番組リニューアルで、何が変わるのか?
「社員と学ぶ経営|MiraQラジオ」は、これまで「イキイキ企業の未来ナビ」として、人事労務の学び場をつくってきた番組です。この回からリニューアルし、新しい名前で再スタートしました。
中村さんによると、パーソナリティの話しぶりは変わらないといいます。旧番組は、経営者でも社員でも、立場に関係なく「また頑張ろう」と思える活力を届けることを目指し、1年間配信してきました。
1年間振り返っての総括とすると、ちょっとこう、軸が分かりにくかったんじゃないかなっていうようなところがね、ちょっと思うところがあって。
そこで中村さんは、番組が何を目的にしているのか、その軸を定めるためにリニューアルに踏み切ったと説明しています。末松さんも、以前は好き勝手に喋っていたことが反省点だと振り返りました。今後は毎回のテーマに沿って深掘りしていくといいます。
立場を問わず元気になってもらうことを前提に、自由に喋る。軸が分かりにくかった
喋り方は変えず、毎回テーマを決めて深掘りする。番組の目的という軸を定める
MiraQとはどんなコミュニティか
MiraQは、社労士法人を母体とした活動です。中村さんは、企業の経営者や社員と接するなかで、働くことにポジティブに向き合えない場面が多いと感じてきたといいます。
それを自分たちの会社の中だけで解決していこうと思うと、どうしても視点が内向きになってしまう。
そこで中村さんたちは、異業種の人が集まるコミュニティをつくりました。経営者、幹部社員、まだ幹部ではない一般社員まで、立場を超えて参加し、自社をよくするための考え方を話し合う場です。それがMiraQだと中村さんは説明しています。
MiraQの活動はまだ大阪中心ですが、中村さんは全国に仲間を広げたいと話します。全国に仲間が広がれば、日本全体も明るくなるのではないかという思いがあるそうです。
MiraQでは毎月1回の定例研究会を開き、1つのテーマに沿って他企業の人と話し合っています。末松さんは、最近の研究会から事務局としてではなく、1人の参加者としてディスカッションに入るようになりました。
(ディスカッションは)なんかやっぱ喋ってみないとわからないなっていうのを改めて実感しました。
末松さんは、思っていることを言語化して伝える難しさを感じたといいます。一方で、他の人の意見を聞いて「私が言いたかったのはそれだ」と気づくこともあったそうです。名倉さんは、顔を合わせて話すからこその気づきだと応じました。
大阪から全国へ、「5大ドームツアー」の夢
中村さんにとって、対面での開催は大きな課題です。現在のMiraQの定例研究会は、リアルで開催しているのは大阪だけです。全国の参加者に向けて、オンラインからも参加できるハイブリッド形式で運営しています。
本当は全国で何箇所かでリアル会をやりたいんですよ。
中村さんは、九州、関東、東北など各地でリアル開催ができれば、遠方の人も参加しやすくなると話しています。名倉さんはその構想を「5大ドームツアー」にたとえ、ラジオを通じて実現しようと呼びかけました。
企業の寿命は23年、創業から3年で8割が消える?
夢の話から一転し、名倉さんは4月の研究会で紹介された「衝撃的なデータ」に話を移します。中村さんは、夢を描くことも大事だが、足元を見ることも大事だと前置きしました。
中村さんによると、経営者は会社が存続できるかどうかに常に恐怖を感じています。一方で、社員は「自分の会社が明日なくなるかもしれない」とはあまり思わないといいます。名倉さんも、一度も思ったことはないと答えました。
一般的に言われるのは企業の寿命は23年って言われるんですよね。
23年は人間でいえば、ようやく成人を迎えた頃です。さらに中村さんは、創業から3年以内に8割がなくなるともいわれると紹介し、名倉さんを驚かせました。末松さんも、新聞で倒産の記事は見るものの、自分ごととなると実感しにくいと話しています。
100年企業が多い日本の強みとは?
中村さんは、厳しいデータを見ても、過度に悲観する必要はないといいます。創業100年を超える企業の数は、世界で見ると日本が圧倒的に多いからです。
社員の立場にあろうが、みんなで一致団結して事業を成長させるっていうことは、日本人が多分一番世界で見ても得意なんだと思います。
名倉さんが「それだけ社会に必要とされ続けているということ」とまとめると、中村さんも同意しました。中村さんは、ただ経営を続ければよいのではなく、世の中から必要とされ続けることが経営の本質だと語っています。
ここで、この回の問いとして「あなたの会社は社会から必要とされ続けていますか?」が示されました。
「必要とされている」という自信は揺らぐのか
末松さんによると、研究会でこの問いが出たとき、参加者の反応は分かれたといいます。自信を持って「そうだ」と言える人もいれば、考え込んでしまう人もいました。
末松さんのグループには、システム会社の人と医療関係の人がいました。システム会社の人は自分で会社を立ち上げたため、思いがとても強かったそうです。医療関係の人も「患者さんが待っているから必要とされている」と考えていました。
(医療は)必要っていう理解はあったんですけど、そのじゃあなんて言うんですかね、その患者さんを待ってるだけでいいのかとか、なんかそういうふうな話になっていくと。
病院はたくさんあるという話に広がると、かえって「必要とされている」という自信が揺らいだように見えたと末松さんは振り返ります。中村さんは、こうした「待つ姿勢」はどの業界にもありうると応じました。
存在意義を伝えるための3つの問いとは
中村さんは、自社が何をしているのか、その意味を社会に伝えるには、3つの問いに答えられることが大事だと話します。
それがないのにどうやって相手に伝えるんですかって話なので、まずここを押さえておくってことが大事やし。
研究会では、参加者の多くが社長や幹部だったため、「なぜ存在するのか」という問いにはすぐ答えられたそうです。ただ、末松さんによると、「○○を販売しています」という答えを深掘りしていくと、作って売っているだけではないと気づき、議論が深まっていったといいます。
中村さんは、この問いをぜひ社内でも試してほしいと話します。理想は、誰に聞いても同じように答えられる状態です。ココフルではまだ試したことがないそうで、末松さんは、方向性は同じでも、浅いところで答えが止まる人がいるかもしれないと笑いました。
理念を暗記させても判断基準にならない理由
中村さんは、旧番組の頃から「言葉を整える」ことにこだわってきました。
我々はこのためにやってますっていうことが、こうみんなが統一されてる状態にならないと、判断ってもうぐちゃぐちゃになっていくんですね。
判断軸が人によって違えば、その後の行動も変わってしまいます。末松さんも、社長と社員が同じ方向を向くことは理想だとしつつ、人が増えるほど難しいと話しました。
ただし中村さんは、一字一句同じことを言えればよいわけではないと強調します。毎朝理念を唱和し、全員が理念を言える会社でも、理念の意味を聞かれると答えられないことがあるからです。
毎朝の唱和で理念を言えても、意味や理念を通して何をするかは答えられない
理念の文字面ではなく「つまりこういうことだ」と自分の言葉で言える
ココフルでも、中村さんは社員に「うちの経営理念どうぞ」と振ることがあるそうです。末松さんは「怖い」と言いながらも、全部言えると答えています。中村さんが大事にしているのは、理念を自分の言葉で説明できるかどうかです。
中川政七商店は問屋から何に生まれ変わったのか
具体例として中村さんが挙げたのは、4月の定例研究会でも取り上げた奈良県の老舗、中川政七商店 ── 奈良県の老舗企業。麻織物を出発点に、現在は工芸をテーマにした生活雑貨の製造・販売や、工芸メーカーへのコンサルティングなども手がけていますです。奈良出身の末松さんも、奈良で知らない人はいないと話しています。なお、創業からの年数は、書き起こしでは創業年数です。
中川政七商店は、もともと麻織物の問屋として卸の役割を担っていました。しかし、流通の変化で商流が大きく変わり、経営は厳しくなっていったといいます。
麻織物を小売業者に届ける問屋
日本の工芸を元気にする会社
中村さんによると、この再定義を社内に浸透させたことで、社員の自己概念が変わりました。自己概念が変わったことで、問屋機能にとどまらず「もっとこういうことができるのでは」という議論が社内で活発になり、事業領域が広がったといいます。
(中川政七商店の例を見ても)自分たちは何のためにこれをやってるのかっていう判断基準っていう、一つの軸を作っていくっていうのは大事なんやなっていうのをね、思った。
社長の新しい言葉は、なぜ最初は冷たく受け取られるのか
末松さんは、ここで疑問を投げかけます。社長が「日本をこれで元気にする」と宣言しても、社員は「社長がまた言っている」と受け流すのではないか、というものです。
中村さんは、最初の反応は冷たいに決まっていると話します。「また変なことを言い始めた」「またどこのセミナーに行ってきたんだ」と思われるのが普通だというのです。
一回言ったら、なんかそれにみんなが共感してくれて、バーって変わるなんて思ってたら、それは大間違いで。
それでも本気で言い続ければ、社員10人のうち1人くらいは賛同してくれる人が出てくるといいます。中村さんは、この広がりを池に投げた石の小さな波紋にたとえています。
宣言
最初の社員の反応は冷たく、場は静まり返る
言い続ける
10人に1人くらい、賛同する人が出てくる
波紋
小さな波紋が少しずつ広がり、ムーブメントになる
浸透
斜に構えていた人も、少しずつついてくる
ヤッホーブルーイングは「ビールを売る会社」をどう再定義したか
中村さんがもう1つの例として挙げたのが、スーパーの酒類売り場でも見かけるクラフトビール「よなよなエール」をつくるヤッホーブルーイング ── 長野県軽井沢町に本社を置くクラフトビールメーカー。「よなよなエール」などの個性的なビールで知られていますです。
日本のビール市場には、中村さんの言う「超ガリバー企業」である大手がいます。そのなかで「ただビールを売る会社」と名乗っていては、社員は元気にならないと中村さんは話します。
そこでヤッホーブルーイングは、自分たちの存在を再定義しました。中村さんによると、大手では味わえないクラフトビールの良さを、文化として日本の人々に届けるという思いのもと、社員がイベントなどで広げているといいます。中村さんは、これこそがムーブメントだと語っています。
別に事業の内容を変えたわけじゃないのに、そのビール売りじゃないよっていう、この言葉変えて、みんながなんか働く気持ちが変わるって、なんかすごいなと。
末松さんの言葉どおり、2つの事例に共通するのは、事業ではなく自分たちを表す言葉を変えたことです。末松さんは、そもそもこうした言葉さえ設定できていない会社もあるのではないかとも話しました。
MiraQ自身は会員に存在意義を語れているのか
話はMiraQ自身にも向かいます。中村さんは、母体の社労士法人ココフルでも、日々苦労しながら言葉を揃えてきました。ところが、MiraQの活動の意義を会員に再定義して伝えることを考えると、ハードルの高さに気づいたといいます。
今の現役世代がもっと生き生きとワクワクと、こうね、働くということにポジティブに向き合っていくことが、未来の子供たちの幸せを作ると思ってるんです。
中村さんと末松さんの間では、MiraQの存在意義について共通認識があるそうです。しかし、会員にどこまで語ってきたかを聞かれた末松さんは、立ち上げや入会案内のとき以来、言っていないかもしれないと答えました。
ちょっとこれ問題やな、これは。
話しているうちに課題が見つかった形ですが、末松さんは「気づけてよかった」と前向きに受け止めています。
参加者が気づいた「逆の視点」とは
名倉さんは、MiraQの研究会に参加した経営者の声を紹介しました。経営は単なる金儲けではなく、会社の存在意義を考え直す機会になったという感想です。また、会社の発展を考えるときに、社会がどう変化するかという逆の視点で考える大切さに気づいたという内容でした。
社会から見た時に、別にあなたの会社を発展させようって社会は思ってないわけですよね。
中村さんは、社会の人々は自分の悩みや課題を解決したいだけだと話します。だからこそ、誰のどんな悩みを解決するのか、そのために自社のリソースで何ができるのかを考える必要があるといいます。その視点がないまま儲けたいと言っても、「そんなもん知らんがな」となると語りました。
一方で末松さんは、会社の視点で考えられるだけでもすごいと話します。社員は「この仕事をやりたくない」といった自分の視点にとどまることも多く、そこから社会の変化に気づくのはレベルが高いと率直に語っています。
考え続けることが会社の軸をつくる
次に紹介されたのは、幹部社員の声です。仕事の存在意義を意識しながら働くことが重要で、簡単に答えは出ないものの、考え続けることで会社の軸がつくられる感覚がある、という内容でした。
中村さんが最も響いたのは、「考え続ける」という言葉だったそうです。慣れると仕事は惰性になり、ただの作業になってしまうからです。
ココフルに入った末松さんは、「死ぬほど考えている」と笑います。最初は作業を覚えるのに精一杯でも、慣れてくると「なぜこの仕事が必要だと思うか」と問われるようになるといいます。
入退社の手続きなら「しないと保険証が届かない」という浅い答えでは終わりません。末松さんは問われ続けるうちに、意味のない作業はないと気づき、仕事を楽しいと思えるようになったと話しています。
毎日「やらないと」と作業に追われる
仕事が誰のため、何につながっているかを考え、楽しめる
それ(仕事の大義)がないと多分毎日続けられないって思っちゃいました、私は。
リニューアル初回を終えて
末松さんは、自分の言葉で口に出すことの大切さを改めて感じたと話します。他の参加者の意見も取り入れながら考え続けることで、自分の軸が強くなっていく感覚があるといいます。
中村さんは、毎月の定例研究会の雰囲気や臨場感が、リスナーにも伝わっていればうれしいと語りました。番組の最後には、MiraQの無料体験参加が会場でもオンラインでもできることが案内されています。
まとめ
企業の寿命は23年ともいわれます。そのなかで長く続く会社は、社会から必要とされ続けるために、自分たちの存在意義を言葉にし、時代に合わせて再定義してきました。大切なのは、その言葉を暗記させることではありません。社長が本気で言い続け、社員一人ひとりが自分の判断基準として考え続けることです。
- 企業の寿命は23年ともいわれる。一方で、日本には創業100年を超える企業が多い
- 存在意義、事業の中身、届け方という3つの問いに答えられるかが大切
- 中川政七商店とヤッホーブルーイングは、事業内容ではなく自己定義の言葉を変えて組織を動かした
- 理念は暗記させるものではない。自分の言葉で説明でき、判断基準として使えることが大切
- 社長が本気で言い続け、全員が正解のない問いを考え続けることが会社の軸をつくる







