なぜ「掛けない部分」がテンションと同じくらい大事なのか?
たかせ秦之助さんは、緊縛を生業とする縛師 ── 緊縛を専門の技術として扱い、ショーや撮影、指導などで縄を掛ける人を指す呼び名ですで、東京・新宿で緊縛教室「縛楽式」を運営しています。この配信では教室で教えている内容をもとに、緊縛の技術の考え方やコツを解説しています。
たかせさんは、緊縛は一般にアダルトなイメージが強いものの、あくまで表現やコミュニケーションの手段だと前置きしています。この配信は汎用的な技術の解説であり、アダルトな内容は含まないとしています。
今回のテーマは「テンションを掛けない部分を意識する」です。緊縛を習うと、「この部分でこれくらいテンション ── 縄を引いて張りを持たせる力の度合いのことです。どこにどれだけ掛けるかで、受け手の体への負荷や縄の効き方が変わりますをかけてください」と、かける位置の説明を受けることが多いといいます。
結局なんですよ、同じぐらい大事なのがテンションをかけない部分ですね。
たかせさんによれば、テンションをかけない部分は、特に言及されていなくても、あえてかけないだけの理由があることが多いそうです。かける理由がある部分と、かけない理由がある部分の両方があるという整理です。
では、かけない理由が見当たらなければどんどん締めていけばいいのかというと、緊縛は必ずしもそうではないと、たかせさんは話します。かけてはいけない部分、かけないほうがいい部分、かけないことで意味が出てくる部分など、さまざまな種類があるからです。
縛楽式の教室でも、本来テンションを入れてはいけないところでかけてしまい、受け手に過度な負荷がかかるケースが少なくないといいます。設計上はテンションをかける設定になっていないのに、特に初心者が無意識に縄を変に引っ張ってしまうのだそうです。
やっぱ抜くべきところはしっかり抜くっていうことが、やっぱりそれも技術なんですよね。
後手縛りの上腕、最初の縄で何が起きる?
たかせさんは、流派によって部分ごとの考え方はいろいろあるとしたうえで、わかりやすい例として後手縛り ── 受け手の両腕を背中側で組ませて縛る、緊縛の基本的な縛り方の一つです。胸や上腕に縄を回して形を作りますを挙げています。
後手縛りでは、受け手に両腕を背面で組ませ、まず最初の結びを取ります。そのあと縄を運び、受け手の上腕に縄を掛けるという流れが多いそうです。ここで、上腕に掛ける縄にテンションをかけるかどうかが問題になります。
うち縛楽式では、もうそこ(上腕に掛ける縄)では絶対テンションかけちゃいけないんですね。
縛楽式でこの段階のテンションを禁じる理由は、そこでかけてしまうと、後々になるほど受け手の姿勢がかなり厳しくなってしまうからです。そのため上腕に縄が掛かるまではテンションをかけず、掛かってからテンションが入り始める形を取るといいます。
縛楽式における後手縛りの序盤を、テンションの入り方で並べると次のようになります。
両腕を背面で組む
受け手に両腕を背中側で組ませる
最初の結び
まず最初の結びを取る
縄を上腕へ運ぶ
この間はテンションをかけない。掛けると後々の姿勢が厳しくなる
上腕に掛かってから
ここからテンションが入り始める
たかせさんは、「ここからここまではかける、ここからここまではかけない」「このタイミングではかけない」といった判断が、縛り方の設計の裏側にあると話します。ただ、縛り方を説明するときは、どうしてもテンションを入れる話が中心になりがちだといいます。
緩急強弱の「緩」と「弱」が難しい理由
テンションをかけないことは、安全性の面で大切なだけではありません。たかせさんは、抜くべきところを抜かないと、緊縛全体の表現も損なわれると話します。
せっかくこの一つの緊縛の流れの中で、緩急強弱とかそういったことも含めて、いろんなストーリーがね、展開されるところが全部強みたいな、全部強いみたいな感じになったりもしちゃうわけですよ。
たかせさんによれば、強くすることや速くすることは意外と簡単です。反対に、緩く・弱く・ゆっくり操作する「抜く」側のほうがコントロールが難しく、身体操作だけでは難しい場合もあるといいます。
意外と簡単にできる操作
コントロールが難しく、身体操作だけでは難しいこともある
そのため、テンションをかけないところをきっちりかけずにおけるかどうかで、緊縛全体のクオリティは大きく変わると、たかせさんは考えています。
最後にたかせさんは、自分がいまやっている縛り方を見直すことを勧めています。「この部分では入れる」「ここはどうだったか」「ここは入れるのか、入れないのか」と再点検すると、自分の縛り方や縄筋への理解もかなり変わってくるはずだといいます。
まとめ
今回の配信でたかせ秦之助さんは、テンションをかける位置と同じくらい、かけない理由がある部分を意識することが大切だと解説しました。後手縛りの上腕の例のように、かけないことは受け手の負荷を抑えるとともに、緩急強弱のある緊縛を作る技術でもあります。
- テンションをかけない部分には、言及されていなくてもかけないだけの理由があることが多い
- 初心者は設計上かけない部分でも、無意識に縄を引っ張って受け手に過度な負荷をかけやすい
- 縛楽式の後手縛りでは、上腕に縄が掛かるまではテンションをかけない
- 強く速くより、緩く弱くゆっくり操作するほうがコントロールは難しい
- 自分の縛り方を「入れる・入れない」の観点で再点検すると、縄筋への理解が深まる

