ゲスト紹介と少人数チームの役割分担
今回のゲストは、株式会社ネオトロの佐渡さんと、マキノイノモトさんです。
佐渡さんは以前、NeverAwakeの回にも出演しており、番組的には約3年ぶりの登場です。
これまで番組では「佐渡さんが作ったまじかるプリンセス」と語られがちでしたが、実際は共同制作です。
マジカルプリンセスといえば私ではなく、どちらかというとマキさんですね。
もともと「まじかる」シリーズは、イノモトさんたちが手がけてきたボードゲームの人気作です。佐渡さんはそのデジタルゲーム化を手伝う形で関わっています。
開発のメインメンバーは、佐渡さん、イノモトさん、プロデューサーの三人です。
佐渡さんは制作面、つまりプログラミングやゲーム構成を担当しました。イノモトさんは世界観設定やお話、各種パラメーター調整を担いました。
プロデューサーはその他全般を受け持ち、根回しから細かい文言、キャラクターの表情付けまで、自ら手を動かしていたと話されています。
三人はそれぞれ専門を持ちつつ、互いの領域にも口を出し合う進め方だったそうです。
侵食しまくって、口を出しまくってやってました。
初めてこの番組に出るイノモトさんはどんな人か
本編に入る前に、初出演のイノモトさんの人柄をざっくばらんに聞いています。
イノモトさんは常にゲームをしているタイプで、生まれて初めて遊んだのはドラゴンクエストIIIだと話しています。そこからJRPGにどっぷり浸かって育ったそうです。
アドベンチャーゲームやノベルゲームも好きで、十三機兵防衛圏やファタモルガーナの館などを挙げています。
まじかるプリンセスにJRPGやアドベンチャーゲームらしさを持ち込んだのは、イノモトさんの好みだと考えられます。
こへいは、プレイ中に一瞬FF感を、そして一瞬「カノン」や「エアー」のような雰囲気を感じたと話します。
全く気のせいではないと思います。
FFらしさの一因は、サウンド担当のウエクサさんにもあります。植松伸夫の大ファンで、バトル曲を自由に作ってもらったそうです。
ただし実際に使っている音源はFF13寄りで、いろいろな要素が混ざっていると佐渡さんは補足しています。
半年の予定が二年半に伸びた開発の経緯
まじかるプリンセスは、動き始めてから約3年、実制作は2年半ほどかかったと話されています。
もともとは半年ほどで作りきる、予算も抑えたプロジェクトとして始まったそうです。
ところがシナリオやイラストが形になり、キャラクターをアニメーションで動かしてみたところ、プロデューサーが「もっといけるぞ」となったと話します。
そこからボリュームが増え、期間も伸び、予算も増え、フルボイス化まで、雪だるま式にふくらんでいったそうです。
フルボイス化が決まったのは、初PVの評判が良く、ウィッシュリストが伸びたことがきっかけだったと佐渡さんは記憶しています。
フルボイスは、シナリオや文言を一切変えられなくなるという重い決断でもあります。
声優さんが入る、フルボイスで入るっていうことは、その後のシナリオを変えられないってことなんですよね。文言一つも変えられない。
売れっ子の声優を起用したため再録も難しく、シナリオを二度と変更できない状態がプレッシャーだったと話されています。
完成度の高さと、細部への作り込み
ここからは、こへいとHARUの遊んだ感想を開発者に投げつけていきます。
まず二人が繰り返し語ったのが、完成度の高さです。育成パートからJRPG風のバトル、恋愛アドベンチャー、フルボイス、スキルツリーまで、要素が多いのに全部つながっていると話します。
育成するモードがありーので、そこからJRPGみたいなバトルがありーので、恋愛アドベンチャーなのかしらっていうデートシーンがあって、全部フルボイスで、これ何?ってずっと思ってたんです。
衣装は色違いではなく、すべて独自デザインだそうです。これはプロデューサーのこだわりだと明かされています。
色違いとかもうちょっとあってもいいんじゃないですかと言ったんですけど、いや、許さん、全部独自の色で、と。
作り込みは細部にも及びます。武器屋や服屋は夜も営業しており、昼と夜どちらで先に話したかによってセリフが変わるそうです。
雨が降っているかどうかでも会話のチョイスが変わり、その分の差分もボイスも用意しているといいます。
神は細部に宿るみたいな。
泥棒などの犯罪行為も、完全に引いてしまわないラインで演出されています。物を盗んでも代金を置く、最後に父親に叱られる、翌日に店主が被害を語る、といった形で罪悪感が残る作りです。
範囲指定バトルと、全体を通した難易度調整
バトルは、詠唱の矩形をどこに合わせるかという範囲指定システムが特徴です。
佐渡さんは、そのまま作ると普通のサイドビューバトルになるため、このゲームならではのポイントを一つ入れたかったと話します。
育成ゲームのおまけと思いきや、敵キャラは50〜60体ほどおり、普通のRPG並みのボリュームになったそうです。
製品版は開発中よりだいぶ難易度が下がったといいます。それでも三周目のラスボスはかなりシビアだと二人は話しています。
難易度調整が難しかった理由は、通常のパラメーターがそのまま戦闘パラメーターに反映される仕組みにあります。
普通のシナリオの方でパラメータの付与値をちょっと変えると戦闘のバランスも変わっちゃうんですよね。だから戦闘だけの調整じゃなくて、全部を通した調整をやらなきゃいけない。
火傷の状態異常は貫通ダメージで、ライフ1で耐えるスキルを使っても倒れてしまうほど強力だと話されています。
膨大なコミックパネルと、王道を狙った世界観
キャラクターのやり取りを支えるのが、漫画タッチのコミックパネルです。二年半で約800枚描かれたそうです。
立ち絵のアニメーションと声、そして漫画のコマの組み合わせで情景を補完する見せ方を、佐渡さんは発明だと考えています。
日本人ってアニメを見たり漫画見たりするところで、コマとコマの間を読む力がすごい優れてる。立ち絵のアニメーションと声と漫画のコマによって、相乗効果で情景が全て補完される。
佐渡さんは、最近は病んだ雰囲気のゲームが多いと感じており、王道でクオリティの高い作品が売れてほしいと狙っていたと話します。
その狙いは当たり、リリース後に30万本を突破したと明かされています。
一方で、値段は税込2000円ちょいと安く、チーム内でも揉めたポイントだったそうです。安すぎると同業他社から文句を言われかねないという懸念もあったといいます。
キャラクターへの思い入れと、三周目の意味
キャラクターの人気について、佐渡さんは男性キャラの人気のなさに驚いたと話します。アリスに感情移入し、娘を男にやりたくないという声もあったそうです。
こへいは男性キャラのハシスを激推しし、HARUは不遇なハシスにこそ思い入れがあると語ります。遠距離になると成就しにくい仕様に、二人とも一度は打ちのめされたようです。
遠距離恋愛ってそうですよね。うまくいかないことがやっぱりあります。距離は大事ですよね。
物語の核心は三周目にあります。HARUは、二周目までは主人公アリスや女王が主軸に見えるものの、プレイヤーである父親の存在意義が三周目で提示されると話します。
2周目で終われない理由がちゃんとあったと思って。3周目になってプレイヤー自身の価値を認められて、これすげえ落とし方だなって思ったんですよ。
実はこの最終エンディングは、開発のギリギリまでなかったそうです。悪役の救済と世界観の取りまとめのため、最後に付け足されました。
これはイノモトさんが言い出したことで、結果的に自分の首を絞めた形になったと笑い交じりに話されています。
やった方がいいことは言った方がいいよねって言ったら、もうやるしかないなっていう感じになってましたよね。
快適なUIと、初めてづくしの制作
周回ゲームでありながら苦にならない理由の一つが、快適なUIです。ボタン連打でテンポよくスキップできると二人は評価します。
佐渡さんは、普段アクションやシューティングを作る感覚でUIを設計したと話します。
ユーザーの思考よりもUIの方が早く動くというか、ユーザーの思考が追いつくより前にUIが準備が整ってるみたいなところを意識しながら作っていました。
ちなみにこの快適さは、シナリオを書いた本人でありながらボタン連打で進めるイノモトさんの検証によって鍛えられた面もあると、冗談交じりに語られています。
「米」が違法という世界設定も、こへいは巧みだと評価します。暴力や万引きはさせたくないが、日常的な行為が悪になることで、無理なく悪の要素に手が伸びるからです。
日常的に日本人が行っている行為が、実はこの世界では悪になっているところの面白みと、悪い行動に対しての感度が上がる効果がすごいある。
今回は三人とも、これまでと違う分野に初めて挑戦したことが多かったそうです。それがうまく回った感覚があると話されています。
自分のこれまで培ってきた分野とちょっと違うところを初めてやってみたことが、色々うまく回ってるんだなっていう感覚はちょっとありましたね。
今後は、まじかるプリンセスのアップデートやコラボが続く予定です。佐渡さんはNeverAwake FLASHBACKのコンシューマー版も作りたいと話しています。
まとめ
王道の娘育成RPG「まじかるプリンセス」は、三人のメインメンバーが専門を越えて手を動かし、細部まで作り込んだ結果生まれた作品でした。開発者本人に感想をぶつける形で、その制作の内幕とこだわりが語られた回です。
- 「まじかる」シリーズはボードゲーム発で、まじかるプリンセスは佐渡さん・イノモトさん・プロデューサーの三人がメインで制作した。
- 当初は半年予定だったが、フルボイス化などで規模がふくらみ、実制作は約2年半に伸びた。
- 昼夜や天候でセリフが変わる差分、約800枚のコミックパネルなど、細部の作り込みが完成度を支えている。
- 物語の核心は三周目にあり、プレイヤーである父親の存在意義が提示される構成になっている。
- 通常パラメーターが戦闘に直結するため、難易度調整は全体を通して行う必要があり苦労したと話された。


