なぜ「強い摩擦がかかったまま縄を動かさない」が大事なのか
この回のテーマは、強い摩擦がかかったまま縄を動かさないという点です。緊縛は必ずしもアダルトな行為に限らず、表現やコミュニケーションの手段だとたかせさんは前置きします。
受け手に縄を掛けてテンションを入れていくと、縄と受け手の体の間には摩擦が生まれます。この摩擦が強く掛かった状態で無理に縄を動かすと、さまざまな不都合が生じるといいます。
まず起きるのが、受け手の肌を直接傷つけてしまうことです。擦り傷のようになったり、縄が噛んで血豆のようなものができたりすることがあると説明されています。
傷にならなくても起きる「皮膚のずれ」という問題
傷にならなかった場合でも、別の問題が残るとたかせさんは指摘します。強い摩擦のまま縄を動かすと、受け手の皮膚が体からずれた状態で縄がかかってしまうのです。
皮膚がずれたままだと、縄の当たりと皮膚の状態がきれいにかみ合いません。テンションが一瞬でも緩んだときに、皮膚が元に戻ろうとする力がかかり、それがまた肌の傷につながることがあると話されています。
後々、テンションに一瞬でも緩むようなことがあった時に、皮膚がそのまま戻るような力が掛かってしまって、それでまた肌に傷をつけてしまう。
問題は肌だけではありません。緊縛では事故が起こらないよう、この位置に縄が掛かっている限りは比較的安全だという計算のもとで縄を掛けています。皮膚がずれて引っ張られると、その前提が崩れる可能性があります。
具体的には、縄のテンションがかかる方向が変わったり、位置がずれたりする原因になるといいます。安全のための計算そのものが狂ってしまうわけです。
縄同士の連動を読む──手元だけを見てはいけない
そこでまず必要になるのが、受け手の体のどの部分に、どういう強さのテンションがかかっているのかを把握することです。把握したうえで、縄を操作していく必要があるとたかせさんは述べます。
注意したいのは、縄同士が連動する点です。手元では別の操作をしているつもりでも、縄同士がつながっているため、すでに掛けてある縄の想定していない部分に負荷や引っ張る力がかかることがあります。
手元では違うことをしてるんだけど、縄同士が連動することによって、元々掛けていた縄の、想定してない部分に負荷がかかったりする。
だからこそ、自分が今掛けている縄がどこにどう影響するのかを把握し、体のどの部分にどういう形でテンションをかけているのかも、きちんと理解しておく必要があると説明されています。
浮かせる・方向を変える──摩擦を避ける縄の捌き方
強い摩擦がかかっている箇所に影響が出そうな場合の具体的な対処が示されます。ポイントは、縄を無理に引きずらないことです。
一つは、縄を浮かせる方法です。指通しをしながら縄を浮かせて操作することで、摩擦を強く掛けたまま動かすのを避けられます。指通し ── 縄と受け手の体の間に指を差し入れて縄を持ち上げ、肌との摩擦を減らしながら縄を動かすための操作
もう一つは、影響の出る方向へ力がかからないような縄の捌き方をすることです。縄を引っ張る方向によって、連動して影響する箇所も変わってくるため、それを踏まえて操作するのが重要だといいます。
指通しをして縄を持ち上げ、肌との摩擦を弱めた状態で動かす
影響の出る箇所に力がかからないよう、縄を引っ張る方向を選んで捌く
たかせさんは、この内容は中級以上の話になるとしつつ、なるべく受け手の体を傷つけないことと、テンションを適切にコントロールすることの両立が目的だと整理します。
身体化のその先へ──構造の整合性と精度を高める課題
縄の操作を上達させるための順序についても語られます。まずは、強く意識しなくても縄を運んでいける状態、いわば操作が身体化した状態を目指します。
昨今の緊縛は構造がかなり複雑になっているとたかせさんは言います。手元の操作だけに意識を持っていくと、関連するいろいろな場所に影響が出て、当初想定した状態とは違う結果になることも珍しくないそうです。
手元の操作だけに意識を持っていってしまうと、いろんなところに影響が出て、当初想定した状態とは違う状態になってしまう。
操作が身体化したら、次の課題として、どのパーツにどういう機能やテンションのかかり方が求められているのか、そしてその先の手順でどこに影響が来るのかを意識してほしいと述べます。
そこまで意識して取り組むと、縄全体の構造的な整合性や精度がかなり変わってくるといいます。摩擦を避けるという一点の話が、緊縛全体の質へとつながっていく形です。
まとめ
強い摩擦がかかったまま縄を動かすと、肌の傷や皮膚のずれ、テンションの方向や位置のずれといった不都合が生じます。縄を浮かせる、力の方向を選ぶといった捌き方で摩擦を避けつつ、縄同士の連動と全体の構造を読むことが、精度の高い緊縛につながるという回でした。
- 強い摩擦がかかった状態で縄を動かすと、肌を傷つけたり血豆ができたりする
- 傷にならなくても皮膚がずれ、テンションの方向や位置が変わる原因になる
- 縄同士は連動するため、手元の操作が想定外の箇所に負荷をかけることがある
- 対処は、指通しで縄を浮かせることと、影響の出る方向へ力をかけない捌き方
- 操作の身体化の先に、構造的な整合性と精度を高める課題がある

