イクラ丼何杯なら挑戦する?イケハヤさんの「お金の境界線」
本つまみぐいラジオの「働き方の未来」シリーズ4本目は、リスナーのコメント紹介から始まります。最初は、以前の人間関係の回で、イケハヤさんが『人を嫌うということ』を紹介した回へのコメントです。
一平さんからは「池谷さんが毎回CNP ── イケハヤさんが関わるNFTプロジェクト「CryptoNinja Partners」の略称。忍者をモチーフにしたキャラクターで知られますのフードを着てくれてるのが嬉しい」という声が届きました。さらに、過去に職場でパワハラを受けた経験について、「お金のためにこんな職場にしがみつかないといけない現状の自分がいけない」と自分に矢印を向け、負のパワーで副業や転職を頑張ったと書かれていました。
幸あれこさんは、自分に矢印を向けるのは簡単ではないと感心します。そのうえで、少し話がそれると断りつつ、イケハヤさんの「境界線」を探る質問を投げかけました。
池谷さんの境界線をちょっと探りたくて。もしイクラ丼を10杯丼ぶりで今食べ切ってください。
食べ切ったら100万円もらえますって言われたら挑戦しますか?
イケハヤさんの答えは、金額よりも「食べ切れるかどうか」が判断基準になっていました。幸あれこさんが杯数と金額を変えていったやり取りを、表にまとめます。
| 条件 | 賞金 | イケハヤさんの反応 |
|---|---|---|
| 大きい丼ぶり10杯 | 100万円 | 普通食べきれないから多分無理 |
| 大きい丼ぶり10杯 | 1,000万円 | 不可能だから受けない |
| 大きい丼ぶり7杯 | 1,500万円 | 7杯も結構きつい |
| 大きい丼ぶり5杯 | 1,700万円 | それはちょっと挑戦する |
イケハヤさんは「失敗した時のペナルティはあるんですか?」と確認し、ないと聞くと「ノーリスクならみんなやる」と返します。イクラ丼だと量が基準になってしまうため、質問はイワシのつみれのミートボールを牛乳と一緒に食べる設定に変わりました。
ミートボール5個で100万円なら「それはやるでしょ」とイケハヤさんは即答します。一方、しゅうへいさんが「毎日の食事に必ず牛乳とつみれが入る代わりに年収1億円」という条件を出すと、イケハヤさんは「それは嫌だ」と答え、人にはいろいろな基準があると話をまとめました。
「聞くともなく聞く」と「あえかな」。好きな日本語は?
次のコメントは、しゅうへいさんが『僕たちは言葉について何も知らない』を紹介した回への、ゆうきさんからの投稿です。言語哲学が面白いという感想とともに、「母語以外を学ぶと、言葉が持つ意味や背景により敏感になれる」「英語だと伝えられるのに、日本語では訳しきれないことがある」と書かれていました。
このコメントを受けて、幸あれこさんは2人に「好きな日本語を1つ挙げるとしたら何か」と尋ねます。幸あれこさん自身が挙げたのは、最近気になったという「聞くともなく聞く」という表現でした。
聞く、聞くともないんだけど、聞くってどういうことっていう。
なんか多分listenとhearどっちも入ってる感じがするなって思ったんですけど。
幸あれこさんは、「聞くともなく聞く」は能動的に見えて意外に受動的な、日本人らしい感覚だと話します。イケハヤさんも「英語で言えなそう」と応じました。
最近歌詞を作っているイケハヤさんが挙げたのは「あえかな」です。わずかで儚く、か弱いさまを表す平安時代からの雅語で、与謝野晶子 ── 明治から昭和にかけて活躍した歌人。歌集『みだれ髪』で知られ、情熱的で華やかな表現で近代短歌に大きな影響を与えましたも使っていた言葉だと説明します。
普段使わない何かこう美しさがある。「あえかな」って言葉とかいいなと。
例文を聞かれたイケハヤさんは「あえかな約束」や「シャボン玉もあえかな」と挙げ、しゅうへいさんと幸あれこさんも、その響きの良さに頷いていました。しゅうへいさんは、好きな日本語が「パッと出てこない」まま話が流れています。
ワニ脳になる瞬間。3人の「余裕がない時あるある」
3つ目のコメントは、幸あれこさんが脳を「ワニ脳・猿脳・人の脳」に分けて紹介した人間関係の回への、森ノ下さんからの投稿です。相手の心の状態を見極められれば、相手の言葉や反応に冷静に対応できそうだという感想でした。
ワニ脳は、パニックになっている状態の脳として紹介されていました。そこで幸あれこさんは、2人に「自分が余裕ない時のあるある」を尋ねます。しゅうへいさんの答えは「もう常に余裕ないから」というものでした。
イケハヤさんは、余裕がなくなるとイライラして眠くなると話します。洗い物が大量に溜まってキャパがいっぱいになると、「もういいや」と先に寝てしまうそうです。
睡眠の方になるべく行くようにするから、まああるあるといえばそっちかな。もう寝る。
幸あれこさんの場合は、余裕がない時やお腹が空いた時に体が震えてしまうといいます。しゅうへいさんは、一緒に住み始めた頃、夕方の散歩中に幸あれこさんから「これ見て、お腹減って震えてる」と言われて驚いたエピソードを明かしました。
さらにしゅうへいさんによると、幸あれこさんはフリーランス時代、カレーを食べながら寝てしまったこともあったそうです。幸あれこさん本人は、当時は睡眠不足が行き過ぎていたのかもしれないと振り返り、生存本能として何かあるのかもしれないと笑いながら話していました。
「しない方がいいんですが」。バートルビーはなぜキャラが立つのか
コメント紹介のあとは、シリーズで紹介した3冊の振り返りに移ります。最初はイケハヤさんが紹介した『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』で、イケハヤさんは話しきれなかった部分が「めちゃくちゃいっぱいある」本だと話します。
その中からイケハヤさんが取り上げたのが、本の中で触れられる小説『バートルビー ── アメリカの作家メルヴィルの短編小説『書記バートルビー』。法律事務所に雇われた書記が、あらゆる指示に「しない方がいいのですが」と答え続ける不条理な物語です』です。イケハヤさんの説明では、弁護士事務所で働くバートルビーは、どんな依頼にも必ず「いや、しない方がいいんですが」と答え、お客さんはキレて帰っていくだけの話だといいます。
なんで(断るの)かは説明もないみたい。僕読んでみたんですよ、バートルビー。でもそれがでもね、なんかこう、なんかある種象徴的だよね。
何かが言いたいわけではなくて、どっちかシュール、リアリズムとかの世界の話なんだろうけど、なんかすごい心に残る何かがある。
しゅうへいさんは、バートルビーの話をキャラクター作りの観点から捉えます。みんなが良しとするものをしないという方向性のキャラは強い、という見方です。
学校とかが舞台でも絶対遅刻してくるやつがキャラが立ってたりとかね。
いわゆるみんながこう、怠け者は良くないみたいなのがあるからこそ、なんかそっちをキャラ付けにみんな使うというか。
幸あれこさんも、優等生よりも宿題を毎日忘れてくる生徒の方が先生の心に残ると同意します。そこからしゅうへいさんが、逆に幸あれこさんがきちんと課題を出して先生に覚えられていた話を振りました。
幸あれこさんのクラスでは、自由研究がやってもやらなくてもいい自由参加でした。幸あれこさんは楽しくて毎日地道に進め、ノートが何冊にもなったところ、先生から「後世の人たちに見せたいから」とノートを貸してほしいと頼まれたそうです。みんながやらない中でやったことで、かえって印象に残ったのかもしれないと幸あれこさんは振り返ります。
続いて小学生時代の話になり、書き起こし上でしゅうへいさんとして記録されている話者は、野で遊び、スマブラをして、ドラゴンボールをみんなで読む「普通の子供」だったと語ります。中でもポケモンは、赤・緑・黄色を2〜3台同時に起動してレベル上げをしていたそうで、幸あれこさんは「やってることが今と繋がっている」と面白がっていました。
弱さは武器になる?『はずれ者が進化をつくる』とSNSの外れ値
2冊目は、しゅうへいさんが紹介した『はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密』です。しゅうへいさんは、帯に「弱いことは成功の条件であるかのようです」と書かれていることに触れ、とても読みやすい本だと勧めます。
しゅうへいさんがこの本と重ねたのは、今のSNSの状況です。アルゴリズム的には強い人やすごい人が出てきやすい一方で、「手取り14万の〜がやってみた結果」のように自分の弱さをフックにして伸びる人が増えているといいます。
僕もまさにそういう、借金60万毎月返してるよとかね、会社がしんどかったみたいなものが、むしろ何かものすごくその共感の種というか、その知ってもらえる入り口になってるから。
しゅうへいさんの見立てでは、ハーバード出身やマッキンゼー出身という肩書きがあっても、SNSで必ず伸びるとは限りません。伸びている人も、別の切り口を用意していることが多いといいます。
ハーバード出身・マッキンゼー出身などの経歴。それだけでは必ずしも伸びず、伸びる人は別の切り口も用意している
手取り14万、毎月60万の借金返済、会社がしんどかった経験など。共感の種や知ってもらう入り口になり、伸びている人が多い
なんかSNS世界だとほんと弱さが今武器になってるなと思ってて。
しゅうへいさんは、ただ「会社辞めました」と言うより、「会社で2時間昼寝して課長にバレて辞めました」の方が面白いと例を挙げます。弱さからこそ物語が生まれるので、映画と同じように、どんどん出していけばいいのではないかという考えです。
話はイケハヤさんの弱さにも及びます。イケハヤさんは、字を書くと言われただけで1日憂鬱になり、役場に行くのにも1週間ほど心の準備が必要だと明かしました。嫌なことをやらない生活を極めすぎて、嫌なことが本当に嫌になってしまったといいます。
(多すぎる交流は)もう嫌ですね。そういうのももうやんなくなりましたからね。もうやんないから。行けとか言われてもすぐ帰りますから。
しゅうへいさんは、イケハヤさんの移住を本の生物学的な視点で読み解きます。東京で消耗していたイケハヤさんが高知の山奥を見つけたことは、まさに自分のニッチ ── 生物学で、ある生物が生態系の中で占める固有の位置や役割のこと。競争の少ない居場所を指す意味でも使われますを見つけてオンリーワンのポジションを取ったことだ、という見方です。
イケハヤさんは「もうかつての環境に戻れないのは、ある種の弱みかもしれない」と応じ、東京に戻ったら「シンプルに死にそう」と笑います。それに対してしゅうへいさんは、本では次の場所に行き続けられたものが生き残ったと書かれていると紹介し、他の場所に行けないことこそが本当の弱さだと話しました。
江戸のフリーランスから考える、未来の仕事「生き物の翻訳者」
3冊目は、幸あれこさんが紹介した『江戸のフリーランス図鑑 出商いと町角の芸人たち』です。幸あれこさんは、江戸時代は武家や農家に生まれるとフリーランスにはなれず、本には「親ガチャが強いのは江戸時代だ」と書かれていたと振り返ります。
武家に生まれた人が「皿回しをしたい」と言っても、身分制度のもとでは叶いませんでした。幸あれこさんは、それを考えると今の方が自由なのかもしれないと話し、まだ言えていなかった「未来予測」を披露します。
江戸時代には、ネズミ捕りの薬を売る人など細かい仕事がたくさんありました。幸あれこさんは、未来は人間が自らのおこがましさを顧み、生き物との共生が大事だという流れになると予想します。
人間が顧み始める
人間はおこがましかった、人間だけの世界じゃないと考えるようになる
共生が大事になる
生き物を獲るより、生き物との共生が大事だという流れになる
新しい仕事が生まれる
生き物の気持ちや行動を理解し、人に伝える「生き物の翻訳者」が仕事になる
例えば今そこにいるモンシロチョウと話せって言われても難しいでしょ。
でもそこに、「あ、私モンシロチョウと話せます」っていう人が来たら、じゃあお金払うんで、ちょっとコミュニケーション取ってもらっていいですか?ってなるじゃないですか。
幸あれこさんは、名前は忘れてしまったものの、鳥の言葉がわかるという人の本も読んだそうです。しゅうへいさんが「言葉を交わすというより、生き物が何をしたいのかがわかる人ということだよね」と確認すると、幸あれこさんはそうだと頷き、生物は多いのでまさにニッチな場所だとしゅうへいさんも応じました。
例として幸あれこさんが挙げたのは、本当に嫌いだというムカデです。今年の春にも1匹目が出たそうですが、もしムカデが「春ですね、出会えて嬉しいです」と言っていると翻訳者に教えてもらえたら、気持ちが変わって共生しようと思えるかもしれない、と話します。
ちなみにムカデへの対処は、幸あれこさんが今年初めてトングでつまみ出し、イケハヤさんは「チョキン」と切ってしまうそうです。「全然共生してない」とツッコミが入りつつも、イケハヤさんは刺されると危ないからと説明し、蜘蛛とは共生していると話していました。
働くと怠けるの間に「休む」。次回テーマはこれからの休み方
振り返りを終え、話は次回のテーマ決めに移ります。案を出したのはイケハヤさんで、今回の「働く」「怠ける」「はずれ者」という話の間に、もう1つ「休む」という概念があると指摘しました。
だから休むってことについて考えるのはおもろいなと思って。今結構流行ってるじゃない。
イケハヤさんはリカバリーウェアの流行にも触れ、休むことがトレンドになっていると話します。しゅうへいさんの「これからの休み方」という言葉から、次回テーマは「これからの休み方がわかる本」に決まりました。
しゅうへいさん自身は「そんなに休まなくていいと思うけどね」と逆のことを言いつつ、結局はアクティブレスト ── 疲労回復のために、完全に休むのではなく軽い運動などで体を動かす休養法。積極的休養とも呼ばれますのような話になるだろうと話しています。
最後に幸あれこさんは、番組のハッシュタグ「#本つま」を案内し、SpotifyやYouTubeのコメント欄に書かれた感想を次回の楽屋トークで読むと呼びかけました。わざわざ文字にしてもらえるのは嬉しいので「悪口でもいい」と言い、しゅうへいさんに「ご時世的にダメだね」とツッコまれて、エピソードは締めくくられます。
まとめ
「働き方の未来」シリーズの楽屋トークでは、リスナーのコメントへの応答から3冊の振り返りまで、怠けること、はずれること、身分に縛られない仕事というテーマが、3人の体験談と重ねて語られました。そして次回は、働くと怠けるの間にある「休む」へとつながっていきます。
- イクラ丼の質問で、イケハヤさんの判断基準は金額より「食べ切れるかどうか」だと見えてきた
- バートルビーのように「みんなが良しとするものをしない」人物は、キャラとして強く立つ
- しゅうへいさんは、SNSでは弱さが共感の入り口になり、はずれ者が進化を作っていると見ている
- 次の場所に行けないことこそが本当の弱さで、イケハヤさんの高知移住はニッチを見つけた例として語られた
- 幸あれこさんは、生き物との共生が進む未来に「生き物の翻訳者」が仕事になると予想した





