番組初の漫画回、3人は何を持ってきた?
本つまみぐいラジオは、幸あれこさん、イケハヤさん、しゅうへいさんの3人が、テーマに合わせた本を持ち寄って語る番組です。19回目の今回、番組が始まって1年半を超えたところで、初めてテーマが漫画になりました。テーマは「大人が読むべき漫画」です。
イケハヤさんは、漫画は基本的に電子書籍で買うため現物がないと前置きしました。そのうえで、『めしにしましょう』『鍋に弾丸を受けながら』『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』の3作品を挙げます。しゅうへいさんがすぐに「メシ系です」と言い当てたとおり、3作ともグルメ漫画です。
イケハヤさん、マジで多分1万冊ぐらい読んでるんじゃない?
いや、多分、余裕でいっててます。
しゅうへいさんが持ってきたのは、ジャズ漫画の『BLUE GIANT』と『生きのびるための事務』です。『生きのびるための事務』は、中身が漫画になっているビジネス書・自己啓発本だといいます。しゅうへいさんはこの2冊を「情熱と事務」というテーマで紹介すると予告しました。
幸あれこさんは、コミックエッセイの『泣きたい夜の甘味処』を持ってきました。幸あれこさんは漫画をほとんど持っておらず、2、3年前に手に入れて大切にしている、唯一ぐらいの漫画だそうです。この回は、まずイケハヤさんの3作品から紹介が始まります。
漫画はフィクションだけじゃない?イケハヤさんの選書基準
イケハヤさんによると、漫画というと『ONE PIECE』のように、架空の世界でキャラクターが物語を進めるフィクションを思い浮かべる人が多いそうです。一方で、職業や旅をテーマにした作品や、自分の経験を描くコミックエッセイのように、現実を題材にした漫画もたくさんあります。
イケハヤさんは、ノンフィクション寄りの漫画も普通の読書と同じだと考えています。読んでいると「こんな世界があるのか」と驚かされ、自分の知らない世界を教えてくれるからです。
フィクションはやっぱり好き嫌いというか、卒業していく気持ちになるのはわからんでもないけど、でも漫画ってもっとノンフィクション的な、本当に読んでて勉強になる作品がたくさんあるというのがあって。
今回の3作品は、どれも著者が実際にレシピを作ったり、旅をしたりした体験を漫画にまとめた作品です。イケハヤさんは、番組のリスナーには漫画を読まない人が多そうだと考え、その人たちにこうした漫画を薦めたいと話しています。
架空の世界に物語とキャラクターがいる。好みが分かれやすく、大人になると卒業したくなる人もいる
職業、旅、体験、レシピなど現実を題材にしている。知らない世界を教えてくれて勉強にもなる
『めしにしましょう』の過剰すぎるレシピとは?
1作目の『めしにしましょう』は、小林どーもー先生の作品です。イケハヤさんは大好きな作品だと言いますが、すでに完結し、打ち切りになってしまったそうです。イケハヤさんが作中の「超級お好み焼き」を実際に作ってみたところ、作者本人がXで反応してくれたというエピソードも紹介されました。
イケハヤさんによれば、作者は料理が好きで、作中の料理を実際に全部作っています。ただ、その料理はどれも「超級」「メガ」「ギガ」と呼びたくなるほど過剰で、料理をする人ほど驚くレシピが並んでいるそうです。
イケハヤさんが特に衝撃を受けたのは、中華料理のスープ仏跳牆 ── 中国・福建省の高級スープ。干しアワビやフカヒレなどの乾物を長時間煮込む料理で、香りにつられて僧侶も塀を飛び越えるという由来から名付けられたといわれます(ファッチューチョン)です。修行中のお坊さんがあまりにいい匂いに塀を飛び越えてくるという名前の由来があり、値段に上限がないとも言われます。
作中の仏跳牆には、干しホタテ、干しアミガサダケ、干しタコ、烏骨鶏、干したサンショウウオ、ナツメ、龍眼、金柑などが入ります。乾物からスープを取り、大きな寸胴鍋で8時間ほど煮込むそうです。作者は鹿の睾丸も入れようとしましたが、ためらったといいます。
強いて言うと、XO醤をぶち込んだおでんの味がするらしい。
しゅうへいさんの「じゃあおでんでいいじゃん」というツッコミで、スタジオは盛り上がりました。
身近な食材のアレンジもあります。イケハヤさんは、家にあるイクラの食べ方がご飯と醤油と海苔くらいしか思いつかず、ずっと悩んでいたそうです。そこで紹介されたのが「イクラの邪道丼」です。丼の半分にイクラ、もう半分にサーモンのなめろうを盛り、真ん中に空けた穴にバターを入れます。
幸あれこさんはイクラとバターの組み合わせにピンとこない様子でしたが、イケハヤさんは「めちゃくちゃ美味いんだって」と答えます。しゅうへいさんは「サーモン親子丼みたいな感じ」とまとめ、YouTubeで見るような内容が漫画になっているのが新鮮だと話しました。
イケハヤさんの家には今、もらった和牛のモツがあり、作中の「モツプロフ」を作るつもりだそうです。プロフ ── 中央アジアなどで食べられる、米と肉や野菜を油で炊き込む料理。ピラフの語源ともいわれ、地域によってプラウなどとも呼ばれますは、本来は油をたっぷり使い、人参や玉ねぎ、マトンなどと米を炊く料理です。作中では、それをモツの脂で作り、ニンニクを丸ごと入れるといいます。
『めしにしましょう』には、最近になって旅編も始まり、1冊まるごと高知編になっているそうです。高知に住むイケハヤさんは、この作品との縁を感じたと話しています。イケハヤさんは、料理をする人にすすめたい作品で、独特なシュールギャグも面白いと評価しました。
『鍋に弾丸を受けながら』でマフィアの拷問焼きを知る
2作目の『鍋に弾丸を受けながら』は連載中の旅系グルメ漫画です。作者は釣り人で、釣りのために世界各地を回り、治安の悪い場所にも入っていく人だそうです。現地の友人も、ガタイのいいマッチョな男性ばかりだといいます。
ところが作中では、そうした登場人物が全員美少女として描かれています。イケハヤさんは、そのまま描くとあまり面白くないからではないかと話していました。
最初のエピソードで紹介されるのは「マフィアの拷問焼き」という肉料理です。名前を聞いた幸あれこさんは「何を焼いてるんだ」と驚きましたが、焼くのはあくまで牛肉の塊です。手順は次のようなものだと説明されました。
イケハヤさんによれば、焦げるのは外側のコットンだけです。中の肉は、分厚いステーキの真ん中にあるジューシーな部分のように、全体がピンク色に仕上がるそうです。しゅうへいさんは、鉄板で焼くと外が焦げて中に火が通らないことと比べ、「めちゃくちゃいい焼き方」だと感心していました。
もう1つ紹介されたのが「エルヴィスサンドイッチ」です。エルヴィス・プレスリー ── 1950年代から活躍したアメリカの歌手で「キング・オブ・ロックンロール」と呼ばれます。晩年は体調を崩し、42歳で亡くなりましたの大好物で、食べすぎが死因になったとも言われているサンドイッチだそうです。
エルヴィスサンドイッチは、細長いパンにピーナッツバターとブルーベリージャムを塗り、バナナの輪切りを敷き詰め、カリカリのベーコンを山盛りにします。さらに全体を揚げ、最後に粉砂糖をかけます。1人前で1700キロカロリーにもなるそうです。
これ1食食べたらもう1週間食べちゃダメぐらいなの。
作中には、アメリカの油や肉の食文化、ブラジルなど南米の話も多く出てくるそうです。料理以外では、怪談も読みどころだといいます。釣り人は夜や早朝に山や海へ行くため、怪奇現象に出会う話がよくあるそうです。作者は、海外にもそうした話があるのかと疑問に思い、現地の釣り人に聞いて回りました。
イケハヤさんが紹介したのは、アメリカの釣り人ロドリゴさんの体験です。帰りの車の後部座席でドンと音がし、ピチャピチャという足音のような気配が近づいてきました。ロドリゴさんが「俺はもう帰るからついてこないでいいよ」と言うと気配は消え、座席には見たことのないシミが残っていたそうです。
イケハヤさんは、まるで日本の怪談のような話がアメリカにもあることに驚いたと話しています。異国の世界を味わいたい人に勧めたい作品として紹介されました。
『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』は120以上の奇食を食べる
3作目の『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』は、今かなり売れていて、21巻まで出ている作品です。何でも食べたい女子高生の桐谷さんが主人公で、タイトルどおり「それ本当に食べるんですか?」と言いたくなる奇食・珍食を食べ続けます。
作中で紹介される食材には、豚の睾丸や尿管、イノシシの睾丸、馬の陰茎といったホルモンが含まれます。さらに、ヤモリ、ウーパールーパー、サンショウウオ、サソリ、カブトムシ、ダニを使って発酵させたチーズ、食べられる珪藻土、ライチョウ、クジャク、アオサギなども登場するそうです。
じゃあその人(作者が)歩いてたら全部食い物に見える。
イケハヤさんは1巻から読んでいて、どこかでネタ切れするだろうと思っていたそうです。しかし、基本は1話完結で1冊に6話ほど入っているため、扱った食材は120を超えていると見ています。作者は食材を実際に取り寄せて食べており、話の最後にレシピが載ることもあるそうです。
しゅうへいさんが罰ゲームのような扱いかと尋ねると、イケハヤさんは、基本的にはちゃんと食事として美味しく食べていると答えました。ただし、たまにあまり美味しくないものもあるそうです。
しゅうへいさんは、YouTubeでは映せないような内容でも、漫画なら現実感が少し薄れるので見られるのではないかと指摘します。イケハヤさんは、ジビエとしてイタチの皮を剥ぐ場面を例に挙げ、イラストだからこそ読めると同意しました。
イタチはちなみにね、タヌキ6アナグマにハクビシン2ぐらいの味わいなんだって。
この話から、イケハヤさん自身がタヌキを食べた経験も語られました。イケハヤさんによれば、タヌキは臭くてあまり美味しくなかったそうですが、個体によって差があるといいます。集落には昔、匂いで食べられるタヌキかどうかを判断してくれるおじいさんがいたそうです。
グルメ漫画が教えてくれる「世界の広さ」とは
イケハヤさんは最後に、3作品の楽しみ方の違いを整理しました。
| 作品 | タイプ | 紹介された例 |
|---|---|---|
| めしにしましょう | 過剰レシピを実際に作る | 仏跳牆、イクラの邪道丼、モツプロフ |
| 鍋に弾丸を受けながら | 釣り人が世界のグルメと文化を描く | マフィアの拷問焼き、エルヴィスサンドイッチ、怪談 |
| 桐谷さん ちょっそれ食うんすか!? | 奇食・珍食を食べ続ける | ホルモン、ウーパールーパー、珪藻土、アオサギ |
イケハヤさんは、こうした漫画の面白さは『NARUTO』のような物語漫画とは違う種類のものだと話します。次の巻ではメキシコに行くかもしれない、どんなグルメが出てくるのだろうと楽しみになる感覚は、ほかに似たものを知らないそうです。
しゅうへいさんが「教養みたいな感じですね」と返すと、イケハヤさんは漫画で教養がたまると応じました。
幸あれこさんは、過激なYouTubeも突き詰めれば教養になり得るのかと考えを広げます。その説明が独特だったため、イケハヤさんとしゅうへいさんからツッコまれていました。しゅうへいさんは、たくさん漫画を読んできたイケハヤさんらしい紹介の仕方だったと評価しています。
次回はしゅうへいさんが『BLUE GIANT』と『生きのびるための事務』を紹介する予定です。番組では、珍しい料理を作ったり食べたりした経験や、好きな食の漫画についてのコメントを、ハッシュタグ「#本つま」で募集しています。
まとめ
番組初の漫画回で、イケハヤさんはノンフィクション系グルメ漫画3作品を紹介しました。過剰なレシピ、世界の料理と文化、奇食・珍食という三者三様の切り口から、漫画が知らない世界を教えてくれる教養になることを伝えています。
- テーマは「大人が読むべき漫画」で、番組が始まって1年半を超えて初めての漫画回だった
- 『めしにしましょう』は、仏跳牆やイクラの邪道丼など、作者が実際に作った過剰なレシピが魅力
- 『鍋に弾丸を受けながら』は、マフィアの拷問焼きやエルヴィスサンドイッチ、世界の怪談まで描く旅系グルメ漫画
- 『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』は21巻まで続き、120以上の奇食を実際に食べている
- イケハヤさんは、漫画は生きている世界の狭さに気づかせてくれる教養だと語った





