「経営者の責任」はなぜ重く聞こえるのか?
この回のテーマは「経営者の責任」です。MCの名倉さんは、テーマを読み上げる段階で思わず言い淀み、冒頭から重い話題だと率直に打ち明けました。
重い、重いんですよ。ちょっと言い淀んでしまったんですけれども、経営者の責任って書いてあるんですよ。
名倉さんは「責任」という言葉には「責任取ります」のような響きがあり、正直ポジティブなイメージはないと話します。中村さんも、責任と聞けばプレッシャーしかないと感じるのは自然なことだと受け止めました。
中村さんは、責任を負っているのは経営者だけではなく、社員も自分の役割に対して責任を負っていると前置きします。そのうえで、責任を単なる重荷として受け止めてしまうことが問題だと指摘しました。
中村さんは、経営者の責任に重い側面があることも認めています。社員が問題を起こして関係各所に迷惑をかければ、記者会見のように社長が出て頭を下げなければ収まらない場面もあります。
重くのしかかるものと言えばそうかもしれんけど、そこの受け止めですよね。だって毎日頭下げてるわけちゃうから。
中村さんは、責任には頭を下げる場面もあるけれど、それだけではないと気づいてもらえれば、この回の番組としては十分だと話しています。
経営者が持つべき3つの軸、信念・価値観・使命感
名倉さんは、この回の問いとして「あなたは今、どんな未来を信じて経営していますか?そして誰のために決断していますか?」を投げかけました。
末松さんは、思い描く未来はぼんやりとあるものの、何を信じて誰のために決断しているのかと問われると、すっと言葉が出てこないと答えます。中村さんも、経営者でもすぐには出てこないのが普通だと応じました。
中村さんは、立場が社長でも社員でも、責任に向き合うには3つの軸があると話します。1つ目は「信念」です。
過去に向かって頑張る人なんていないからさ。やっぱり未来に向かってみんな頑張るわけでしょ。
中村さんによれば、信念とは「こういう未来を作っていくんだ」という自分の中の思いです。この信念があるからこそ、困難にくじけそうになっても「こんなとこでくじけてたらあかん」と這い上がれるといいます。
2つ目は、信念を形にしていくための「価値観」です。中村さんは、自分ファーストで周りのことは知らないという価値観では、いくら信念を貫いても世の中から跳ね除けられると説明します。
中村さんは、自然科学の世界でも「不要なものは淘汰される」と言われるように、社会生活でも同じことが起きると話しました。だからこそ、健全な価値観を持つことが大事だといいます。
健全っていうのはそれをやり続けた時にほんまにやり続けれますかなんです。
中村さんにとっての健全な価値観とは、続けられるものであり、周りから「それを大事にしているのは素晴らしい」と言ってもらえるものです。
3つ目は、信じる未来と大事にする価値観を踏まえ、誰のためにどう実現していくかという「使命感」です。中村さんは、この3つが自分の中にインストールされれば、責任を重しとは思わなくなると話しました。
中村さんが挙げた3つの軸は、未来を描き、大切にすることを決め、実際に誰のために動くかという順につながっています。
信念
自分が思い描く未来。困難があっても這い上がる原動力になる
価値観
信念を形にするうえで何を大切にするか。続けられる健全さがあるか
使命感
誰のために、それをどのように実現していくか
ぶれない社長の会社では何が起きているのか?
名倉さんと末松さんは、3つの軸で考えると重いと思っていたテーマが明るく見えてきたと話します。中村さんは、事業が順調な会社は、この軸を経営者だけでなく社員にもある程度浸透させているはずだと続けました。
中村さんと名倉さんは、共通のクライアントを思い浮かべます。名倉さんによれば、その会社では社長の信念がぶれていないことを社員がわかっていて、「我々はこれをするんです」とすぐに言えるそうです。
名倉さんは、社長が言い続けていても、昨日と言っていることが違えば伝わらないと指摘します。中村さんも、大事なのは自分の考えと普段の言動が一致していることだと応じました。
言っていることはすごく理解するし賛成なんだけど、でもなんか知らんけどムカつくみたいな。
言動が一致しない社長の話は、ただの綺麗事に聞こえてしまうと中村さんは言います。名倉さんも、社員は社長の日頃の行いをちゃんと見ていると話しました。
中村さんは、3つの軸をしっかり持つと、経営者の責任の見え方が変わると話します。
中村さんは、軸に沿って進めば事業は成長し、世の中から「あんたの会社なんていらん」とは言われないと話します。まだ未完成なことをひたむきに探求するからこそ喜びや楽しさがあり、組織を作ってみんなでやろうという気持ちになるといいます。
のしかかってくる重し。プレッシャーしかないもの
自分たちの可能性。探求する喜びや楽しさがあるもの
結果が出ないとき、過去の失敗をどう扱うか?
名倉さんは、ぶれない会社の社長は諦めずに何度も社員に伝え続けていると話します。中村さんはそこに加えて、もう一つ大事なのは結果も出していくことだと指摘しました。
中村さんは、目指した地点に届かなかったとしても、確実に前に進んでいるという「積み上げ感」が大事だと話します。末松さんも、理念に共感して頑張っているのに成長しなければ、方向が間違っているのではと疑ってしまいそうだと応じました。
中村さんは、事業が思うように伸びないときは、どこかで詰まっていると考えます。目指す方向が正しくても伝え方がうまくいっていない場合もあれば、伝え方は上手でも信念や価値観が定まりきっていない場合もあるといいます。
さらに中村さんは、うまくいかなくても諦めずにやり続けることの大事さを語りました。5月の定例研究会のディスカッションでも、似た話が出ていたそうです。
その自分たちが過去に決めたことを自分たちが否定しないっていうね。はい、それってすごいその責任っていうことに向き合うためには大事なことなんかなっていうふうに思うよね。
中村さんは、過去を「失敗した」で終わらせず、一つの過程と受け止めればよいと話します。実現したいことが揺るぎないなら、うまくいっていないところを一つずつ解決していけば、やがて広がっていくという考え方です。
「ただ失敗しただけ」になり、挑戦を避けて無難な選択に流れる
うまくいかない部分を一つずつ解決し、次の糧として積み上げる
中村さんは、何かが頓挫したあとに新しいことを始めようとすると、社内から「それってやる意味あります?」という声が出がちだと話します。名倉さんも、過去の失敗は引きずりやすく、また失敗するのが怖くなってしまうと共感しました。
失敗しない人間なんかいないじゃないですか。
中村さんは、どんどん挑戦してほしいとしたうえで、やりっぱなしにせず振り返り、次の糧にしていく積み上げこそが責任を果たすうえで大事だとまとめました。
「過去の選択を正解にする努力」とはどういうことか?
番組では、MiraQの研究会に参加した人から届いた声が紹介されました。1つ目は、ある経営者からの「過去の選択を正解にする努力が大切だと気づきました。経営者は未来を選ぶだけではなく、自分が選んだ道を責任を持って育てていくものだと実感しています」という声です。
名倉さんは、これこそ番組で伝えたかったことだと反応します。末松さんは、この声を寄せた経営者と実際に話をしたことがあり、その背景を紹介しました。
末松さんによれば、この経営者は2代目社長で、会社を継ぐときにかなり悩んだそうです。継いだことが今も正解かはわからないが、継いでよかったと思えるほうがいいので、正解にするためにいろいろな判断をしていると話していたといいます。
その経営者は、経営判断の場面で「経営者として、人として正しい選択をする」ことを軸にしているそうです。末松さんは、その軸がぶれなければ継いだことが正解になるという話に強く刺さったと振り返りました。
その軸があるからこそ迷えるっていうことがなんか素敵なことだなって思いますよね。
中村さんは、この経営者の責任の捉え方こそが、先に話していた「可能性」だと言います。今はまだ自信を持てなくても、いつか「これこそ自分がしたかったことだ」と言えるようにやっていくのが自分の責任だという考え方です。
簡単にじゃあ頑張ってねって言えないけど、すごい応援したいよね。
末松さんと名倉さんは、過去の選択を正解にする努力は経営に限らず、社員を含めたあらゆる場面で大切なことかもしれないと話しました。
ワクワクは判断軸になる?創業期の中村さんを支えた言葉
2つ目に紹介された参加者の声は「選択することだけが正解ではなく、選んだ後にどう向き合うかが大切だと気づきました。ワクワクするかどうかを選択の基準に加えた時、仕事へのエネルギーが全然変わりました」というものです。
中村さんは、選んだ後にどう向き合えるか、そこでワクワクできるかは、信念・価値観・使命感の3つの軸があるかどうかで決まると話します。3つの軸を実現しようと頑張るのだから、ワクワクしないわけがないという考えです。
名倉さんは、経営者がワクワクするかどうかで仕事を選ぶイメージはあまりなかったと話します。それに対し、中村さんは自身の創業期を振り返りました。
僕が創業した時に、最初に自分一人で始めたから、自分を勇気づけるのは誰かって言ったら自分しかいないわけですよ。
中村さんが29歳で創業したときに生み出したのが、「ワクワクする心奮い立つ会社を作る」という言葉です。これが、中村さんの会社ココフルの社名の原点になったといいます。
中村さんがこの言葉を作ったのは、当時付き合いのあった人たちに伝えたい思いもありましたが、何よりも自分自身を奮い立たせるためでした。一人でやっていると、めげてしまうからです。
名倉さんは、選んだ道が本当に正しいのか、結果が出るのかを誰にも聞けず、常に自分と戦うのが経営者のつらいところだと話します。中村さんは、遊んでいるわけでもないのに売り上げがなく、収入が今月ゼロという創業期の状況も振り返りました。
減り続ける残高を眺めるしかない。
中村さんは、そうした状況を乗り越えるうえでワクワク感は原動力になると話します。名倉さんも、ワクワクがあれば腐らずに済み、社長が楽しくなければ社員も楽しいと思えないと応じました。
末松さんの「社長が楽しそうな会社良くないですか?」という一言から、3人は再び共通のクライアントの話題に戻ります。名倉さんは、その会社を目指したいと思うほどの理想のチームであり、今芽が出なくてもいつか絶対に芽が出る会社だと話しました。
責任と向き合うために、軸を声に出す
終盤、末松さんは「責任イコール可能性」という転換がとてもよいと感じたと話します。信念・価値観・使命感の違いは、最初は説明できるほど理解していなかったものの、話を聞いて腑に落ちたそうです。
今回は経営者の責任というテーマですけど、誰しも責任はあるわけで、仕事している以上、いや、その仕事に向き合うための軸で、この3つは忘れないでおこうっていうふうに思いました。
中村さんは改めて、経営者には最高責任者として責任と向き合ってほしいが、それを単なる重しと思わないでほしいと伝えます。
そのために中村さんが求めるのは、信念・価値観・使命感を勇気を出して言葉にすることです。小っ恥ずかしさや「ふーん」と言われる怖さがあっても、言葉にしたものを一番聞いているのは自分自身だといいます。
なんかそれっぽいこと俺今喋ってんねんけど、いまいちちょっと自分自身もまだ定まってへんなとか、やってみたらわかることいっぱいあるんですよ。
中村さんは、自問自答して声に出すことを繰り返せば、内省による気づきと周りからのフィードバックが得られ、やがて本当にぶれなくなると話します。
名倉さんは、MiraQの場で話せば他の経営者の信念も聞けて、自社に取り入れるヒントにもなると話しました。中村さんによれば、研究会は毎月開かれていて、7月9日の会では自分たちの商品作りを一歩踏み込んで考える予定で、配信日時点では6月11日の会にもまだ間に合うとのことです。
まとめ
経営者の責任には、問題が起きたときに頭を下げるような重い側面もあります。けれど中村さんは、信念・価値観・使命感の3つの軸を持ち、言動を一致させて積み上げていけば、責任は自分たちの可能性に見えてくると語りました。
- 責任に向き合う軸は、未来を描く信念、続けられる健全な価値観、誰のために実現するかという使命感の3つ
- ぶれない会社では、社長の考えと言動が一致し、その軸が社員にも浸透している
- 過去の失敗を過程として受け止め、自分たちが決めたことを否定せずに積み上げることが大切
- 2代目経営者の言葉のように、過去の選択を正解にする努力そのものが責任になる
- 軸は勇気を出して言葉にし、自問自答とフィードバックを重ねることでぶれなくなる



