社名も規模も変わった、コビラの合併とは
この回のテーマは、小平勘太さんの会社が合併したという出来事です。カタカナ表記の「コビラ株式会社」から「株式会社コビラ」へと社名が変わりました。
変化は名前だけではありません。70名ほどだった会社は130名弱の規模になり、売上もそれぞれ数十億規模だったものが、合わせて60から70億円ほどの会社になったといいます。
70名ぐらいの会社が130名弱ぐらいになったかな。
合併後は、小平さんが代表取締役社長を務める形になりました。ここから、なぜ合併に至ったのか、その経緯へと話は進みます。
なぜ分かれた2社が、再び一つになったのか
そもそも2社は、もとをたどれば同じルーツを持っています。話は太陽ガスという協業組合から始まります。
この組合にガスを卸していたのがコビラ液化ガスで、小平さんの父親が継いだ会社でした。そこから独立し、祖父の株式を買い取って4人でスタートしたのがコビラ株式会社です。
一方の協業組合は、後に株式会社太陽ガスとなり、ガスから多方面のエネルギーへ展開していきました。こちらを継いだのが小平さんの弟です。
この2つのラインに分かれたのが、およそ4年前のことでした。別会社として発展していく中で、およそ2年前に合併の話が動き出します。そのきっかけは、意外にも軽いものでした。
LINEで弟に「合併しようぜ」みたいなことを言って、「いいよ」って書いて。
LINEで? 軽くないですか?
桺本頌大 さんからの質問
軽いように見えても、そういう時期だという感覚があったと小平さんは話します。背景には、両社がそれぞれ抱えていた課題がありました。
BSとPL、それぞれの課題が組み合わさる
合併には、明確な戦略的な理由がありました。2社の課題が、ちょうど補い合う関係にあったのです。
コビラ側の課題はBS、つまり貸借対照表にありました。第四創業として様々な投資を進める中、ガスの仕入れ高騰やコスト増に価格転嫁が追いつかず、一時は赤字にもなりました。2022年に継いだ後、いったんは黒字化まで持っていったものの、ガス事業の先行きに限界を感じ始めていたといいます。
一方の太陽ガスは、日置市と伊敷市という5万人規模の2つの市で5割以上のシェアを持っていました。ただ、そのために激しい価格競争が必要で、利益率が低いという問題を抱えていました。こちらはPL、つまり損益計算書の課題です。
PLの問題があったうちの太陽ガスの会社とBSの問題があったうちの会社が、一緒になったらめちゃくちゃいいよねっていうことになって。
組み合わせのメリットはまだあります。コビラは都城や宮崎まで支店を持ち、太陽ガスのトータルエネルギーサポートのビジネスモデルをそこに展開すれば、単価の高いプロパンで利益改善が見込めました。
逆に、太陽ガスはキャッシュリッチな会社で、コビラのBSも改善できます。さらに組織やDXが遅れていた太陽ガス側に、先行していたコビラの取り組みを吸収させることもできました。
BSに課題。MAや海外投資に積極的で、DXや組織づくりが先行していた
PLに課題。地域シェアが高くキャッシュリッチだが、DXや組織化が遅れていた
「文化が違う」と反発。調べたら似ていた
戦略的に合理的でも、合併は簡単ではありません。聞き手の桺本頌大さんも、その大変さを率直に問いかけます。
めっちゃ大変じゃないですか、絶対合併って。お互いの文化とかも違うだろうし、どういう工夫とか大変さがあったんですか?
最初の反発は、文化の違いでした。太陽ガスは絶対的な社長のもとに戦闘力の高い営業マンが集う、いわば昭和的で組織然としていない会社。一方のコビラは、この数年でモダンな組織へと整えてきていました。
そんなに組織になってない、一人一人のバーバリアンみたいな、山の民みたいに。
現場からの「カルチャーが違う」という声を受け、両社はPMIを手がける会社に依頼し、カルチャーサーベイを実施しました。ところが、結果は予想を裏切るものでした。
調べてみると、両社の文化はほとんど同じだったのです。特にガス事業部は、同じような考え方をする人たちの集まりでした。
安定性を求める層がいる一方で、シニア層のほうが成長や自立、自己実現を求めて働いている。若い層が安定に寄っている構成まで、両社は似ていました。違うと思っていた文化が、実は同じだったという発見が、合併を後押しします。
1年がかりの段階統合と、会社名の選び方
合併は、一気に進めたわけではありません。「合併しようぜ」のメールから約1年をかけ、段階的に統合を進めました。
まず、コビラの鹿児島県内の小売り部分だけを太陽ガスに買収の形で買ってもらい、1年前に先行して合流させました。ほぼ同じタイミングで、バックオフィスの統合も始めています。
具体的には、太陽ガス側の総務経理とコビラの経営企画部を同じチームにして運営させました。そうして1年かけた上で、ようやく会社として一つになったのが8月1日でした。
存続会社をコビラ株式会社にしたのには、2つの理由がありました。コビラのほうが10年社歴が長いことと、ガスの卸に関する資格を取り直す手間を避けられることです。
ただし、どちらかに吸収された印象を残さないための工夫もしています。グループ理念には火をイメージさせるものを取り入れました。太陽ガスのメタファーである太陽と火を、あえて盛り込んだのです。
海のままだと、どうしても太陽ガスが俺らの会社なくなった感じになるんで、火を起こすっていうのが初代の鍵だった。
もともとコビラは海をメタファーにしていました。そこに火を掛け合わせ、太陽ガスというブランドもそのまま残すことで、「一緒の会社」という感覚を出すことを意識したと話しています。
ホールディングスをやめ、カンパニー制を選んだ理由
全体の設計で最も気を使ったのが、遠心力と求心力のバランスでした。当初はホールディングス化する予定だったといいます。
持ち株会社を置く形は株価にも有利で、自律的な経営もしやすい。しかし、それだと自律性が働きすぎて「同じグループ」という感覚が出ないという問題がありました。
そこで、求心力を高めるために完全に一つの会社へ合併し、その上でカンパニー制を採り、独自色を出す形に切り替えました。求心力を高めるなら、あえて一つの会社にするという判断です。
株価に有利で自律的な経営がしやすいが、遠心力が働きすぎて同一グループの感覚が薄れる
一つの会社にまとめて求心力を確保しつつ、カンパニーごとに独自色を出せる
この形にすると、呼称も「株式会社コビラの太陽ガスカンパニーの何々です」となります。コビラの一員だと見せることで、求心力を設計しているわけです。
一方で、遠心力や自律性を高める工夫も欠かしていません。各カンパニーごとにミッション・ビジョン・バリューを再定義し、その関係性を示すインパクト図も作成しました。
ダブル代表と、三つ組みで会社を動かす体制
カンパニー制のもと、各カンパニーには執行役員社長が置かれています。小平さんや弟が兼務するケースも多いものの、貿易やITなどは生え抜きや将来的な移譲を見据えた体制です。
経営のトップは、小平さんと弟の2人が代表取締役を務めるダブル代表の形です。小平さんがグループ全体の社長、弟がエネルギーカンパニーの社長を担います。
実印2つ作れるっていうことがわかったので。両方印鑑登録しないといけないけど。
当初はダブル社長にしようとしたものの、取次先から「社長は一人でしょう」と言われ、登記上の名称である代表取締役に寄せる形で整理しました。
日々の経営は、小平さんと弟、そして池田さんの3人の経営ボードで担います。役割は明確に分かれています。
小平勘太(社長)
数字をがっつり見て、ファイナンスと事業戦略を担う
池田さん
バックオフィスと組織を見る
弟(エネルギーカンパニー社長)
現場を見て、現場の人の代弁者となる
報酬制度の統合と、合併の「見せ方」
統合で最も難しかったのは、人事評価や報酬の制度をどうするかという議論でした。ここは特に丁寧に進めたといいます。
エネルギーカンパニーは、これまで運んだ本数に応じた粗利制でした。ただ、月ごとに報酬が下がると労務上の手続きが煩雑になり、新規獲得も難しくなってきていたため、固定制へ移していきたいと考えていました。
とはいえ、いきなり変えるとできる営業ほどハレーションが大きくなります。そこで、3年かけてグラデーションで移行する方針を採りました。
当面はコビラの等級・報酬制度と太陽ガスの制度を組み合わせたハイブリッド制度とし、状況を見ながらコビラ側に寄せていく説明をしています。1年目は制度変更で報酬が下がっても、その分は全額補償することを伝えているといいます。
合併にあたっては、社内だけでなく社外への「見せ方」も課題でした。田舎では、太陽ガスが経営不振で吸収されたと見られがちだったからです。
太陽ガスがPL悪かったといっても、全然赤字だったわけではないし。
より良いサービスのため、販売エリアを広げるためだと、顧客にも丁寧に説明する必要がありました。合併では、感情や株式に関わる論点も避けて通れません。
今後は指値付無株式への転換なども進め、しっかり数字を出して安心してもらいながら、財産管理会社の株式も小平さんと弟に承継していく形を目指しているといいます。決める前の段階に膨大な論点があり、そこまでが大変だったと振り返ります。
まとめ
今回は、兄弟が別々に継いだ2社を合併させた小平さんの体験から、統合を成功させるための実務が語られました。文化調査や制度の段階移行、そして遠心力と求心力を意識した組織設計が、キーワードとして浮かび上がります。
- BSに課題を持つコビラとPLに課題を持つ太陽ガス、互いの弱みを補う組み合わせが合併の戦略的な軸になった
- 「文化が違う」という反発をカルチャーサーベイで検証したところ、実際にはほとんど同じ文化だった
- ホールディングスではなく合併+カンパニー制を選び、求心力と遠心力の両方を設計した
- 報酬制度は3年かけたグラデーション移行とし、1年目の減額は全額補償するなど丁寧に進めた
- 社内の統合だけでなく、吸収と見られないための顧客への説明という社外コミュニケーションも重視した


