夏休みの過ごし方と、今回のテーマ「HR体制の作り方」
番組冒頭、2人はお盆明けの収録ということで夏休みの話から始めます。池原さんは地方の親子留学に参加し、長崎の無人島で子どもたちと過ごしたと話します。
日本全国の田舎に行って、現地の農家さん、漁師さんと一緒にいろんな子供たちプログラムをする。で、親たちも全国からいろんな人来るんですけど、親は宿でリモートワークをひたすらするという仕事っていう、そんな夏休みでしたが。
一方の宇尾野さんは、万博には少し行ったものの、この3年で一気に暑くなったこともあり、あまり外に出ずに過ごしたと話します。
この3年で一気に暑くなって、全く外に出ないようにしてたっていうのがなんか結構、でもこれ新しい日本の夏なんだろうなって思いながら過ごしてましたね。
そして今回のテーマとして、HR体制の作り方が挙がります。人事や組織づくりを担う人たちのフォーメーションのあり方を考える回です。
1人目人事はいつ置く?10〜30人が相談の中心
このテーマは池原さんの会社にとってもタイムリーだといいます。今年の春に初めて人事のチームができ、担当者が入ってようやく機能が立ち上がったばかりだと明かします。
今年の春に初めて人事というチームができまして、人事の担当者の方が入ってきてくださって、ようやくこう機能というものができたっていうほやほやの感じですね。
池原さんは、起業家はまずサービスやプロダクト、売上や雇用が先に来るため、人事をどのタイミングで採用するのか悩んでいたと振り返ります。宇尾野さんは、人にまつわるテーマが増えて専任を置きたいときが1つのタイミングだと答えます。
一方で、2周目、3周目の経営者になると、人事が後から必要になるとわかっているため、社員が一桁のうちから人事を置くケースもあると話します。
規模の目安について池原さんが尋ねると、宇尾野さんは10人ほどで必要と感じるケースが多いと答えます。事業人への相談も、10〜30人ほどの企業が中心だといいます。
事業人、僕らの会社に相談する時も、やっぱり10から30ぐらいが一番「はじめまして、相談こういうのにしてみます」みたいな話が多いですね。
1人目人事に必要なのは専門性より「巻き込む力」
1人目人事にどんな人を探せばよいかという問いに対し、宇尾野さんは人事の専門性そのものよりも、いろんな人の協力を仰げるかが大事だと話します。社内、社外エージェント、HRツールを提供する企業まで巻き込める力を重視するといいます。
その背景には、1人目人事に求められる期待値の広さがあります。採用もルールづくりも社員総会の運営も、企画だけでなく運用まで担ってほしいという要望が多いためです。
池原さんは、人事は難しい立場であり機能だと受けます。評価や登用のルール運用、組織の死活問題である採用、経営陣のメッセージをメンバーに翻訳して伝える役割、逆にメンバーの意見を上に吸い上げる役割まで担うためです。
宇尾野さんは、専門性は極論すれば外部から調達もできると補足します。1人で集中して考える場面よりも、経営陣を含めた多くの人とのコラボレーションや、周囲への促しを作ることが期待されるケースが多いといいます。
「あとよろしく」はNG。1人目人事のケアが要る
宇尾野さんは、1人目人事のようなポジションは、会社の規模や難しさが上がると急に仕事量や考えることが増え、負荷が上がりやすいと指摘します。
だからこそ、経営者や周囲が「あとよろしく」「あと任せた」で終わらせてはいけないと話します。その人が何を抱え、どこで詰まっていそうかを定期的に対話することで、会社の全体像も見えてくるといいます。
なんかそういうできる人だとよろしくねっていう風に言っちゃいそうだけれども、やっぱりマメにその人自身のケアもしつつ、会社の状況をその人から聞きつつっていう、その両方が必要になりますよね。
宇尾野さんは、1人目人事は会社の参謀であり、社員にとっても相棒のような存在になるため、そのポジションへの期待は大きいと話します。
人事未経験でもなれる。スケールの経験を再現したい人
1人目人事になるにはどんな経験が必要かという問いに、宇尾野さんは「この会社がこの先どうなるか」を想像でき、そこに人や組織という機能を紐づけていける感性が大事だと答えます。
具体例として、300人や500人規模まで大きくなったスタートアップで、うまくいかなかった感覚を次の若い会社では再現しないよう対策を打ちたい、という人を挙げます。その景色は規模の小さい会社でも役立つといいます。
池原さんが、うまくいった経験もいかなかった経験も含め、スケールの再現性を持たせたい人が向いているのかと確認すると、宇尾野さんは同意します。
私が見てきた一人目人事ですごくハマる人は、そういう再現性っていうのをすごくポイントを持って、それを自分なりに考えて、その会社、その組織に合わせてもう一回自分なりに作り変えられる人っていうのはめちゃくちゃ活躍するイメージですね。
一方で、こうした人はレア人材だとも認めます。だからこそ人事募集だけでなく、営業やカスタマーサクセスなど別の職種で採用しているときに「この人は1人目人事にいけるのでは」と迎え入れる側が視野を広げるとよいと提案します。
足りない機能は社外へ。社外CHROの強みは「メタ認知」
池原さんが、足りない機能を社外でどう調達するのか尋ねます。宇尾野さんは、人事制度づくりや業務プロセスの再整理、難しい社員との向き合い、組織開発など、それぞれを専門にする会社があると説明します。
さらに、そうした機能を束ねてHRBPやCHROを外部化している会社もあると話します。事業人自身もそういう位置づけだといいます。
池原さんは、CHROは社内の人がなるものだと思っていたと打ち明けます。会社を誰よりわかっている人が担うイメージがあったためです。
CHROって社内じゃないとできないんじゃないかなって今までずっと思ってたんですよね。やっぱ社内の人と密にコミュニケーションを取って、その会社のことを誰よりわかってる人がなんかそうなるケースが多いのかなと思ったんですけど。
これに対し宇尾野さんは、社外CHROの強みはメタ認知ができるかにあると答えます。人が自分自身のことを一番わかっていないのと同じで、組織も中にいると暗黙のルールに気づきにくいからです。
外から見れば、そのユニークさに気づけることも、もっとうまくできる点に気づけることもあります。宇尾野さんは、そこに気づく一機能として大きな価値を残せることが多いと話します。
社外でも「中と同じ」に入り込む方法
池原さんは、組織を客観的に見ているからこそ、問題が起きている箇所を冷静に見やすいのかと確認します。宇尾野さんは同意しつつ、それだけではコンサルティング的なアプローチにとどまると補足します。
そこからさらに社内に入り込む工夫として、宇尾野さんはサーベイやアセスメントを定期的に取ることや、結節点となるマネージャーとコミュニケーションを取ることを挙げます。今はツールもあり、社外でも社内と同じ情報をキャッチアップできるといいます。
そういうことを通じて中のことを解像度上げながら、部分的にはもう業務一部やってたりすることを通じて、外の人でもほぼ中と同じような区切りなくやってるっていうケースもすごく増えてきてるなというところですね。
CHROはいつ生まれる?経営者が全員を語れなくなった時
池原さんが、CHROはどのくらいの規模で誕生する役割かと尋ねます。宇尾野さんは、会社が経営者の期待以上に大きくなり、一人ひとりを本当の意味で理解しきれなくなったときだと答えます。
その兆候として、顔と名前が一致しなくなることや、なぜこの人がこの会社で頑張ってくれているのかを全員分語れなくなることを挙げます。人事の責任者を置く目安になるといいます。
宇尾野さんは、これは会社が機能として回り始めたタイミングでもあると整理します。社長が一人ひとりに丁寧に向き合わなくても組織が回り始めたとき、その機能をさらに発展させるために専門家を入れるという考え方です。
池原さんは、それまでは社長が人事のトップ的な役割を果たしていて、大きくなるにつれてその機能を外に出していくタイミングになるのかと受けます。
最終面接は誰が出る?投資対効果で冷静に決める
宇尾野さんは、採用の最終意思決定や制度変更など、これまで社長がやっていた最後の意思決定を代理させたいとき、そしてその根拠に社長自身がアクセスできなくなったときが、渡すタイミングとして合理的だといいます。
同時に、社長がどこまで自分で人事をやりたいかに尽きるとも話します。宇尾野さんの知るケースでは、人事部長を置かずに最終面接を全部こなして300人規模で上場した経営者もいれば、社員一桁のうちからCHROを置く会社もあるといいます。
最終面接は社長が出るべきか、という論点について、宇尾野さんは投資対効果で考えればよいと答えます。社長が出れば投資以上のリターンは大きいはずですが、その時間を顧客に向けたいなら、同じ結果を出せる人に託して別の時間を使う選択もあるといいます。
一方で、社長に面接された候補者は「これだけの経験を踏んだ」という自負を持って入社しやすいとも指摘します。CHROや事業責任者が採用してもそれを演出できるかは、会社の仕組みを作れるかどうかだと話します。
財務・法務との違い。人事の専門性を尊重できるか
池原さんは、人事機能は会社の骨の部分であり、いい制度や人材が入れば会社は伸び、つまずけば事業にも影響が出そうだと話します。宇尾野さんは、人事という言葉だと管理部の一部に見えるが、もっと大きく見れば経営には「事業」と「組織」の2つが大事だと整理します。
その事業と組織、そして財務をバランスよく力を入れないと会社は衰退すると話します。ただ組織の分野は社内に専門家が少なく、皆で分担していることが多いため、人事という専門家を迎える準備やウェルカムの仕方を考える必要があるといいます。
宇尾野さんは、各事業責任者や社長が人事に一家言を持ち、1人目人事が何を言っても「それは違う」「そこは俺がやる」となると、その人の活躍の場がなくなると指摘します。
これは財務や法務とは違うといいます。「先生」と呼ばれる専門家は仕事を邪魔されにくく、必要なことをやれるためです。
財務法務系はどっちかっていうと、こう、きちんとしたセオリーとか法律とか、まあ管理会計とか会計とかっていう、こう、に則った絶対正しいものがあるんですけど、組織作りって、その社長の持論もすごく大きいじゃないですか、成功体験とか。
法律や会計のセオリーなど「絶対正しいもの」に則るため、専門家が仕事を邪魔されにくい
社長の持論や成功体験の影響が大きく、専門性の尊重と経営者の考えの整合が難しい
だからこそ宇尾野さんは、1人目人事のサポートでは独立させすぎず、周囲を巻き込みながら採用や制度設計でリーダーシップを発揮できるよう、小さな信頼関係と成功体験を早く作ることを勧めています。
「困ってから」では遅い。人事は早めに仕込む
1人目人事やCHROの導入を考える人へのアドバイスとして、宇尾野さんは、人事は結果が出るまで時間がかかると話します。自身が人事だった頃、施策の結果が出たのは5年後だったといいます。
そのため、半歩から一歩先を見据えて組織づくりをする必要があり、時間がかかるものだからこそ早めに投資する判断が大事だと話します。
池原さんは、採用の回でも同じ話をしたと振り返ります。今足りないと焦って動くと、いい人には巡り会えないためです。一方で、明確なニーズがないうちに未来へ投資するのは経営者にとって怖くリスクも感じると本音を語ります。
それでも、その一歩を踏み越えないと先はつくりにくいといいます。宇尾野さんは、人事は経営者でもある程度こなせるため、困る前に自分でやりつつ、要になれる人と早めに接点を持っておくことを勧めます。
その人もすぐ転職しないんで、長くじっくりいつか来てくれっていうのを一年後ぐらいをちょっとピンを止めて採用活動していただいたりとか、まあちょっと一部業務委託で入ってもらったりっていうのをやりながら仲間集めをしていただけるといいんじゃないかなと。
答えがないテーマだからこそ、悩んだら相談を
最後に2人はこの回を振り返ります。宇尾野さんは、人事体制は答えがありそうで、会社に誰がいるかや社長の思いで大きく変わるため、常に答えが出ないテーマだと話します。
この人事体制って答えがありそうで、やっぱりこの会社の中に誰がいるかとか、社長の思いとかで結構変わるんですよね。とはいえ結構悩むポイントなんで、人事制度をどう作るかとかよりも結構難しいテーマなんで。
宇尾野さんは、いい事例やプラクティスは多く理解しているとして、わからないことがあれば問い合わせフォームから相談してほしいと呼びかけます。あと2回分ほど話せる話題があるとも話し、続編に含みを持たせて回を締めます。
まとめ
1人目人事は10〜30人規模で置くケースが多く、専門性よりも周囲を巻き込む力が重視されます。足りない機能は社外CHROなどで調達でき、経営者が全員を語れなくなったときが責任者を置く目安です。人事は結果が出るまで時間がかかるため、困ってからでは遅く、早めの仕込みが大切だと語られました。
- 1人目人事の相談は社員10〜30人の企業が中心で、人事未経験でもスケールの経験を再現したい人は向いている
- 1人目人事に求められるのは専門性より、社内外を横断して巻き込む力。「あとよろしく」で任せきりにせず、本人のケアも必要
- 社外CHROの強みは組織を客観視できるメタ認知。ツールやマネージャー連携で社内と同じ解像度に近づける事例も増えている
- 最終面接を社長が出るか渡すかは投資対効果で判断する。財務・法務と違い、人事は経営者の持論との整合が難しい
- 人事は結果が出るまで時間がかかるため、困ってから動くのでは遅く、要になる人と早めに接点を持つ仕込みが有効



