先月AIにいくら払ったか、即答できますか
『NEC』さんが、全社のAI利用にかかるトークンコストを2026年の上期中に5分の1、下期中に10分の1に下げるという目標を掲げられました。
あくまで目標を掲げたという段階なので、達成したかどうかはこれからだと思います。それでも、AIを使う会社にとっては学ぶことが多いんじゃないかなと思うんです。
たとえば「先月AIにいくら払いましたか?」と聞かれて、即答できる社長ってそんなに多くないんじゃないでしょうか。
今は個人ごとに契約した月額プランがあります。ChatGPTの有料プランもあれば、Claudeの有料プランもある。
部署ごとに動いているAIの追加料金があったり、経営企画が作ったシステムの裏側で従量課金のAIが動いていたり。こういうのを含めると、AIにいくら使っているのかが見えなくなってきているんじゃないかと思います。
AIを使っている会社さんほど、費用が見えなくなっているというのが、実際に起きているんじゃないでしょうか。
私たちもそれに気づいて、半年ぐらい前から、AIにどういうものを使っているかを可視化する取り組みを進めています。
シンプルにGoogleのスプレッドシートで、誰がどんな有料のAIを使っているかを管理したり。都度課金のものは、トークン量がどれぐらい使われているかをチェックしに行って、適切な量なのかを見たりしています。
買って終わりではない、AIは使うほど費用がかかる
AIを道具として見れば、買って終わりの買い切りのように思えます。でも実際は、AIは使えば使うほど費用がかかってくるんです。
AIツールをみんなに渡すと、便利だからみんな使います。「みんな便利って言ってるからね」と、月額数千円、数万円ぐらいは必要経費かと社長が思って、そこで終わることがあります。
ただ、それを放置するとシンプルに経費が増えます。一つ一つの業務で誰がどうAIを使っているかを社長がすべて管理するのは、これは難しいと思うんです。
場合によっては、人がやった方が総合的にいいよね、逆にAIを使った方が高いよね、ということもあったりします。
だからといって「AIを使うな」というのはもったいない。使うなではなくて、管理して使うという方向にしていく必要があるんじゃないかなと思います。
その管理のために、私たちは「トークンの環境整備」と「トークンチェックのカレンダー化」という2つの仕組みで対策していこうと考えています。
まず捨てる、そして揃える。トークンの環境整備
私たちは、整理とは捨てること、整頓とは揃えることだと考えています。トークンの環境整備も、まずは捨てることから始まります。
使わない情報、使わないシステム、AIじゃなくていい処理を捨てるんです。何でもかんでもAIに情報を渡せばいいというものではありません。
目的に関係ない情報をAIに与えると、それだけでトークン量が跳ね上がってしまいます。だから、目的に関係ない情報は削除する。これで節約できます。
使って終わりのシステムも要注意です。使っていないのに裏側でトークンが使われ続けているのは、もったいないですよね。
あとはAIじゃなくていい処理です。たとえばGAS ── Google Apps Scriptの略。Googleのサービス上で処理を自動化できるプログラム環境を使えば、AIのトークンを使わずに自動化できるものもあります。
次が整頓、つまり揃えることです。今回でいうと、モデルの棲み分けですね。
私たちはシンプルに、外に出すものは上位モデル、社内向けや簡易的なものは軽いモデルを使うという形にしています。どういう時にどのモデルを使うかをルール化しておくと、費用を節約できます。
ただ、ここは正直、まだうまくできていないところもあります。AIに慣れている人は業務ごとにモデルを切り替えられるんですが、不慣れな方は前に使っていたモデルをそのまま使いがちなんです。
たとえば私たちの小売店では、毎日販促ポップを書いています。お客様に興味を持ってもらって購入いただくためのものなので、ちょっといいモデルを使っていい。逆に社内マニュアルの整備なら軽いモデルで、という切り分けは明文化しやすいと思います。
ただ、これを仕組みとして動かすとなると、人がいちいちモデルを切り替えるとは思えないので、自動的に切り替わるようにする必要があります。ここは今も試行錯誤しているところです。
もう一つ、整頓では参照範囲を絞り込むのも大事です。
私たちはチャットワークのやりとりをRAG ── 外部データを参照させて、AIの回答の精度を高める仕組みのような形で使っています。グループチャットを100個参照させるのか、10個にするのかで、トークンのコストは当然変わります。
全部のデータを参照させた方が簡単なんですが、費用は高くなりますし、アウトプットの質もいろんな方向に散ってしまうんです。だから参照範囲を整頓することが大事だなと思います。
チェックしないと回らない。トークンチェックのカレンダー化
どんなに整理して整頓しても、チェックしないと適切なPDCAを回すのは難しいので、チェックは必要不可欠です。
今チェックしてみたら、どのぐらいのトークン量になっているか、驚かれる社長さんもいるかもしれません。
私たちは今のところ、私が直接、週に1回ぐらい、どのAIシステムがどれぐらいトークンを使っているかを見に行っています。
ただ、システムが増えれば増えるほど、見に行く手間も増えてしまいます。そこで今考えているのが、AIトークンのチェックのダッシュボードです。
一つのシステムを見れば、どのモデルがいくら使われているかが一覧でわかるようにする。そうすればチェックもスムーズになりますし、「このシステムはもう使ってないからやめよう」という意思決定もできて、無駄遣いもなくなります。
AIを活用している企業さんほど、このトークンのダッシュボードは作っていった方がいいかもしれません。私たちでもこれから実験してみて、その結果はまたどこかでお伝えできればと思っています。
AIは道具ではありますが、使えば使うほど原価がかかります。管理しないでサービスだけを渡すのはもったいないし、かといって使うなというのももったいない。だからこそ、ちゃんと管理できる仕組みを持っておくことが大切だと思うんです。
今どのぐらいAIを使っているんだろう、どのぐらいトークンを使っているんだろうと思われた方は、今日書いた「トークンの環境整備」と「トークンチェックのカレンダー化」という2つの視点で対策してみていただければなと思います。
私の方で「松田幸之助の仕組み化実践会」と、中小企業の経営者さん向けの「AI実践会」という2つの経営者コミュニティを主催していますので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。それではまた、次週お会いしましょう。さようなら。
まとめ
AIは使うほど費用がかかる道具なので、管理せずに渡すのはもったいないです。私たちは「トークンの環境整備」と「トークンチェックのカレンダー化」という2つの仕組みで、費用を抑えながら活用しようとしています。
- AIの費用は個人契約やシステムの裏側で従量課金が動くため見えにくくなる
- 環境整備は「捨てる(不要な情報・システム)」と「揃える(モデルの棲み分け・参照範囲の絞り込み)」
- チェックはダッシュボードで一覧化し、使っていないシステムをやめる判断につなげる




