「重要だけど後回し」にしているものは何か?
本つまみぐいラジオの4話目は、毎回恒例のコメント返しから始まります。最初に取り上げられたのは、前回のテーマ「いい習慣」で紹介された『7つの習慣』へのコメントです。
ナノノさんからは、「重要だけど緊急性のないことは、私生活でも仕事でもできていないことが多く、ぐっさりきた」という感想が届きました。忙しくて後回しにした資料や画材、読み物が箱に詰まって積み上がっているので、まずは片付けから始めたいとも書かれています。
幸あれこさんはこのコメントを受けて、「重要だけど後回しにしがちなこと」を2人に尋ねます。
しゅうへいさんが挙げたのは運動です。体重が増えてきたので走らないといけないと感じている一方、島で駅伝があった前は走っていたのに、駅伝が終わった瞬間に「来週でいいか」と走らなくなったといいます。
走らなくても生きていけるけれど、自分にとっては大事な気がする。しゅうへいさんのこの感覚は、『7つの習慣』でいう「緊急ではないが重要なこと」の典型といえそうです。
話は朝起きることにも広がります。しゅうへいさんは、午前中に面談を入れた日は起きられるものの、入れていない日は起きられないと明かし、結局「朝早く仕事を入れるしかない」という結論に落ち着きます。
イケダハヤトさんが挙げたのは、妻と出かけることでした。収録の日も、妻を今治のインター前で降ろし、そこから30分ほど歩いてイオンモールへ向かったそうです。
3人の話をまとめると、『7つの習慣』から学べるのは、緊急性はないけれど重要なことを、あえて優先順位として掲げていくことだと幸あれこさんは締めくくります。
SNSに消耗しないための秘訣は?
次のコメント返しは、前回紹介した『複利で伸びる1つの習慣』への感想です。しゅうへいさんが幸あれこさんにお菓子を預けている話に共感した、ハニワさんからのメッセージが読み上げられました。
僕も放っておくとYouTubeに依存してしまうタイプなので、今はお母さんにスクリーンタイムのパスコードを管理してもらってます。AppStoreとSafariを消して、iPhoneには最初から入ってるアプリとSpotify、PayPayだけにしています。大人になってお母さんに管理してもらえなくなったら、YouTubeをずっと見てしまって毎日だらけてしまうんじゃないかと不安になることがあります。リサーチ中にショート動画を見てしまって、気づいたら3時間くらい消耗していました。だからこそ、SNSを仕事にしてる皆さんがどうやってSNSに消耗しないようにしてるのか、とても気になりました。
ハニワさんのメッセージから、3人はまだ若い方だろうと推測します。自分で親に管理を頼めるだけの賢さがあると感心しつつ、そんなリスナーに大人のしゅうへいさんが共感されている状況を笑いに変えていました。
イケダハヤトさんは、ショート動画をまったく見ず、YouTubeも目的意識がないと見ないといいます。自分の発信や、やるべきことに集中して「今日これをやる」と決めておけば、余計なものは見ないという考え方です。
イケダハヤトさん自身は、SNS中毒のように楽しんでやっているため、消耗する意識はあまりないそうです。面倒な人に絡まれることはあっても、自分がやりたいようにやっているだけだと割り切っていると話します。
しゅうへいさんは、イケダハヤトさんが情報を処理しても、いちいち共感はしないタイプだと分析します。対して幸あれこさんは、テキストの奥にある書き手の心まで受け取ってしまい、テキストに酔って疲れることがあるといいます。
情報として処理し、いちいち共感しない。くだらない投稿は流して、自分のやることに集中する
テキスト以上のもの、書き手の心まで受け取ってしまい、テキストに酔って疲れる
しゅうへいさんの答えは「消耗すると思ってやる」「消耗も経験」というもので、幸あれこさんからは「かっこいいこと言っちゃって」と返されます。
ただしゅうへいさんは、ハニワさんが自分から親にスマホを預けている点を高く評価します。親が取り上げるとコントロールされている感じになるけれど、自ら選んで預けているのは素晴らしい選択だという見方です。
しゅうへいさん自身の工夫は、スマホを収録スタジオのロフトの一番奥に置くことです。手元にあると、AIの回答を待っている間につい見てしまうため、物理的に取りに行くのが面倒な場所に置くといいます。SNSをブロックするアプリや、スマホを物理的に隠す道具を使うのもよいと勧めていました。
もっとも、「僕は(実際には)やってない」と白状したしゅうへいさんに、イケダハヤトさんが「朝起きれないし、お菓子も食べちゃうし」とツッコミを入れます。「こんな大人でもちゃんと生きていけるから、未来は明るい」というオチで、この話題は締めくくられました。
薪割りとネジ穴から得た「最近の小さな学び」
続いては、幸あれこさんが紹介した学習の本『自学自習法』の回へのコメントから、「最近学んだ小さなこと」を3人で出し合います。
幸あれこさんの学びは、しゅうへいさんとの夕食の場面から得たものです。しゅうへいさんが「アレコちゃん、残り食べり」と勧め、幸あれこさんが遠慮すると、普段は食い気味に「ありがとう」と言って自分で食べるのに、しばらくして「いや、ほんと食べり」と重ねてくるときは、口に合わなかった味なのだそうです。好きなものは絶対に自分で食べる、という発見でした。
イケダハヤトさんの学びは、薪割りのコツです。抱きしめるほど太い丸太は、真ん中に斧を入れたくなりますが、相当なパワーがないと割れません。端から少しずつ削るように割っていくと、簡単に割れるといいます。
一番力が要り、パワータイプでないと割れない
簡単に割れるが、コントロールが難しい。外したり力が逃げたりすることもある
イケダハヤトさんはこのことに去年の夏ごろ気づき、そこから薪割りがとても楽しくなったそうです。端から削っていって丸太が小さくなると、最後は真ん中をスカーンと割れるといいます。危ないので握り方には気をつける必要があるものの、うまくできると気持ちいいと話していました。
しゅうへいさんの学びは、ネジ穴の補修です。PR案件で届いた昇降式デスクを組み立てる際、ネジを水平に締められずにネジ穴をなめてしまい、パニックになって幸あれこさんに電話したといいます。
ChatGPTに相談すると、M6のネジ穴をタップ ── ネジ穴の内側にネジ山を切るための工具。穴を広げて一回り大きなネジ山を作り直すことで、なめてしまった穴を補修するのにも使われますで広げ、M8のボルトを入れればよいと教えてもらえました。コメリで部品を買い、マキタの電動工具にアダプターを付けて穴を広げ、無事に組み立てられたそうです。
しゅうへいさんは、ネジ穴1つのためにデスクを送り直さなければいけないのかと絶望していたといいます。ネジをなめても大丈夫だとわかったことが、この回の小さな学びでした。
『予想どおりに不合理』で語りきれなかったフレーミングとは?
後半は3冊の本の振り返りです。イケダハヤトさんは、行動経済学ブームを作り出したベストセラー『予想どおりに不合理』について、紹介しきれなかった話を補足します。
イケダハヤトさんによると、この本の先にはダニエル・カーネマン ── イスラエル出身の心理学者・行動経済学者。2002年にノーベル経済学賞を受賞し、著書『ファスト&スロー』で人間の直感と熟考の働きを解説しましたの『ファスト&スロー』やプロスペクト理論 ── 人は利益よりも損失を大きく感じるなど、損得の感じ方が状況によって偏ることを示した理論。カーネマンらが提唱しましたなど、さらに深掘りした話が続いていきます。中でも、本編で触れなかったフレーミングを追加で解説しました。
イケダハヤトさんの例は、不治の病の人に新しい薬を勧める場面です。「この薬を投与したら30%の確率で生き延びられます」と言うのと、「この薬を投与しても70%の確率で死にます」と言うのとでは、内容は同じでも、薬を選ぶ気持ちが大きく変わるといいます。
選びたくなる。幸あれこさんも「30%の生きるの方を選びたくなる」と反応
内容は同じでも、「もういいです」と選びたくなくなる
イケダハヤトさんは、生死のような枠組みに当てはめると、人の判断や返答が本当に変わると説明します。マーケターはフレーミングを使って人を動かすこともあると明かしたうえで、この本はあくまで入門書であり、ここから次の世界をのぞいてほしいと話しました。
多重債務の不合理は「明細を見ない」ことから始まる?
『予想どおりに不合理』の話を受けて、しゅうへいさんが「多重債務側の意見」を語ります。しゅうへいさんは30歳のころにリボ払いやキャッシングが350万円ほど溜まっていましたが、300万円ほど返し、残りは16万円ほどになったそうです。
しゅうへいさんは、100万円のリボ払い残高があれば年間15万円ほど払っていることになり、リボ払いが損なのはわかっていたといいます。それでもリボ払いで買い物を続けてしまう理由は、明細を見ていないことにあると振り返ります。
本当は1万5000円払わないといけないのに、「今月は3000円で済んだ」程度にしか考えていない。しゅうへいさんは、一番の損失回避は明細を見ないことだと表現し、損失を見たくないから明細を見ず、状況がわからないまま借り続けるのが多重債務の不合理だと語ります。
痛みを避ける
やってしまっていることはわかっているので、損失を見たくない
明細を見ない
金額や状況を把握しないまま過ごす
借り続ける
「このぐらい借りられるだろう」と、なんとなくの判断を繰り返す
しゅうへいさんは個人面談で借金の相談を受けることもあり、相談者の多くが金額をわかっていないそうです。もう1人の出演者からは「お金が増えていたら絶対見る」という声も上がりました。
幸あれこさんは、フレーミングを使って「明細を見れば借金を返せるようになる」と伝えてはどうかと提案します。しゅうへいさんはこれに、イギリスで督促状に「9割の方が納税しています」と書いて納税を増やした例を重ね、社会的証明 ── 周りの多くの人がしている行動を、正しい行動だと判断しやすくなる心理傾向。行動経済学やマーケティングでよく取り上げられますを使って「完済した人の9割は明細を毎月見ていた」と伝えるのが効きそうだと応じます。
しゅうへいさんは、自動リボの怖さにも触れます。カードを作った時点で自動リボにチェックが入っていて、5000ポイントがもらえる一方、5万円使っても毎月3000円ずつの支払いになり、気づいたら100万円溜まっていたということが起きるといいます。
サブスクで最初からプロプランにチェックが入っているのと同じで、デフォルト効果 ── 初期設定のまま選択を変えない傾向。最初から選ばれている選択肢が、そのまま採用されやすくなりますを悪用したパターンだと、出演者たちは問題視していました。
1本の鉛筆は誰が作っているのか?
しゅうへいさんは、自身が紹介した『きみのお金は誰のため』から、本編で削った経済学者フリードマンの有名なスピーチを紹介します。
フリードマンは鉛筆を取り出し、「この鉛筆を作れる人は世界に1人もいない」と語ったといいます。木材はワシントン州で伐採された木から、芯の圧縮グラファイトは南アフリカの鉱山から来ていて、消しゴムや金属、塗料など、何千人もの人の手が関わっているからです。
木材
ワシントン州で伐採された木。切り倒すノコギリには鋼、鋼には鉄鉱石が必要
芯
圧縮グラファイトで、南アフリカのいくつかの鉱山から来ている
部品と仕上げ
消しゴム、接続部分の金属、塗料と定着させる薬剤
完成
何千人もの人々が関わって1本の鉛筆になる
フリードマンは続けて、言語も宗教も違い、出会ったら憎み合うかもしれない人々が協力して鉛筆を作っていると語り、お金を使った経済が人々の間の調和と平和を促していると述べたそうです。本の最後で、ボスが手紙の中でこのスピーチを紹介しています。
しゅうへいさんは、お金は汚いもの、経済は温度のないものと思われがちだけれど、お金が価値を持つのはみんなが互いのために働き、支え合っているからだと受け止めています。お金を刷ればいいといった極論が目立つ中で、地に足の着いた経済を知れる1冊だと評価しました。
ほかの出演者からは、6000万円の借金でLLACハウスを建てたしゅうへいさんが言うと説得力がある、という声が上がります。しゅうへいさんは、TikTokやYouTubeで「S&P500を6000万円買った方がよかった」「都会のタワマンを買った方がいい」といったコメントをよく受けるそうです。
しゅうへいさんは、そうした意見は個人がお金を増やすための考え方で、どちらが正しいかではないとしつつ、距離を感じたといいます。島に住みながらネットで仕事をすることを当たり前にし、楽しく住み続ける人を増やすためにコワーキングスペースを建てたけれど、その思いはなかなか伝わらないと語りました。
GDPに数えられないケア労働をどう見るか?
幸あれこさんは、自身が紹介した『経済学レシピ』から、本編で触れなかった唐辛子の回を取り上げます。唐辛子はいろいろな料理に入っていても気づかないことがあり、そこから経済にカウントされていない活動の話につながっていくといいます。
経済の指標として一般的に使われるGDP ── 国内総生産。一定期間に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計で、国の経済規模を測る代表的な指標ですには、お金を介した表面的な活動しか入っていません。子育てや介護、家事といった、お金を介さないケア労働は計算に入っていないと、この本は指摘しているそうです。
幸あれこさんによると、本では、見えないケア労働を見えるようにすることがこれから大事だと述べられています。高齢化で老いていく人が増え、心を病む子どもも増える中、どちらにもケアが必要で、間に挟まれた人たちも苦しんでいる。だからケアを重視する行動と制度に変える必要がある、という締めくくりだったといいます。
しゅうへいさんは、この話に通じる本として『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』を挙げます。「見えざる手」で市場に任せればよいと説いたアダム・スミスの食事も、実は母親が作っていて、それはお金に換算されていなかったという視点です。
しゅうへいさんは、『経済学レシピ』に「世界は贈与でできている」という言葉が出てくることにも触れます。同じ題名の本では、お金だけではわからない隙間が贈与だと語られていて、ケアの話にもつながるといい、いつか番組で紹介したいと話しました。
最後に、次回のテーマが「人間関係が楽になる本」に決まったことが告げられます。4月の新年度で新しい人間関係が始まる人も多い時期に合わせ、日常ですぐ使える内容を届けたいとのことでした。
まとめ
コメント返しでは、後回しにしがちな習慣やSNSとの付き合い方が語られ、本の振り返りでは、フレーミング、明細を見ない多重債務の不合理、フリードマンの鉛筆、GDPに数えられないケア労働と、経済学を身近な暮らしに引き寄せる話が続きました。3冊の本が贈与やケアの話でつながっていく広がりも、この回の面白さです。
- 重要だけど緊急でないことは、締め切りや予定を入れるなど、あえて優先順位として掲げることが大切
- SNSへの消耗は、スマホを物理的に遠ざけるなど、自分で選んで距離を取る工夫が有効
- 同じ内容でも「30%生きる」「70%死ぬ」のように伝え方で判断が変わるのがフレーミング
- 多重債務の不合理は、損失を見たくないあまり明細を見ないことから続いていく
- 鉛筆もケア労働も、お金の見える部分だけでなく、多くの人の支え合いの上に経済が成り立っていることを示している



