日本語ではほとんど語られないネパール映画
今回のテーマは、ネパールの映画です。ダイキさんは、ネパール映画について日本語で発信している人はほとんどいないと切り出します。
その理由は言語にあります。ネパール映画は基本的にネパール語でしか見られず、日本語はもちろん英語版もあまり用意されていないためです。
ネパールの映画って(日本語で発信してる人が)ほとんどいないと思うんで。なんでかっていうと、ほとんどネパール語でしか見れないからっていう。
ソビヤさんは、ネパール映画がボリウッドのような大きな産業ではないと補足します。マーケットの大きさも制作予算も、規模がまったく違うと話します。
そんなボリウッドみたいな大きいインダストリーじゃないからね。
ボリウッドの影響と、そこから抜け出した近年の変化
ネパール映画が成長しているのか、という問いに、ソビヤさんは成長していると答えます。ただし発展のスピードは遅いと言います。
その背景には、近隣の大国インドの存在があります。ボリウッドの映画がネパールに入ってくるため、まだ同じレベルを出せないネパール映画より、そちらが優先的に見られてきたためです。
その近くの大きい国で、ボリウッドとかで出されてる映画、入ってくるから。で、そのレベルはまだできないじゃん、ネパールは。だからそっちの方が優先的に見るんじゃない。
インド映画との関係についてソビヤさんは、ストーリーや音楽など、ボリウッドから取り入れた影響が強いと認めます。
一方で、近年ネパール映画が良くなっている理由は、そのボリウッドをコピーしなくなったことにあると話します。ネパールの文化とつながった映画のほうが、今はヒットするといいます。
今ネパールの映画が良くなってる理由は、そのボリウッドをコピーしてないってことだよね。そういう映画がヒットになるよね。
かつては2000年代に、ボリウッドっぽい映画を作ろうとしていた時期もありました。しかし観客に好まれないとわかり、今はストーリーに焦点を当てた映画が増えていると語られます。
2000年代前半は、ボリウッドを真似た派手な映画を作ろうとしていた
観客に好まれないとわかり、今はネパールの文化やストーリーに焦点を当てた作品が支持される
田舎が舞台の映画のほうがヒットする理由
ダイキさんは、自分が見たネパール映画は田舎のストーリーばかりだと話します。ソビヤさんによれば、実際に田舎を舞台にした映画のほうがヒットするといいます。
インド映画のように踊る場面はあっても、今のネパール映画はストーリー重視です。派手なビジュアルではなく、社会の問題を見せる作品が好まれると語られます。
どっちかっていうと社会の問題見せてるストーリーが好き。普通のネパールの田舎の人たちのストーリーだとヒットにできるみたい。
一方でダイキさんは、自分が見た作品には物足りなさも感じたと率直に話します。エンターテインメントとしての起伏が少なく、大人しすぎると指摘します。
なんか大人しすぎるというか。映画としての、エンターテインメントとしての波が少ない。
ストーリーも展開が読めてしまい、ありきたりだとダイキさんは言います。恋愛して、別れて悲しい、というざっくりした筋立てが多いという印象です。
それでもダイキさんは、その中に描かれる文化や、田舎に残る伝統的な価値観が興味深いと話します。インド映画にはない、ネパールならではの魅力があるという点が繰り返し語られます。
一緒に見た「Unko Sweater」に表れるネパールらしさ
2人が一緒に見た映画として、ソビヤさんは「Unko Sweater」を挙げます。今のネパール映画を代表する、ヒットした作品だといいます。
なんかネパール人はそういうストーリーが好きみたいだね。
ダイキさんは、この映画がネパール人らしさをよく表していると感じたと話します。おおらかな雰囲気が印象に残ったようです。
物語は、ネパールの綺麗な村を舞台に、2つの民族の男女の恋愛を描いたシンプルなものです。ボリウッドのような複雑さや派手さはありません。
ネパールの綺麗な村で、2つの民族の中の男と女の人の恋愛のストーリーじゃん。でシンプル。
この映画がヒットした理由の1つは、ラブストーリーでありながらリアルさを保っている点だとソビヤさんは説明します。現実離れしたロマンスではないといいます。
もう1つの理由は、主人公の男性がパートナーの女性を深く愛するキャラクターであることです。観客はその姿を好み、「こんな男が欲しい」と感じるといいます。
自分のパートナーのことをめちゃくちゃ愛するキャラクターじゃん。それがすごいオーディエンスが好き。こんな男欲しいみたいなさ。
その主人公は、いわゆるヒーロー像とは違います。筋肉隆々のイケメンでも無敵の戦士でもなく、少し頼りないほど普通の人間として描かれます。
その映画のヒーローたちはヒーローじゃないよ。普通の男。結構レイヤーがある普通の人間みたいな。
この作品は日本でも、映画館ではないものの、小さな会場でプレミア上映のような形で公開されたことがあると語られます。
景色と等身大の暮らしが伝わる映画としての魅力
ダイキさんは、この映画がヒマラヤの景色を好む人にもおすすめできると話します。言葉がわからなくても楽しめる要素があるからです。
こういうヒマラヤの景色とかが好きな人とかでもおすすめできるのかなっていう。
描かれるのは、素朴で等身大のネパール人の生活です。ただし、その暮らしは90年代を想定した少し昔のイメージだと補足されます。
興味深いことに、この映画はインドでもヒットしたとソビヤさんは言います。インド人にも見られ、「スイートな映画だ」と受け止められたそうです。
なんか逆にこの映画はすごいインドでも流行ったんだよね。めっちゃスイートな映画ですね、みたいな感じで。
ボリウッドでは出てこなさそうな、シンプルな作りが評価されたと考えられます。ダイキさんも、この素朴さこそネパール映画の良さだと話します。
注目の新作「Gauthali」と、過去の大ヒット作「Loot」
ソビヤさんは、今話題の新しい映画として「Gauthali」を挙げます。まだ見てはいないものの、ニュースになるほどヒットしているといいます。
その主人公について、ソビヤさんは動画で見た印象を語ります。インド映画「My Name Is Khan」のシャー・ルク・カーンが演じたキャラクターのようだと話します。
動画で見たら多分この主人公は、その「My Name Is Khan」のキャラクターみたい。
もう1本、ラブストーリー以外で大ヒットした作品として「Loot」の名前が挙がります。2012年の映画で、お金を狙うギャングたちを描いた物語です。
お金を盗んだりとか、そういうお金のためにいろいろやってるみたいなストーリー。これすごいヒットできてたよね。
ソビヤさんは、この作品を初めて見たとき、ネパール映画でもこれができるのかと驚いたと話します。映像の質の高さが印象的だったそうです。
初めてこれ見た時、へーネパールの映画こんなもできるんだって思った。映像が良くてさ。
2人が一緒に見た近年の代表作。村を舞台に、2つの民族の男女の恋愛を素朴に描く
いま話題の新作。主人公が「My Name Is Khan」の役柄を思わせると語られる
2012年のヒット作。お金を狙うギャングたちを描き、映像の質の高さで注目された
バラエティ不足という課題と、これからの伸びしろ
ダイキさんは、ネパール映画がまだ成長途上にあるとしつつ、まずネパール人自身が自国の映画を良いと思ってくれることが大切だと話します。
その思考は、日本映画とも近いかもしれないとダイキさんは言います。日本でも、過激な作品より日常を切り取ったような映画が評価される印象があるためです。
すごく過激とか、そういうのだけじゃなくて。そういうのもまあ日本映画もちろんあるけど。どっちもあるけど。
一方で、ソビヤさんは課題も指摘します。素朴な路線は良いものの、バラエティが足りないという点です。
同じようなストーリーが続けば、いつか観客は飽きてしまいます。映画を作る人が違うジャンルにも挑戦したほうがいいと、ソビヤさんは提案します。
ただし、そこに至るにはまだ時間がかかるかもしれないと2人は話します。まずは「ネパール映画といえばこれ」という形を作り、そこから発展していくのが現実的だという見方です。
小さな国の映画産業が抱える予算とライバルの壁
ダイキさんは、国が小さく観客が限られるため、予算を広げたくても広げにくい事情があると指摘します。
ソビヤさんも、アクション映画のような作品を作ろうとすれば予算が高くなると同意します。田舎を舞台にした素朴な映画が多いのは、こうした制約とも無関係ではないのかもしれません。
それでもダイキさんは、それはそれでインド映画にできないことをやっていると前向きに評価します。
話題は映画の料金にも及びます。ネパールでの鑑賞料金は300ルピーほどで、日本円とネパールルピーがほぼ同じ水準のため、300円ちょっとで見られる計算になります。
ソビヤさんは、自分がネパールにいた頃、水曜日はチケットが安く180ルピーほどで買えた記憶があると振り返ります。
さらにネパールでは、海外映画も上映されています。スパイダーマンを見た知り合いがいたり、マーベル作品などのハリウッド映画も公開されているといいます。
インド映画、ハリウッド映画がライバルとして存在するなかで、自国映画を作り続けるのは大変なことだと2人は話します。
まあそれでもこんなさ、年に一個ぐらいだけでもヒットできてる映画出てるから、まあいいんじゃない?
最後にダイキさんは、ネパールの人は基本的に自国が好きで、良い映画が出れば嬉しいと感じる人が多いと話します。ソビヤさんも、いい映画なら人々が積極的にプロモートすると付け加えます。
見れる機会があればぜひ見てみてください。
まとめ
日本語ではほとんど紹介されないネパール映画ですが、ボリウッドの模倣から抜け出し、田舎を舞台にした素朴で等身大の物語が支持されつつあることが語られました。景色や暮らしの魅力がある一方で、バラエティ不足という課題や、小国ゆえの予算とライバルの壁も見えてきます。
- ネパール映画はボリウッドをコピーしなくなったことで、近年ヒット作が生まれるようになった
- 田舎の村や社会問題を描いた、派手さのないストーリーが観客に好まれる
- 「Unko Sweater」はネパールらしい素朴なラブストーリーで、インドでもスイートな映画として流行した
- 「Gauthali」や「Loot」など、ラブストーリー以外のヒット作も生まれている
- バラエティ不足や予算・ライバルの壁という課題を抱えつつ、少しずつ成長している


