「社労士ってかっこいい」から始まった新人時代
リニューアル第2回となる今回は、幹部社員に向けた回です。エピソード1でミラクという場を紹介したのに続き、今回は社員の当事者意識に焦点を当てます。
冒頭、名倉さんは末松さんに「今の仕事は好きですか」と問いかけます。末松さんは即座に「大好きですよ」と答え、毎日が楽しいと話します。
はい、大好きですよ。
ただし、末松さんは最初から仕事が好きだったわけではありません。未経験・無知識で入社し、社労士 ── 社会保険労務士の略称。労働・社会保険の手続きや、人事労務管理の相談・指導を担う国家資格者です業務が何かもわからないまま、「社労士ってかっこいい」という気持ちだけで飛び込んだといいます。
(入社したら)覚えることがいっぱいいっぱいなので、一瞬ちょっとやべえって思った時もあります。続けれるかなみたいな。
最初から全力で走れる社員はいない、という名倉さんの言葉に対し、番組では「最初は興味があるだけで十分」という考えが示されます。人事労務の仕事に少しでも興味が持てれば、日々の業務の意味を少しずつ実感できるようになる、という見方です。
名倉さんも、学生時代は勉強が嫌いだったのに、社会人になって自分から興味を持った資格の勉強は続いたと振り返ります。興味のない勉強は「やらされている感」になり、興味があれば目標に向かって進めるという実感です。
採用基準はたった2つ、「素直さ」と「向上心」
勉強好きの名倉さんを見て、話題は末松さんが勤める社労士法人ココフルココフルの採用基準に移ります。ココフルでは面談や適性検査も行うものの、最終的に見るのは2つの要素だけだと語られます。
その2つとは、素直であることと、向上心があることです。この2つさえクリアしていれば、人はどうとでも成長できるという考え方で、ココフルでは繰り返し伝えられているといいます。
名倉さんは、社会人経験を重ねるほど、2つのうち特に「素直であること」が大事だと感じると話します。後に語られる末松さんの成長の話は、まさにこの2つの資質が形になった例として聞くことができます。
「中村経由の相談はもうない」と言われた日
末松さんが「ココフルの一員になれた」と実感した転機は、入社して早い時期に顧問先の担当を任されたときのことでした。まだ勉強途中で、顧問先からの質問にその場で答えられないことが続いたといいます。
すいません、調べますって言って電話をかけたんですけど、お客さんからしたらそんないつも電話してもいつも答えてくれへんみたいなだったら、(困りますよね)。
実際、顧問先が末松さんを通さず、代表の中村さんや別の社労士に直接相談することもあったそうです。末松さんは悔しさを感じつつも、そこで終わらずに「死ぬほど勉強した」と振り返ります。
やがて一定の相談に答えられるようになった頃、中村さんに様子を聞くと、末松さんの顧問先から中村さん経由で相談が来ることはもうほとんどない、と返ってきました。
中村経由で相談来ることはもうほとんどないよって言ってくれた時に、これでようやく担当になれたなって思いましたよね。
この経験で末松さんの勉強の目的は変わりました。以前は「自分の興味のため」だった勉強が、「お客さんのために勉強しないとダメだ」という視点に切り替わったといいます。
自分自分ってやってたらいけないなっていうのに気づきましたね。
中村さんは、この話こそ今日伝えたい核心だと受け止めます。必要としてくれるお客さんがいて、その人に貢献したいから、経験も知識も必要になり、努力するようになる。名倉さんはこれを「自分軸から変わった瞬間」と言い表しました。
自分の興味があるから学ぶ。仕事はこなすべき作業
お客さんの相談に応えるために学ぶ。仕事は貢献するための価値
「あなたの今日の仕事は、誰のどんな困りごとを解決していますか?」
ここで番組から今日の問いが示されます。「あなたの今日の仕事は、誰のどんな困りごとを解決していますか?」というものです。
末松さんによると、ミラクの定例研究会でもこの問いを扱ったところ、目の前の顧問先のことは答えられても、そこから先へ広げようとするとみんな手が止まったといいます。
中村さんは、お客さんに直接接する職種はまだ答えやすいと指摘します。一方で、製造の仕事や、荷物を目的地に運ぶ配送の仕事のように、社外からのフィードバックを受けにくい職種では、仕事の意味を実感するのが意外と難しいと話します。
ついつい作業になってしまうっていう。
末松さん自身も、事務処理でただ入力するだけの時間には「とにかく1時間以内に終わらせないと」と作業モードになることがあると認めます。名倉さんも、すべての仕事に意味付けをするのは難しいと率直に話しました。
中村さんの答えは、明確な正解を出す必要はないというものです。大事なのは、今日やったことが誰にどう貢献したのかを考えてみる習慣を持つこと。その習慣から当事者意識が生まれる、と中村さんは説明します。
問いを持つ
今日の仕事は誰にどう貢献したのかを考える
つながりを知る
自分の仕事が誰の喜びにつながっているかに気づく
実感する
自分の仕事が人の役に立っていると腹落ちする
当事者意識
作業をこなすのではなく、自分事として仕事に向き合う
中村さんは、当事者意識は上から命じて持たせられるものではないと強調します。
末松さんも、こうした問いは誰かに投げかけられないと考えるところまで行き着かないと話します。中村さんの言葉を借りれば、「考えなきゃいけないということにすら気がつかない」状態です。
中村さんに問われた名倉さんは、ニュースを読む仕事ではその先にいる人を常に考えながら話していると答えます。中村さんは、名倉さんが楽しそうに見えるのはそこに理由があるのではと受け止め、名倉さんも「誰かのためになっている実感があるからかもしれない」と応じました。
当事者意識が広がると、社長の言葉が伝わりやすくなる
社員みんなが当事者意識を持つと会社はどう変わるのか。名倉さんの問いに、中村さんはまず「自分たちの仕事に誇りが持てる」と答えます。
それって本当にすごくなかったら、すごいでしょって言った時にまあまあ小恥ずかしいよねって。
だからこそ、堂々と「すごいでしょ」と言ったときに「確かに」と返してもらえる仕事をしたい、と中村さんは話します。
さらに中村さんは、エピソード1で話した「社長が事業を再定義して伝えても、最初は社員に伝わりにくい」という課題にも触れます。社員が当事者意識を持つと、社長の思いが前提として共有され、多くを語らなくても意図が伝わるようになるといいます。
その実例として挙げられたのが末松さんです。中村さんによると、以前の末松さんは中村さんの指示をどう形にするかで動いていましたが、最近は自分からの発案が増え、「やってもいいですか?」と提案してくるようになりました。
中村さんが「ああしろこうしろ」と伝え、その指示を形にするために動く
自分から「こんなことしたい、やってもいいですか?」と発案し、主体的に動く
末松さん自身は、去年からミラクの事務局として研究会に参加したことで視野が広がったと話します。他社の取り組みを知るうちに「これぐらいなら自分でできるのでは」と思うことが増え、提案すると中村さんは無謀でなければ任せてくれるといいます。
毎月定例研究会に参加させていただいてるおかげで、大量にやりたいことってできて、今なんか時間足りないし、自分でなんか忙しくさせてるみたいなになってます。
こういう社員が育つと社長は「すごく楽」になる、と中村さんは笑います。いちいち指示を出さなくてよくなるからです。
経営者だけでなく社員も集う、ミラクという場
中村さんは、こうした状況を他の会社でも作りたいという思いから、ミラクの定例研究会を設計していると話します。世の中の経営者向け学びのコミュニティは参加者が経営者に限られがちですが、ミラクは法人の人なら立場を問わず参加できる形にしています。
ただし、運営は正直に言って大変だと中村さんは認めます。経営者と現場の担当者では見ているステージが違い、その人たちを同じ議論に巻き込むには工夫が必要だからです。
経営者の目で、いろいろなことを俯瞰して見ている
担当者として、現場のことを見ている
それでも中村さんが立場を問わない場にこだわるのは、もうすぐ丸4年になる末松さんの変化のような「化学反応」を、他の会社でも起こしたいからだといいます。
事務局として参加者の感想を最初に読む末松さんは、印象に残ったコメントを紹介します。ある幹部社員が、同じ机で他社の経営者と話したことで、自社の社長がどれだけ考え、どれだけ動いているかを実感できたという内容でした。
社内の中でいただけだったら熱い人だなぐらいで終わってたのが、めちゃめちゃすごいんだっていうのを実感できたっていうのがあって。
名倉さんは「それは社長が見たら泣きますよ」と反応し、社内にこもっているだけでは見えないものがあると話しました。
「帰り道ずっと考えていた」と、あえてのモヤモヤ
番組では、研究会に参加した社員・幹部の声が紹介されます。名倉さんが読み上げたのは、ある幹部社員からの感想です。
その感想は「経営者ではない立場でも参加してよかったと心から思います。職場の仲間との議論では絶対に出てこない視点に触れることができて、うちの会社の存在意義って何だろうと帰り道ずっと考えていました」というものでした。
末松さんは、前の会社では経営層に会ったこともなく、モニター越しに見たことがある程度だったと振り返ります。社内で話す相手が同僚や少し上の先輩に限られれば、出てこない話はたくさんある、というのが末松さんの実感です。
中村さんと名倉さんが特に注目したのは「帰り道ずっと考えていた」という部分です。その場だけで終わらず、余韻が残ったことに中村さんは喜びを示し、実は「あえてモヤモヤさせている」面もあると明かします。
答えを教えてくれそうで教えてくれへんよねみたいな。
中村さんは相談を受けても、考え方の切り口は示すものの「こうした方がいい」とは基本的に言わないといいます。答えが見えそうなところまでファシリテート ── 議論や話し合いが円滑に進むよう、問いかけや整理で参加者を導くこと。答えを与えるのではなく、考えを引き出す役割を担いますしても、最終判断は相手に委ねるのが仕事のスタンスです。
中村さんが自分で決めることにこだわる理由は、自分で決めれば誰のせいにもできないからです。経営者は最高の意思決定者ですが、日々の現場で自分の言動に責任を持たなくていい人は一人もいない、と中村さんは話します。
全員が自分が意思決定者として動けるようになっていってほしいっていうのがね、やっぱ思いにはあるっていうことなんですよね。
一緒に考える仲間がいるから、考え続けられる
名倉さんが紹介したもう1つの声は「社員同士が学び合い、高め合う風土がある企業は魅力的だと感じました。一緒に考える時間を作ることが、社員が会社を自分事に感じるための最初の一歩なんだと気づきました」という感想です。
中村さんは、考えることは言うのは簡単でも実際には苦しいものだと話します。そのときに「一人じゃない」と思えることに価値があるという見方です。
やっぱ現場のことを一番知ってるのは現場で頑張ってる社員さんなんですよ。
社長が遠目に見て指示を出しても、現場の社員からすれば「今の状況で本当にそれをやるんですか」となりかねません。だからこそ現場から発案することが大事で、上司・同僚・後輩とともにみんなで考えることが重要だと中村さんは続けます。
末松さんはそれを「組織の醍醐味」と表現します。一人で考えて一人でやるなら組織らしくない、という言葉に、名倉さんも「それならフリーランスでいい、となってしまう」と応じました。
「会社がなくなったら、一番困るのは誰?」
後半は、今日の問いをさらに深掘りします。名倉さんが投げかけたのは「あなたの会社がなくなった時、一番困るのは誰ですか?その人の顔がすぐに浮かびますか?」という問いです。
中村さんは「深いなぁ」とうなり、名倉さんも特定の人の顔が浮かぶかと言われると難しいと話します。末松さんは真っ先に顧問先が浮かぶものの、顧問先は数が多く、特定の一人がパッと出るかというと難しいと答えました。
中村さんが研究会のディスカッションに入ったときには、ある参加者がまず「自分」と答えたそうです。末松さんによれば、その参加者は「お金がもらえなくなるもん」と話していたといいます。
世の中に貢献するんだ、お客さんのために頑張るんだってまあ言うけど、やっぱり自分を大事にできないと、やっぱりそれって何か上辺になっちゃうかなって思うんですよね。
中村さんは、素直に「自分」と言えることもある種の才能だと評価します。そのうえで、そこからどれだけ範囲を広げられるかがポイントだと話します。
たとえば経営者から見れば、社員が困るだけでなく、その社員の後ろには家族がいます。研究会では「仕入れ先」と答えた人もいて、末松さんが面白かったと話すのは「ビルのオーナーが困る」という答えでした。会社がなくなればテナントを出ていき、家賃が入らなくなるからです。
自分
職を失い、お金がもらえなくなる
目の前のお客さん
日々関わっている顧問先などが困る
社員の家族
社員の後ろにいる家族にも影響が及ぶ
取引先・地域
仕入れ先や、家賃が入らなくなるビルのオーナーも困る
中村さんは、こうして考えを広げると、自分たちの会社が社会や地域の中で生かされていることへの理解が深まると話します。名倉さんも、この問いが自分たちの存在意義を考えるきっかけになると受け止めました。
「代わりはいくらでもいる」に、日本一の事務所で答える
末松さんは、ディスカッションで出た少し違う角度の話も紹介します。もしココフルがなくなれば顧問先は困りますが、社労士は世の中に大量にいるので、次を見つければよいことになる。見つけられるなら、本当に困るとは言えないのでは、という話です。
名倉さんが「悲しいです」と漏らしたところで、末松さんはココフルの企業理念にある「日本一の事務所を目指す」という言葉を持ち出します。
末松さんによると、ここでいう日本一は売上・社員数・規模の日本一ではありません。顧問先のことをこれだけ思い、真摯に向き合っている事務所はない、この会社にいることを誇りに思える事務所はない、とみんなが胸を張って言える状態を指すといいます。
売上、社員の人数、事業の規模が日本一になること
顧問先を誰よりも思い、社員が誇りを持てる事務所だと胸を張って言えること
こんなに顧問先のことを死ぬほど考えてやってた事務所がなくなって、じゃあ明日から違う事務所ってなった時に、おやってなるなと思って。
代わりの事務所がすぐに見つかるのか、と顧問先が感じるような存在になれば、会社がなくなったときに本当に困る人がいることになります。中村さんは、それをココフルだけの自己満足ではなく、ミラクに集う会員企業すべてに実現してほしいと願っていると話します。
名倉さんはこの関係を「結婚みたい」と表現しました。誰でもいいのではなく、この人だから選んだ、という関係です。中村さんも「結婚みたいかもしれませんね」と同意しました。
胸を張って口に出すことから始めよう
収録の振り返りで、末松さんはミラクのような会を当初「社長同士が経営を語る場」だと思っていたと明かします。実際には幹部社員や、入社2〜3年目の若い社員も参加しているといいます。
若い社員はさまざまな会社の社長の意見を聞くことができ、社長は他社の新入社員に近い人の話を聞ける。末松さんは、第一線の社長と若い社員が同じ机で話せるのか不安もあったものの、参加者から気づきが多かったという声をもらえたと話します。
中村さんは、エピソード1と今回の2話を通じて、目の前の仕事をこなすだけでなく、仕事を通してどんな価値を届けているのかを深掘りしてほしかったと振り返ります。
自分たちの仕事を胸を張って発信するのは、少し恥ずかしいかもしれません。それでも中村さんは、身近な人から口に出してみることを勧めます。返ってくるフィードバックからまた考えが深まる、というスパイラルが生まれるからです。
意外と口に出してみるとね、楽しいよって話ね。
周囲に言うのが恥ずかしければ、まずはミラクの定例研究会で話してみてほしい、と中村さんは呼びかけます。次回の定例研究会は6月に開催予定で、テーマは事業としてどう進めていくかという大枠を扱う「経営戦略概論」と案内されました。
ミラクの定例研究会は無料体験参加ができ、会場でもオンラインでも参加できると紹介されています。名倉さんは、上司も部下も関係なく参加してほしいと締めくくりました。
まとめ
当事者意識は「持て」と命じて育つものではなく、自分の仕事が誰の役に立っているかを実感したときに生まれます。末松さんの実話や研究会参加者の声は、その実感が視野の広がりや仲間との対話から得られることを示していました。
- 未経験の新人でも、最初は「興味がある」で十分。素直さと向上心があれば成長できる
- 学ぶ目的が「自分のため」から「お客さんのため」に変わると、仕事は作業から価値に変わる
- 「今日の仕事は誰のどんな困りごとを解決したか」を考える習慣が、当事者意識を育てる
- 「会社がなくなったら誰が困るか」を広げて考えると、会社が社会や地域に生かされていることが見えてくる
- 立場を越えて一緒に考える場が、社員が会社を自分事として捉える最初の一歩になる





