なぜ本つまはSubstackで集まる場所を作るのか
本つまみぐいラジオの番外編は、本の紹介ではなく番組のコミュニティを考える回です。収録時点で番組は1年半ほど続いており、Spotifyのフォロワーだけで5500人に達していると紹介されます。
この回のメンバーの話は、普段の運営会議にリスナーにも参加してもらう感覚で進みます。結論として出されたのは、本つまみぐいラジオとしてSubstack ── メールで記事を届けるニュースレター配信サービス。ポッドキャスト配信や読者同士のチャット、有料購読の仕組みも備えていますを始めたい、という提案でした。
まあ結論的に言うと、サブスタックを本ツマでやりたいんですよね。
Substackを推す理由の1つ目は、ポッドキャストをそのまま配信できる点です。リスナーが本つまのSubstackを登録すると、新しいエピソードがメールで届くため、見逃しが減ります。内容はほかの配信と同じで、動画でも見られると話されています。
理由の2つ目は、登録者限定のグループチャットです。LINEのオープンチャットに近いイメージで、面白かった本を紹介し合うなど、リスナー同士がフラットに交流できる場になると説明されます。
(グループチャットの中で)例えば面白かった本とかを紹介し合ったりとか、読者の皆さんと普通にもうほんとチャットだからフラットに結構交流ができたりするんですよね。
Discordでも LINE でもない理由と、1年半続いた赤字
コミュニティの置き場所として、Substackがほかの選択肢と比べられます。Discord ── ゲーマーを中心に広まったチャット・通話サービス。サーバーと呼ばれる専用の部屋を作ってコミュニティを運営できますのサーバーを作るのは重く、LINEのオープンチャットは匿名で参加できるため荒れやすい、という見立てです。
Substackの場合は、メールアドレスを登録した人だけがチャットに入れます。さらに、毎月決まった額を払った人だけが参加できる有料の仕組みも作れると紹介されます。
| サービス | 番組内での見立て |
|---|---|
| Discord | サーバーを作るのが重く、入るハードルも高い |
| LINEオープンチャット | 匿名で参加できるため荒れやすい |
| Substack | メール登録者だけが入れ、有料化もできる |
有料化の話が出た背景には、番組の台所事情があります。収録スタジオの建物に毎月60万円かかり、機材にも30〜40万円ほどかけているのに、1年半やって誰も1円も稼いでいないと明かされます。
一年半ぐらいやったけど、一円もマジで誇張抜きに稼いでない。一回noteやろうとしたけど立ち消えましたからね。
それでも3人は毎月欠かさず収録に集まっています。しゅうへいさんは、この仕事が一番ちゃんとしているかもしれないと笑い、幸あれこさんは楽しくやらせてもらっていると応じます。
Substackではポッドキャストに添えてコラムも書けるため、エピソードの裏話やこぼれ話を一緒に送れる点も魅力として挙げられました。
煽らなくても届く場所という相性
Discordではなく既存のSNSの中に場を作る案についても、しゅうへいさんは慎重です。いろいろなDiscordを見なければならない「コミュニティ疲れ」があり、一方でインスタのように暇つぶしで開くSNSはポッドキャストと相性がよくない気がする、と話します。
しゅうへいさんがSubstackを評価するのは、難しい話が難しい話のまま届く点です。Xでは、伝えたい内容を煽る見出しで包まないと読まれにくいと指摘します。
九割がバズらない、間違ったショート動画完全終了みたいなことを言う。
サブスタックはそのままなんか出せばそのまま届くって感じがして。それはホンツマのポッドキャストの世界観と相性はいいかなって思う。
本つまみぐいラジオはもともと煽る番組ではありません。しゅうへいさんは、煽らずにそのまま出せる場所のほうが、続ける側も疲れないだろうと考えています。
要約から音声へ。Podyで変わった感覚
イケダハヤトさんは、Substackが新しいリスナーとの出会いの場にもなると話します。きっかけは、けんすうさんが作ったポッドキャスト要約サービス「Podyの要約」をX投稿で目にした体験でした。
イケダハヤトさんによると、けんすうさんは本つまやイケダハヤトさん自身の番組の要約スクショを投稿しており、それが伸びていたといいます。イケダハヤトさんの番組のまとめは20万インプレッションに届いた一方、元の音声は200〜300再生、Spotifyでも500再生ほどだったそうです。
そんなニーズがあるんだ、みんなこんな反応してくれるんだっていうようなネタを自分話してるんだと思うと、なんか感覚が変わったんですよ。
イケダハヤトさんは、同じことがSubstackでも起こりやすいと見ています。要約を届けつつ、もっと聞きたい人が音声にたどり着く、ポッドキャストが見つかるサービスだという考えです。
この話の最中、しゅうへいさんはすでにSubstackのアカウントを作り始めていました。管理者を複数人設定できることもその場で確認され、スピード感に驚きの声が上がります。
有料会員の特典は読書会か、映画鑑賞会か
当面は無料で見られるようにして人を集め、どこかで有料のサポート会員を募る方針が話されます。高知から通うイケダハヤトさんの交通費や、自腹で買ってきた書籍代の足しになれば、という思いもにじみます。
1冊を紹介するために複数冊を読むことも多いと語られますが、メンバーはそれをライフワークとして受け止めています。イケダハヤトさんは、本つまがなかったら本を読んでいないとまで話します。
有料化する部分の候補として、イケダハヤトさんはオンライン読書会や、感想を投稿し合える場を挙げます。休日を扱った本に、土曜はアクティブに、日曜は静かに本を読むと書かれていたことから、日曜読書会の案も出ました。
でもその、それをやると、なんか日曜読書会は仕事になっちゃうんだよ。
しゅうへいさんは、本に限らなくてもいいと提案します。自身のコミュニティで、著作権の切れたパブリックドメイン ── 著作権の保護期間が切れるなどして、誰でも自由に利用できる状態になった作品のことの映画を同じ時間にみんなで見て、チャットで裏話を書きながら2時間過ごしたのが、とてもいい時間だったといいます。
幸あれこさんは、推し活でもドラマやライブを一緒に見てチャットで盛り上がる動きがあると重ねます。一人のスペースを確保したまま人とつながる感覚は、今どきの不思議な欲求だと話されています。
サポート会員の先にあるオフ会と先行配信
しゅうへいさんは、本や映画、場合によっては音楽も含めて、教養をみんなで高めるオンラインコミュニティをSubstack中心に作る構想をまとめます。基本は無料で、サポート会員の力が集まれば、オフラインイベントも視野に入ります。
ただ、3人で東京に行ってイベントを開くと、会場代を含めて40〜50万円ほどかかるといいます。有料会員の売上が貯まれば実現できるという道筋が示されました。
無料で人を集める
まずはSubstackを無料で見られるようにする
サポート会員を募る
有料プランで応援してもらう
売上を貯める
例えば毎月30万円ほど売上が立てば積み立てる
オフ会を開く
年に2回ほど会場を借りてイベントをする
イケダハヤトさんは、明確なリターンがなくても、サポート会員というバッジのようなものになれるだけでいいのかもしれないと話します。そのうえで、有料会員に放送を先行配信する案も出しました。
これだってここにアップすればいいだけなんで。なんなら今日全部出せるんですよ。
先行配信はRSS配信ではなくアップロードになるため、Spotifyとはデータが分かれる点も確認されます。こうしてその場で方針が決まり、しゅうへいさんは設定を進めていきました。
本好きの孤立を和らげるつながり
幸あれこさんは、ラジオの仕事で感じたこととして、ラジオリスナー同士のつながりがとても強いと話します。同じものを耳から楽しむ体験は、テレビと比べて引きつけられる度合いが違うといいます。
だから、これはなんかホンツマのリスナーさんたちとの繋がりってかけがえのないものなんじゃないかなと思ってるんだよな。
イケダハヤトさんは、PIVOT ── ビジネスや経済をテーマにした動画を配信する日本のメディア。YouTubeチャンネルが広く視聴されていますのYouTubeのコメント欄で見たやり取りを紹介します。「周りに20代の女性でPIVOTを見ている人がいない」という書き込みに、「私見てます、20代のエンジニアです」といった返信が続いたそうです。
そこからイケダハヤトさんは、学びたい欲があるのに周りが本を読んでいないという意味で、孤立している本好きは意外と多いのかもしれないと考えます。幸あれこさんも、自分がまさにそうだったと応じました。
しゅうへいさんも、本を読めている自分は自己効力感が高い気がすると話し、本つまのSubstackを教養を高める場所と位置づけました。
アルゴリズムに頼らない場所と、それぞれの宿題
しゅうへいさんは、フォローしていればアルゴリズムに乗らなくても届く点もSubstackの良さだと話します。今のSNSでは自分が面白いと思う投稿を見つけにくく、AIの最新ニュースばかり流れてくるという実感があるようです。
イケダハヤトさんは、新しく5000人、1万人に見つかる可能性も十分あると見ています。しゅうへいさんは、さらに番組を伸ばして大きなホールでオフ会をしたいと意気込みます。
一方で、番組の公式ホームページは作ってあるのに公開されていないことも打ち明けられます。ドメインまで取ったのにDNS ── ドメイン名とサーバーの住所を結びつける仕組み。設定しないとドメインを入力してもサイトが表示されませんの設定だけが残っており、「9割までやってあと1割」の状態だったといいます。
幸あれこさんには、Substackでこぼれ話や、あれこさんの感性で撮った写真を流す役割が期待されます。紹介しきれていない本や、買った本を流すだけでも面白いという話にもなりました。
これ伸びないだろうって思って投稿しないんだよね。その時点でダメなんだよね。
最後に幸あれこさんは、ハッシュタグ「#本つま」で、欲しいコミュニティの内容やリスナー同士で話したいことを寄せてほしいと呼びかけて、この回を締めくくりました。
まとめ
本つまみぐいラジオは、1年半の赤字運営を経て、Substackを拠点に本好きが集まる場所を作ると決めました。煽らずに届く場で、読書会や鑑賞会を通じて教養を高め合い、本好きの孤立を和らげることが目指されています。
- Substackはポッドキャスト配信、登録者限定チャット、有料化をまとめて実現できるため選ばれた
- XやインスタではなくSubstackなら、煽らずに内容がそのまま届くと考えられている
- 有料特典の候補は読書会、映画鑑賞会、先行配信などで、売上はオフ会に回す構想
- 学びたいのに周りに本好きがいない人の孤立を和らげることに、社会的な意義が見出されている




