「成果報酬がいい」と言われたが、そもそもどんな制度か
今回の相談は、業務効率のいい社員だけ給与を上げたいという経営者からのものです。
業務効率のいい社員だけ給与を上げたいと思い、仲間の経営者に相談したところ、「成果報酬がいいよ」とアドバイスを受けました。成果報酬とはどのような制度ですか?
吉田さんはまず、成果報酬という言葉に法律上の厳密な定義はないと説明します。
成果報酬っていうのは、法律上、これが成果報酬だって厳密に決まってるわけではないんですよ。
一般的な言葉の解釈として、そのまま文字通り理解すれば、成果に応じて報酬を支払う、そんな給与体系だと思います。
それに近い制度として最初に挙がるのが、歩合給 ── 売上や成約件数など、仕事の成果に応じて支払われる給与のこと。営業職やタクシー運転手など、成果が数字で測りやすい職種で導入されることが多い。です。営業職やタクシー運転手など、売上や成約件数に応じて給料が決まる仕組みだと解説されています。
経営者と法律の「永遠の対立」
ここで吉田さんは、話を進める前に大事な前提があると切り出します。日本の法律では、成果に応じた給与の支払いには限界があるという点です。
労働者の方の給与っていうのは時間に応じて支払いなさいっていうのが、すごくDNAとして刻まれてるというか。
もし成果だけで給与が決まれば、結果を出せなかった社員は生活が成り立たなくなりかねません。安田さんもその点に懸念を示します。
もし成果だけを基準に給与が決められるとしたら、出来の悪い、結果が出せない社員の方にとっては非常に苦しい状態になりかねないっていうことですもんね。
たとえ長時間働いても、営業職で一件も成約できなければ給料がゼロになる。そうした事態を防ぐため、歩合給を導入する場合でも最低保証額を決める必要があると吉田さんは説明します。
つまり、結局は時間に応じて一定額を支払わなければならない仕組みになっているのです。
この経営者と法律の間にある構図を、吉田さんは永遠の対立と表現しています。
出した結果、成果に応じてお金を払いたい
働いた時間に応じて給料を支払わなければならない
なぜ完全歩合は使われないのか
歩合給には最低保証という限界があるうえ、もう一つの弱点があります。求人での受けがよくないという点です。
今はまあ事実上完全歩合ですけど、社会人経験がまだ未熟な時なんで、完全歩合なんかとてもじゃないですけど応募できなかったので。
求人票で「完全歩合」と書かれていたら、自信がある人以外はためらう。安田さんも、自分にできるだろうかと不安になると応じています。
そこで一般的な会社が取る方法として、吉田さんは月次の給与をまず一定額支払う形を挙げます。例えば20万や25万といった額を保証したうえで、成果を上げた社員には別の形で報いるという考え方です。
成果を上げた社員に関しては、賞与で還元するとか、昇給幅で差をつけるっていったところで、成果を出した社員が報われるような給与制度にしてます。
99%の給与は「時間」で決まるという前提
吉田さんが経営者に一番理解してほしいと繰り返すのは、日本の法律では時間と給与のつながりを切ることが難しいという点です。裁量労働制のように時間と給与のリンクを切れる制度もあるものの、導入できるケースは珍しいと言います。
この前提を踏まえずに給与設計をすると、思わぬリスクが生じると吉田さんは注意を促します。
何も考えずにすべてを月給で支払っていると、その社員がたくさん働いていた場合、残業代が支払われず多額の未払い賃金が発生することがあります。
さらに深刻なのは、成果が出ていないのに長時間働いていたケースです。この場合、経営者は成果がないにもかかわらず多くの給料を支払わなければなりません。
最初の給与設計で「原資」を仕込んでおく
こうしたリスクを避けるため、吉田さんは最初の段階から時間払いを織り込んだ給与設計を勧めます。
具体的には、月次の給与を支払える金額よりも少し低めに設定し、その分を会社に溜め込んでおく。そして賞与や昇給の原資に回すという方法です。
月次の給与を少し支払える金額よりも低くしておいて、その分を会社に溜め込んでおいて、賞与とか昇給の原資に回せば、成果に応じた給与設計っていうのがやりやすいんじゃないかなと。
安田さんはこの考えを、最低ラインを保証したうえで賞与などでプラスアルファを補う設計だとまとめ、吉田さんも同意しています。
月次給与を低めに設定
支払える金額より少し抑えて設定する
差額を会社に溜め込む
抑えた分を原資として確保しておく
賞与・昇給で還元
成果を出した社員に賞与や昇給幅で差をつける
成果報酬を導入している企業はどれくらいあるのか
最後に、成果報酬を導入している企業がどれくらいあるのかという質問が出ます。吉田さんによれば、完全歩合を採用している会社は少数です。
不動産や保険の営業のように、月次の給与を最低賃金に近い水準にして、四半期ごとや4か月ごとに評価し成果を一気に賞与で出す設計は一定数あるといいます。タクシーなど稼働量に応じて業務が決まる職種でも歩合給が見られます。
しかし世の中の絶対数としては少なく、月次の給与が20万や30万と決まったうえで、貢献した社員に賞与や昇給で還元するケースが圧倒的多数だと説明されています。
相談者へのまとめとして、成果報酬を導入するなら注意点があると吉田さんは締めくくります。歩合給なら最低保証を、通常の支払い方なら原資をどこで確保するかを考えておく必要があるという点です。
まとめ
成果報酬は魅力的に見えても、日本の法律では給与が時間に応じて決まるという原則が強く働きます。だからこそ、最初の給与設計で時間払いを前提に組み立てておくことが、成果を反映する近道になると語られました。
- 成果報酬に厳密な法律上の定義はなく、歩合給などがそれに近い制度とされる
- 日本の労働基準法では給与は時間に応じて支払う原則が強く、成果への反映には限界がある
- 歩合給には最低保証が必要で、求人での受けもよくないため完全歩合は少数派
- 99%のケースで給与は時間で決まる前提を踏まえないと、未払い賃金などのリスクが生じる
- 月次給与を低めに設定して原資を確保し、賞与や昇給で成果に報いる設計が現実的とされる




