ってもらえる仕立てにし、実際にそこからツアーが生まれたこともあると話します。
池原さんは、忙しい経営陣があえてそうした場所へ行くのは、会社の方向性や根幹の話し合いという一点の目的を、いかに純度高くやるかという環境設計なのだと整理します。
経営合宿では、どんなテーマを話すのか
池原さんが、普段話せることは話さないとして、実際にはどんなテーマが多いのかと尋ねます。宇尾野さんは、まず長期の目線を挙げます。
普段の会議では足元の議論が多く、あえて視座を下げて話しているケースが多いと宇尾野さんは言います。合宿では逆に視座を上げ、視野を広げ、会社やチームが何をしたかったのかを改めて深掘りし直すのが一つだと説明します。
状況も現在地も変わっている前提で、長期の目線を定期的に会話し直すことが重要だと宇尾野さんは語ります。その中で、今のメンバーだからこその役割分担を再設計することもあると言います。
新しいビジョンや未来のイメージができたら、こんな人を採用しよう、組織のフォーメーションを変えようといった、普段手をつけられないテーマも扱われます。池原さんは、役割分担と中長期の目線は会議室では詰まりやすいテーマだと応じます。
さらに宇尾野さんは、社会に対してどんな影響を与えたいかを見直すテーマや、逆にメンバー一人ひとりが本質的に何をしたいのかという問いを扱うこともあると加えます。
ファシリテーションを外部に頼む意味
池原さんは、テーマ設定からファシリテーションまで自分たちで回すのは大変ではないかと問いかけ、ファシリテーションに人を入れる方がよいのではと投げかけます。
宇尾野さんは、入れられるなら入れた方がいいと答えます。理由の一つは物理的な問題です。5、6人の経営チームで1人がファシリテーションを担うと、その人は進行役になり、意見が出づらくなってしまうという説明です。
単純にマイナス一になっちゃうんで、そういう物理的な理由で外から入った方が五人六人の最高パフォーマンスを出すってことをベースに考えると、いた方がいいなってのが一つですね。
もう一つの理由は、中のメンバーだけだと意見が偏りやすい点です。外部の人が入ることで、俯瞰した目線でチームの状態を指摘してもらえると宇尾野さんは言います。
その役割として宇尾野さんが挙げるのが「悪魔の代弁者」です。悪魔の代弁者 ── 議論であえて反対意見や批判的な立場をとる役割のこと。集団が一つの結論に流れすぎるのを防ぐために使われる。あえて批判的にチームを見る役割を持って入ることを、ファシリテーションの際には意識すると語ります。
池原さんは、来週半日の合宿を予定していることもあり、どうやってそうした人を見つけるのかと尋ねます。宇尾野さんは、システムコーチングやグループコーチングを行う人、オフサイトミーティングのファシリテーションを専門にする人などを、組織づくりに関わる周囲に相談すると見つかるのではと答えます。
合宿の頻度と場所選び
池原さんが、合宿の頻度は年1回くらいのイメージかと尋ねます。宇尾野さんは会社によってまちまちとしつつ、自社の例を挙げます。
宇尾野さんの会社では3ヶ月に1回のペースで行い、1クオーターと3クオーターが終わった後はオフィスで、2クオーターと4クオーター、つまり上期・下期が終わったタイミングでは場所を変えると言います。リズムを持ってサイクルを回しているという説明です。
場所選びも毎回思い出に残ると宇尾野さんは話します。熱海のオフサイト向けの施設を借りたこともあれば、写真ではよく見えて行ったら狭くてカビ臭い小田原の会議室だったこともあると笑います。
地方で働くメンバーが多いこともあり、顧客がいる土地やメンバーが働く場所など、その土地に行く理由がある場所で開くこともあると宇尾野さんは加えます。
合宿の中身は、社内にどこまで共有するか
池原さんは、話した内容を社内にどこまで共有すべきかと尋ねます。宇尾野さんは、参加した人と参加していない人が必ずいるため、参加者がどんな認知や関係を新しく作れたかを、できる限り詳細に伝えることを勧めていると答えます。
決定事項を議事録的に伝えるだけでなく、開催中の写真や懇親の楽しそうな様子まで共有し、金曜や土曜に合宿をしたなら月曜の朝会でそのまま臨場感を持って話すのがよいと宇尾野さんは言います。
池原さんは、あまり言わない方がいいと思っていた、役員ばかり遊んでいると思われるのが嫌だったと打ち明けます。
宇尾野さんは、楽しげな写真だけが残ると不公平感につながると認めつつ、そこで何が生まれ、次に何をやろうとしているのかを共有すれば、合宿の投下効果が伝わると応じます。合宿での会話が3ヶ月後の成果につながったことを、後からストーリーとしてつなげられるとも語ります。
全チームに「合宿していい日」を配ってもいい
池原さんは、経営合宿の話は幹部だけでなく、メンバーが自分のチームをまとめるときの場の設計や環境づくりの参考にもなると振り返ります。
宇尾野さんは、新しい何かを作りたいときは、料理でいえば一度店を閉めて新しいメニューを作るような日を儀式的に設けることが大事だと語ります。普段と違う感覚や思考で臨める場になるからです。
個人的にはもう全チームにそういう合宿やっていいよ日を持って、それを福利厚生にしてもういいんじゃないかなと思うぐらいなんで。
池原さん自身も、来週の合宿は足元の話をじっくりする場としつつ、来期の策定が始まるタイミングで場所を変えて役員と中長期の話をしたいと締めくくります。
まとめ
経営合宿は、リラックスや団らんそのものが目的ではなく、普段の会議では扱えないテーマを非日常で話すための場です。テーマの選定、環境の変更、外部ファシリテーターの活用、そして社内への臨場感ある共有までを設計することが、熱量を成果につなげる鍵になります。
- 通常の会議でできることは合宿に入れず、普段手をつけられないテーマを扱う
- 場所・時間・人を変えて前提を変え、思考の枠を外すことが本質。リラックスは本質ではない
- 長期の目線、役割分担の再設計、社会への影響、個人の本質などが合宿向きのテーマ
- 5、6人の力を引き出すため、悪魔の代弁者も兼ねた外部ファシリテーターを入れるとよい
- 決定事項だけでなく、生まれたものや臨場感を社内に共有すると投下効果が伝わる





