社員にとって「経営者の責任」はピンとこない?
前回は経営者向けに覚悟と信念の話をした「経営者の責任」シリーズ。後編となる今回は、幹部や社員に向けた回として、経営者の責任を社員がどう考えるかが話題になります。
このテーマについて、出演者の側にも最初は戸惑いがありました。自分は経営者ではないので、経営者の責任を考えようと言われてもいまいちピンとこない、という率直な感想です。
(このテーマを見て)正直自分経営者じゃないしなって思って。
なんかそこの責任が嫌やから社員になってんねん。
掛け合いは笑いを交えつつも、多くの社員が抱く本音を表しています。会社の経営だけを切り取れば、「それはそっちで考えてよ」となるのは自然だという受け止め方です。
これに対して中村さんは、考え方を広げてみることが大事だと話します。会社は経営者だけで作っているのではなく、働く社員の総力で作り上げているので、社員も部外者ではなく当事者だという考え方です。
会社って経営者だけが頑張って作ってるわけじゃなくて、そこで働く社員の皆さんの総力を持って会社っていうのは作り上げてるわけですよね。
中村さんはさらに、思い通りにいかない現実に対して「会社はどうしてくれるんですか」と他者に責任を求めてしまいがちな点に触れます。そのうえで、自分の人生においてはその人自身が経営者であり、責任を取るべきなのも自分だと語ります。
社長以外も集う場にこのテーマを入れた理由
MiraQの定例研究会には、社長だけでなく幹部や社員も参加します。中村さんは、そうしたコミュニティの年間プログラムに「経営者の責任」を入れるかどうか、正直すごく迷ったと明かしています。
なんかね、社員の人にそこまで言うと、ちょっと大きすぎるし重たいかなと思ってね。
それでも、やはり入れるべきだと判断して採用したといいます。名倉さんによれば、実際には「経営者じゃなくても参加していいんですか」と聞かれることもあったものの、社員や幹部の参加者も多く集まりました。
深い議論ができた背景として中村さんが挙げるのが、定例研究会の「事前学習動画」という仕掛けです。当日いきなり慣れないテーマを出されると戸惑うため、会員に事前に動画を配信しています。
事前配信
当日に向けて、会員に事前学習動画を届ける
置き換え
参加者が「自分の場合は」とテーマを自分事として考える
当日の議論
経営者の責任は社長だけの話ではないと理解した状態で集まり、深いディスカッションになる
中村さんは、事前学習の中で参加者がテーマを自分に置き換えて考えてくれたからこそ、当日は深いディスカッションができたのではないかと振り返っています。
「組織の未来」と言われて浮かぶのは担当者目線?
研究会で社員や幹部に投げかけられた問いは、「あなたの普段の行動や選択が、組織の未来にどんな影響を与えていると思いますか?」というものでした。名倉さんは「ドキッとしますね」と反応しています。
末松さんは、MiraQが始まる前の研修ワークで同じような問いを考えたときのことを覚えていました。考えた内容を中村さんに見せたところ、「担当者目線から抜け出せてない」と指摘されたといいます。
私のミスは、担当としてお客さんにご迷惑をかけるっていうのでしか、なんていうのか、考えられないっていうか。
末松さんは、迷惑をかける相手までは想像できても、自分の行動が経営として組織の未来に何がどうつながっているのかを考える機会はなかったと振り返ります。名倉さんも、大勢の社員の中の1人が組織の未来を左右するとはなかなか思えない、と率直に応じています。
バイトテロが示す、一人の行動の重さ
一人の行動が組織に影響するというイメージを持ちやすい例として、中村さんが挙げたのがSNSでのバイトテロ ── アルバイト従業員が勤務先の店舗で悪ふざけをした写真や動画をSNSに投稿し、炎上して企業の信用を損なう出来事を指す俗語。2010年代に相次いで問題になりましたです。名倉さんは冷蔵庫に入った例を挙げ、企業の価値が一瞬で下がったと話します。
もう軽いお遊びのつもりで、なんかSNSでみんな笑かしたろうと思ってやったことが、へたしたらその会社潰れるまでいってしまうなんて。
中村さんによれば、場合によっては企業が破産するまで追い込まれる一方、やった当事者はそんな大ごとだとは絶対に思っていません。その落差を「めちゃくちゃ怖い」と表現しています。
ただし中村さんがこの例から引き出したのは、悪影響の話だけではありません。逆に言えば、目の前の仕事を確実にこなすこと自体が、会社の事業運営に貢献しているという点です。
軽い悪ふざけのSNS投稿が、企業価値を下げ、破産にまで追い込むことがある
任された目の前の仕事を確実にこなすことが、事業運営への貢献になり、会社の成長を支える
目の前のことをちゃんと自分に任されたことを確実にやっていくっていうね、これだけでももう立派な貢献やし、責任をちゃんと果たしてるよねっていう風には言えますよっていうことです。
末松さんは、自分の行動が会社を左右すると言われると構えてしまっていたが、そう考えると少し気が楽になると受け止めます。名倉さんも、特別なことをしなくても、普段の仕事がちゃんと前に進む動力になっていると理解を示しました。
中村さんはそのうえで、仕事を無意識にこなすのではなく、自覚を持って意識してやっていくことが大切だと付け加えています。
気づいた後に来る「重たすぎる」という壁
研究会で実際にこの問いを投げかけたときの参加者の反応について、末松さんは、ミスをしたら迷惑がかかるところまでは考えられても、「未来」となるとスッとは出てこなかったと話します。特に社員の参加者にその傾向があったといいます。
中村さんは、気づいた後にもう1つの壁があると指摘します。それが「そこまで背負わなあかんのですか」という、責任の重さへの抵抗感です。
あなたが責任をちゃんとこうね、果たしていこうとすることが未来の可能性を作ってるんだって思ったら、なんかやってやるぜっていう気にならないですか?っていう。
中村さんは前編で話した内容に触れ、責任を重荷と捉えるから背負っている感覚が生まれるのだと話します。末松さんはこれを受けて、何も考えずにやるのは「作業」であり、つながりを意識してこそ「仕事」なのではないかと応じています。
責任は肩にのしかかる重しで、「そこまで背負わなあかんのか」と感じる
責任を果たすことが未来の可能性を作ると捉え、「やってやるぜ」という気持ちになる
中村さんによれば、目の前の作業そのものは無意識でも要領よくこなせるのが理想かもしれません。ただ、その仕事が何につながっているのかは無意識では困るので、確実にここにつながっていると分かりながらやってほしいと話しています。
新入社員のキラキラを守るのは先輩の背中
末松さんは、仕事の意味を意識できるかどうかには組織風土が関わりそうだと話を広げます。新入社員がやる気に満ちていても、周りが「作業」をしていれば、同じようになってしまいそうだという懸念です。
名倉さんは自身の職業経験を振り返り、先輩たちが会社の雰囲気を作っているため、新入社員はどうしても「郷に入っては郷に従え」になってしまうと語ります。
そこに馴染めない私が異質っていう風になってしまうので、そこに飲まれてしまうと、新入社員特有のこのキラキラ感、大事にしてあげられない会社になっていくのかなっていうふうには思いますよね。
中村さんは、放送の時期に合わせて、4月に入社して2ヶ月が経ち、周りが見え始めて「おや?」と葛藤している新入社員もいるかもしれないと語りかけます。名倉さんは過去のシリーズで扱ったオンボーディング ── 新しく入った人が組織になじみ、戦力として定着するまでの受け入れ・支援の過程を指す人事用語ですの時期だと補足し、尊敬できる先輩を見つけることの大切さを挙げました。
末松さんは、会社の船がないなら自分で作るぐらいの気持ちを持ちたいと話します。経営者になるわけではなくても、先輩として身近なコミュニティを担う責任は、経営の責任にもつながるのではないかという気づきです。
(新入社員が)じゃあ自分がこの組織を変えようって、なかなか一年目は酷というか。
上に立つ人の他責が被害者意識を伝染させる
末松さんの話を受けて中村さんは、社長に限らず管理職を含めた上に立つ人の姿勢がとても大事だと強調します。その人たちが他責の考え方になると、それが伝染し、社員が被害者意識を持ち始めるといいます。
どうせ別にここでなんか熱くなったって意味ないやんとかね。
名倉さんも、そうした職場では「ここで一念発起しても何も変わらない」と考えてしまうと応じます。中村さんは、被害者意識が高まると「自分が面白くないのは誰々のせい」という思考に入っていくと話しています。
上に立つ人の他責
社長や管理職が他責の考え方になる
伝染
その姿勢が社員に広がっていく
諦め
「熱くなっても意味ない」「どうせ変わらない」と感じる
被害者意識
「面白くないのは誰々のせい」という思考に入っていく
中村さんが目指すのは、被害者意識ではなく当事者意識を持てる状態です。そのためには、責任を重しと思うのではなく、自分の一つ一つの選択に責任を持つことがこれからの可能性を作る、という目線を持ってほしいと話します。
中村さんは極論として、「今日はやる気がないから適当にかわしておこう」というのも自分が決めたことだと続けます。仕事がつまらないと言っても、つまらない選択をしているのは最後は自分だ、というところに行き着けるかどうかが問われます。
まあそういう選択をしたくなるような状況を作らないことが、より立場が上の人の役割なんかな。
「俺やん」と気づいた経営者の声
番組では、定例研究会に参加した経営者からの声が紹介されました。社員との対話の質と量を増やすことを決めたこと、考えを一方的に伝えるのではなく一緒に考える場を作ることで社員が自ら動くようになると気づいたこと、という内容です。
名倉さんは、社員にとってありがたい変化だと受け止めます。社長が決めたことを宣言するだけでは、社員は自分で決めていないので当事者意識が生まれにくいからです。
中村さんはこの社長をよく知っており、社長は以前から「もっと会社のことを考えてほしい」と望んでいたと話します。自分の言うことだけを聞いてほしいのではなく、活発に意見が出る会社にしたいのに、そうならない現実があったといいます。
なんで俺はそれを望んでるのに、そこに乗ってきてくれないの?だから、やっぱりあんまりそれをうちの社員に期待してももう無理なんかなみたいなね。
中村さんによれば、この社長は他の参加者とのディスカッションを通して、社員の当事者意識を引き出せていなかったのは自分だったと気づきました。
このディスカッションを通して、そうかと。俺やんみたいな。
名倉さんは、信念のある経営者ほど考えを曲げにくい中で、方向転換できるのは素晴らしいと評価します。中村さんは、定例研究会は互いを責め合う場ではなく、感じたことをフィードバックし合う場であり、その中で自ら内省して気づけることが成長だと話しています。
中村さんはさらに社員に向けて、経営者の気持ちは経営者にならないとわからないので、無理にわかる必要はないと語ります。ただ、会社を作っている一人だという自覚を持ち、日々の仕事に責任を感じながら働くことは大事だとしています。
「人生の経営者」としてどんな選択をしている?
次に深掘りされた問いは、「人生の経営者として、あなたは今どんな選択をしていますか?これからどんな選択をしていきたいですか?」です。思わず「難しい」と口にした場面では、「MiraQでは難しいは禁止」とツッコミが入り、笑いが起きました。
中村さんは、つらい場面に支援する立場で関わることも多い中で、常に自分に言い聞かせている言葉があると明かします。
中村さんによれば、誰もが今日より明日、今より1年後を良くしたいと思って頑張っています。だからこそ、それぞれが自分の人生を経営しているという感覚を持つことが大事だと話しています。
転職経験のある末松さんは、座右の銘が「オールバイマイセルフ」、つまり全て自分によるものだと明かします。誰かに言われたことでも、実際にやっているのは自分なので、人生の選択でやらされていることはほぼないと考えるようになったといいます。
やらない後悔よりもやって後悔の方が私は絶対いいと思ってるんで。
末松さんは、やりたいと思ったことはすぐにやると決めており、「やっちまった」はあっても「やらなければよかった」はあまりないと話します。名倉さんも、やらなかった後悔より失敗の方が学びになると共感しました。
末松さんは、失敗があるから次はこうしようと考えられ、会社に持ち帰って共有もできると続けます。そして、誰々のせいで失敗したという他責思考にならないためには、自分で選択するしかないと語っています。
「人生は思ったようにしかならない」の意味
中村さんは、社員研修の講師を務めた際に、最後の一言としてよく伝えている言葉を紹介します。
一般には「思うようにいかない」と言いがちですが、中村さんは、思うようにいかないと思ったのも自分だと話します。思い通りでない現実を前に、やめると決めるのも、試されていると捉えて向き合うのも自分だという考え方です。
それが「今ハッピーです」っていう人は、「ハッピーになる」って思ったからハッピーなんですよね。
今ちょっとなんか報われてませんって思う人は、報われてないと思うから報われないんですよね。
末松さんは「しみる」と反応し、何事も考え方なのだと受け止めています。
決めきれない時は流れに乗るのも選択
中村さんは、正解があるわけではないと前置きしたうえで、時には一旦流れに乗ってみることも大事だと話します。全てをきっちり決めようとすると大変で、右か左か決めきれない時は誰にでもあるからです。
ただし、流れに身を任せきってしまうと漂流してしまうとも中村さんは注意します。乗ってみた中で「いい感じ」か「違う」かを感じ取り、自分の方向性を見出していくことが大切だという考えです。
流れに身を任せつつも、でも流れに身を任せようって、「よし、ここは一旦ちょっとあの流れに乗っかるんだ」って決めたのも自分なんですよ。
末松さんは、その中で良いところを取ろうと決めたのも自分なのだと理解し、「結局は全部自分」という中村さんの言葉に深くうなずきました。名倉さんは、しっかり自分の考えを持つ末松さんを頼もしい先輩だと称えています。
これに対し末松さんは、最初から「自分で全部決めなあかんで」と言われると新入社員はつらいかもしれないと笑いつつ、中村さんの考え方はきちんと伝えられるようにしたいと話しました。
シリーズを通して見えた「経営の一端」
シリーズの振り返りで末松さんは、最初は「経営者」と付いているので社員には関係ないと思っていたと明かします。しかし「人生の経営」の話を通じて、自分の人生を経営する責任は自分にあると再確認できたといいます。
さらに末松さんは、先輩の背中の話から、自分が経営の一端を担っていることにも気づいたと話します。
先輩の振る舞い
自分がいい加減な姿勢だと
伝染
その感じが後輩に伝わっていく
組織の衰退
会社がダメになっていく
経営への影響
経営が悪くなる。だから自分も経営の一端を担っている
末松さんは、一つ一つの作業もつながっているものの、一番は周囲の人への影響が直結すると感じたといいます。熱意が空回りすることはあっても、冷めた状態でいれば冷めた組織になる、と話しました。中村さんも「誰も発案しなくなる」と応じています。
中村さんは、この回で一番伝えたかったのは責任を重しとして受け止めないことだと話します。
言うのも言わないのも、やるのもやらないのも自分の意思決定だと考える機会になればよい、と中村さんはまとめています。
7月の定例研究会のテーマは商品戦略
番組の最後には、7月の定例研究会のテーマが紹介されました。中村さんによれば、テーマは「商品戦略」で、自社の商品をどう作り上げていくかに焦点を当てます。開催日は7月9日で、会場とオンラインのどちらでも参加できるとしています。
名倉さんは、去年同じテーマの回に参加した経験を語ります。自分自身を商品としてどう売っていけばいいか悩んでいた時期で、周りの参加者から良いところを指摘してもらい、自分の商品価値に気づけたといいます。
初めて参加したんですけれども、皆さんすごく温かく迎えてくださって、そこでお話ししたことを1年経ってもよく覚えているぐらい、
名倉さんは、お互いに気づきを与え合えるあたたかい場所だったと振り返り、初めての人もリラックスして参加してほしいと呼びかけています。無料体験参加もあり、詳細は概要欄のリンクから確認できると案内されました。
まとめ
「経営者の責任」シリーズ後編では、責任を社長だけのものではなく、社員一人ひとりが日々の選択を通じて担うものとして捉え直しました。重荷ではなく意思決定の自由と可能性として責任を受け止めることが、被害者意識から当事者意識への転換につながると語られています。
- 会社は社員の総力で作られており、社員も部外者ではなく当事者である
- 任された仕事を確実にこなすことも立派な貢献で、それが何につながるかを意識することが大切
- 上に立つ人の他責は伝染し、社員の被害者意識を生む。新入社員の熱意を守るのは先輩の背中
- 誰もが「人生の経営者」であり、流れに乗ることも含めて、全ての選択は自分が決めている
- 責任を持つことは自分で意思決定できることであり、そこに可能性がある





