マフィアの恋バナに加われるか?
本つまみぐいラジオのテーマ「すぐ役に立つ本」の3冊目として、幸あれこさんが持ってきたのは『最後はなぜかうまくいくイタリア人』です。日経ビジネス人文庫から出ている本で、長年日本とイタリアを行き来しているワインジャーナリストの宮島伊佐雄さんが書いています。
幸あれこさんは本題に入る前に、レストランを舞台にした即興の寸劇を仕掛けます。イケハヤさんがマフィア役、幸あれこさんが店員役、しゅうへいさんが早く食事をしたいお客役という設定です。
マフィア役のイケハヤさんが「元カノから連絡来たんだけどどうすればいいと思う?」と店員に恋バナを始め、話はどんどん広がります。ほかの店員や通りすがりのお客まで集まり、みんなで恋バナを楽しんでしまう光景を、幸あれこさんはお客役のしゅうへいさんにどう思うか尋ねました。
はやめし食わせろよ。
それ(輪に加わらないの)はもうイタリア人にはなれません。
大丈夫です。日本人です。
幸あれこさんによれば、イタリア人なら「何何?楽しそうだね」と輪に加わってしまうといいます。この本は、雑に見えるのになぜか人生がうまくいくイタリア人の哲学エッセイで、幸あれこさんはそこから日本人こそ知っておきたい「イタリア式ライフハック」を3つに絞って紹介していきます。
ちなみにマフィアという設定は、『ゴッドファーザー』からピンと来たものだそうです。しゅうへいさんからは「ややこしくなりました」とツッコミが入り、幸あれこさんも「ゴッドファーザー忘れていただいて」と本題に移りました。
公私混同は本当に悪いことなのか
1つ目のポイントは、「いつでも仕事をして、いつでもサボる」のが最強の働き方だというイタリア人の考え方です。幸あれこさんはまず、公私混同という言葉にどんな印象があるかを2人に尋ねました。
あんまり一般の社会ではよく言われないやつだよね。公私混同しやがってみたいな。
職場に友達呼んで話しちゃう海外の人とかいるじゃん。あれは多分日本だと絶対に微妙だよね。
日本では公私混同は「しないでね」と言われる類いのものですが、幸あれこさんによると、イタリアではむしろ大切にされているといいます。日本なら「仕事中は私語を慎みましょう」となる場面です。
幸あれこさんは、家に帰ったスーパーヒーローに奥さんが「玄関マット踏んだらあなたはもうパパですよ」と言う例えで日本の感覚を説明しようとします。ところが「ケジメつけましょう」という言い方に、しゅうへいさんが「切り替えでいいんじゃないですか?」と何度もツッコみ、スタジオは笑いに包まれました。
一方のイタリアでは、仕事中に家族へ「カレー作っといて」と電話をしたり、お客を待たせたままおしゃべりしたりするのが普通だそうです。レストランの店員が笑いすぎて注文を取らないこともよくあるといいます。幸あれこさんは、この緩さこそがうまく回る秘訣になっていると紹介しました。
公私混同はネガティブ。仕事中は私語を慎み、家に帰ったら切り替える
仕事中に家族へ電話し、お客を待たせてもおしゃべり。緩さが回る秘訣になる
イタリア人は「駄菓子屋スタイル」で生きている
本の中で幸あれこさんが特にわかりやすいと感じたのが、駄菓子屋のおばあちゃんの例えです。イケハヤさんも子どもの頃に通った駄菓子屋は、おばあちゃんが一人で留守番しているような店だったと振り返ります。
しゅうへいさんが「梅トラ買ってた」と言うと、幸あれこさんは「最初4個だった気がするんだけど、3個になった」と価格高騰を嘆き、話が少し脱線しました。
幸あれこさんは、駄菓子屋のおばあちゃんと対比させる存在として銀行の窓口の人を挙げます。窓口の人は完全に業務モードで、自分の時間が一切ない働き方だという見立てです。しゅうへいさんも「こっちが恐縮するぐらい真面目な感じがする」と同意しました。
対して駄菓子屋のおばあちゃんは、椅子に座ったまま立ちもせず、おしゃべりしたり近所の子どもに説教したりしながら、ついでに駄菓子を売っています。幸あれこさんはこれを「人生のついでに仕事してる感」と表現しました。
完全に業務モード。仕事として振る舞い、自分の時間は一切ない
座ったままおしゃべりや説教をしつつ、ついでに駄菓子を売る。人生のついでに仕事をしている
イタリア人って駄菓子屋スタイルで生きてるんですよ、みんなが。
幸あれこさんによれば、イタリア人は仕事とプライベートをがっちり分けず、人生の中に仕事もごちゃ混ぜにして生きています。お客を待たせてでも「この話を喋りたい」と自分を通すのがイタリア流です。
幸あれこさんは、この緩さが成り立つのは周りの人もイタリア人だからだと説明します。周囲も「わかる。私も恋バナしたい時はしたいもん」と待てるので、自分への忠実さが社会全体で許されているわけです。
日本でいきなり実行するのは難しいかもしれないとしつつ、幸あれこさんは「サボるために仕事する、仕事するためにサボる」くらいのマインドを入れておくと楽になるかもしれないと話しました。イケハヤさんから「全くそのマインドないじゃないですか」と指摘されると、幸あれこさんは「だからこそ刺さったんですよ」と返しています。
何もしない時間は「チャンスを待つ時間」?
2つ目のポイントは、アテンディスモ ── イタリア語で「様子見」「待機」を意味する言葉。性急に動かず、機が熟すのを待つ態度を指して使われますという考え方です。幸あれこさんはまず、何もしていない時間にどんなイメージがあるかをイケハヤさんに尋ねました。
何もしてない時間じゃないんじゃないか。なんかしてんじゃないか。大体。
イケハヤさんは、何もしない時間は想像すらできないと答えます。奥さんが庭でぼーっとしていると思ったら、よく見ると音楽を聴いていたというエピソードも挙げました。
そこで幸あれこさんが「努力してない時間」と言い換えると、イケハヤさんはショート動画やNetflixをダラダラ見る時間を挙げ、自分はダラダラするのが好きだと話しました。
幸あれこさんは、日本ではそうした時間を良くないものと捉え、「努力しようぜ」という空気が強いと指摘します。それに対してイタリアでは、何もしない時間はチャンスを迎える準備の時間と捉えられ、「動けばうまくいく」より「待てばうまくいく」と本気で信じられているそうです。
その例として幸あれこさんが紹介したのが、1982年のワールドカップでイタリアを優勝に導いたパオロ・ロッシ ── イタリアの元サッカー選手。八百長事件に絡む出場停止明けに臨んだ1982年W杯で得点王となり、イタリア優勝の立役者になりましたのエピソードです。
巻き込まれる
八百長疑惑に巻き込まれ、出場停止になる
2年のブランク
試合に出ない期間が2年続く
疲れていない
休んでいたぶん、大会時に疲れが溜まっていなかった
得点王
大会得点王になり、世界的に有名な選手になる
幸あれこさんによると、このブランクがなければ得点王になっていなかったという説があるそうです。動かなかったから勝てたという話は、まさにイタリアらしさの体現だと紹介されました。
幸あれこさんは恋愛にも当てはめ、「今どこで何をしているの?」と連続で連絡するより、連絡しないほうがうまくいくこともあると例を挙げます。イケハヤさんは「前者はダメだろう」とツッコんでいます。
アンパンマンも大谷選手も「放映されない時間」がある
幸あれこさんは、アテンディスモを「休むことを努力として認める哲学」とまとめます。最近は日本でも休むことをテーマにした本が出てきていて、焦りがちな日本人にこそ必要なマインドではないかと話しました。
そこで幸あれこさんがひらめいたのが、アニメのキャラクターの例えです。アンパンマン、ルフィ、『キングダム』の信はみんな頑張っていますが、寝ているシーンはあまり放映されていません。
アンパンマン寝てるシーン見たことある?ないですよね。アンパンマンがヨガしてるシーンもないし。
ヨガしねえじゃん。
幸あれこさんの主張は、キャラクターたちは活躍するハイライトだけが放映されていて、裏では休んでいる可能性があるというものです。そう考えると、人生にもアテンディスモの時間が必要だと見えてくるといいます。
しゅうへいさんが「アンパンマンはアテンディスモの時間何してるんですかね」と尋ねると、幸あれこさんは「パンこねられてる時間」と答えます。しゅうへいさんは「ジャムおじさん側の主張だろ」と返し、話はサザエさんやルフィの散髪シーンへと広がっていきました。
あんまりこうスッと入ってこないんだよね、この例えがね。
しゅうへいさんが「大谷選手とかって言ったらもうちょっと」と提案すると、幸あれこさんは大谷選手の散髪や鼻毛カッターのシーンも見たことがないはずだと話を合わせます。しゅうへいさんも「なるとなんかイメージがつく」と納得していました。
断られても失うものはない「ダメ元精神」
3つ目のポイントは、幸あれこさんが「今日から使える超超超最強スキル」と呼ぶダメ元精神です。イタリア人には、恥ずかしいとか断られたらどうしようという考えが一切なく、頼んでダメなら次というのがデフォルトだといいます。
本の中では、10年、20年会っていない疎遠な友人に電話して「久しぶり、20年ぶりだよね、10万円貸してくれる?」と平気で言える例が紹介されています。日本人なら、疎遠な人に話しかけるのは悪いと遠慮するのが普通の場面です。
幸あれこさんがすごいと感じたのは、頼まれる側も親切だという点です。20年ぶりに10万円を貸してと言われても、イタリア人は「今困ってるんだ」と親切にできるそうです。
疎遠な人に話しかけるのは悪いと遠慮する。頼まれた側も「厚かましい」と感じる
20年ぶりでも平気で頼む。頼まれた側も「困ってるんだ」と親切にする
みんな同じ厚かましさを持ってるから大丈夫っていうこと。
幸あれこさんによれば、イタリア人はお金、人材、スキルなど身近にある便利なものは何でも使う発想の持ち主です。断られても失うものはないというスタイルなので、立ち直りが早く、すぐ次の挑戦に向かえるといいます。
恋愛でも、ジローラモ ── イタリア出身のタレント・モデル。「ちょいワルオヤジ」ブームの象徴的存在として日本で広く知られていますさんに代表される「ちょいワル親父」のように、イタリア人は果敢に攻めるイメージがあります。幸あれこさんは、高嶺の花だからと諦める慎ましい発想はイタリアにはないと話しました。
ただし幸あれこさんは、厚かましさをすべて取り入れると日本では嫌われるかもしれないとも付け加えています。大事なところだけを取り入れて、ダメ元精神を見習いたいという立場です。
ダメ元で動いた人が結果を出す
ダメ元精神について聞かれたイケハヤさんは、自分に関してはダメ元でやるが、他人にダメ元でお願いすることはしないと答えました。幸あれこさんは、それはちょうどいいバランス感覚かもしれないと受けています。
しゅうへいさんは、何も考えずにやってしまうことがあり、ダメだったら方法を考えようという感覚はあると話します。そのうえで、ダメ元で借り入れをして収録スタジオのLLACハウスを建ててしまったことを自虐的に挙げ、笑いを誘いました。
幸あれこさんは、しゅうへいさんがダメ元でイケハヤさんに近づいていなかったら、今の関係性にはなっていなかったかもしれないと指摘します。しゅうへいさんは、なぜみんなイケハヤさんのところに行かないのか不思議に思っていたと振り返りました。
しゅうへいさんは、キングコング ── 西野亮廣さんと梶原雄太さんのお笑いコンビ。西野さんは絵本作家やクラウドファンディングの実践者としても知られていますの西野さんの話も引き合いに出します。クラウドファンディングはSNSでシェアするだけでは集まらず、DMを送ったり会いに行ったりする必要があるという考え方です。
見え方がイタリア人のブランディングしてるけど、日本人にとって必要なことなのかもね。その、なんか遠慮して言わないっていう。
しゅうへいさんは、自分やイケハヤさんが運営するコミュニティでも、メンバーはあまり質問をしないと話します。ガツガツ聞く人は厚かましいと思われがちですが、結果を出すと「あの人めっちゃ聞いてたもんな」と評価されるという見立てです。
しゅうへいさんは、イケハヤさんと同じコミュニティにいた頃、企画を持ちかけてイケハヤさんを積極的に頼っていたといいます。断られても失うものはなく、うまくいけばイケハヤさんの横のポジションが取れるので「リスクゼロじゃん」と考えていたそうです。
しんどい時こそイタリア精神が効く
幸あれこさんは、本の中に悲観せず、しんどい時でも楽しくやってしまうイタリア人の精神も書かれていると紹介します。憂鬱な時やしんどい時こそ、イタリア精神が大事なのではないかと感じたそうです。
しゅうへいさんは、ダメ元精神をソーシャルキャピタル ── 人と人とのつながりや信頼関係を、資本のように価値を生む資源として捉える考え方。社会関係資本とも呼ばれますの文脈で捉えます。気軽に人へ助けを求められれば、それがセーフティーネットとして機能するという見方です。
日本人は本当にやばくなっても誰にも言わないじゃん。それこそ生活保護とかももう悪いからって言って申し込まなかったりとか、イタリア人はすぐ申し込みそうだね。
幸あれこさんによれば、イタリア人は疎遠になった人や縁を切った人でも友人と見なすそうです。しゅうへいさんは「このOSは持っときたいね」と応じました。
幸あれこさんはさらに、イタリアは家族の絆が日本より深いことや、ご飯会が必ず成果を出す場であることも紹介します。日本の飲み会は何も話さず終わることもありますが、イタリアでは必ず話しかけ、自分を知ってもらい、仕事につなげるアグレッシブさがあるといいます。
話の最後には、しゅうへいさんがドイツとイタリアの国民性の違いに触れ、幸あれこさんも「ドイツは結構真面目」と応じました。両方を持っておくのがいいという結論で、3人は違う国の魅力をいいとこ取りしようと締めくくっています。
まとめ
『最後はなぜかうまくいくイタリア人』を通じて、幸あれこさんは、公私を混ぜる緩さ、待つことを努力と認める姿勢、断られても失うものはないと考えるダメ元精神を紹介しました。しゅうへいさんの体験談も加わり、遠慮しがちな日本人にこそ取り入れる価値がある考え方として語られています。
- イタリア人は仕事と人生をごちゃ混ぜにする「駄菓子屋スタイル」で生き、周りも同じだから緩さが成り立つ
- アテンディスモは何もしない時間をチャンスへの準備と捉え、休むことも努力と認める考え方
- ダメ元精神は「頼んでダメなら次」。頼む側も頼まれる側も同じ厚かましさを持つことで回っている
- 遠慮せず人に頼る姿勢は、成果にもセーフティーネットにもつながると出演者は話している


